[8月1日16:30.天候:雨 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]
台風接近により刺激された低気圧の影響により、今日1日は雨だそうだ。
しかし、今日までは沖縄方面の飛行機も予定通りに飛ぶらしい。
高橋:「荷物はこれで全部か?」
愛原:「そのようだ」
リサ:「エレン、忘れ物無い?」
絵恋:「うん……」
リサ:「大丈夫だって」
愛原:「よし。それじゃあ、後ろに乗ってくれ」
私はリースしているミニバンのリアシートに、リサと絵恋さんを座らせた。
私は助手席。
愛原:「よし、高橋。出してくれ」
高橋:「分かりました」
愛原:「ルートはオマエに任せる」
高橋:「了解です。羽田空港の第1ターミナルですね?」
愛原:「そうだ。そこになるべく近い駐車場がいいな」
高橋:「分かりました。では、出発します」
高橋は車を発進させた。
そこそこの強さの雨が降っているので、フロントガラスの上はワイパー規則正しく動いている。
絵恋さんは寂しそうだ。
高橋:「首都高通っていいっスよね?」
愛原:「当たり前だよ。でも、飛ばし過ぎるなよ?」
高橋:「分かってますって」
[同日17:30.天候:雨 東京都大田区羽田空港 羽田空港P1駐車場→第1ターミナル]
高橋はレインボーブリッジではなく、首都高湾岸線経由で向かった。
元走り屋として、レインボーブリッジよりも湾岸線の方が関心が高いのだろうか。
それでも多少混雑した場所はあったものの、どうにか間に合った。
愛原:「リムジンバスの中から見たことがあるが、確かに立体駐車場だな」
高橋:「そうですね」
屋上だと雨に濡れる恐れがある。
屋上以外の場所がいい。
そう思っていたら、5階が空いていたので、そこに向かった。
愛原:「良かった。立体駐車場の屋上以外だったら、雨に濡れなくて済む」
高橋:「それがこういう立駐のメリットですね。デメリットとしては、高層階しか空いてない場合、上り下りがメンド臭いってことです」
愛原:「まあな」
そして、空いているスペースに車を止めた。
愛原:「はい、着いたよ。荷物降ろしてー」
リサ:「はーい。エレン、降りて。着いた」
絵恋:「うん……」
絵恋さんは寂しそうに車を降りる。
愛原:「はい、忘れ物無いように」
絵恋:「はい……」
駐車場とターミナルとは、4階の渡り廊下で繋がっている。
そこを通れば、雨に濡れずにターミナルの中に入れる。
リサ:「先生、エレンは夕食どうするの?」
愛原:「18時20分離陸じゃ、食べてるヒマが無いな。俺だったら、空弁買って、機内で食べるかな」
リサ:「空弁?」
愛原:「駅弁の航空版だよ。駅弁は駅で買って、列車の中で食べるだろ?空弁は空港で買って、機内で食べるんだ」
リサ:「そうなんだ。わたしも食べてみたーい!」
愛原:「オマエは飛行機乗らないだろ?」
絵恋:「も、もし、何だったら、今からでもリサさんと沖縄に……!」
高橋:「おー、行ってこーい」
愛原:「2人とも!それはダメだよ」
高橋:「何でですか?」
愛原:「リサが他の地方に行く場合は、事前の許可が必要なんだ。それをまだ取っていないし、すぐに取れるものじゃない」
尚、近日中に帰省で仙台に向かう際の同行については、既に許可を得ている。
愛原:「それに……」
高橋:「それに?」
私はターミナルに掲げられているタイムテーブルを指さした。
愛原:「絵恋さんの乗る便、満席だってよ?」
絵恋:「ええーっ!?」
高橋:「マジっスか……」
もちろん、絵恋さんは既に予約を取っている。
絵恋:「お昼くらいまで、『空席あり』だったのに……」
愛原:「恐らく、明日から台風の影響で航空便に影響が出る。そうなる前に、予定を前倒して沖縄に行こうっていう人達で満席になったんだろうな」
もっとも、絵恋さんのことだ。
いくらLCCでも、もう少し金を出して、広い席を確保するくらい朝飯前だろう。
リサ:「未許可で満席なら、しょうがない」
絵恋:「うぅう……」
愛原:「元気出しなよ。空弁買ってあげるから」
絵恋:「いえ。とても、お弁当など食べる気には……」
愛原:「食べといた方がいい。沖縄に着くのは、夜だろう?」
絵恋:「そうですけど……」
愛原:「リサ。絵恋さんの為に、空弁見繕ってやれよ」
リサ:「分かった。エレン、行こう」
絵恋:「うん……」
2人の少女は空弁売り場に向かった。
リサのことだから、自分が食べたい肉系統を選ぶだろうが、果たして……。
リサ:「エレンの為に選んだ」
愛原:「で、何を?」
リサ:「『石垣牛焼肉弁当』」
高橋:「それ、オメーが食いたいヤツじゃねーのか?」
リサ:「それもある」
愛原:「そういえば、沖縄はステーキも美味いんだったな」
リサ:「マジ!?」
愛原:「警備会社時代、社員旅行で沖縄に行ったことがあるんだが、沖縄が地元の先輩に、美味いステーキ屋に連れて行ってもらったことがあって、あれは本当良かったな」
リサ:「……わたしも行ってみたーい!」
絵恋:「是非来て!何なら明日にでも!」
愛原:「いや、だから、明日は台風が来て欠航だって」
高橋:「早く、手荷物検査受けに行けよ。飛行機乗り遅れるぞ」
結局、絵恋さんは時間ギリギリのタイミングで保安検査場に向かったのだった。
鉄道なら入場券を買えばホームまで見送りに行けるのだが、空港だとなぁ……。
保安検査場までしか、行けないからな……。
愛原:「なあ、提案があるんだが……」
高橋:「何でしょう?」
愛原:「絵恋さんの飛行機を見送りに、展望デッキまで行かないか?」
高橋:「こんな雨ん中っスか!?」
愛原:「そうなんだ。もちろん、無理にとは言わないよ」
リサ:「行く。エレンにも、展望デッキから見送るってLINEしとく」
高橋:「マジかよ……」
愛原:「何だったら高橋は、タバコ吸いに行ってていいぞ?」
高橋:「あー……じゃあ、そうさせてもらいます」
リサ:「因みにわたし達の夕食は?」
愛原:「ここのレストランで食べよう」
リサ:「おー!」
私は手持ちのビニール傘を手に、リサは撥水効果のあるウインドブレーカーを羽織り、フードを被って展望デッキに向かった。
リサ:「こんな雨でも、飛行機飛ぶの?」
愛原:「風さえ強く吹いていなければ大丈夫だよ。雲の上に出れば、雨は関係無いしな」
リサ:「なるほど」
リサは納得したように頷いた。
台風接近により刺激された低気圧の影響により、今日1日は雨だそうだ。
しかし、今日までは沖縄方面の飛行機も予定通りに飛ぶらしい。
高橋:「荷物はこれで全部か?」
愛原:「そのようだ」
リサ:「エレン、忘れ物無い?」
絵恋:「うん……」
リサ:「大丈夫だって」
愛原:「よし。それじゃあ、後ろに乗ってくれ」
私はリースしているミニバンのリアシートに、リサと絵恋さんを座らせた。
私は助手席。
愛原:「よし、高橋。出してくれ」
高橋:「分かりました」
愛原:「ルートはオマエに任せる」
高橋:「了解です。羽田空港の第1ターミナルですね?」
愛原:「そうだ。そこになるべく近い駐車場がいいな」
高橋:「分かりました。では、出発します」
高橋は車を発進させた。
そこそこの強さの雨が降っているので、フロントガラスの上はワイパー規則正しく動いている。
絵恋さんは寂しそうだ。
高橋:「首都高通っていいっスよね?」
愛原:「当たり前だよ。でも、飛ばし過ぎるなよ?」
高橋:「分かってますって」
[同日17:30.天候:雨 東京都大田区羽田空港 羽田空港P1駐車場→第1ターミナル]
高橋はレインボーブリッジではなく、首都高湾岸線経由で向かった。
元走り屋として、レインボーブリッジよりも湾岸線の方が関心が高いのだろうか。
それでも多少混雑した場所はあったものの、どうにか間に合った。
愛原:「リムジンバスの中から見たことがあるが、確かに立体駐車場だな」
高橋:「そうですね」
屋上だと雨に濡れる恐れがある。
屋上以外の場所がいい。
そう思っていたら、5階が空いていたので、そこに向かった。
愛原:「良かった。立体駐車場の屋上以外だったら、雨に濡れなくて済む」
高橋:「それがこういう立駐のメリットですね。デメリットとしては、高層階しか空いてない場合、上り下りがメンド臭いってことです」
愛原:「まあな」
そして、空いているスペースに車を止めた。
愛原:「はい、着いたよ。荷物降ろしてー」
リサ:「はーい。エレン、降りて。着いた」
絵恋:「うん……」
絵恋さんは寂しそうに車を降りる。
愛原:「はい、忘れ物無いように」
絵恋:「はい……」
駐車場とターミナルとは、4階の渡り廊下で繋がっている。
そこを通れば、雨に濡れずにターミナルの中に入れる。
リサ:「先生、エレンは夕食どうするの?」
愛原:「18時20分離陸じゃ、食べてるヒマが無いな。俺だったら、空弁買って、機内で食べるかな」
リサ:「空弁?」
愛原:「駅弁の航空版だよ。駅弁は駅で買って、列車の中で食べるだろ?空弁は空港で買って、機内で食べるんだ」
リサ:「そうなんだ。わたしも食べてみたーい!」
愛原:「オマエは飛行機乗らないだろ?」
絵恋:「も、もし、何だったら、今からでもリサさんと沖縄に……!」
高橋:「おー、行ってこーい」
愛原:「2人とも!それはダメだよ」
高橋:「何でですか?」
愛原:「リサが他の地方に行く場合は、事前の許可が必要なんだ。それをまだ取っていないし、すぐに取れるものじゃない」
尚、近日中に帰省で仙台に向かう際の同行については、既に許可を得ている。
愛原:「それに……」
高橋:「それに?」
私はターミナルに掲げられているタイムテーブルを指さした。
愛原:「絵恋さんの乗る便、満席だってよ?」
絵恋:「ええーっ!?」
高橋:「マジっスか……」
もちろん、絵恋さんは既に予約を取っている。
絵恋:「お昼くらいまで、『空席あり』だったのに……」
愛原:「恐らく、明日から台風の影響で航空便に影響が出る。そうなる前に、予定を前倒して沖縄に行こうっていう人達で満席になったんだろうな」
もっとも、絵恋さんのことだ。
いくらLCCでも、もう少し金を出して、広い席を確保するくらい朝飯前だろう。
リサ:「未許可で満席なら、しょうがない」
絵恋:「うぅう……」
愛原:「元気出しなよ。空弁買ってあげるから」
絵恋:「いえ。とても、お弁当など食べる気には……」
愛原:「食べといた方がいい。沖縄に着くのは、夜だろう?」
絵恋:「そうですけど……」
愛原:「リサ。絵恋さんの為に、空弁見繕ってやれよ」
リサ:「分かった。エレン、行こう」
絵恋:「うん……」
2人の少女は空弁売り場に向かった。
リサのことだから、自分が食べたい肉系統を選ぶだろうが、果たして……。
リサ:「エレンの為に選んだ」
愛原:「で、何を?」
リサ:「『石垣牛焼肉弁当』」
高橋:「それ、オメーが食いたいヤツじゃねーのか?」
リサ:「それもある」
愛原:「そういえば、沖縄はステーキも美味いんだったな」
リサ:「マジ!?」
愛原:「警備会社時代、社員旅行で沖縄に行ったことがあるんだが、沖縄が地元の先輩に、美味いステーキ屋に連れて行ってもらったことがあって、あれは本当良かったな」
リサ:「……わたしも行ってみたーい!」
絵恋:「是非来て!何なら明日にでも!」
愛原:「いや、だから、明日は台風が来て欠航だって」
高橋:「早く、手荷物検査受けに行けよ。飛行機乗り遅れるぞ」
結局、絵恋さんは時間ギリギリのタイミングで保安検査場に向かったのだった。
鉄道なら入場券を買えばホームまで見送りに行けるのだが、空港だとなぁ……。
保安検査場までしか、行けないからな……。
愛原:「なあ、提案があるんだが……」
高橋:「何でしょう?」
愛原:「絵恋さんの飛行機を見送りに、展望デッキまで行かないか?」
高橋:「こんな雨ん中っスか!?」
愛原:「そうなんだ。もちろん、無理にとは言わないよ」
リサ:「行く。エレンにも、展望デッキから見送るってLINEしとく」
高橋:「マジかよ……」
愛原:「何だったら高橋は、タバコ吸いに行ってていいぞ?」
高橋:「あー……じゃあ、そうさせてもらいます」
リサ:「因みにわたし達の夕食は?」
愛原:「ここのレストランで食べよう」
リサ:「おー!」
私は手持ちのビニール傘を手に、リサは撥水効果のあるウインドブレーカーを羽織り、フードを被って展望デッキに向かった。
リサ:「こんな雨でも、飛行機飛ぶの?」
愛原:「風さえ強く吹いていなければ大丈夫だよ。雲の上に出れば、雨は関係無いしな」
リサ:「なるほど」
リサは納得したように頷いた。