報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「Yagiyama Zoological Park」

2019-07-03 21:28:42 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月20日10:10.天候:晴 宮城県仙台市太白区八木山本町 仙台市地下鉄八木山動物公園駅]

 青葉山駅を出た電車は仙台屈指の自殺の名所竜の口渓谷を渡ると、再びトンネルの中に入った。

〔「本日も仙台市地下鉄東西線をご利用頂きまして、ありがとうございました。まもなく終点、八木山動物公園、八木山動物公園です。お出口は、左側に変わります。ホーム進入の際、ポイント通過の為、電車が大きく揺れる場合がございます。お立ちの際は吊り革、手すりにお掴まり下さい」〕
〔八木山動物公園、八木山動物公園、終点です。お出口は、左側です。お忘れ物、落し物の無いよう、ご注意願います。本日も仙台市地下鉄をご利用頂き、ありがとうございました〕

 稲生:「地下鉄を起点から終点まで乗り通すの、久しぶりだなぁ……」
 マリア:「勇太、他にもあるの?」
 稲生:「ありますよ。東京メトロ東西線も、中野から西船橋まで乗り通したことがありますよ。威吹と一緒に」
 マリア:(無理やり付き合わされたんだろうなぁ……)
 ルーシー:(私にはできない……)

 今度は札幌市地下鉄東西線にチャレンジしたいそうである。

〔八木山動物公園、八木山動物公園、終点です〕

 ドアが開くと稲生達は電車を降りた。

 稲生:「この駅は『日本一高い場所にある地下鉄駅』ということでも有名なんですよ」
 マリア:「明らかにトンネルの中だぞ、ここは」
 稲生:「確かにホームは地下階にありますが、そもそも1階が海抜0メートルにあるとは限らないわけです」
 マリア:「するとこのホームは……」
 稲生:「ここ、海抜136メートル地点ですよ」
 ルーシー:「全然地下じゃないね」
 稲生:「そういうことです」

 要は地下トンネルではなく、山岳トンネルということ。
 実際、ホームから改札階に上がるエレベーターにも動物の絵と共にそのように書かれている。

 稲生:「動物園に行く前に、標高を楽しんでみましょう」

 この駅には『てっぺんひろば』という場所がある。
 階層的には5階に当たり、こちらにも『日本一標高の高い地下鉄駅 八木山動物公園駅』の文字が展望台に掲げられている。
 夜は市街地の夜景が拝めるということもあり、ちょっとしたデートスポットにもなっている。

 ルーシー:「標高136メートルか。初心者のホウキ乗りの高度みたいね」
 マリア:「ホウキ乗りの試験、100メートル以上上がれないと失格だっけ?」
 ルーシー:「あまり高度が低いと失速する恐れがあるからね。100メートルでも低いくらいよ」
 稲生:(そういえばエレーナ、今度は『東京スカイツリー越えにチャレンジする』とか言ってたっけ……)

 東京タワー越えと都庁越えには成功したようである。
 どうして大騒ぎにならないのだろう?
 一応ここでも記念撮影をする魔女達だった。
 尚、この2人はホウキ乗りではない(ルーシーは特別講習で、一応教わっている)。

 稲生:「それじゃ、早速入園しましょう」

 ここで稲生達、とんでもない事実に気づく。

[同日19:00.天候:晴 宮城県仙台市青葉区中央 JR仙台駅]

 イリーナ:「思わず、ついつい買っちゃったねぃ……」
 ベイカー:「さすがにルーシーに呆れられるわよ。まあ、殆どが空輸にしたからそっちに迷惑は掛けないわ」
 イリーナ:「さすがは私の先輩」
 ベイカー:「さて、そろそろ弟子達が来る時間帯よ」

 イリーナはローブの中から金色の懐中時計を取り出した。
 宗一郎が稲生や威吹に送ったそれは和風の装飾が施されているが、こちらはラテン語がびっしりと刻まれたものだ。

 イリーナ:「そうね」

 そして、時間通りに稲生達がやってきた。
 しかし、その表情は皆複雑なものだった。

 イリーナ:「どうしたの?」

 目を細めていたイリーナが、その目を開いた。

 稲生:「……ヤンヤンヤヤー♪八木山の〜♪ベニーランドででっかい夢が♪はずむよ〜♪はねるよ〜♪ころがるよ♪……」
 イリーナ:「な、なに?」

 仙台市民なら絶対に歌えなければモグリとさえ言われる、『八木山ベニーランドのテーマソング』を稲生は口ずさんでいた。
 尚、これのフルコーラスがこれ。

 https://www.youtube.com/watch?v=JavZBvrbVzI

 尚、さすがにフルコーラスを知っていれば上級者であるという。

 ルーシー:「とんだ御破算ですよ!!」
 ベイカー:「何かあったの?」
 稲生:「八木山動物公園、月曜日は休園日でした」
 マリア:「通りで電車も駅前も空いてると思ったよ!」
 イリーナ:「あらまあ……」

 しょうがないので、遊園地である八木山ベニーランドに行ってみたそうである。

 イリーナ:「ええっと……。それじゃ、最後のアトラクションに乗ってみましょうか」
 稲生:「新幹線ですね。こちらは既に押さえております」

 稲生は全員分の新幹線のキップを取り出した。

 稲生:「先生方はグリーン車です。僕達は普通車です。それでいいですね?」
 マリア:「妥当だと思う」
 ルーシー:「やっぱり“はやぶさ”じゃないんだ」
 稲生:「すいません。“はやぶさ”は混んでて、人数分取れそうに無かったんですよ。“やまびこ”は空いていたので……」

 しかも各駅停車タイプ。
 これなら確かに空いているだろう。
 駅を豪快に通過して行くシーンは拝めないが、しかし車両はE5系だ。

 稲生:「取りあえず、行ってみましょう」
 イリーナ:「お腹が空いたね。何か駅弁買っていきましょうか」
 ベイカー:「日本の駅弁は美味しいわね。是非ともまた食べてみたいところだったのよ」
 イリーナ:「勇太君?」
 稲生:「あ、はい。仙台駅の駅弁は、種類が日本で最も多いことで有名です。売店はラチ内コンコースの中にあるので、早速入ってみましょう」

[同日19:17.天候:晴 JR仙台駅・新幹線ホーム]

〔14番線に停車中の電車は、19時17分発、“やまびこ”220号、東京行きです。グランクラスは10号車、グリーン車は9号車、11号車です。自由席は1号車から3号車と12号車から16号車です。この電車は、各駅に止まります。……〕

 そう、後部にE6系を連結したフル編成である。
 恐らく、間合い運用だろう。
 本来なら、“はやぶさ”と“こまち”で運転されるべき編成なのだが、列車番号220Bは“やまびこ”として運転される。

 ルーシー:「……!」

 ルーシーはE6系の車両にも目を見開いて写真を撮ったり、車内に入ったりしている。

 ベルフェゴール:「ふふ……。赤はボクの嫌いな色だ。やはり色は目に優しい緑に限る」

 いつの間にか現れた、マリアの契約悪魔ベルフェゴール。
 相変わらず、英国紳士のコスプレをしている。

 マリア:「そんなこと言ったら、ベルゼブブにブッ飛ばされるぞ」
 稲生:「赤はベルゼブブの色なんですね」
 マリア:「今、ベルゼブブと契約しているのって誰だろう?」

 イリーナとベイカーは9号車のグリーン車に乗り、弟子達は隣の8号車に乗り込んだ。

 稲生:「往路のE2系“やまびこ”よりもシートピッチが広いんですよ。で、座席にはピロー付き」
 マリア:「なるほど。この前乗った東海道新幹線と同じくらいだな」
 稲生:「そうです。シートピッチはどちらも107cmです」

 因みにE2系は98cmである。
 3人は発車の時間が迫るまでホームにいて、壮大な発車メロディが流れる頃、車内に入った。
 そして、列車は定刻通りに発車した。

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