報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「A great victory,a great collapse.」

2015-04-24 15:04:50 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[4月20日00:30.ヤノフ城・大時計前 稲生ユウタ、マリアンナ・スカーレット、グルジ・ヤノフ]

「でやあーっ!」
「うっ!……くそっ、近づけない!」
 ユタには何か作戦があるようだが、ヤノフの攻撃に隙が無く、なかなか接近できないでいた。
 そしてマリアもまたユタに援護できないでいた。
 魔力が残り少ないのもあるが、肌蹴させられた胸を隠す為に片手が塞がっているからである。
「困ってるみたいだな。ヒマだから、ちょっくら援護させてもらうぜい」
 マリアの頭の中に、怠惰の悪魔エルフェゴールが話し掛けてきた。
「お前1人に何ができる?」
「オレだけじゃなく、他にも来てるぜ」
「は?」
「特に、新しい契約先がピンチだってんで、“色欲”のヤツも一緒だ」
「チョリーッス!」
 黒ギャルみたいな風体している。
「よーし。それじゃ、憤怒のサタンも控えているし、この城揺り動かしてみるか」
「エルフェ、珍しくやる気出てんじゃん」
「“不労所得”の為の地ならしだよ」
「一体、何をする気だ?」
 マリアは恐ろしく嫌な予感がした。

 ビュッ♪ビュッ♪ビュッ♪
〔地震が来ます。ご注意ください。地震が来ます。ご注意ください〕

「ええっ!?」
 ユタのスマホに内臓されている緊急地震速報が鳴り出した。

 ビュッ♪ビュッ♪ビュッ♪
〔地震が来ます。10秒前〕

「バカめが!どこを見ている!」
 緊急地震速報が鳴っていても、ヤノフはお構いなしに攻撃してくる。

 ズシン!という縦揺れが城を襲った。
 そして、ゴゴゴゴという地鳴りと共に大きな揺れがやってくる。
「むお!?この揺れは……!」
 地震に不慣れなせいか、動揺するヨーロッパ人達。
 それに対し、地震国たる日本で生まれ育ったユタは比較的落ち着いて、動きの止まったヤノフに接近した。
「えいっ!」
 ユタは隠し持っていた聖水の瓶をヤノフに投げつける。
 瓶は1つだけではなかったのだ。
「マリアさん、最後の1回!」
「!!!」
 マリアは薄れ行く意識を何とか繋ぎ止めると、もう1度杖から衝撃を発した。

 瓶が割れて、中身が再びヤノフに振り掛かる。
「うぉぉっ!目が……目がぁぁぁッ!見えん!何も見えん!!」
 どうやら聖水が目に入ったらしく、失明したらしい。
 闇雲に剣を振るうヤノフだが、突然崩れ出した床に足を取られ、バランスを崩した。
「でぇーい!!」
 ユタはそのヤノフに体当たり!
 ヤノフは城壁から下に転落した。
 崖っぷちに建つ城。
 そこから足を踏み外したヤノフは、真っ逆さまに100メートルはあろうかという崖下に落ちて行った。

[同日同時刻 ヤノフ城・地下 藤谷春人]

 再びヘッドランプを点けて、真っ暗な地下道を進む藤谷。
 途中で緊急地震速報が鳴ったが、地下にいたせいか、屋上のユタ達ほど強い揺れは感じなかったようである。
「震度5強だぁ?脅かしやがって……。こちとら、東日本大震災を経験しとるんじゃい!」
 地下にもマネキンが配置されていたが、こちらはまた違うタイプだった。
 人型がもう一回り大きくなり、右手だけでなく左手も変化したようなタイプ。
 鉄球を平べったくしたようなものではなく、蟹の鋏を大きくしたようなタイプだ。
 それまでの人型より足が長いせいか、その分、若干足が速いように見える。
 しかし手が不自然に長くて大きく、その分重いせいか、結局そんなに速く移動できないようである。
 もう1つは、右手がボウガンみたいに変化したタイプ。
 身長はそんなに高くないが、本当にボウガンみたいになっているらしく、何を飛ばしてくるのか分からないが、とにかく固い物を飛ばして攻撃してきた。
 で、近づくとそのボウガンみたいな手で殴り付けてこようとする。
 身長が低い割に大股で移動するせいか、こいつもまた最初の人型より若干移動速度が速いように見えた。
 しかし、ショットガンとライフルを装備し、元々が戦闘力もある藤谷には敵ではないようで、ボウガン型が殴り付けてくるのをしっかり回避し、掴んで投げ飛ばした。
「悪いな。柔道黒帯なんだ」
 ボウガン型は床に叩き付けられ、昏倒した。

 そして、何とか鉄格子の並ぶ一角に辿り着く。
「イリーナ先生!救助隊の者でやんす!いたら返事してくだせぇ!」
「……あいよ。アタシゃ生きてるよー」
「おおっ!?都合良く1番最初の牢屋で!……石化していたと聞いてましたが?」
「うーん……。どうやら誰かがラスボスを退治してくれたみたいだねぇ……。まあ、誰だかは想像つくけど……」
「さすがは稲生君!やってくれたか!あとはセンセを救出するだけだ!」
「この牢屋、鍵掛かってるよ」
「心配無いっス!ちょっと離れててくだせぇ!」
 藤谷は途中で拾って来た油圧カッターで、牢屋の鉄格子を切り落とした。
「さっ、センセ!今のうちに!」
「うーん……」
 ズルズルと這い出るイリーナ。
「センセ?どうしました?」
「ゴメン……。魔力を吸い取られたか何かして、動けなひ……。立てない……」
「マジっすか!?」
 藤谷はイリーナの前にしゃがんだ。
「背負って行くっス!」
「……持つべき者は仲間だねぃ……」
 藤谷はイリーナを背負って、地下牢を脱出した。
 しかし、
「アー……!」
「ウウ……!」
 倒し切れていなかったり、新たにやってきたマネキン達が立ち塞がる。
「ちょっと、センセ!すいません!」
 その度に藤谷はイリーナを下ろして、応戦しなければならなかった。
「えーと……藤谷さんだっけ?ハンドガンでも戦えるかい?」
「大丈夫っスけど?」
「それなら……。えいっ!」
 イリーナは藤谷のショットガンをハンドガンに変化させた。
「肩貸してくれるなら、アタシはそれでも頑張って歩く。それなら片手が開くから、ハンドガンならそれで撃てるでしょう?」
「た、確かに!」
 藤谷はイリーナに肩を貸すと、それで歩き始めた。
 歩みはゆっくりだが、それでも時折現れるマネキンに対してすぐ応戦できるし、リロードも自動でできるタイプなので、残った右手だけで十分だった。
 だが、猶予ならない事態が城内に残るメンバーを襲う。

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1 コメント

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つぶやき (作者)
2015-04-24 18:43:32
 ヤノフ城内に現れるマネキンドールのモデルは、“バイオハザード・リベレーションズ”のクリーチャー、ウーズです。
 ゾンビは主人公達を見失うと、追い掛けて来るのを諦めてその場に佇んだり、別の場所へ行ったりするのですが、ウーズは他の部屋に移動しない限り、見失うことなく、どこまでも追い掛けてきます。

 さて、“クロックタワー”シリーズ以外に“バイオハザード”シリーズもモデルにしているので、ベタな法則だと終盤の展開は……。
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