報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「アンブレラの秘密施設」

2019-02-19 10:11:07 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月20日13:00.天候:曇 千葉県銚子市 ニューグランドホテル犬吠・旧館2F]

 愛原:「マジかよ……」

 私と高橋は旧館のエントランスホールにいる。
 新館と同様、ここも2階までの吹き抜けロビーになっており、フロントもある。
 新館と違うのは、その中央には銅製の女神像が鎮座していることだ。
 台座には掌サイズのメダルを嵌め込む穴が3つあり、つまりメダルを3個集めると銅像の下に隠されている秘密の隠し通路が現れる仕掛けのようである。
 ところが途中、侵入者などを追い回して殺す人型クリーチャー『タイラント』が現れて、私達はその追跡を交わしながらメダルを集めていたというわけだ。
 あいつはリサ・トレヴァー同様、生半可な銃器による攻撃は効かない。
 リサと違うのは、コルトパイソン辺りくらいの大型拳銃まで行けば、何とかダメージを与えられるようなのだ。
 で、ロケットランチャーがあれば完全に倒せる。
 もちろん、そんなもの自衛隊や米軍の施設にでも行かなければ無いだろう。
 で、私が絶望している理由というのは……。

 高橋:「タイラントのヤツ、番張ってやがりますよ?」
 愛原:「うん……」

 そうなのだ。
 あの銅像の前で、タイラントは『立哨』を開始した。
 どうやら私を捜し回り、追い掛けるのは不毛だと判断したらしい。
 そして私達があの銅像の仕掛けを解こうとしているのに気づき、そこで待っていれば必ず私達が現れると踏んだのだろう。
 最近の人型クリーチャーというのは、本当に狡賢くなったものだ。

 高橋:「ロケランで体バラバラにしてやりてぇ……!」
 愛原:「どこにそんなものがあるんだよ?」

 このままでは埒が明かない。

 愛原:「リサを呼ぶか?タイラントはリサの言う事を聞くはずだ」
 高橋:「たまたま霧生市のヤツがそうだっただけで、あいつは聞きますかね?」
 愛原:「リサも人型クリーチャーだ。もしかしたら、代わりにタイラントを倒してくれるかもしれんぞ?霧生市のヤツが言う事を聞いていたのも、リサの方が強かったからだろ?」
 高橋:「あ、そうか。ヤツの気を引かせるのはリサくらしいかいないってことですね。こういう時にしか役に立たないんだから、さっさと呼びましょう」
 愛原:「こらこら、そういう言い方するな。……ん?お前、今何て言った?」
 高橋:「は?ヤツの気を引かせるのはリサだけって話ですか?」
 愛原:「そうだよ!ヤツの気を引かせればいいんだ!」
 高橋:「だからリサを……」
 愛原:「いや!気を引かせるだけなら、他にも方法はある!」
 高橋:「???」
 愛原:「お前、タバコとライター持ってるよな?」
 高橋:「俺の初期アイテムですから。でも先生の前では吸いませんよ?」
 愛原:「分かってる。俺は作者と同様、嫌煙者だからな」

 雲羽:「インフルエンザ発症前は別に横でトチロ〜さんが吸っていても全然平気だったのですが、発症後は喘息の症状も併発し、今もそれが残っているので、喘息が治るまで受動喫煙は勘弁してください」

 愛原:「俺にいい作戦がある。タバコとライター持って来い」
 高橋:「はい」

 私達は一旦その場から離れた。

[同日13:15.天候:曇 同ホテル旧館1F・男子トイレ→2F・エントランスホール]

 

 高橋:「先生、一体何をするつもりですか?」

 私は天井を見上げた。

 愛原:「うん、やっぱりある」
 高橋:「何がですか?」
 愛原:「あそこに何か書いてあるだろ?何て書いてある?」
 高橋:「『トイレ内は禁煙です。もし喫煙された場合、警報器が鳴ります』……あっ、そうか!」
 愛原:「そういうことだよ。早いとこ、タバコに火を点けろ」
 高橋:「はい!」

 高橋はタバコを取り出した。

 高橋:「先生にアイコス勧められて、そうしようかと思っていた矢先だったんですよ」
 愛原:「加熱式の方が煙が出にくいからな。そうしてもらえると助かるということだったんだ」

 しかし今、高橋が持っているのは普通のタバコ。
 高橋は煙草に火を点けた。

 愛原:「吸うなよw」
 高橋:「え?」
 愛原:「センサーの真下に今火を点けたタバコを置くんだ」
 高橋:「は、はい」

 高橋は感知器の真下にタバコを置いた。

 愛原:「よし、さっきの場所に戻るぞ」
 高橋:「はい!」

 私達は階段を駆け登り、2階へと戻った。
 すると!

〔ビーッ! 火災警報器が作動しました。直ちに現場を確認してください。ビーッ! 火災警報器が作動しました。直ちに現場を確認してください〕

 タイラント:「!?」

 タイラントはハッとフロントの奥の事務所の方に目をやった。
 そして私の目論見通り、ヤツはフロントの奥へと歩いて行った。

 愛原:「今だ!」

 私達は吹き抜け階段を駆け下りると、最後の1つを台座の穴に嵌め込んだ。
 そして、階段を下りた先の扉が自動で開いた。

 高橋:「やりました、先生!」
 愛原:「行くぞ、早く!」

 入口の高さは1.5メートルほどの高さしか無い。
 長身の高橋はもちろんのこと、中肉中背の私でも屈まないと入れないほどだ。

 タイラント:「!!!」

 気づいたタイラントが戻って来て、私達を追い掛け始めた。
 だが、タイラントは高橋よりも20cm以上高い。
 タイラントにとっては小さな穴だ。
 それでも体をねじ込ませて、私達を追おうとする。
 階段を駆け下りると、あの見取り図の通り、古めかしいエレベーターがあった。
 何しろ外側も内側も、引き戸式の鉄格子の扉だぞ。
 確か、日本橋高島屋だか三越のエレベーターもこんな感じじゃなかったか?
 これは手動式だ。
 私は手で鉄格子を開けようとしたが、何故か開かない。
 このままではタイラントに追いつかれてしまう!

 高橋:「先生、先生!」
 愛原:「あ?何だ?」
 高橋:「これ、何ですかね?」

 高橋が指さしたのは、ドアの横にある穴。
 カードを差し込む穴のようだ。

 高橋:「カードか何かを差し込まないと開かないんじゃないですか?」
 愛原:「マジかよ!?そんなもの持ってないぞ!」

 だが、その装置をよく見ると、何のカードを差し込めば良いのかのイラストが描いてある。
 そしてそのイラストに、私は見覚えがあった。

 愛原:「これか!?」

 それは新館の客室ドアのカードキー。
 試しにそれを差し込んでみた。

 ピー!……ガチャ。

 高橋:「あ、ロックが解除されました」
 愛原:「マジかよ!?何だこのカードは!?」
 高橋:「それより早く!」
 愛原:「お、おう!」

 私はすぐに鉄格子のドアを開けた。
 ドスッドスッとタイラントの重厚な足音がもうすぐそこまで来ている。
 外側の鉄格子と内側の鉄格子をちゃんとガチャンとロックが掛かるまで閉めないと、このエレベーターは動かない。
 そして、ボタンを押すと同時にタイラントが向こう側から現れた。

 愛原:「おい、タイラント!いい加減にしないとリサ・トレヴァーを呼ぶぞ!!」

 下降を始めたエレベーター。
 私は鉄格子越しにタイラントに怒鳴り付けた。
 すると、タイラントはピタッと歩みを止めた。

 タイラント:「リサ……トレヴァー……?」

 ゆっくり下降するエレベーター。

 高橋:「あんなんで脅しになりますかね?」
 愛原:「だが一瞬あいつ、止まったぞ?」
 高橋:「早く着いてくれないと、あいつのことだからドアぶち破って追い掛けて来ますよ」
 愛原:「そうだな」

 だが、エレベーターが到着するまでそんなことは無かった。
 一応、私の捨て台詞は効いたのだろうか?

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