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報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「仙台の秘境、奥新川」 2

2022-10-21 20:19:17 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月12日10:54.天候:晴 宮城県仙台市青葉区新川字竹山 JR奥新川駅→愛原公一の旧宅]

 仙台駅を出発して1時間と経たずに、電車は目的地へと近づいた。

〔まもなく奥新川、奥新川。お出口は、左側です〕

 電車の乗客数は、確かに仙台駅発車時よりは少なくなった。
 とはいうものの、そんなに少ないというわけでもない。
 ここに乗っている乗客達は、殆どが県境を越えて山形県に行こうという者達だ。
 山形県に入れば山寺駅(立石寺)という観光地があるし、都市間輸送は高速バスに取られつつあるとはいえ、まだまだ県境越えの需要はあるということだ。

 高橋:「すっげぇ山奥ですね」
 愛原:「だろ?これなら、冬は雪が積もっていてもおかしくはない」
 高橋:「確かに……」

 そして、電車は奥新川駅のホームに停車した。

 

 仙山線は全線単線だが、所々に上下線離合の設備が設けられている。
 この駅も、そうだった。
 しかし、上り列車との待ち合わせは無いようである。

 車掌:「ありがとうございました」

 そして、無人駅の為、車掌がホームに降りて、乗客達のキップを回収している。
 仙山線はワンマン運転を行っていない為、こういう無人駅では車掌がキップの回収を行う。
 意外なことに……いや、このシーズンだと意外でもないか。
 下車したのは、私達だけではなかった。
 ハイカーと思わしき男女のグループが数人と、三脚やカメラを持った撮り鉄と思しき男が2人。
 シーズン中でも、この程度の利用客である。
 そしてウィキペディアによれば、冬の利用客はほぼ0とのこと。
 この駅周辺に住んでいるという数世帯の住民だけだろうか?

 愛原:「はい、どうも」

 私達も車掌にキップを渡して下車した。
 無人駅でも駅舎はあり、中に入るとベンチやゴミ箱があった。
 そして驚くことに、かつては有人駅であったらしい。
 今はカーテンが引かれて閉鎖されているが、キップ売り場と思しき窓口があった。

 愛原:「凄い所だねぇ……」
 高橋:「マジで、どこにでも人は住めるもんですね」
 愛原:「オマエ、住んでみるか?」
 高橋:「カンベンしてくださいよ」

 ハイカー達は先に駅舎の外に出て、ハイキングコースへと向かって行った。
 しかし、撮り鉄達はホーム上で撮影の準備を始めている。
 今日は何か、珍しい列車がこの線路を走るのだろうか?
 確かに、駅前には何も無かった。
 因みにトイレもあるのだが、駅の外側ではなく、内側にある。
 待合室とホームの間。
 だが、恐らく利用しにくいだろうと思い、トイレは列車内で済ませるのが良いだろう。
 特に、リサは。

 高橋:「で、場所はどこなんです?」
 愛原:「この近くなんだよ」

 私は取りあえず、駅前に出た。
 一応、駅前広場はあるのだが、ここに至る道が狭い為、路線バスの停留所などは存在しない。
 また、ここから車で行ける場所など無いに等しいので、タクシーが客待ちしているなどということもない。
 一応、狭いながらも舗装された車道はあるのだが、それを進むと作並方面に戻ってしまうので。
 私達が向かったのは、逆方向。
 舗装が無くなった、林道のような道。
 一応、これもハイキングコースか何からしい。
 先ほどのハイカー達が行った様子は無いが……。

 高橋:「先生、クマ出没注意ですって」

 道の脇には、そのような看板が立てられていた。

 愛原:「だろうな。ツキノワグマくらい、いたっておかしくない」
 高橋:「クマに襲われても、銃を使っちゃいけないんですよね?」
 愛原:「あくまで、クリーチャー対策用に許可されてるだけだからな。だが、心配無い。ここには、ツキノワグマはもちろん、それより凶暴なヒグマですら食い殺せる鬼がいるから」
 リサ:「むふー!任せて!」
 高橋:「そりゃ頼もしいことで」

 少し歩いて、駅前広場が見えなくなった辺りだ。
 ここに、ポツンと一軒家が現れた。

 愛原:「ここだよ」
 高橋:「古いですけど、誰かが住んでいそうな感じは……しませんね」

 2階建ての家である。
 築何十年も経っているのだが、不思議と朽ちている感じはしない。
 古いボロ屋であることは確かなのだが、廃墟感が小さいのは、やはりしばらくの間は日本アンブレラがここを使っていたからだろう。

 愛原:「カードキーの読取機がある」
 高橋:「マジっスか」

 門扉は閉められており、チェーンが巻かれていたが、それは持って来たチェーンカッターで切り落とす。
 それで門扉を開け、草がぼうぼうに生えている中を玄関に向かって進んだ。
 その玄関のドアには、伯父さんの旧宅時代には無かったであろう、カードキーの読取機があった。
 しかし、福島のそれと違い、こちらは通電していないのか、ランプが消えている。
 そこで、手持ちの鍵で玄関のドアを開けた。
 開けたからといって、何か警報が鳴るわけではない。
 試しに玄関の照明スイッチを操作してみたが、照明が点灯することは無かった。
 不思議なものだ。
 福島の施設は朽ちていながらも通電していたのに、こちらはさほど朽ちていないにも関わらず、通電していないのだから。

 高橋:「案外、広い家ですね」
 愛原:「そうなんだ。案外、広い家だったんだよ」

 人の気配はおろか、虫や化け物の気配すら無い。
 家の構造は、私が熟知している。
 日本アンブレラの手に渡ったにしては、そんなに構造が変わっているということはなかった。
 確かに和室が洋室に変えられ、事務机が置かれて、事務所のようになっているということはあったのだが。
 実験施設としては、使っていなかったのだろうか?

 愛原:「ここだな……」

 私の記憶で、伯父さんが開け閉めしていた金庫があった部屋。
 こちらは特に手が入れられていることはなく、和室のままだった。
 和室というか、仏間だ。
 しかし、今の新宅となった実家と違い、床の間と兼用はされていない。
 旧宅は仏間と床の間が別となっていた豪華仕様だったのだ。

 愛原:「仏壇の下に、金庫がある」

 私は仏壇の下の観音扉を開けた。

 愛原:「うわっ!」

 開けた途端、大きな蜘蛛が飛び出して来た。
 但し、それはクリーチャーとしての蜘蛛ではなく、元々大きさいサイズのジョロウグモか何かであった。

 リサ:「あーむっ!」

 第1形態の鬼姿に戻ったリサは、起用にその蜘蛛を捕まえて食べてしまった。

 愛原:「うへぇ……」

 案の定、金庫の周りは蜘蛛の巣だらけだった。
 それを手持ちのショットガンの筒先で掃い、ようやく金庫に手が伸ばせるほどになった。

 愛原:「俺が見た金庫はこれだ。やっぱりあれは、昔の実家じゃなく、この家での出来事だったんだ」

 この金庫は鍵式。
 実家にあったのは、見た目は同じだが、ダイヤル式。
 私は筒の中にあった鍵を使い、それで金庫を開けた。
 中には何があったと思う?

 A:何も無かった。
 B:書類の入った封筒。
 C:アンプルが数本。
 D:ダイナマイトと手榴弾
 E:鍵とメモ。
 F:SDメモリカード。
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“私立探偵 愛原学” 「仙台の秘境、奥新川」

2022-10-21 15:10:51 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月12日09:52.宮城県仙台市青葉区中央 JR仙台駅→仙山線825M列車最後尾車内]

 

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の8番線の列車は、10時8分発、普通、山形行きです。この列車は、4両です。……〕

 ホームに降りて、電車を待つ。
 愛子止まりの普通列車が多く、そこから先へ行く列車はおよそ1時間に1本と少ない。
 仙台市西部も実際、愛子駅を過ぎると、急に寂しくなって行くという。
 作並温泉の最寄りである作並駅はあるが、電車でアクセスする温泉客は少ないらしい。

〔まもなく8番線に、当駅止まりの列車が参ります。危ないですから、黄色い線までお下がりください。折り返し、10時8分発、普通、山形行きとなります。この列車は、4両です。……〕

 仙台駅では、もっとも東側にあるホームに電車がやってくる。
 市内近郊区間は比較的本数も多く、乗客数も多い。

〔せんだい~、仙台~。本日も、JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました。お忘れ物の無いよう、ご注意ください〕

 さっきからホームにATOSの自動放送が流れているが、首都圏対象の輸送管理システムが、飛び地で仙台駅にも導入されているというわけではない。
 あくまでも、放送だけを流用しているに過ぎない。
 ここまでの乗客がぞろぞろと降りてくる。
 本来なら仙台駅発着の列車は、特急車両などを除いて、半自動ドア扱いである。
 つまり、ドア横のボタンを押して、乗客がドアを開け閉めする方式だ。
 しかし、コロナ対策としての換気促進の為、仙山線でも半自動方式はやめにして、自動方式に切り替えられている。

 愛原:「ここにしよう」

 空席となったボックスシートを確保する。
 リサは進行方向窓側に座らせ、私がその向かい、高橋がリサの隣に座るといった感じだ。

 高橋:「先生、逆向きは酔いませんか?」
 愛原:「それも座る位置だよ。ここでは、後ろ展望が臨めるからね」

 最後尾車両の1番後ろのボックスシート。
 混んでいなければ、乗務員室の窓越しに後ろが見える。
 つまり、車掌と同じ向きというわけだな。
 仙山線ではワンマン運転は行われていない為、このように4両で1編成という車両も運用に当たっている。

〔この電車は、仙山線、普通、山形行きです〕

 天井からは冷房がフル稼働する音が聞こえてくる。
 本当ならドアを閉めて、冷房の効果を高めたいところだろうが、そうはいかない御時世だ。
 よく見ると、窓も少し開いている。

〔「ご案内致します。この電車は10時8分発、仙山線、普通列車の山形行きです。東照宮、北仙台、北山、東北福祉大前、国見の順に、終点の山形まで各駅に止まります。……」〕

 高橋:「先生、何か飲み物買ってきましょうか?」
 愛原:「そうだな。奥新川駅には何も無いから、今のうちに買っておくか」
 高橋:「本当に何も無いんですか?自販機も?」
 愛原:「無い。マジで何も無い」
 高橋:「……その駅、存在価値あるんスか?」
 愛原:「あれでも周辺には数世帯の家が建っているのと、一応ハイキングコースの入口みたいな感じになってるから、それで残してるんだろう」

 あの辺りの他の駅は廃止されている。
 奥新川駅よりも更に秘境駅とされた八ツ森駅、そして遊園地の廃園と共に廃止された西仙台ハイランド駅がそうだ。
 噂では奥新川駅へは、一応市道(というか林道?)があるが、八ツ森駅はそもそもアクセス路が無いとか聞いたことがある。
 西仙台ハイランド駅は、まあ、そもそも遊園地が廃業したのだから、そのアクセス駅としての役割を終えたのだからしょうがない。
 ん?行川アイランド駅?知らんよ。

[同日10:08.天候:晴 JR仙山線825M列車最後尾車内]

 発車の時間が迫り、ホームに発車メロディが鳴り響いた。
 仙台駅の発車メロディは、新幹線も在来線も、それぞれオリジナルのものが流れる。
 仙石線のホームだけはベル(隣のあおば通駅で発車メロディを使用しているからか)。

〔8番線から、普通、山形行きが発車致します。ドアが閉まります。ご注意ください。駆け込み乗車は、おやめください〕

 尚、在来線ホームでは、発車メロディに被せるようにして、発車の放送が流れる。
 録り鉄(撮り鉄ではない)泣かせである。
 車掌が笛を吹いて、ドアスイッチを『閉』にする。
 首都圏のものと違い、軽い感じのドアチャイムが2回鳴ってからドアが閉まる。
 で、閉まり切る前に一旦止まって、それからドアが閉まる。
 呼吸を整えてから、第2障害を駆け登るばんえい競馬のようである。
 そして、電車は定刻通り発車した。
 乗客は多く、座席の殆どが埋まり、近距離客はあえて座席に座らず、ドア付近や乗務員室前に立っているほど。

〔今日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は、仙山線、普通、山形行きです。【中略】次は、東照宮です〕

 首都圏の在来線電車で流れる自動放送と同じ声優さんなので、何となく既視感がある。
 ただ、首都圏の放送よりも、随分と詳しく喋る。

 愛原:「おっと。一応、善場主任に報告しとかなくちゃな」

 私はスマホを取り出して、善場主任にLINEを送った。
 すぐに返信は来なかったが、恐らく昨日の事で忙しいのだろう。
 昨日、家の金庫の底から回収した鍵は2本。
 1つはこれから行く、家の鍵。
 もう1つは筒に入っていた、恐らく金庫の鍵と思わしき鍵。
 そして、メモ用紙が入っており、そこにはこれから行く家の住所が書いてあった。

 愛原:「アンブレラの手に渡った家だから、変に改築されてるかもしれない。一応、リサはカード持ってきたな?」
 リサ:「うん、大丈夫」

 日本アンブレラの研究施設において、カードキーで解錠するタイプの鍵なら、殆ど開けることができるカードキー。
 リサはそれを持っている。
 もしかしたら、これから行く家にも、それが導入されているかもしれないので、持って行った方が良いだろう。
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“私立探偵 愛原学” 「最終的に行き着く先」

2022-10-21 11:51:07 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月12日08:00.天候:晴 宮城県仙台市若林区某所 愛原の実家]

 愛原:「今日は一旦、荷物を持って出るぞ」
 高橋:「あ、はい。分りました」

 朝食中、私はそう言った。

 高橋:「お盆期間ですし、御親戚の方が来られるんですね」
 愛原:「そうだ。その間はホテルに泊まってもらうから」
 リサ:「先生は?」
 愛原:「俺は親戚付き合いがあるから、家にいるよ。親戚達が帰ったら、またここに来れるから」
 リサ:「『先生のお嫁さんです』って、紹介……」
 愛原&高橋:「せんでいい!」

[同日09:15.天候:晴 同区白萩町 仙台市地下鉄薬師堂駅→東西線(列番不明)電車先頭車内]

 出発の準備が整った私達は、最寄りの地下鉄駅に向かった。

 高橋:「探索と言っても、随分ゆっくりなんですね?」
 愛原:「まあ、同じ仙台市内だからな」
 高橋:「え?そうなんですか?」
 愛原:「それに、順調に行けば金庫はすぐに見つかる」
 高橋:「そうなんですか」

 

 愛原:「今が夏で良かったよ」
 高橋:「そうなんですか?」
 愛原:「山奥だから、冬だと大変だ」
 高橋:「え、でも、仙台は雪が少ないんじゃ?」
 愛原:「それはこういう平地の話だよ。これから行く所は、仙台でも山奥の場所だ。冬は凄い雪だぞ」
 高橋:「そうなんですか」

〔1番線、2番線に、電車が到着します〕

 仙台市地下鉄もパターンダイヤが組まれており、この薬師堂駅は東西方向の電車が同時発着する駅である。
 その為、パターン外である深夜・早朝やダイヤが乱れている時などを除けば、接近放送も簡素なものとなる。
 4両編成の電車が到着する。
 都営大江戸線みたいな構造だが、それの半分の長さだ。
 電車に乗り込み、私達はドア横の手すりや吊り革に掴まった。

〔1番線、2番線の電車が発車します〕

 短い発車サイン音が乗って、ドアが閉まる。
 開業時からホームドアが設置されており、電車もワンマン運転である。

〔次は連坊、連坊。仙台一高前です〕

 坊が連なると書いて、連坊。
 この坊とは、寺院のことを指す。
 寺院が連なる、つまりお寺の多い地区なのである。
 私が家族や親戚で参詣しに行くお寺も、最寄り駅としてはそこにある。

 リサ:「鬼斬り先輩、怒るよ」
 愛原:「何が?」
 リサ:「『そんな邪宗の寺に行って、ホーボーだー』って」
 愛原:「ホーボー?」

 謗法のことか。
 まあ、日蓮正宗は他の宗派を一切認めない教えだからな。

 高橋:「先生んとこのお寺は何宗なんですか?」
 愛原:「曹洞宗だな。いわゆる、禅寺だよ」
 高橋:「ああ、座禅を組むんですね」
 愛原:「そう!……禅寺というところは、食事も修行の1つと考えているようでね」
 高橋:「何か、『ちゃんこも稽古の1つだ』の相撲みたいですね」
 愛原:「そうかもな。あそこの精進料理が美味くてね。それだけが楽しみだよ」
 リサ:「精進料理……!?」

 リサが反応する。

 愛原:「精進料理に、肉や魚は入っていないからな?」
 リサ:「なーんだ……」
 高橋:「それに、邪な鬼なんか入れちゃったら、先生に罰が当たりますぜ」
 リサ:「邪じゃないもん!」
 愛原:「何か、蓮華も言ってたな」

 仏教から邪鬼扱いされるリサw
 恐らく、衆合地獄に現れるという美しい鬼女のように見られるのだろう。

[同日09:21.天候:晴 仙台市青葉区中央 仙台市地下鉄仙台駅→JR仙台駅]

〔せんだい、仙台。南北線、JR線、仙台空港アクセス線はお乗り換えです〕

 電車が仙台駅に到着する。
 この駅での乗降は多い。
 私達も電車を降りた。

 愛原:「余計な荷物は、コインロッカーに預けておこう」
 高橋:「はい」
 愛原:「あくまでも、探索に必要な物だけを持って行くんだぞ」
 高橋:「もちろんです」

 地下鉄の改札口を出るのは当然だが、その足で地上に向かう。
 地下鉄駅構内にもコインロッカーはあるが、私達はJR側のコインロッカーを利用することにした。
 探索が終わってから回収することになるので、JRの駅に近い所の方が良いと思ったからだ。

 愛原:「忘れ物は無いか?」
 高橋:「大丈夫です。救急スプレーも持ちました」
 愛原:「それ、必要かなぁ……?」
 リサ:「グリーンハーブは持っていた方がいいかもね」
 愛原:「またメタ発言を……」

 とにかく、今は必要でない荷物をコインロッカーに預けた私達は、今度はJRの在来線乗り場に向かった。

 高橋:「ん?Suica使わないんスか?」
 愛原:「今度の行き先は、Suicaのエリア外なんだよ」
 高橋:「え!?そんなド田舎?!」
 愛原:「そんなド田舎にこれから行く所なんだよ」

 その為、その駅まで行くのには紙の乗車券でなければならない。

 リサ:「新幹線のキップ以外で、紙のキップで乗るの久しぶり」
 愛原:「だろうな。無くすんじゃないぞ」
 リサ:「はーい」
 愛原:「必要な物があったら、今のうちにな」

 改札口を通過すると、コンコース内にはNEWDAYSがある。
 リサは当然のように、そこに立ち寄った。

 高橋:「先生、昨日の事が新聞に載ってますよ」
 愛原:「そうだろうな」

 私は地元の新聞を購入することにした。
 地元の地方紙ということもあり、昨日の事件の事は一面記事トップで伝えている。
 『日本アンブレラの秘密施設か!?巨人が脱走!!』『渓流釣り場、阿鼻叫喚の地獄!!』『BSAAが出動し、対応に当たる』という見出しが目立った。

 愛原:「新聞によると、BSAAがあの巨人を退治してくれたらしい」

 他の面を見ると、巨人系BOWのイラストが描かれていた。
 『エルヒガンテか?』と書かれていたが、私もそう思った。
 尚、プロレスラーのエル・ヒガンテ氏とは何の関係も無い。
 エルヒガンテは『追跡者』たるBOWとはまた違うので、昨日の私の緊張は杞憂だったということになる。

 愛原:「また、こういうのがいるかもしれん。心して行こう」
 高橋:「はい」
 リサ:「お待たせー」
 愛原:「だから、また色々と食べ物を買うー!」
 リサ:「探索はお腹が空くからね」
 高橋:「現地調達しろや!」
 愛原:「いや、それは恐らくムリだと思う」
 高橋:「そ、そうっスか!」

 これ以上、リサが余計な食べ物を買わないよう、早めにホームに行くことにした。
 多分、まだ電車は入線していないと思うが。
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