[7月8日13:00.天候:晴 埼玉県さいたま市郊外 某スーパー銭湯]
送迎バスは無事に温泉施設に到着した。
以前にも来たことがある為、ある程度は勝手を知っている。
マリア:「ふぅ……。It’s so feeling good...」
自動通訳魔法が切れて、最後は英語丸出しのマリア。
マリア:「? 師匠はどこ行った?」
マリアは露天風呂から出ると、内湯に戻った。
マリア:「ん?サウナか?」
マリアはサウナの中に入った。
マリア:「くっ……!暑い……!よくこういう所入れるな……」
確かに、サウナの中にはイリーナがいた。
どうやら、先客の日本人女性と話をしている。
女性客:「……それで、この傷は?」
イリーナ:「これはドイツでスツーカ隊からの機銃掃射を受けた時の物ですわ。まだ残っちゃってますねぇ……」
女性客:「随分おっとりした感じなのに、元軍人さんですか?」
女性客は40歳くらいで、随分と気が強そうな感じだ。
イリーナ:「いえいえ。私は魔道……占い師ですよ?」
女性客:「嘘つかないで!その傷はウクライナで受けたものだとか、そっちはフランス革命とか、そんなデタラメ……」
イリーナ:「いや、でも、マリー・アントワネットは本当に良い御嬢様でしたわよ」
マリア:「師匠の言ってることは本当ですが……」
女性客:「あんた何?」
イリーナ:「あ、このコは私の弟子です」
女性客:「弟子も外人さんなの!」
イリーナ:「ハンガリー生まれのイギリス人ですわ。そうそう。ハンガリーも内戦とかで大変でしたわねぇ。この背中の傷、銃弾をかすった痕なんですのよ」
女性客:「さっき、上海マフィアに撃たれた所とか言ってなかった?」
マリア:「多少記憶が曖昧な所はありますが、師匠の体の傷痕は基本的に本物です」
女性客:「でもこんなことして、ムショに収監とかされたことあるんじゃないの?」
イリーナ:「そうですねぇ。ロシア出身なもので、ドイツ(ナチス)に捕まった時はさすがに死ぬかと思いましたわ。あそこ、死刑前提で収監するんですもの」
第二次大戦中、ドイツとロシアは敵国同士だった。
女性客:「不法入国したの!?で、どうして無事でここにいるの!?」
イリーナ:「それはですねぇ……。私達の大先生がそう望まれたもので」
ドイツが日本より先に降伏した理由って……。
因みにこの時、ダンテ一門は旧ソ連側を推していた。
ドイツ敗戦のドサグサに紛れて脱出したイリーナだった。
女性客:「ちょっとアナタ……タチ悪いわよ……」
女性客は青ざめた顔をした。
その時、ハラリとタオルが落ちてその女性客の裸体がさらけ出される。
その体には、立派な登り竜の入れ墨がされていた。
女性客:「そない強力な組織の妻(おんな)やと知っとったら、ウチもそれなりの筋を……!小指一本で堪忍しておくれやす……!」
そして絶望の顔と涙を浮かべたのだった。
イリーナ:「ええっ?どうして泣くんです?私の失敗談ですから、どうぞ笑ってくださいな」
マリア:「いや、師匠……。師匠の話が面白い云々のレベルじゃないです……。(そのオバハン、ジャパニーズ・マフィアのカポのワイフかと……)」
カポとはカポ・レジームの略で、日本の暴力団の若頭などの幹部のことを言う。
稲生:「うーん……。遅いな、マリアさん達……」
先に上がった稲生は、湯上り所で待ち惚けしていたという。
男性客:「何や、遅いのう……。美幸のヤツ、何やっとんじゃあ……」
稲生:(何か藤谷班長より怖い人がいるから、早く出て来てぇ……!)
[同日13:15.天候:晴 同浴場 食事処]
マリア:「ユウタ!ここ、Japanese Mafiaがいる!」
稲生:「何ですって!?」
マリア:「このままだと、師匠の体の傷痕が増えてしまうよ!」
稲生:「そりゃ大変です!早く先生を安全な所に……!」
イリーナ:「ん?どしたの?早いとこランチにしよ」
マリア:「悠長なこと言ってる場合ですか!さっきのオバハン、Japanese MafiaのCapoのWifeですよ!?」
イリーナ:「うん、そうだね」
マリア:「そうだねって……」
イリーナ:「何か私、謝られるようなことしたみたいだけど、よく分かんないから許しちゃった。で、泣きながら帰って行ったよ。ま、ダンナさんの方は何が何だかワケが分からないって感じだっだけど……」
稲生:「そ、そうですか。帰ってくれましたか……」
マリア:「あのオバハン、立派なドラゴンのタトゥーだった」
イリーナ:「そうそう。それを褒めたのがきっかけだったわね」
稲生:「先生の方から先に話し掛けたんですか……」
マリア:「師匠、あんまりマフィアと関わらない方がいいですよ。エレーナだって、アメリカン・マフィアからマシンガンの銃撃を受けたわけでしょう?」
イリーナ:「まあ、アメリカのマフィアも元を正せばシチリア系って事が多いんだけど……。今や日本のヤクザさんも、コリアン系でしょう?」
稲生:「らしいですね」
イリーナ:「私達は世界の歴史を影から操る者……。その為には、マフィアさえも駒にしなければならない時もあるのよ」
いつもは目を細めているイリーナが、半分だけ両目を開けた。
稲生:「は、はい……」
マリア:「…………」
[同日14:30.天候:晴 送迎バス車内]
運転手B:「はい、発車しまーす」
往路と同じ運転手によるバスに乗り込んで、再び大宮駅を目指す稲生達。
イリーナ:「ちぇっ。リラクゼーション受けて帰りたかったのにぃ……」
マリア:「師匠のせいですよ」
稲生:「あの後、『アネさんを泣かしたのは誰だ!?』と手下達がぞろぞろやってきましたからね。今のうちに脱出です」
稲生はバスの窓を閉めて言った。
幸いバスの客席の窓にはスモークが貼ってあったり、温泉施設の広告がラッピングされていたりと、外から車内はあまり見えないようになっている。
稲生:「取りあえず大宮駅で少し時間を潰して、それから路線バスで移動しましょう。奴らの追跡の目を誤魔化さないと……」
マリア:「そうだな」
イリーナ:「別に、イザとなったらアタシの魔法で何とかするよ?」
稲生:「取りあえず、僕に任せてください」
イリーナ:「ま、お手並み拝見と行こうかね」
送迎バスは無事に温泉施設に到着した。
以前にも来たことがある為、ある程度は勝手を知っている。
マリア:「ふぅ……。It’s so feeling good...」
自動通訳魔法が切れて、最後は英語丸出しのマリア。
マリア:「? 師匠はどこ行った?」
マリアは露天風呂から出ると、内湯に戻った。
マリア:「ん?サウナか?」
マリアはサウナの中に入った。
マリア:「くっ……!暑い……!よくこういう所入れるな……」
確かに、サウナの中にはイリーナがいた。
どうやら、先客の日本人女性と話をしている。
女性客:「……それで、この傷は?」
イリーナ:「これはドイツでスツーカ隊からの機銃掃射を受けた時の物ですわ。まだ残っちゃってますねぇ……」
女性客:「随分おっとりした感じなのに、元軍人さんですか?」
女性客は40歳くらいで、随分と気が強そうな感じだ。
イリーナ:「いえいえ。私は魔道……占い師ですよ?」
女性客:「嘘つかないで!その傷はウクライナで受けたものだとか、そっちはフランス革命とか、そんなデタラメ……」
イリーナ:「いや、でも、マリー・アントワネットは本当に良い御嬢様でしたわよ」
マリア:「師匠の言ってることは本当ですが……」
女性客:「あんた何?」
イリーナ:「あ、このコは私の弟子です」
女性客:「弟子も外人さんなの!」
イリーナ:「ハンガリー生まれのイギリス人ですわ。そうそう。ハンガリーも内戦とかで大変でしたわねぇ。この背中の傷、銃弾をかすった痕なんですのよ」
女性客:「さっき、上海マフィアに撃たれた所とか言ってなかった?」
マリア:「多少記憶が曖昧な所はありますが、師匠の体の傷痕は基本的に本物です」
女性客:「でもこんなことして、ムショに収監とかされたことあるんじゃないの?」
イリーナ:「そうですねぇ。ロシア出身なもので、ドイツ(ナチス)に捕まった時はさすがに死ぬかと思いましたわ。あそこ、死刑前提で収監するんですもの」
第二次大戦中、ドイツとロシアは敵国同士だった。
女性客:「不法入国したの!?で、どうして無事でここにいるの!?」
イリーナ:「それはですねぇ……。私達の大先生がそう望まれたもので」
ドイツが日本より先に降伏した理由って……。
因みにこの時、ダンテ一門は旧ソ連側を推していた。
ドイツ敗戦のドサグサに紛れて脱出したイリーナだった。
女性客:「ちょっとアナタ……タチ悪いわよ……」
女性客は青ざめた顔をした。
その時、ハラリとタオルが落ちてその女性客の裸体がさらけ出される。
その体には、立派な登り竜の入れ墨がされていた。
女性客:「そない強力な組織の妻(おんな)やと知っとったら、ウチもそれなりの筋を……!小指一本で堪忍しておくれやす……!」
そして絶望の顔と涙を浮かべたのだった。
イリーナ:「ええっ?どうして泣くんです?私の失敗談ですから、どうぞ笑ってくださいな」
マリア:「いや、師匠……。師匠の話が面白い云々のレベルじゃないです……。(そのオバハン、ジャパニーズ・マフィアのカポのワイフかと……)」
カポとはカポ・レジームの略で、日本の暴力団の若頭などの幹部のことを言う。
稲生:「うーん……。遅いな、マリアさん達……」
先に上がった稲生は、湯上り所で待ち惚けしていたという。
男性客:「何や、遅いのう……。美幸のヤツ、何やっとんじゃあ……」
稲生:(何か藤谷班長より怖い人がいるから、早く出て来てぇ……!)
[同日13:15.天候:晴 同浴場 食事処]
マリア:「ユウタ!ここ、Japanese Mafiaがいる!」
稲生:「何ですって!?」
マリア:「このままだと、師匠の体の傷痕が増えてしまうよ!」
稲生:「そりゃ大変です!早く先生を安全な所に……!」
イリーナ:「ん?どしたの?早いとこランチにしよ」
マリア:「悠長なこと言ってる場合ですか!さっきのオバハン、Japanese MafiaのCapoのWifeですよ!?」
イリーナ:「うん、そうだね」
マリア:「そうだねって……」
イリーナ:「何か私、謝られるようなことしたみたいだけど、よく分かんないから許しちゃった。で、泣きながら帰って行ったよ。ま、ダンナさんの方は何が何だかワケが分からないって感じだっだけど……」
稲生:「そ、そうですか。帰ってくれましたか……」
マリア:「あのオバハン、立派なドラゴンのタトゥーだった」
イリーナ:「そうそう。それを褒めたのがきっかけだったわね」
稲生:「先生の方から先に話し掛けたんですか……」
マリア:「師匠、あんまりマフィアと関わらない方がいいですよ。エレーナだって、アメリカン・マフィアからマシンガンの銃撃を受けたわけでしょう?」
イリーナ:「まあ、アメリカのマフィアも元を正せばシチリア系って事が多いんだけど……。今や日本のヤクザさんも、コリアン系でしょう?」
稲生:「らしいですね」
イリーナ:「私達は世界の歴史を影から操る者……。その為には、マフィアさえも駒にしなければならない時もあるのよ」
いつもは目を細めているイリーナが、半分だけ両目を開けた。
稲生:「は、はい……」
マリア:「…………」
[同日14:30.天候:晴 送迎バス車内]
運転手B:「はい、発車しまーす」
往路と同じ運転手によるバスに乗り込んで、再び大宮駅を目指す稲生達。
イリーナ:「ちぇっ。リラクゼーション受けて帰りたかったのにぃ……」
マリア:「師匠のせいですよ」
稲生:「あの後、『アネさんを泣かしたのは誰だ!?』と手下達がぞろぞろやってきましたからね。今のうちに脱出です」
稲生はバスの窓を閉めて言った。
幸いバスの客席の窓にはスモークが貼ってあったり、温泉施設の広告がラッピングされていたりと、外から車内はあまり見えないようになっている。
稲生:「取りあえず大宮駅で少し時間を潰して、それから路線バスで移動しましょう。奴らの追跡の目を誤魔化さないと……」
マリア:「そうだな」
イリーナ:「別に、イザとなったらアタシの魔法で何とかするよ?」
稲生:「取りあえず、僕に任せてください」
イリーナ:「ま、お手並み拝見と行こうかね」
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