報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「我那覇絵恋の離京」

2022-10-09 20:25:34 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月1日16:30.天候:雨 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 台風接近により刺激された低気圧の影響により、今日1日は雨だそうだ。
 しかし、今日までは沖縄方面の飛行機も予定通りに飛ぶらしい。

 高橋:「荷物はこれで全部か?」
 愛原:「そのようだ」
 リサ:「エレン、忘れ物無い?」
 絵恋:「うん……」
 リサ:「大丈夫だって」
 愛原:「よし。それじゃあ、後ろに乗ってくれ」

 私はリースしているミニバンのリアシートに、リサと絵恋さんを座らせた。
 私は助手席。

 愛原:「よし、高橋。出してくれ」
 高橋:「分かりました」
 愛原:「ルートはオマエに任せる」
 高橋:「了解です。羽田空港の第1ターミナルですね?」
 愛原:「そうだ。そこになるべく近い駐車場がいいな」
 高橋:「分かりました。では、出発します」

 高橋は車を発進させた。
 そこそこの強さの雨が降っているので、フロントガラスの上はワイパー規則正しく動いている。
 絵恋さんは寂しそうだ。

 高橋:「首都高通っていいっスよね?」
 愛原:「当たり前だよ。でも、飛ばし過ぎるなよ?」
 高橋:「分かってますって」

[同日17:30.天候:雨 東京都大田区羽田空港 羽田空港P1駐車場→第1ターミナル]

 高橋はレインボーブリッジではなく、首都高湾岸線経由で向かった。
 元走り屋として、レインボーブリッジよりも湾岸線の方が関心が高いのだろうか。
 それでも多少混雑した場所はあったものの、どうにか間に合った。

 愛原:「リムジンバスの中から見たことがあるが、確かに立体駐車場だな」
 高橋:「そうですね」

 屋上だと雨に濡れる恐れがある。
 屋上以外の場所がいい。
 そう思っていたら、5階が空いていたので、そこに向かった。

 愛原:「良かった。立体駐車場の屋上以外だったら、雨に濡れなくて済む」
 高橋:「それがこういう立駐のメリットですね。デメリットとしては、高層階しか空いてない場合、上り下りがメンド臭いってことです」
 愛原:「まあな」

 そして、空いているスペースに車を止めた。

 愛原:「はい、着いたよ。荷物降ろしてー」
 リサ:「はーい。エレン、降りて。着いた」
 絵恋:「うん……」

 絵恋さんは寂しそうに車を降りる。

 愛原:「はい、忘れ物無いように」
 絵恋:「はい……」

 駐車場とターミナルとは、4階の渡り廊下で繋がっている。
 そこを通れば、雨に濡れずにターミナルの中に入れる。

 リサ:「先生、エレンは夕食どうするの?」
 愛原:「18時20分離陸じゃ、食べてるヒマが無いな。俺だったら、空弁買って、機内で食べるかな」
 リサ:「空弁?」
 愛原:「駅弁の航空版だよ。駅弁は駅で買って、列車の中で食べるだろ?空弁は空港で買って、機内で食べるんだ」
 リサ:「そうなんだ。わたしも食べてみたーい!」
 愛原:「オマエは飛行機乗らないだろ?」
 絵恋:「も、もし、何だったら、今からでもリサさんと沖縄に……!」
 高橋:「おー、行ってこーい」
 愛原:「2人とも!それはダメだよ」
 高橋:「何でですか?」
 愛原:「リサが他の地方に行く場合は、事前の許可が必要なんだ。それをまだ取っていないし、すぐに取れるものじゃない」

 尚、近日中に帰省で仙台に向かう際の同行については、既に許可を得ている。

 愛原:「それに……」
 高橋:「それに?」

 私はターミナルに掲げられているタイムテーブルを指さした。

 愛原:「絵恋さんの乗る便、満席だってよ?」
 絵恋:「ええーっ!?」
 高橋:「マジっスか……」

 もちろん、絵恋さんは既に予約を取っている。

 絵恋:「お昼くらいまで、『空席あり』だったのに……」
 愛原:「恐らく、明日から台風の影響で航空便に影響が出る。そうなる前に、予定を前倒して沖縄に行こうっていう人達で満席になったんだろうな」

 もっとも、絵恋さんのことだ。
 いくらLCCでも、もう少し金を出して、広い席を確保するくらい朝飯前だろう。

 リサ:「未許可で満席なら、しょうがない」
 絵恋:「うぅう……」
 愛原:「元気出しなよ。空弁買ってあげるから」
 絵恋:「いえ。とても、お弁当など食べる気には……」
 愛原:「食べといた方がいい。沖縄に着くのは、夜だろう?」
 絵恋:「そうですけど……」
 愛原:「リサ。絵恋さんの為に、空弁見繕ってやれよ」
 リサ:「分かった。エレン、行こう」
 絵恋:「うん……」

 2人の少女は空弁売り場に向かった。
 リサのことだから、自分が食べたい肉系統を選ぶだろうが、果たして……。

 リサ:「エレンの為に選んだ」
 愛原:「で、何を?」
 リサ:「『石垣牛焼肉弁当』」
 高橋:「それ、オメーが食いたいヤツじゃねーのか?」
 リサ:「それもある」
 愛原:「そういえば、沖縄はステーキも美味いんだったな」
 リサ:「マジ!?」
 愛原:「警備会社時代、社員旅行で沖縄に行ったことがあるんだが、沖縄が地元の先輩に、美味いステーキ屋に連れて行ってもらったことがあって、あれは本当良かったな」
 リサ:「……わたしも行ってみたーい!」
 絵恋:「是非来て!何なら明日にでも!」
 愛原:「いや、だから、明日は台風が来て欠航だって」
 高橋:「早く、手荷物検査受けに行けよ。飛行機乗り遅れるぞ」

 結局、絵恋さんは時間ギリギリのタイミングで保安検査場に向かったのだった。
 鉄道なら入場券を買えばホームまで見送りに行けるのだが、空港だとなぁ……。
 保安検査場までしか、行けないからな……。

 愛原:「なあ、提案があるんだが……」
 高橋:「何でしょう?」
 愛原:「絵恋さんの飛行機を見送りに、展望デッキまで行かないか?」
 高橋:「こんな雨ん中っスか!?」
 愛原:「そうなんだ。もちろん、無理にとは言わないよ」
 リサ:「行く。エレンにも、展望デッキから見送るってLINEしとく」
 高橋:「マジかよ……」
 愛原:「何だったら高橋は、タバコ吸いに行ってていいぞ?」
 高橋:「あー……じゃあ、そうさせてもらいます」
 リサ:「因みにわたし達の夕食は?」
 愛原:「ここのレストランで食べよう」
 リサ:「おー!」

 私は手持ちのビニール傘を手に、リサは撥水効果のあるウインドブレーカーを羽織り、フードを被って展望デッキに向かった。

 リサ:「こんな雨でも、飛行機飛ぶの?」
 愛原:「風さえ強く吹いていなければ大丈夫だよ。雲の上に出れば、雨は関係無いしな」
 リサ:「なるほど」

 リサは納得したように頷いた。
コメント (2)
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“私立探偵 愛原学” 「愛原家の金庫」

2022-10-09 16:03:35 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月1日09:10.天候:雨 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

 予告通り、事務所が開所してからすぐに善場主任がやってきた。

 絵恋:「リサさんと最後のイチャラブ・デーだったのに、雨なんて……」
 リサ:「飛行機飛ぶといいねぇ……」
 絵恋:「もしも欠航したら、また泊めてね?」
 リサ:「うん」
 高橋:「オメーが勝手に決めんじゃねぇーし」

 応接室の外からは、そんな話し声が聞こえる。

 愛原:「すいません、騒がしくて……」
 善場:「構いませんよ」

 尚、リサと絵恋さんが事務所にいるのは、まずはリサが事務所にいるからである。

 愛原:「絵恋さんは今日最後のスカイマーク便で帰ります」
 善場:「台風が来る前で良かったですね」
 愛原:「全く」

 日本に大型の台風が接近している。
 既に影響は出始めており、この雨も接近する台風に刺激された低気圧によるものだ。
 今のところ、まだ那覇行きに欠航は出ていない。
 欠航などの影響が出るのは、明日からとのこと。

 愛原:「これが先日、伯父の愛原公一から受け取ったUSBメモリーです」
 善場:「頂戴します」

 善場主任は自分のノートPCを立ち上げると、件のUSBメモリーを接続した。
 そこに映し出された、伯父さんの手記を読んでいたが……。

 善場:「内容のほぼ全ては、既にこちらで把握している内容ですね」
 愛原:「ということは、既に主任達は、『リサが子供を産めば、リサは人間に戻れる』ということを知っていたのですか?」
 善場:「機密事項でしたので、今まで黙ってました。BSAA欧州本部や北米支部でも、似たような情報は握っているのです」

 本部においてはウィンターズ親子のことであり、北米においてはシェリー・バーキン氏のことだろう。
 しかし……。

 愛原:「私が聞いている限り、ウィンターズ家においては、父親がBOW、バーキン氏は御結婚されていないとのことですが……?」
 善場:「はい。しかしこれはBSAA内部における重要機密事項なので、口外は謹んで頂きたいのですが、宜しいでしょうか?」
 愛原:「もちろんです」
 善場:「ローズマリー・ウィンターズの母親、ミア・ウィンターズ氏は特異菌に感染しており、半ばBOWと化していました。しかし、ワクチン投与により、人間に戻れています」
 愛原:「それは知っています」
 善場:「しかし実際はGウィルスに感染したバーキン氏と同様、駆除しきれなかった特異菌が形を変えて残っている状態だったのです」
 愛原:「あれ?Gウィルスに似てる?」
 善場:「そうなんです。そして、娘を出産した後、改めて検査をしたところ、体内の残留特異菌がほぼ無くなっていたとのことです」
 愛原:「へえ、そんなことが……!」

 その代わり、父親の特異菌と母親の特異菌を色濃く受け継いだローズマリーは今後、どのように成長するのか、多大な関心が持たれているという。
 因みに……ルーマニアにおける事件で言うと、体をバラバラにされた状態でも、事件解決後、何事も無かったかのように元の姿に戻っていたとか……。
 Gウィルス以上に万能だな、特異菌って……。

 善場:「もちろん特異菌とGウィルスは全くの別物でありますが、しかし、もしかしたら……というのはありました。それを愛原公一氏が、改めて証明してくれたようですね」
 愛原:「特異菌に辿り着くまで相当苦労したでしょうに、結局は昔からあったGウィルスの方が研究が楽だったのでは?」
 善場:「それは研究職ではない私共としては、ノーコメントです」

 もっとも、最初から特異菌を研究していたマザー・ミランダと、ウィルス研究を専門にしていたオズウェル・E・スペンサー(アンブレラ製薬の創業者。故人)がルーマニアで会っていたことから、2人の行き着く先は同じだったのかもしれない。
 尚、マザー・ミランダは特異菌を専門に研究していたが、カビの繁殖力より、ウィルスの感染力というスピーディーさに正解性を見出したスペンサーはミランダと袂を分かっている。

 善場:「? 愛原所長、この暗号みたいなものは何ですか?」
 愛原:「ああ、それですか……」

 私も見つけた暗号。
 しかし、善場主任には分からなくて、私……いや、実家の愛原家の面々なら知っている暗号が最後にあった。

 善場:「『じいちゃんの金庫 ←9←9→1 ←A←A→2』というのは?」
 愛原:「実家に、死んだ祖父の残した金庫があるんですが、ダイヤル式のもので、開け方が分からず、そのまま物置に放置されているんです。まさか、伯父さんが知っていたとは……」
 善場:「! 所長は近日中、帰省されるそうですね?」
 愛原:「はい。もちろんその時、この金庫を開けてみるつもりです」
 善場:「分かりました。開けたら、その中身を教えてください。物によっては、こちらでお預かりさせて頂くことになるかもしれません」
 愛原:「違法な物だったら、逮捕ですか?」
 善場:「そういうことになりますね。もっとも、所長の御実家の人達は大丈夫だと思いますが……。中身を知らずに保管していた、ということが証明できればですが……」

 今でもたまに第2次大戦中の時の爆弾とか、旧日本軍の銃とかが古民家から見つかってニュースになったりしており、本来なら違法なのだが、そこの関係者が逮捕されたという例は聞かない。
 保管していた本人は今となっては故人となっていることが殆どで、そんな本人に責任は問えないし、遺族もまさかそんなものが……と、思っていたのが殆どだからだ。
 そもそも、本人がそれを保管していたことすら、家族は知らなかった場合も珍しくない。

 愛原:「私も両親も知らなかったと思いますよ」
 善場:「所長は、何の想像もできませんか?」
 愛原:「できませんねぇ……。ただ、祖父も大戦中は出征していましたので、まさか使用していなかった銃弾とか手榴弾とかが保管されているかもしれませんね」
 善場:「その場合は自衛隊に連絡してください。……あ、その前に警察に通報することになると思いますが」
 愛原:「はい」

 もっとも、私の記憶している限り、祖父があの金庫を開閉している所は見たことがない。
 そして、1度だけあの金庫を開閉している所を見たことがある。
 それをやっていたのは、公一伯父さんだった。
 そして、蘇る私の記憶……。

 愛原学(幼少期):「ねーねー、伯父ちゃん。さっき何を入れてたのー?」
 若かりし頃の愛原公一:「んー?大事なお薬を入れていたんだよ。あの金庫は、それを保管するのにちょうどいいからね。お祖父ちゃんからも、『どうせ今は使っていない金庫じゃ。好きに使ったらええ』と言われてるしね」
 学:「ふーん……」

 ……あー……うん。
 あの時の伯父さんが言っていることが正しいのなら、こりゃガチめの奴が入っているかもしれないなぁ……。
 ん?待てよ……。
 そして、私の記憶では何食わぬ顔して、伯父さんは金庫の扉を閉めて施錠している。
 しかし、その時に使用していたのは鍵だった。
 というか、ダイヤル式の金庫だったっけ?
 見た目は似ているが、何か違うような……?
 今から30年以上も前の、子供の頃の記憶だからだろうか???
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