報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「ロマンスカーで新宿へ、そして原宿へ」 2

2019-12-23 19:36:31 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[11月25日18:05.天候:晴 東京都新宿区西新宿 小田急新宿駅]

〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく終点、新宿、新宿です。2番ホームに到着致します。お出口は、左側です。……」〕

 稲生達を乗せた特急ロマンスカーが、新宿駅に接近した。
 車窓からは超高層ビル群が見える。

 稲生:「あっという間だね。もう新宿だ」
 エレーナ:「ロマンスカーの中でも、これは比較的速い方なんだろ?」
 稲生:「まあね。小田原からノンストップの“スーパーはこね”より、停車駅が2つ多いだけだから」
 マリア:「さあ、降りるよ」

 マリアは席を立って、荷棚に乗っている人形達をローブの中にしまった。

 ミク人形:「ムギュ」
 ハク人形:「ムギュ」
 エレーナ:「オマエも隠れてろ」
 クロ:「ニャ」

 エレーナは黒猫を完全に中折れ帽子の中に入れると、そのまま被った。
 ハトの手品のように、被っている状態だと中にネコがいるようには見えない。
 ロマンスカーは地上の専用ホームにゆっくり入線して行く。
 ホームには駅員や折り返しの電車を待つ乗客達の他、鉄ヲタがカメラを構えていたりする。
 ホームで待つ乗客達にサラリーマンが多いことで、今日が平日だと分かる。

 稲生:「夕方のラッシュの最中だから、ちょっと山手線とか混んでると思うけど、我慢してね」
 エレーナ:「ケンショーグリーンみたいなヤツが痴漢してきたら、電車が脱線するぜ」
 稲生:「それは困る」
 マリア:「脱線で済めばいいけどね」
 ルーシー:「まあまあ、2人とも……」(←鉄道員一家で育ったので、他の2人の魔女とは別に思う所がある)

 電車がホームに停車してドアが開く。
 本来なら1番ホームが降車専用なのだが、何故かそのホームは使用されず、乗車ホーム側のドアが開く。
 もちろん車内整備・清掃があるし、通勤時間帯のロマンスカーも全車指定席なので、慌てて乗り込んでくる乗客はいないのだが。

 稲生:「さて、次は山手線で原宿ですね。この時間の新宿駅は夕方ラッシュでごった返しているので、注意して行きましょう」
 マリア:「分かった」
 エレーナ:「乗り掛かったバスだ。行くしかねーな」
 マリア:「乗り掛かった舟だろ。しかも全然意味違うし……」

[同日18:19.天候:晴 JR新宿駅→JR原宿駅]

〔まもなく14番線に、渋谷、品川方面行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックの内側までお下がりください。次は、代々木に止まります〕

 夕方ラッシュで賑わう新宿駅を進んだ魔道士達。

 エレーナ:「大江戸線より混んでるぜ」
 稲生:「そりゃそうだよ」
 ルーシー:「反対側の黄色い電車は……」
 稲生:「そっちは中央総武線。秋葉原とか千葉まで行く電車」
 マリア:「そっちも混んでるよ」
 稲生:「この時間はどの電車も混んでますよ」

 やってきた山手線は最新型のE235形。

〔しんじゅく〜、新宿〜。ご乗車、ありがとうございます。次は、代々木に止まります〕

 ここで下車する乗客も多いが、乗り込む乗客も多い。
 その為、ここでは1分ほどの停車時間が設けられている。
 新宿駅に限らず、ターミナル駅では停車時間が長めに取られていることが多い。
 もっとも、遅れが生じている時はすぐに発車するが。
 こういう時でも先頭車に乗り込みたがる稲生。
 発車メロディがホームに鳴り響く。

〔14番線の山手線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車をご利用ください〕

 まだJR新宿駅ではホームドアが設置されていない。
 これは駅改良工事が行われている為である。
 なので電車のドアがちゃんと閉まると、すぐに発車する。

〔この電車は山手線内回り、渋谷、品川方面行きです。次は代々木、代々木。お出口は、左側です。総武線各駅停車、中野、三鷹方面と都営地下鉄大江戸線はお乗り換えです〕
〔This is the Yamanote line train bound for Shibuya and Shinagawa.The next station is Yoyogi(JY18).The doors on the left side will open.Please change here for the Sobu line local service for Nakano and Mitaka,and the Oedo subway line.〕

 稲生:「服を受け取ったら、そのまま着るの?」
 ルーシー:「うーん……。いや、明日着る」
 エレーナ:「楽しみは後に取っておくってか?」
 ルーシー:「それもあるんだけど、これから夕食でしょう?誤解されないように、今はこの私服でいいと思う」
 稲生:「あ、なるほど」
 マリア:「それじゃ私の立場は……」
 エレーナ:「またパスポート見せりゃいいだろ」
 マリア:「段々それも面倒臭くなってきた」
 稲生:「まあまあ」

 その為、魔女によっては契約悪魔に命令して、体だけは成人女性になるまで成長させて欲しいとすることがある。
 イリーナなどは若返りの魔法を使うが、未成年の魔女は成人年齢になることを臨む。

[同日18:30.天候:晴 東京都渋谷区 某制服販売店]

 午前中に購入した服を取りに行くと、ちゃんとマリアとルーシーのサイズに合うように直されていた。
 一応、試着室で試着してみるとピッタリだった。

 エレーナ:「このまんま留学生として、どっかの高校に潜り込めそうだなー」
 稲生:「昔、なんかそういうアニメがあったような……?」
 店員:「このまま着て行かれますか?」

 店員の日本語を英語に通訳してルーシーに言うマリア。
 マリアも今は何とか日本語が理解でき、話せるようにまでなった。

 マリア:「いいエ、着替エまス」
 店員:「かしこまりました」

 もっとも、元々ブレザーを着ていたマリアは着替えることもないのだが、一応着替えた。

 マリア:「私も明日まで取っておくよ」
 ルーシー:「了解。明日2人で着ようね」

 で、着替えて試着室から出ると、待っていたのは稲生だけだった。

 マリア:「エレーナはどこ行った?」
 稲生:「クレープ食べたいとか言って出てったけど……」
 マリア:「これから夕食なのに!?」
 稲生:「って、僕も言ったんだけど、『甘い物は別腹だぜ』とか言って……」
 ルーシー:「太ってホウキに乗れなくなっても知らないよ」

 稲生だけでなく、2人の魔女も呆れるしかなかった。
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“大魔道師の弟子” 「ロマンスカーで新宿へ、そして原宿へ」

2019-12-23 11:13:45 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[11月25日17:00.天候:晴 小田急電鉄小田原線特急“はこね”30号3号車内]

 ルーシー:「すっかり外が暗くなったね」
 マリア:「日本の冬は日が短いんだ」
 稲生:「そういえば、もうすぐ冬だな」
 エレーナ:「ルーシー、随分と機嫌が良くなったな?さっきまでは新幹線乗れなくてブスッとしてたのに……」

 エレーナがからかうように言った。

 ルーシー:「き、機嫌悪くなんて無かったよ。顔の表情は生まれつきなんだからしょうがないでしょ」
 エレーナ:「またまたぁ……」
 車販嬢:「お食事、お飲み物はいかがでしょうか〜?」

 そこへワゴンサービスがやってきた。

 稲生:「あ、すいません。こっちにホットコーヒー1つと……」
 エレーナ:「いや、私もだぜ」
 稲生:「ホットコーヒー2つに紅茶2つ、それにバニラアイス2つと……」
 マリア:「ロマンスカークッキー……か?ルーシー」

 ルーシー、大きく頷く。

 稲生:「ロマンスカークッキー4つください」
 車販嬢:「はい、ありがとうございます」
 エレーナ:「おお、稲生氏、太っ腹〜!」
 稲生:「支払いはSuicaで」
 車販嬢:「はい」

 因みに稲生はお茶請けの代わりにビスケットを購入したが、実はコーヒーを買うだけでビスケットが1つ付いて来る(単品のみ)。
 “走る喫茶室”の名残りだろうか。

 車販嬢:「ありがとうございました〜」

 飲み物とクッキーを購入した。
 クッキーの箱はロマンスカーを象ったものだ。

 エレーナ:「ロマンスカーの1つか、これは?」
 稲生:「さっきすれ違ったけど、最新型の70000形GSEだね」
 ルーシー:「昔のTGVみたい」
 稲生:「ああ、塗装が……」

 フランスの高速列車のこと。

 マリア:「はい、アイスクリーム」

 マリアは荷棚に乗っているミク人形とハク人形にカップアイスを渡した。
 人形形態でありながら、器用にスプーンで食べている。

 ハク人形:「硬くない」
 ミク人形:「硬くない」
 稲生:「何で新幹線のアイスだけ硬いのか、【お察しください】」

 多分、小田急の方は保存の仕方が違うのかもしれない。
 ああ、そうそう。
 箱根湯本駅を出発した時にあった着信の内容だが……。

 稲生:「それにしても、大師匠様が次の行き先を急にモスクワに変更されるとは……何かあったかな?」
 エレーナ:「プーチン大統領が、何かしでかすのかもしれないぜ?」
 稲生:「うーん……。(日本人としては、プーチン大統領に圧力掛けて、北方領土を全島返還させて頂きたいものだけど……)」
 ルーシー:「航空チケットはアナスタシア先生が手配したみたいだから、私達はもっと別の仕事ができたわ」

 それがルーシーの機嫌が良くなった理由。
 本来の予定はロンドンまでダンテをアテンドしなくてはならなかったのだが、急きょ行き先をモスクワに変更したものだから、アテンド役もアナスタシア組に変わった。
 その代わりベイカー組には、マリアの屋敷の視察を任された。
 つまりルーシーとしては、今度は北陸新幹線に乗れるという楽しみができたのである。

 エレーナ:「稲生氏、屋敷へは高速バスで帰るのか?その方が安上がりだし、乗り換え無しで楽だぜ?」

 エレーナが悪戯っぽく笑いながら言った。

 稲生:「うん、そうだねぇ……」
 ルーシー:「!!!」

 するとルーシーの足元の影に隠れていた、彼女の使い魔の黒い犬(ラブラドールレトリバーに似ている)が現れて、エレーナにワンワン吠えた。
 余計なことを言うなと抗議しているのだろう。

 エレーナ:「な、何だよ?」

 ところが今度はエレーナの帽子の中から、エレーナの使い魔の黒猫が飛び出して来た。

 クロ:「フーッ!!」
 ブラッキー:「ウウウ……!」
 稲生:「やめなさい!うちの組はともかく、ベイカー先生は新幹線でないとダメでしょう!分かってるよ!」
 ルーシー:「ブラッキー」
 ブラッキー:「プスッ!」(←まだ少し不満があるが、主人の命令には逆らえない)

 ブラッキーは再びルーシーの足元の影に隠れた。

 稲生:「クロも!」
 エレーナ:「……クロ」

 エレーナは帽子掛けから帽子を取ると、その中にクロを入れた。

 マリア:「動物の使い魔は大変だな」
 エレーナ:「いや、これが普通だからな?」

 使い魔はWi-Fiのルーターという表現にするとしっくり来るかと。
 インフラを供給するのが契約悪魔なら、使い魔はルーター。
 呪文はWi-Fiを接続する為のパスワードと同じ。

 稲生:「新幹線のキップを改めて取るように言われたから、途中の“みどりの窓口”で購入するよ」
 マリア:「……だって。良かったね」
 ルーシー:「うん」

 魔法で移動すれば楽だろうに、それをあまりしないのは乱用を禁止しているからである。
 Wi-Fi通信のように、接続中は使い放題なのなら、別にいいじゃないかと思うもしれない。
 しかし、Wi-Fiを使う人は誰でも経験したことがあるだろう。
 Wi-Fiが何故か突然切れた、ということを。
 それは魔法も同じ。
 乱用していたところ、突然契約悪魔か使い魔か分からないが、どちらかに不具合が発生し、魔法が突然切れた魔道士が命を落としたという事例があったため。
 その為、魔法の使用は必要最低限にして、物理的にできることは自分の力で行うことが奨励されている。

 エレーナ:「航空チケットはどうなんだ?」
 ルーシー:「それもアナスタシア先生が購入してくれたみたいよ」
 エレーナ:「アナスタシア先生、イリーナ先生には厳しいけど、ベイカー先生には優しいな」
 ルーシー:「そりゃうちの先生は、1期生の中でも年長組だもの」

 同期生の中にも上下関係があって厳しい1期生(軍隊のようなもの)。
 一応、先輩・後輩の関係がある2期生(学校のようなもの)。
 全員入門時期がほぼ同じなので、そもそもそんな関係すら無い3期生。

 稲生:「新宿駅か原宿駅で新幹線のキップを買い直そう」
 マリア:「クレジット払いにしたけど、大丈夫?」
 稲生:「大丈夫でしょう。グリーン車の座席を2つ買えばいいんですから」
 エレーナ:「ん?イリーナ先生がグリーン車で、稲生氏とマリアンナが普通車2人席だろ?」
 稲生:「いや、イリーナ組で普通車3人席。うちの先生のキップをルーシーに融通してもらって、あとは先生達2人のグリーン車の座席を買えばいいだけ」
 ルーシー:「本当にイリーナ組はユルい上下関係ねぇ……」
 マリア:「一応、気は使ってるんだけどね」

 『一応の気遣い』で済むイリーナ組。
コメント (1)
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