報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「帰京の旅」

2022-08-08 19:56:32 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[7月15日19:00.天候:雨 栃木県日光市大原 東武鉄道鬼怒川温泉駅→東武鬼怒川線1158列車3号車内]

 緑之花園妄想苑を脱出した稲生達は、駅近くのコンビニでトラックを降りた。
 マリアはコンビニのトイレを借り、そこで予備の下着を装着した。
 ここで色々と食べ物を買っておく。
 駅の売店は、もう夕方を過ぎると閉店してしまうからだ。
 それから駅に向かうと、雨が降って来た。
 しかも、時折雷鳴が聞こえて来る。
 “魔の者”がついに勇太達に警戒心を露わにしたのかとも考えらるし、単なる季節的なゲリラ豪雨とも考えられる。
 いずれにせよ、電車の運行に支障は無いようだ。
 魔道士のローブを羽織り、フードを被れば雨は凌げる。
 そして、どうにか駅に辿り着いた。

 勇太:「最終の特急には間に合ったけど、席が空いているかどうか……」

 特急券のキップ売り場に行くと、デジタルサイネージ式の空席情報が表示されている。
 どうやら最終列車は、まだ空席があるようだ。
 ここで、浅草駅までのキップを2枚買う。
 もちろん、ここでもイリーナのカードを活用させてもらった。

 マリア:「何だか疲れたなぁ……」

 キップを手に待合室に移動し、そこの椅子に座ると、マリアは大きな溜め息を吐いた。

 勇太:「どうせワンスターホテルに一泊することになるから、着いたらすぐに休もうか。浅草駅からは、タクシーに乗ればいい」
 マリア:「その方がいいな」

 手持ちのスマホのネットニュースを見ると、緑之花園妄想苑が爆発・炎上したことが速報で流れていた。
 消防が懸命の消火活動を行っているらしい。

 勇太:「最後までケンショーの施設は迷惑なものだ」
 マリア:「本当だね」

 待合室でしばらく待っていると……。

〔「お待たせ致しました。1番線の19時29分発、特急“リバティきぬ”158号、浅草行き、車内の清掃・整備が終わりましたので、乗車を開始致します。どうぞ、ご乗車ください」〕

 という放送が流れた。

 勇太:「それじゃ、行こうか」
 マリア:「うん」

 2人は席を立ち、自動改札機を通過した。
 今日最後の上り特急列車は、改札口から1番近い1番線に停車している。
 改札内コンコースからホームまではスロープになっており、階段の昇り降りは無い。

 勇太:「たったの3両編成か……」

 コロナ禍によるものなのか、利用者が減ったことで列車本数のみならず、編成も短くなってしまった。
 指定されたのはそのうち、1番後ろの車両。
 そこに乗り込み、進行方向左側の席に座る。

〔♪♪♪♪。ご案内致します。この列車は19時29分発、特急“リバティきぬ”158号、浅草行きです。停車駅は東武ワールドスクウェア、下今市、新鹿沼、栃木、春日部、北千住、とうきょうスカイツリー、終点浅草の順に止まります。……〕

 たった3両編成の特急では車内販売は無いようである。
 コンビニで買った食べ物をテーブルの上に広げるが、肝心の飲み物を買っていないことに気づいた。
 まだ発車まで時間があるので、ホームの自販機に行って買って来ることにする。

 勇太:「多分、ただのゲリラ豪雨だね」
 マリア:「どうして、そう思うの?」
 勇太:「外が少しヒンヤリしてる。ゲリラ豪雨の特徴だからね」
 マリア:「そうか……」

 それと、また忘れていることがある。

 勇太:「エレーナに連絡して、今日泊まると伝えておかなくちゃ」
 マリア:「ああ、そうだね。そうして」
 勇太:「了解」

 勇太はスマホを取り出すと、それでエレーナにLINEを送った。

 マリア:「なるべくエレーナのは、ブロックしてもらいたいものだけどね」
 勇太:「ま、まあまあ。取りあえず、連絡OKだ。部屋、確保してくれるって」
 マリア:「そうか」

[同日19:29.天候:雨 東武鬼怒川線1158列車3号車内]

 発車の時間になり、ホームから発車メロディが聞こえて来る。
 東武ワールドスクウェアのテーマソングを、発車メロディ用にアレンジしたものらしい。

〔「本日最終の浅草行き、特急“リバティきぬ”158号が発車致します。ドアが閉まります。ご注意ください」〕

 全車両指定席の特急列車では駆け込み客も少なく、列車はダイヤ通りに発車した。
 この後は、線内折り返しの各駅停車しか運転されない。

〔♪♪♪♪。本日は東武鉄道をご利用頂きまして、ありがとうございます。この列車は特急“リバティきぬ”158号、浅草行きです。【中略】次は東武ワールドスクウェア、東武ワールドスクウェアです〕

 列車は雷雨の中、単線の線路を進む。

 勇太:「今回、マリアがスパッツを穿いていったのって、予知か何か?」
 マリア:「多分ね。シックスセンスとも言うかな。まあ、相手があの横田だから、セクハラ攻撃はしてくるだろうとは思っていたから」
 勇太:「なるほど、そうか」

 宴席に呼ばれるコンパニオンも、下着は重ね着して行くのだという。

 勇太:「もしもスパッツを穿いて行かなかったら、どうなったんだろうね?」
 マリア:「2回目の下着要求が、ブラ寄越せだったかもしれない」
 勇太:「うあ……!」

 そうなるとマリアは、1度上を脱がないといけない。
 ホックの付いていないスポブラのデメリットである。
 ヘタすると最悪、裸の上半身を横田に見られたかもしれないのだ。
 なので一応、最悪の事態は避けられたということになる。

 マリア:「もしもまた会った時はボコす」
 勇太:「僕も手伝うよ」
 マリア:「……勇太はいいや」
 勇太:「どうして?」

 するとマリア、変な顔して勇太を見据える。

 マリア:「アンタもたまに、私のショーツを持ち去ったりするだろう?」
 勇太:「! す、スイマセンでした……」
 マリア:「私の体調が悪い時に相手できないのは申し訳無いから貸してあげるけど、使ったらちゃんと洗って返してよ?」
 勇太:「はい……」

 日も暮れてゲリラ豪雨が降る中、電車は一路東京・浅草へと向かった。

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