[9月13日19:45.天候:晴 栃木県日光市 東京中央学園栃木合宿所2F会議室]
稲生:「分かった。3時にすればいいんだね?」
荒田:「そうです……。僅かに……1分……それだけで……いいんです……」
稲生は文字盤の裏にあるツマミを掴むと、ゆっくりとそれを回した。
カチッ!
荒田:「聞きましたか……?今、確かにカチッと……音がしましたよね……?」
稲生:「確かに3時になった。これで『3時の魔道師』は現れるんだな?」
荒田:「そのはずです……」
稲生は魔法の杖を構えた。
マリアもそうする。
いつ、どこから現れてもいいように。
もし遠くから魔法を使って攻撃してこようが、この魔法の杖には誤魔化せない。
稲生:「何も起こらないな……」
マリア:「…………」
荒田:「おかしいですね……。これ見よがしに……まもなく……3時になろうとしていた時計……。そして……あの光は……間違い無く……それらしいものでした……。僕が……時計を……間違えてしまったのでしょうか……?」
マリア:「いや、多分この時計でいいと思う」
稲生:「マリアさん?」
マリア:「もし私が『3時の魔道師』とやらだったら、どのようにして現れようか考えていた。多分、時計なんかどうでもいいんだと思う。たまたま3時近くを指していた、止まった時計があった。ただそれだけのことだ」
稲生:「それじゃこの時計自体には、意味が無いと?」
マリア:「私が『3時の魔道師』だったとしたらね。で、3時に合わせられたからといって、何をどうするってわけでもない。おおかた、そこの窓の外から覗いてるんじゃないか?」
稲生:「そういう身も蓋も無いことを……」
稲生は窓の傍に近寄った。
稲生:「……誰もいないようですね」
荒田:「稲生先輩……。いかがでしょう?こうなったら、現れるのをとことん待つというのは?」
稲生:「ええっ?」
荒田:「僕は実際……こうして、『3時の魔道師』に殺されているんです……」
稲生:「うーん……」
マリア:「ミスター荒田の言う事には一理ある。少し時間を掛けて相手を焦らしたり、油断させた所を攻撃するという手も魔道師はよくやる」
稲生:「な、なるほど」
マリア:「但し、ただ待つだけではダメだ」
稲生:「と、言いますと?」
マリア:「私達も魔道師なんだ。そう簡単に、向こうの作戦には引っ掛からないところを見せよう」
稲生:「それで、どうするんですか?ここに魔法陣でも書くんですか?」
マリア:「非常脱出用として書くか?」
荒田:「そ、それは僕が許しません……!僕の仇を討ってくれる約束ですよ……!」
マリア:「ミスター荒田。魔道師というのは契約で動く。単なる口約束では動かないんだ」
荒田:「そ……そんな……!」
稲生:「だからよく『魔道師は嘘つき』って言われるんですね。だから口約束は絶対にせず、契約書を交わし……。!?」
稲生が何かに気づいたような顔をした。
マリア:「どうした?」
稲生:「もしかして、『3時の魔道師』も、誰かとの契約で動いてるんですかね?」
マリア:「あ……!」
イリーナのように半分世に出てガッツリ稼ぐ者もいるが、中には裏社会に溶け込んだまま手堅く稼ぐ者もいる。
エレーナを狙った“魔の者”が、アメリカのマフィアのボスに憑依しているという情報を与えたのも、そういう魔道師だ。
裏社会に溶け込んでいるだけあって、なかなかイリーナ組の前に現れることはない。
アナスタシア組も似たような仕事はしているが、それにも関わらず、堂々と表社会にも出て来れる稀有なグループである。
マリア:「契約の内容を調べてみよう」
稲生:「調べられるんですか?」
マリア:「ダンテ一門の門規には、交わした契約の内容は門内に公表しなければならないことになっている」
稲生:「いいんですか?」
マリア:「そうすることで、門内の他の仲間が妨害してくることの無いようにする為だ。後で糾弾されても、『知りませんでしたw』と言い逃れできないように」
稲生:「なるほど。……って、正式な契約の内容だったとしたら、下手すりゃ僕達、妨害することになるんじゃ?」
マリア:「こんなティーンエージャー2人を殺すような契約が、正式なはずなもんか!」
マリアは水晶球を机に置いて、その上から手を翳した。
マリア:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ。直近における門内全ての契約内容を照会……」
と、その時だった!
パァーン!
マリア:「きゃっ!」
稲生:「うわっ!!」
荒田:「!!!」
突然、水晶球が破裂した。
稲生:「大丈夫ですか、マリアさん!?」
マリア:「あ、ああ……」
マリアの右腕に、水晶球の破片が刺さっていた。
稲生:「い、今抜きますから!」
だが、それを制する者がいた。
ミク人形とハク人形である。
彼女らは人形形態から人間形態に変化し、テキパキとマリアの手当て行った。
マリアのローブの中には回復薬が入っており、これはエレーナからもらった液体のものだが、これを傷口に振り掛けると、たちどころに傷口が塞がって行った。
稲生:「さすがポーリン組だな」
マリア:「どうやら、本当に正式な契約のものらしい……」
稲生:「ええっ?」
マリア:「ただ、契約内容を公表せよという掟がある以上、それを仲間内が閲覧するのは自由ということになっているということでもある。それを妨害したということは……」
稲生:「掟違反を先にやったのは向こうということですね?」
マリア:「そうだな。いい加減、ここに来て事情でも話したらどうだ?」
マリアは会議室のドアの方を見て言った。
稲生:「!」
すると、入った時に閉めたはずの入口のドアが僅かに開いていた。
稲生:「どういうことだ?」
稲生はドアを閉めに行こうとした。
稲生:「わっ!?」
ドアを閉める際に廊下に視線をやるわけだが、そこに誰かがいた。
それは、2つのギョロリとした目玉。
……のように見えたのは、それ以外の姿が黒ずくめだから、暗い廊下に溶け込んでいただけのことだろう。
稲生:「さ、『3時の魔道師』!?」
そいつは全速力で逃げ出した。
稲生:「待てっ!!」
稲生は急いでそいつを追った。
『3時の魔道師』と思しき者は、もう既に廊下の角を曲がろうとしていた。
このような動きは、人間では有り得ない。
稲生もまた廊下の角を曲がった。
そこは階段とエレベーターのある所だった。
3階と屋上へ行く階段と、1階と地下1階へ下りる階段。
エレベーターは合宿所として改築された際、バリアフリーの一環として設置されたもの。
そして何と、そのエレベーターが動いていた。
エレベーターは屋上へ向かっている。
1:階段で屋上へ向かう。
2:エレベーターで屋上へ向かう。
3:マリア達を呼んで来る。
4:あえて1階へ向かう。
(※ストーリーも終盤に差し掛かって来ましたので、1つ以外は全てバッドエンドに繋がります)
稲生:「分かった。3時にすればいいんだね?」
荒田:「そうです……。僅かに……1分……それだけで……いいんです……」
稲生は文字盤の裏にあるツマミを掴むと、ゆっくりとそれを回した。
カチッ!
荒田:「聞きましたか……?今、確かにカチッと……音がしましたよね……?」
稲生:「確かに3時になった。これで『3時の魔道師』は現れるんだな?」
荒田:「そのはずです……」
稲生は魔法の杖を構えた。
マリアもそうする。
いつ、どこから現れてもいいように。
もし遠くから魔法を使って攻撃してこようが、この魔法の杖には誤魔化せない。
稲生:「何も起こらないな……」
マリア:「…………」
荒田:「おかしいですね……。これ見よがしに……まもなく……3時になろうとしていた時計……。そして……あの光は……間違い無く……それらしいものでした……。僕が……時計を……間違えてしまったのでしょうか……?」
マリア:「いや、多分この時計でいいと思う」
稲生:「マリアさん?」
マリア:「もし私が『3時の魔道師』とやらだったら、どのようにして現れようか考えていた。多分、時計なんかどうでもいいんだと思う。たまたま3時近くを指していた、止まった時計があった。ただそれだけのことだ」
稲生:「それじゃこの時計自体には、意味が無いと?」
マリア:「私が『3時の魔道師』だったとしたらね。で、3時に合わせられたからといって、何をどうするってわけでもない。おおかた、そこの窓の外から覗いてるんじゃないか?」
稲生:「そういう身も蓋も無いことを……」
稲生は窓の傍に近寄った。
稲生:「……誰もいないようですね」
荒田:「稲生先輩……。いかがでしょう?こうなったら、現れるのをとことん待つというのは?」
稲生:「ええっ?」
荒田:「僕は実際……こうして、『3時の魔道師』に殺されているんです……」
稲生:「うーん……」
マリア:「ミスター荒田の言う事には一理ある。少し時間を掛けて相手を焦らしたり、油断させた所を攻撃するという手も魔道師はよくやる」
稲生:「な、なるほど」
マリア:「但し、ただ待つだけではダメだ」
稲生:「と、言いますと?」
マリア:「私達も魔道師なんだ。そう簡単に、向こうの作戦には引っ掛からないところを見せよう」
稲生:「それで、どうするんですか?ここに魔法陣でも書くんですか?」
マリア:「非常脱出用として書くか?」
荒田:「そ、それは僕が許しません……!僕の仇を討ってくれる約束ですよ……!」
マリア:「ミスター荒田。魔道師というのは契約で動く。単なる口約束では動かないんだ」
荒田:「そ……そんな……!」
稲生:「だからよく『魔道師は嘘つき』って言われるんですね。だから口約束は絶対にせず、契約書を交わし……。!?」
稲生が何かに気づいたような顔をした。
マリア:「どうした?」
稲生:「もしかして、『3時の魔道師』も、誰かとの契約で動いてるんですかね?」
マリア:「あ……!」
イリーナのように半分世に出てガッツリ稼ぐ者もいるが、中には裏社会に溶け込んだまま手堅く稼ぐ者もいる。
エレーナを狙った“魔の者”が、アメリカのマフィアのボスに憑依しているという情報を与えたのも、そういう魔道師だ。
裏社会に溶け込んでいるだけあって、なかなかイリーナ組の前に現れることはない。
アナスタシア組も似たような仕事はしているが、それにも関わらず、堂々と表社会にも出て来れる稀有なグループである。
マリア:「契約の内容を調べてみよう」
稲生:「調べられるんですか?」
マリア:「ダンテ一門の門規には、交わした契約の内容は門内に公表しなければならないことになっている」
稲生:「いいんですか?」
マリア:「そうすることで、門内の他の仲間が妨害してくることの無いようにする為だ。後で糾弾されても、『知りませんでしたw』と言い逃れできないように」
稲生:「なるほど。……って、正式な契約の内容だったとしたら、下手すりゃ僕達、妨害することになるんじゃ?」
マリア:「こんなティーンエージャー2人を殺すような契約が、正式なはずなもんか!」
マリアは水晶球を机に置いて、その上から手を翳した。
マリア:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ。直近における門内全ての契約内容を照会……」
と、その時だった!
パァーン!
マリア:「きゃっ!」
稲生:「うわっ!!」
荒田:「!!!」
突然、水晶球が破裂した。
稲生:「大丈夫ですか、マリアさん!?」
マリア:「あ、ああ……」
マリアの右腕に、水晶球の破片が刺さっていた。
稲生:「い、今抜きますから!」
だが、それを制する者がいた。
ミク人形とハク人形である。
彼女らは人形形態から人間形態に変化し、テキパキとマリアの手当て行った。
マリアのローブの中には回復薬が入っており、これはエレーナからもらった液体のものだが、これを傷口に振り掛けると、たちどころに傷口が塞がって行った。
稲生:「さすがポーリン組だな」
マリア:「どうやら、本当に正式な契約のものらしい……」
稲生:「ええっ?」
マリア:「ただ、契約内容を公表せよという掟がある以上、それを仲間内が閲覧するのは自由ということになっているということでもある。それを妨害したということは……」
稲生:「掟違反を先にやったのは向こうということですね?」
マリア:「そうだな。いい加減、ここに来て事情でも話したらどうだ?」
マリアは会議室のドアの方を見て言った。
稲生:「!」
すると、入った時に閉めたはずの入口のドアが僅かに開いていた。
稲生:「どういうことだ?」
稲生はドアを閉めに行こうとした。
稲生:「わっ!?」
ドアを閉める際に廊下に視線をやるわけだが、そこに誰かがいた。
それは、2つのギョロリとした目玉。
……のように見えたのは、それ以外の姿が黒ずくめだから、暗い廊下に溶け込んでいただけのことだろう。
稲生:「さ、『3時の魔道師』!?」
そいつは全速力で逃げ出した。
稲生:「待てっ!!」
稲生は急いでそいつを追った。
『3時の魔道師』と思しき者は、もう既に廊下の角を曲がろうとしていた。
このような動きは、人間では有り得ない。
稲生もまた廊下の角を曲がった。
そこは階段とエレベーターのある所だった。
3階と屋上へ行く階段と、1階と地下1階へ下りる階段。
エレベーターは合宿所として改築された際、バリアフリーの一環として設置されたもの。
そして何と、そのエレベーターが動いていた。
エレベーターは屋上へ向かっている。
1:階段で屋上へ向かう。
2:エレベーターで屋上へ向かう。
3:マリア達を呼んで来る。
4:あえて1階へ向かう。
(※ストーリーも終盤に差し掛かって来ましたので、1つ以外は全てバッドエンドに繋がります)
尚、バッドエンドは荒田にやらせること。
それはどうしてかを説明してしまうとネタバレになってしまうので、ここでは申し上げません。
尚、マリアや人形達にやらせようとすると、荒田がどうしても稲生にやって欲しいと懇願するので、また元の選択肢に戻るだけです。
さて、また選択肢が出てきました。
これは夢の中で『3時の魔道師』たる私が、稲生達から逃げる際に使った手口をそのままネタにしたものです。
そうなんです。『3時の魔道師』ネタは、夢の中でのアクション劇が元ネタです。
ヒントを言いますと、『3時の魔道師』はエレベーターに乗っていません。
ただ単に、エレベーターを屋上へ動かしただけです。
では、『3時の魔道師』はどこに行ったのでしょうか?
『3時の魔道師』を逃がさない選択肢を選んでください。
お疲れ様です。
1・・・?
何だか文字化けしやすいので、数字の表示方法を変えてみました。
もう更新しちゃいましたが、答えは4でしたね。
階段で屋上へ向かおうとすると、屋上へのドアがロックされているのに気づきます。
ドアノブをガチャガチャやってる間に、『3時の魔道師』に後ろから刺されて殺されてしまいます。
エレベーターで向かおうとすると、エレベーターに乗り込む際、後ろから刺されます。
マリア達を呼びに行こうとすると、無限廊下に閉じ込められてバッドエンドです。