報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「地下研究所」

2019-02-19 18:53:10 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月20日13:30.天候:不明 千葉県銚子市 ニューグランドホテル犬吠・旧館地下4F] 

 見取り図にあった古いエレベーターに乗って地下深くまで下りると、無機質なコンクリート壁がまず目に付いた。
 そして、また階段があって更に下る。
 下りると左に鉄製のドアがあり、そこを開けると……。

 愛原:「あー、あった。これが旧アンブレラの秘密研究所か……」

 意外なことに、中の造りは意外と秘密めいてはいない。
 普通の製薬会社の研究所を訪れると、中はこんな感じ的な……。

 愛原:「総合受付がある。すいませーん!見学希望の者ですがぁ!」
 高橋:「誰もいませんよ、先生」
 愛原:「それもそうだな」
 
 この研究所も停電はしておらず、ちゃんと照明が点いていた。
 まるで、つい最近まで活動していたかのようだ。

 愛原:「誰もいないのなら、ちょっと家探しさせてもらうか」
 高橋:「うっス!」

 本当はホテル旧館地下の旧アンブレラの秘密研究所を見つけたら、それでもうミッションは終了だ。
 後は手持ちのデジカメで証拠の写真でも撮れば良い。
 さすがにタイラントそのものと、タイラントに追われている最中に写真は撮れなかったがな。
 あとは何かこう……証拠となるようなものを手土産に持ち帰ればいいだろう。
 だが、引っ越しする気は満々だったようで、受付の周りも、その奥の事務室もすっかり片付けられていた。
 使われなくなった事務机や椅子などが放置されているだけで、書類などは1枚も無い。

 愛原:「さすがは世界的なバイオテロ組織。そう簡単に尻尾は掴ませないってか」
 高橋:「その割にはタイラントなんて御大層なモノ、放置して行きましたよね」
 愛原:「それな」

 ここの旧アンブレラの関係者達は慌てて出て行ったのか、或いは計画的に出て行ったのか分からんな。
 まあ、計画的に出て行ったのだが、一応慌てて出て行ったかのようなフリをした?
 いや、誰得だよそれ?って感じだな。
 総合受付のあるレセプションホールには警備室もある。
 そこに入ると、警備システムはまだ稼働していた。

 愛原:「ここの警備室で電子ロックを解除できるな」
 高橋:「でも、やっぱりカードが必要みたいですよ」

 私は無言で先ほどのカードキーを取り出した。
 で、それを端末横の穴に差し込むと、操作できるようになった。

 愛原:「後で新館のホテルマンをボコして、どういうことだかゲロさせましょう」
 高橋:「いや、普通に聞こうよ」

 所内の監視カメラを見てみたが、人影など全く映っていなかった。
 ゾンビもいないし、ハンターやリッカーもいなさそうだ。
 じゃあ、あのタイラントはどうしてあそこにいたんだ?
 私はついここから脱走したのだろうと思っていたのだが……。

 愛原:「よし。電子ロックは全て解除したぞ」
 高橋:「さすがです」
 愛原:「ついでにタイラントが来られないよう、ここからあのエレベーターの電源を切っておく。あとは入口の鉄扉も電子ロックだ」

 あの馬鹿力でブチ破られそうな気はするが、足止めさせておく時間は必要だ。

 愛原:「あとは別の脱出経路の確保だな」
 高橋:「えっ?」
 愛原:「だって今来た道は戻れないだろ?タイラントが張ってるんだから……」
 高橋:「あっ、そうか……。でも、都合良くありますかね?」
 愛原:「こういう秘密の施設ってもんは、ヤバくなった場合、自爆装置でも付いているものだ。で、関係者まで巻き込まれるわけには行かないから、関係者だけでも助かる方法が確保されているはずなんだ。例えば脱出ポッドとかな」
 高橋:「なるほど」

 私は室内にあった所内の見取り図を引っ張り出した。

 愛原:「あった!この研究所の最深部に、何かトロッコのようなものがあるみたいだぞ。これを使えば脱出できる」
 高橋:「どうやって行きますか?」
 愛原:「エレベーターを起動させて、それから……。高橋、お前も手伝え」
 高橋:「はい」

 脱出経路を確保するのに30分以上は要した気がする。
 だが、これで安全に脱出できるはずだ。

[同日14:00.天候:不明 同市内 旧アンブレラコーポレーション・ジャパン地下秘密研究所]

 脱出経路を確保した私達は、脱出用のトロッコがある最深部へ向かうことにした。
 幸いゲームや映画のように、ゾンビが徘徊していたり、クリーチャーが跋扈しているというようなことは無かった。
 一応、タイラントが追って来る気配は無いものの、入口は塞いでいるが、それでも万が一ということがある。
 ボヤボヤはできなかった。

 愛原:「ん!?」

 途中の部屋に、この研究所で研究されていたであろう物があった。
 「ある」のではなく、「あった」だ。
 何故過去形かというと、それが入っていたと思われるカプセルが見るも無残に破壊され、いなくなっていたからである。
 かなり大きなカプセルだ。
 私はもちろん、高橋が入ってもまだ余りそうな……って!

 高橋:「先生!これ、あのタイラントが入っていたカプセルじゃ!?」
 愛原:「やっぱり脱走していたのか!」

 私はもちろんこのカプセルについても写真を撮った。
 他にもカプセルがあったが、それらはもぬけの殻だった。
 最初から無かったのか、或いは移設されただけなのかは分からない。

 愛原:「ああ、なるほど。そういうことか」

 何で秘密研究所がここにあるのか分かったような気がした。
 千葉県銚子市は太平洋に面している。
 で、この研究所も、すぐそこが海のはずだ。
 アメリカのアンブレラ本体からタイラントなどを船で移送する為なのではないか?
 脱出用のトロッコも、普段は船の『積み荷』を研究所に移送する為に使用されていたのではないかと推理する。
 ま、確たる証拠は無いがな。

 高橋:「ん?こっちのドアは?」
 愛原:「見取り図によると、ただの倉庫らしいな。多分そこももぬけの殻だろう」

 高橋が開けてみると……。

 高橋:「先生、何か服とか掛かってますけど?」
 愛原:「ん?」

 ハンガーラックがあり、そこにタイラントが着ていたコートとか帽子とかが掛けてあった。
 他にも服飾関係のものがある。
 ここは衣裳部屋か何かか?

 高橋:「先生、これ見覚えありませんか!?」

 高橋はラックに掛かっている服から、セーラー服を取り出した。
 サイズ的には女子高生よりも、女子中学生とか……或いは私立の女子小学生が着るような……。

 愛原:「リサだ!リサの服だ!!」

 霧生市でリサと初めて会った時、彼女はセーラー服を着ていた。
 そして仙台市郊外の廃校地下に建設された秘密研究所で再会した時も、彼女は同じ服を着ていた。

 高橋:「仮面もあります!」

 霧生市で初めて会った時、リサは目の部分しか開いていない白い仮面を着けていた。
 今となっては、それがリサ・トレヴァーの暴走を防止する為の装置であったと思われる。

 愛原:「ここにリサがいたのか!?」
 高橋:「……か、或いはリサの仲間か……」

 そう言えばリサはタイラントと一緒にいた。
 ここにもタイラントがいるということは、リサの仲間もいるということだ!

 愛原:「さっき監視カメラで見た時、それらしい姿は無かったぞ?」
 高橋:「カメラの映らない所に隠れているか、或いはどこかに連れて行かれたのかもしれませんね」

 或いは、私達と今一緒に暮らしているリサ本人がここに……。
 いや、それは無いな。
 彼女の記憶が無いのは、人間だった頃のみ。
 リサ・トレヴァーとなってからの記憶ははっきりしているので、もしここにいたことがあるのなら、とっくに私にその話をしていても良いはずだ。

 愛原:「高橋君、この辺りをもう少し詳しく調べてみよう。もしかしたら、リサのことがもっとわかる何かがあるかもしれない」
 高橋:「はい!」
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「アンブレラの秘密施設」

2019-02-19 10:11:07 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月20日13:00.天候:曇 千葉県銚子市 ニューグランドホテル犬吠・旧館2F]

 愛原:「マジかよ……」

 私と高橋は旧館のエントランスホールにいる。
 新館と同様、ここも2階までの吹き抜けロビーになっており、フロントもある。
 新館と違うのは、その中央には銅製の女神像が鎮座していることだ。
 台座には掌サイズのメダルを嵌め込む穴が3つあり、つまりメダルを3個集めると銅像の下に隠されている秘密の隠し通路が現れる仕掛けのようである。
 ところが途中、侵入者などを追い回して殺す人型クリーチャー『タイラント』が現れて、私達はその追跡を交わしながらメダルを集めていたというわけだ。
 あいつはリサ・トレヴァー同様、生半可な銃器による攻撃は効かない。
 リサと違うのは、コルトパイソン辺りくらいの大型拳銃まで行けば、何とかダメージを与えられるようなのだ。
 で、ロケットランチャーがあれば完全に倒せる。
 もちろん、そんなもの自衛隊や米軍の施設にでも行かなければ無いだろう。
 で、私が絶望している理由というのは……。

 高橋:「タイラントのヤツ、番張ってやがりますよ?」
 愛原:「うん……」

 そうなのだ。
 あの銅像の前で、タイラントは『立哨』を開始した。
 どうやら私を捜し回り、追い掛けるのは不毛だと判断したらしい。
 そして私達があの銅像の仕掛けを解こうとしているのに気づき、そこで待っていれば必ず私達が現れると踏んだのだろう。
 最近の人型クリーチャーというのは、本当に狡賢くなったものだ。

 高橋:「ロケランで体バラバラにしてやりてぇ……!」
 愛原:「どこにそんなものがあるんだよ?」

 このままでは埒が明かない。

 愛原:「リサを呼ぶか?タイラントはリサの言う事を聞くはずだ」
 高橋:「たまたま霧生市のヤツがそうだっただけで、あいつは聞きますかね?」
 愛原:「リサも人型クリーチャーだ。もしかしたら、代わりにタイラントを倒してくれるかもしれんぞ?霧生市のヤツが言う事を聞いていたのも、リサの方が強かったからだろ?」
 高橋:「あ、そうか。ヤツの気を引かせるのはリサくらしいかいないってことですね。こういう時にしか役に立たないんだから、さっさと呼びましょう」
 愛原:「こらこら、そういう言い方するな。……ん?お前、今何て言った?」
 高橋:「は?ヤツの気を引かせるのはリサだけって話ですか?」
 愛原:「そうだよ!ヤツの気を引かせればいいんだ!」
 高橋:「だからリサを……」
 愛原:「いや!気を引かせるだけなら、他にも方法はある!」
 高橋:「???」
 愛原:「お前、タバコとライター持ってるよな?」
 高橋:「俺の初期アイテムですから。でも先生の前では吸いませんよ?」
 愛原:「分かってる。俺は作者と同様、嫌煙者だからな」

 雲羽:「インフルエンザ発症前は別に横でトチロ〜さんが吸っていても全然平気だったのですが、発症後は喘息の症状も併発し、今もそれが残っているので、喘息が治るまで受動喫煙は勘弁してください」

 愛原:「俺にいい作戦がある。タバコとライター持って来い」
 高橋:「はい」

 私達は一旦その場から離れた。

[同日13:15.天候:曇 同ホテル旧館1F・男子トイレ→2F・エントランスホール]

 

 高橋:「先生、一体何をするつもりですか?」

 私は天井を見上げた。

 愛原:「うん、やっぱりある」
 高橋:「何がですか?」
 愛原:「あそこに何か書いてあるだろ?何て書いてある?」
 高橋:「『トイレ内は禁煙です。もし喫煙された場合、警報器が鳴ります』……あっ、そうか!」
 愛原:「そういうことだよ。早いとこ、タバコに火を点けろ」
 高橋:「はい!」

 高橋はタバコを取り出した。

 高橋:「先生にアイコス勧められて、そうしようかと思っていた矢先だったんですよ」
 愛原:「加熱式の方が煙が出にくいからな。そうしてもらえると助かるということだったんだ」

 しかし今、高橋が持っているのは普通のタバコ。
 高橋は煙草に火を点けた。

 愛原:「吸うなよw」
 高橋:「え?」
 愛原:「センサーの真下に今火を点けたタバコを置くんだ」
 高橋:「は、はい」

 高橋は感知器の真下にタバコを置いた。

 愛原:「よし、さっきの場所に戻るぞ」
 高橋:「はい!」

 私達は階段を駆け登り、2階へと戻った。
 すると!

〔ビーッ! 火災警報器が作動しました。直ちに現場を確認してください。ビーッ! 火災警報器が作動しました。直ちに現場を確認してください〕

 タイラント:「!?」

 タイラントはハッとフロントの奥の事務所の方に目をやった。
 そして私の目論見通り、ヤツはフロントの奥へと歩いて行った。

 愛原:「今だ!」

 私達は吹き抜け階段を駆け下りると、最後の1つを台座の穴に嵌め込んだ。
 そして、階段を下りた先の扉が自動で開いた。

 高橋:「やりました、先生!」
 愛原:「行くぞ、早く!」

 入口の高さは1.5メートルほどの高さしか無い。
 長身の高橋はもちろんのこと、中肉中背の私でも屈まないと入れないほどだ。

 タイラント:「!!!」

 気づいたタイラントが戻って来て、私達を追い掛け始めた。
 だが、タイラントは高橋よりも20cm以上高い。
 タイラントにとっては小さな穴だ。
 それでも体をねじ込ませて、私達を追おうとする。
 階段を駆け下りると、あの見取り図の通り、古めかしいエレベーターがあった。
 何しろ外側も内側も、引き戸式の鉄格子の扉だぞ。
 確か、日本橋高島屋だか三越のエレベーターもこんな感じじゃなかったか?
 これは手動式だ。
 私は手で鉄格子を開けようとしたが、何故か開かない。
 このままではタイラントに追いつかれてしまう!

 高橋:「先生、先生!」
 愛原:「あ?何だ?」
 高橋:「これ、何ですかね?」

 高橋が指さしたのは、ドアの横にある穴。
 カードを差し込む穴のようだ。

 高橋:「カードか何かを差し込まないと開かないんじゃないですか?」
 愛原:「マジかよ!?そんなもの持ってないぞ!」

 だが、その装置をよく見ると、何のカードを差し込めば良いのかのイラストが描いてある。
 そしてそのイラストに、私は見覚えがあった。

 愛原:「これか!?」

 それは新館の客室ドアのカードキー。
 試しにそれを差し込んでみた。

 ピー!……ガチャ。

 高橋:「あ、ロックが解除されました」
 愛原:「マジかよ!?何だこのカードは!?」
 高橋:「それより早く!」
 愛原:「お、おう!」

 私はすぐに鉄格子のドアを開けた。
 ドスッドスッとタイラントの重厚な足音がもうすぐそこまで来ている。
 外側の鉄格子と内側の鉄格子をちゃんとガチャンとロックが掛かるまで閉めないと、このエレベーターは動かない。
 そして、ボタンを押すと同時にタイラントが向こう側から現れた。

 愛原:「おい、タイラント!いい加減にしないとリサ・トレヴァーを呼ぶぞ!!」

 下降を始めたエレベーター。
 私は鉄格子越しにタイラントに怒鳴り付けた。
 すると、タイラントはピタッと歩みを止めた。

 タイラント:「リサ……トレヴァー……?」

 ゆっくり下降するエレベーター。

 高橋:「あんなんで脅しになりますかね?」
 愛原:「だが一瞬あいつ、止まったぞ?」
 高橋:「早く着いてくれないと、あいつのことだからドアぶち破って追い掛けて来ますよ」
 愛原:「そうだな」

 だが、エレベーターが到着するまでそんなことは無かった。
 一応、私の捨て台詞は効いたのだろうか?
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする