報恩坊の怪しい偽作家!

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“大魔道師の弟子” 「7月8日」 昼間

2017-07-31 19:09:24 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[7月8日10:00.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 イオンモール与野]

 マリア:「どう?」

 マリアが試着室から出てくる。

 イリーナ:「おお〜」
 稲生:「おお〜」

 緑を基調としたビキニの水着を着たマリアがいた。

 イリーナ:「いいじゃんかー。よく似合ってるよ」
 マリア:「ありがとうございます。ユウタは?」
 イリーナ:「目のやり場に困ってるよw」
 マリア:「ええっ?」
 稲生:「あ、いや、その……」
 マリア:「師匠も買ったらどうですか?」
 イリーナ:「年寄りを溺死させる気かい?弟子の下剋上って怖いねぇ……」
 稲生:「そういう意味じゃないと思いますけど……」
 イリーナ:「アタシゃいいよ。じゃ、それ買ってあげるから、さっさと着替えてー」
 マリア:「はーい」

 シャーッとカーテンを閉めるマリア。

 稲生:「本当にいいんですか、先生?」
 イリーナ:「うん。アタシ、泳げないし」
 稲生:「そうなんですか!?」
 イリーナ:「水の上を歩くのは得意なんだけどねぇ……」
 稲生:「そっちの方が凄いです。……モーゼの十戒みたいなこともできそうですね」
 イリーナ:「いや、あれはさすがにアタシでも無理。ってか、それ映画の話であって、本当に海が割れたわけじゃないからね」
 稲生:「ええっ!?」
 イリーナ:「……あ、ゴメン。夢壊した。……海を割る魔法はダンテ先生や、バァルの爺さんくらいならできるかもね」
 稲生:「なるほど」
 イリーナ:「てか、海を割るより、魔法で海の上を歩かせた方が労力は安いんだけど……。あ、ゴメン。また夢壊した」
 稲生:「いえ。少なくともモーゼの十戒に魔道師が関わっていないことは、先生の発言で明らかになったということです」
 イリーナ:「おおっ、そういうことになるか。さすがだね」

 着替えて出て来たマリアは、いつもの服装だった。
 ローブを羽織って、フードを被っている。

 マリア:「着替え終わりました」
 イリーナ:「じゃ、行きましょう」

 海でも行くのかと思うだろうが、あいにくながら埼玉県にも長野県にも海は無い。
 マリアの屋敷の地下にはプールがあり、そこで泳ぐのに使う。
 泳ぎを習う際は、何故か稲生が調達してきたスクール水着(それも旧式スク水)を着させられるのだが、プライベートで泳ぐ際は今買ったのを着るわけである。
 改めて買った理由は、前に着ていたのがサイズが合わなくなったから。
 何だかんだ言って、マリアも少しは体が成長しているということだ。
 契約悪魔のベルフェゴールは出し惜しみしていたらしいが、稲生が将来一人前になったら契約するであろうアスモデウスが、もっと稲生にマリアに対する性欲を持たせる為にけしかけたとされる。

 イリーナ:「じゃ、次は服と靴かね?」
 稲生:「そうですね」
 マリア:「いいんですか、師匠?私の私物なのに、お金出してくれて……」
 イリーナ:「弟子の成長に、先生がそれを惜しまなくてどうするの。私のこの体が朽ちる前に、私の後継者になってくれればいいのよ」
 マリア:「師匠……。取りあえず、いつでもどこでも寝れるように努力します」
 イリーナ:「せんでいい」

[同日11:30.天候:晴 イオンモール与野]

 マリア:「むふぅ……」
 イリーナ:「だいたい、こんな所かな」

 両手に大きな買い物袋を提げたマリアがホクホク顔をしている。

 稲生:「じゃあ、取りあえず家に戻ります?それとも……」
 イリーナ:「そうねぇ……。どうせまた駅に行くんだから、もう先に駅のコインロッカーに置いて来ちゃおうか」
 稲生:「分かりました」

 稲生達は駐車場の一画にあるタクシー乗り場に向かった。

 稲生:「すいませーん、乗りまーす」

 爆買い(?)客に気づいた運転手がリアドアだけでなく、トランクも開けた。
 そこに買ったものを入れる。

 稲生:「大宮駅までお願いします」

 稲生は助手席に乗り込んで行き先を告げた。

 運転手A:「はい、ありがとうございます」

 夏の日差しが照り付ける中、黒塗りのタクシーが走り出した。
 車もエアコンの冷房を入れないと厳しい季節になった。

[同日11:45.天候:晴 JR大宮駅西口]

 タクシーが西口のタクシー乗り場に到着する。

 イリーナ:「はい、これ」

 イリーナがプラチナカードを取り出した。

 稲生:「あっ、すいません。カードで払います」
 運転手A:「はい、ありがとうございます」

 稲生がカードで支払っている間、マリア達は車を降りて、トランクの中の荷物を出している。

 マリア:「日本の夏はジメジメしてて暑いですね」
 イリーナ:「これも“魔の者”の攻撃から退避する為よ。日本海があるおかげで、奴らもここまでは直接攻撃できないしね」
 マリア:「そうですね」
 稲生:「それじゃ、上にコインロッカーがありますので」
 イリーナ:「ういっス」

 エスカレーターを使って2階に上がると、コインロッカーがある。
 最近はSuicaで支払いのできるタイプが普及し出してきた。
 そこに買った物を入れておく。

 マリア:「ほとんど私の買ったものばかりなのに、申し訳無いな」
 稲生:「いえ、いいんですよ」

 稲生のSuicaを使用した。
 これでロックが掛かる。

 稲生:「それじゃ、次に行きましょう」
 マリア:「うん」

 西口から外に出て、駅前通りに向かう。

 稲生:「いたいた。やっぱり行き慣れた所に行くのがベストですよねぇ」
 マリア:「まあ、それはそうかも」

 通りに停車している1台のマイクロバスに乗り込む。

 稲生:「お願いします」
 運転手B:「はい、どうぞ」

 乗り込むと3人は後ろの席に座る。

 イリーナ:「じゃ、アタシゃ寝るから着いたら起こしてー」
 稲生:「は、はい」

 送迎用のマイクロバスの座席はリクライニングシートではなく、固定シートだ。
 それでもイリーナはローブのフードを被ると、窓に寄り掛かって目を閉じた。

 マリア:「私もこれくらいできるようにならないと、師匠の後継者として無理らしい」
 稲生:「ええっ?……そりゃ、かなり高いハードルですねぇ……」
 マリア:「うん……」

 発車時間になると、

 運転手B:「はい、発車しまーす」

 自動ドアが閉まって、バスが出発した。

 稲生:「週末だから賑わってますね」
 マリア:「うん」

 バス車内も殆ど座席が埋まっている状態である。

 稲生:「さすがに悪魔達はついて来ないか……」
 マリア:「そうだ……うっ!」

 マリアは窓の外を見て、嫌そうな顔をした。

 稲生:「え?何ですか?」
 ベルフェゴール:「ヒュー♪そうは行かないよ!」

 ベンツのオープンカーに乗って、バスと並走する悪魔達がいた。

 稲生:「オープンカーかよ!?どっから持って来た!?」
 マリア:「ユウタ、悪魔と契約するとなぁ……まあ、あんな感じなんだ……」
 稲生:「こんなぶっ飛びなんですか!?」
 マリア:「まあ、色んな悪魔がいるから……」

 マリアと稲生は呆れ、イリーナは何事も無いかのように仮眠モードに入っていた。

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