報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“アンドロイドマスター” 前回の続き

2014-01-15 19:37:12 | 日記
[同日21:00.金沢市内のホテルのロビー 敷島孝夫&エミリー]

 敷島は平賀に電話していた。
{「そうですか。解析不能で……」}
「向こうも想定してたんでしょうなぁ、バージョンの行動履歴など解析しようとすると、ブロックが掛かるんですよ」
{「本部には精鋭がいるから、そこに送って解析してもらうしか無いですね」}
「ま、そういう結論になりました」
 敷島は溜め息を吐いてから、
「いっそのこと、“ぜんまい仕掛けの子守唄”作戦を久しぶりにやりたいくらいですよ」
{「ミクに電気信号を歌に変換したものを歌わせて、バージョン・シリーズの出所を探るヤツですか?」}
「昔、ウィリーの潜伏先を探す為に立てた作戦です。まあ、結局は十条理事が知っていたから、そこまではやりませんでしたがね。シンディが結構しゃしゃり出て来たのも大きかったですが……」
{「あ、思い出した!確か、ミクが何故か“千本桜”を歌い出して、却ってバージョン達を暴れさせたアレですね!?」}
「ギクッ!」
{「敷島さん、どうしてミクが“千本桜”歌い出したんですか?」}
「いっ、言えない……!選曲、入力ミスったなんて……」
{「はあ!?何で!?」}
「えっ、えー……まあ、その……まだ私も駆け出しのプロデューサーだったもんでぇ……。あの時はまだボカロはミクしかいませんでしたし、ミク自身もまだ“指示待ち”ロボットでしたから……」
{「だからそれって、敷島さんの……!まあ、もう過ぎたことですけど」}
「だからミクを借りて、再び歌ってもらえばいいんですよ。ミクが1番相性がいいんでね」
{「でも、数値自体はリン・レンもいい所まで行ってますよ?」}
「まあ、その辺も視野に入れて……。ミクが1番の売れっ子ですから、確かにすぐにレンタルするのは難しいかもしれない。それだったらまだ、スケジュール的に余裕のあるリン・レンの方がいいかもしれませんね」
{「ええ」}
 敷島がそんな電話をしていると、エミリーがある物を見つけた。
「……じゃ、そういうことで。……ええ。失礼します」
 敷島は電話を切った。
「敷島さん」
「ん?」
「あのピアノ、弾いても・よろしいですか?」
「ピアノ?」
 ロビーの片隅には、白く塗られたグランド・ピアノが置いてあった。自動演奏機能付きのようだが、今は音楽を奏でていない。
「“ぜんまい仕掛けの子守唄”、私・弾けます」
「ピアノ独奏で、効果あるかなぁ……」
 敷島は首を捻った。
「まあ、“人形裁判”も“千年幻想郷”も“明日ハレの日、ケの昨日”もピアノ曲で効果があったからな……」
 敷島はフロントに行って、交渉してみた。
 意外とあっさりOKだった。
 エミリーはピアノの前に座り、ピアノを弾き始めた。
「ほお……」
 確かに昔、ミクが歌っていたものと同じだ。マルチタイプは何でもできるのだが、歌までは歌えない。歌えない代わりに、ピアノを弾く。
 南里研究所にもアップライト・ピアノがあって、エミリーはそれをよく弾いていたし、ボーロカイド達がそれに合わせて歌うこともあった。
(でも、これでどのくらい効果があるんだろう?)
 やはり敷島は首を傾げた。

「エミリー。他にも3曲弾いとけ。寝込みをバージョン・シリーズに襲われてもつまらん」
「イエス」
 敷島の指示に、エミリーはボカロ曲ではない、バージョン達を追い払う曲を弾いた。

[1月3日09:00.十条家 敷島、エミリー、十条、キール]

 翌日になり、敷島はエミリーを伴って再び十条家を訪れた。
「新しい人工降雪機の調子が悪くての、まだ改良の余地が必要じゃな」
「今年は雪不足の予報も出ていないのに、必要あるんですか、それ?」
 敷島が突っ込むと、
「バカモン。赤道直下で雪を降らせる実験じゃぞ?」
「いや、だからそれは意味が……」
 仮に砂漠地帯で必要とされるものは降雪機よりも、むしろ降雨機の方だろう。
「それで、今日は何の用じゃ?」
「昨日のバージョンの行動履歴ですが……」
「何度やっても同じじゃよ。まだ、財団に送っておらん。向こうさんも、5日までは正月休みじゃろう」
「今ちょっとやってみませんか?」
「なに?」
「実は昨日、エミリーに“ぜんまい仕掛けの子守唄”を弾かせたんです。ちょうど良く、ホテルにピアノがありましてね」
「ピアノで効果があるのかね?ボーカロイドの、それも初音ミクが歌ってこその効果じゃと聞いたぞ?」
「まあ、一応……」
「まあ良い」

 家の中に入り、十条と敷島は書斎に入った。そこのパソコンで、昨日のバージョン3.0から抜き取ったUSBメモリーを差し込み、行動履歴を検索する。
 キールは台所に行って、お茶出しの準備。エミリーはバージョン・シリーズの襲来を警戒した。
「やっぱりダメじゃな。ブロックが掛かっておる」
「うーん……」
 具体的にはパスワード入力とか、そんなものではなく、画面に意味不明の数字や文字、記号の羅列が表れるのだ。
「困ったな。ミクは今月いっぱい仕事が入ってるし、リン・レンも、今月から海外レコーディングに行ってるし……」
「むっ!?」
 画面をスクロールさせていた十条が、何かを見つけた。
「はい?」
「これ!見たまえ」
「えっ?」
 十条が着目した文字。それを画面中央に持ってくる。
「人名が出てきおった」
「……Zelda Forest?ゼルダ・フォレスト?誰ですか?この、任天堂のゲームに出てきそうな名前は?」
「いや、普通に英語圏の女性の名前じゃぞ?知らんな。フォレストというからには、ウィリーの血族ではないかと思うが……」
 ウィリーの本名はウィリアム・フォレスト。つまり、フォレストは名字である。
「しかし、ウィリーもまた南里所長と同じで、生涯独身で身寄りも無かったんでしょう?」
 なので、シンディに虐殺されたウィリーは無縁仏として都内の墓地に埋葬されている。
「そのはずなんじゃがなぁ……。ただの偶然か?しかし、それにしては……」
「後で、調べてみましょうか」
「うむ……」

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 リメイク版の続編なのでエミリーはピアノを弾いているが、前作のオリジナル版ではトランペットを吹いている。別にトランペットでもいいんだろうけど、あまりトランペットに合わせて歌うというイメージが湧かなかったため、リメイク版ではエミリーはピアノを弾き、それに合わせてボカロが歌うシーンが増えている。

 ※1月17日、誤字を修正。
 

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