報恩坊の怪しい偽作家!

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“ユタと愉快な仲間たち”より、ボツネタ公開

2013-11-16 21:59:14 | 日記
 実は先立って公開したネタの続きだったりする。

[18日 11:00.日蓮正宗東京第布教区・正証寺(稲生ユウタの所属寺院名)]

「車の修理代は、請求書を送ってくれれば、振り込んでおく」
「頼んだよ」
「……威吹!」
 珍しい光景だ。長野県内の広大な森の奥にひっそりと佇む屋敷に1人で住む魔道師が、わざわざ東京まで出てくるとは……。ユタはそう思った。
 威吹はマリアに対して敵意を隠し切れないでいるため、何度も刀を抜こうとしている。その度に、ユタが制止した。
 ユタとしてはマリアがこうして来ているのだから、無益な戦いはしたくないというのが本音だ。
 藤谷の場合は車の修理代を弁償してくれればそれで良いという考えのようだ。
「『はつねみく』こと、“ミカエラ”を返してもらおうか」
 元々はミカエラという名前だったらしい。それをユタが勝手に初音ミクと名付けたのだ。人形としては、そっちの名前が気に入ったらしく、ミクを名乗っている。
「あいよ」
 でろーんと、藤谷はズタボロになったミク人形を差し出した。
「……よくもまあ、こんなにリンチして……!」
 ギリッとマリアは怖い顔して歯軋りしたが、多くはマリア側に責任があるので、それ以上のことは言わなかった。
 ミク人形本人が高いプライドを持っているように、本来は破棄しないはずの人形であった。もし仮にこんな事件とは関係無く、一方的に威吹達が危害を加えたのならば、マリアは絶対に許さなかっただろう。何しろ初対面の時、無粋な対応をした威吹を追い出したくらいだ。
「ま、とにかくこれでチャラってことでいいな」
 藤谷はそれでいいだろうが……。
「フン……」
「それにしても、どうやって長野からここまで?」
 ユタが疑問を投げかけた。
「私は魔道師。以上だ。言っておくが、ホウキに跨って来たわけでも、黒い鳥に運ばれたわけでもない」
「そうですか」
 しかし、威吹は見破っていた。
「けっ。先行してきた師匠を追って来ただけだろーが。キサマのお師匠様は、トボけたこと言ってただけで、何もしなかった。だからお前が尻拭いに来た。そうだな?」
「そうだ。悪いか?」
「このクソ女、いけしゃあしゃあと……!」
「威吹、やめなって!」
「そんなこと言ったって、ユタ!こっちはね、班士3名を半死半生状態にされたんだ!」
「治療費なら、後ほど請求してくれれば振り込んでおく」
「こいつ……!」
 しれっとした態度に威吹、キレかかる。
「威吹君、外に出て少し頭冷やそうや。さすがに御本尊様の御前で、刀傷沙汰は勘弁だ」
「班長、お願いします」
 藤谷は威吹を連れ出そうとした。しかし、
「触るな!ユタ以外、汚らわしい!!」
 素直に従わないので、藤谷が取った行動は……。
「うげっ!」
 予備の数珠を威吹の首に掛けて、引っ張って行くという荒技に出た。
 御開眼を受けた数珠を首に掛けられた威吹は抵抗できずに、ズルズルと境内の外へ連れ出されてしまった。
「ここの宗派も、怖いな」
 と、マリア。マリアはズズズと出されたお茶を啜った。
「妖怪に対してだけですよ。本当の正しい教えだからこそ、こういった末寺でも妖怪は入れないのです」
「いや、入ってるだろ」
「! 本当だ。あれ?」
「まあ、細かいことは気にしない方がいいんじゃないか?」
「マリアさん……」
「師匠はここに来て、何をしていった?」
「言わないとダメですか?」
「ダメということはないが、せっかく来たのだから教えてほしい」
「その人形の背中……」
「ぜんまいが無い」
「ええ。ぜんまいだけ外して、持って行ったんです」
「……そうか」
「それだけなんですよ。『あとは優秀な弟子が建設的な話をしに来るからよろしくちゃん』って」
「よろしくちゃん、じゃないし……」
「マリアさん、ミクのぜんまいって何かあるんですか?」
「……何も無い」
「…………」
「いや、あるにはあるのだが、ここでは言えない」
「???」
「だがもし、私の質問に答えてくれるのなら、詳しく話をしてもいい。どうだ?」
「は?はあ……。何でしょう?」
「師匠は本来、ヨーロッパに行くはずだった。だが急遽、予定を変更して東北地方へ向かったという」
「東北へ?」
「稲生氏。あなたと関わりのある所だ」
「ま、まあ、確かに、前の実家が東北にありましたけど……。それが何か?」
「案内してくれないか。多分、師匠もそこに向かったはず」
「はあ?いや、それはムリですよ」
「何故だ?」
「今は無いからです」
「!?」

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1 コメント

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つぶやき (作者(ユタ))
2013-11-16 22:49:10
 仙台なう。
 ボツネタなので、途中で切れる恐れ大。
 因みに日蓮正宗に、東京第3布教区は存在しません。ま、弘通が進んで、都内に寺院が倍増すれば有り得る話です。あくまで、フィクションです。
 マリアが稲生達の寺院に来たのは、そこだと藤谷共々再会しやすいからです。

 マリアのモデルは東方Projectに出てくる魔法使い、アリス・マーガトロイド。
 こちらも無口な性格なのだが、稲生ユウタみたいな相手だと話し易いのか、彼の前だと結構セリフが多いですね。
 藤谷もそれに気づいて、威吹の連れ出しを稲生ユウタにやらせず、自分でやったのでしょうね。
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