[1月20日10:00.天候:曇 千葉県銚子市 ニューグランドホテル犬吠・1Fフロント]
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
慰安旅行で犬吠埼温泉に一泊した私達は、ホテルを引き払うところであった。
フロント係:「あ、こちらのカードキーはどうぞお持ち帰りになってください」
愛原:「えっ、いいの?」
このホテルの客室のドアはカードキーで解錠するタイプ。
他の宿泊客は緑色のカードなのに、私達だけはゴールドであった。
株主優待で宿泊したからなのだろうか。
フロント係:「はい。カードキーの情報は毎日変更しておりますので、このカードは今日から使えなくなります」
愛原:「あ、そういうこと」
近代的なオフィスの社員証みたいなものだな。
チェック・アウトの手続きが終わると、私達はホテルをあとにした。
因みに高野君達は、先に出発していてもらっている。
愛原:「それじゃ行くか」
高橋:「はい」
公道に出るのとは逆方向、駐車場の方向に行った。
確かに駐車場部分は広くなっていて、道はその先まで続いている。
が、その入口には『この先、工事中』という立て看板が立っていた。
駐車場の先へ行くと、いきなり道が荒れ始めた。
ここから完全に管理が放棄されているといった感じだ。
愛原:「一瞬、林っぽい中に入って行く感じがするから、いい隠れ場所だな」
高橋:「もうこの時点で、何らかのクリーチャーに遭遇しそうな感じですよ」
愛原:「まさか……」
アスファルトがヒビだらけで、時々剥がれてしまっている。
車で走ろうものなら、きっとガタガタに揺れることだろう。
そんな道を進んで行くと、本当に終点に着いた。
ロータリーになっていて、道はここからまた駐車場や新館の方に折り返しできるようになっている。
で、その真正面には旧館のエントランスがあった。
リニューアルされた新館と比べれば、とても殺風景だ。
昭和時代の急ピッチで建てられたホテルの別館そのものである。
高橋:「先生、鍵が掛かってますよ?」
愛原:「そりゃそうだろ」
新館は自動ドアだったが、こっちの旧館は前後に開閉するテンパドアだった。
私があちこち開けようとすると……。
愛原:「あっ!」
1ヶ所だけ鍵が開いていた。
高橋:「先生……」
愛原:「なるほど。斉藤社長の依頼は本当らしい」
高橋:「どうしますか?」
愛原:「もちろん入るさ。準備はいいか?」
高橋:「大丈夫です」
私達は旧館内部に入った。
こちらも新館(本館)同様、2階まで吹き抜けのエントランスロビーがあった。
愛原:「でもやっぱり荒れてるな」
高橋:「ほとんど工事なんてしてなさそうですね。で、放置されてから何年も経ってる」
愛原:「ああ」
ガラスが割れてる所は木の板を張って補修したようだが、これが尚更廃墟感を出している。
また、採光も悪くなり、本来なら明るいエントランスが薄暗くなってしまっていた。
一応、懐中電灯は持って来てるけどね。
高橋:「先生、どこを探しましょうか?」
愛原:「旧アンブレラが出入りしていたわけで、その痕跡を見つければいいわけだよ。この場合、地下の施設って感じだな」
高橋:「じゃあ、地下へと下りてみま……」
その時、高橋が1つの像に目を留めた。
愛原:「どうした?」
高橋:「これ……ああ、やっぱりアンブレラの奴らが出入りしてたっぽいです」
愛原:「どうして分かる?」
高橋:「この銅像の台座に、3つの丸い窪みがあるじゃないですか」
愛原:「ああ、あるね」
高橋:「この窪みに合うメダルを嵌め込んでやると、銅像が動いて地下秘密施設への入口が開くって寸法なんじゃないかと」
愛原:「今からこのメダルを3つ探せって?何の手かがりも無いのに?」
高橋:「ちょっと無理っぽいですね」
愛原:「当たり前だろ。1つ探すだけでも日が暮れるよ。とにかく、それっぽい物を見つけただけでも報告できるんだ。他を探そう」
高橋:「はい」
非常階段で地下へ向かう階段を下りてみる。
所々壁が崩れているのは、震災の揺れでやられたのだろうか。
愛原:「こっちは真っ暗だな」
高橋:「やっぱり停電してますか?」
愛原:「当たり前だろ」
高橋:「でもさっき、フロントの下にあった冷蔵庫、電源入ってましたよ」
愛原:「はあ!?」
高橋:「何も入ってませんでしたけどね」
愛原:「おい、ウソだろ?」
地下室は機械室になっている。
高橋が入ってみて、すぐ横のスイッチに手を伸ばすと……。
高橋:「あっ、点いた」
薄暗いながらも照明が点いた。
愛原:「マジかよ!」
この旧館は停電していたわけではなかったのか!
機械室内を一通り探索してみる。
愛原:「あ、バルブハンドル見っけ」
高橋:「定番ですね。俺はバールのようなものを見つけました」
愛原:「いや、だからバールだろ。ニュースでも、『犯人はバールのような物で被害者を殴り付け……』みたいなこと言うけど、『いや、バールだろ!』っていつも突っ込んでる」
高橋:「さすが先生です。これでハンドガンとか落ちてたらガチなんですけどね」
愛原:「ガチ過ぎて、それだけで探索は中止だ」
私が拾ったのはドライバーセットだったが、こんなものでも何かの役に立つかな。
愛原:「ここから更に下に行けないかね?」
高橋:「それっぽそうなのは見当たらないですねぇ……。やっぱあの銅像を作動させないと……」
愛原:「まだ言うか。一旦、上に戻ろう」
高橋:「はい」
私達は再びエントランスホールに戻った。
愛原:「しょうがないからホテルの奥を探索しよう」
高橋:「そうですね」
思い当たる節があって、1階の渡り廊下。
そこの入口は観音開きの防火戸が閉ざされていた。
上を見ると、『本館↑』という看板がぶら下がっていた。
この渡り廊下を進んで行くと、今の新館側に通じているのだろう。
だが向こう側からも防火シャッターが下ろされていて、旧館へは行けないようになっている。
愛原:「ん?何か聞こえないか?」
高橋:「え?何がですか?」
愛原:「あの、暗い所から何か聞こえるんだが……」
それは何だと思う?
1:呻き声
2:話し声
3:水の音
4:波の音
5:風の音
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
慰安旅行で犬吠埼温泉に一泊した私達は、ホテルを引き払うところであった。
フロント係:「あ、こちらのカードキーはどうぞお持ち帰りになってください」
愛原:「えっ、いいの?」
このホテルの客室のドアはカードキーで解錠するタイプ。
他の宿泊客は緑色のカードなのに、私達だけはゴールドであった。
株主優待で宿泊したからなのだろうか。
フロント係:「はい。カードキーの情報は毎日変更しておりますので、このカードは今日から使えなくなります」
愛原:「あ、そういうこと」
近代的なオフィスの社員証みたいなものだな。
チェック・アウトの手続きが終わると、私達はホテルをあとにした。
因みに高野君達は、先に出発していてもらっている。
愛原:「それじゃ行くか」
高橋:「はい」
公道に出るのとは逆方向、駐車場の方向に行った。
確かに駐車場部分は広くなっていて、道はその先まで続いている。
が、その入口には『この先、工事中』という立て看板が立っていた。
駐車場の先へ行くと、いきなり道が荒れ始めた。
ここから完全に管理が放棄されているといった感じだ。
愛原:「一瞬、林っぽい中に入って行く感じがするから、いい隠れ場所だな」
高橋:「もうこの時点で、何らかのクリーチャーに遭遇しそうな感じですよ」
愛原:「まさか……」
アスファルトがヒビだらけで、時々剥がれてしまっている。
車で走ろうものなら、きっとガタガタに揺れることだろう。
そんな道を進んで行くと、本当に終点に着いた。
ロータリーになっていて、道はここからまた駐車場や新館の方に折り返しできるようになっている。
で、その真正面には旧館のエントランスがあった。
リニューアルされた新館と比べれば、とても殺風景だ。
昭和時代の急ピッチで建てられたホテルの別館そのものである。
高橋:「先生、鍵が掛かってますよ?」
愛原:「そりゃそうだろ」
新館は自動ドアだったが、こっちの旧館は前後に開閉するテンパドアだった。
私があちこち開けようとすると……。
愛原:「あっ!」
1ヶ所だけ鍵が開いていた。
高橋:「先生……」
愛原:「なるほど。斉藤社長の依頼は本当らしい」
高橋:「どうしますか?」
愛原:「もちろん入るさ。準備はいいか?」
高橋:「大丈夫です」
私達は旧館内部に入った。
こちらも新館(本館)同様、2階まで吹き抜けのエントランスロビーがあった。
愛原:「でもやっぱり荒れてるな」
高橋:「ほとんど工事なんてしてなさそうですね。で、放置されてから何年も経ってる」
愛原:「ああ」
ガラスが割れてる所は木の板を張って補修したようだが、これが尚更廃墟感を出している。
また、採光も悪くなり、本来なら明るいエントランスが薄暗くなってしまっていた。
一応、懐中電灯は持って来てるけどね。
高橋:「先生、どこを探しましょうか?」
愛原:「旧アンブレラが出入りしていたわけで、その痕跡を見つければいいわけだよ。この場合、地下の施設って感じだな」
高橋:「じゃあ、地下へと下りてみま……」
その時、高橋が1つの像に目を留めた。
愛原:「どうした?」
高橋:「これ……ああ、やっぱりアンブレラの奴らが出入りしてたっぽいです」
愛原:「どうして分かる?」
高橋:「この銅像の台座に、3つの丸い窪みがあるじゃないですか」
愛原:「ああ、あるね」
高橋:「この窪みに合うメダルを嵌め込んでやると、銅像が動いて地下秘密施設への入口が開くって寸法なんじゃないかと」
愛原:「今からこのメダルを3つ探せって?何の手かがりも無いのに?」
高橋:「ちょっと無理っぽいですね」
愛原:「当たり前だろ。1つ探すだけでも日が暮れるよ。とにかく、それっぽい物を見つけただけでも報告できるんだ。他を探そう」
高橋:「はい」
非常階段で地下へ向かう階段を下りてみる。
所々壁が崩れているのは、震災の揺れでやられたのだろうか。
愛原:「こっちは真っ暗だな」
高橋:「やっぱり停電してますか?」
愛原:「当たり前だろ」
高橋:「でもさっき、フロントの下にあった冷蔵庫、電源入ってましたよ」
愛原:「はあ!?」
高橋:「何も入ってませんでしたけどね」
愛原:「おい、ウソだろ?」
地下室は機械室になっている。
高橋が入ってみて、すぐ横のスイッチに手を伸ばすと……。
高橋:「あっ、点いた」
薄暗いながらも照明が点いた。
愛原:「マジかよ!」
この旧館は停電していたわけではなかったのか!
機械室内を一通り探索してみる。
愛原:「あ、バルブハンドル見っけ」
高橋:「定番ですね。俺はバールのようなものを見つけました」
愛原:「いや、だからバールだろ。ニュースでも、『犯人はバールのような物で被害者を殴り付け……』みたいなこと言うけど、『いや、バールだろ!』っていつも突っ込んでる」
高橋:「さすが先生です。これでハンドガンとか落ちてたらガチなんですけどね」
愛原:「ガチ過ぎて、それだけで探索は中止だ」
私が拾ったのはドライバーセットだったが、こんなものでも何かの役に立つかな。
愛原:「ここから更に下に行けないかね?」
高橋:「それっぽそうなのは見当たらないですねぇ……。やっぱあの銅像を作動させないと……」
愛原:「まだ言うか。一旦、上に戻ろう」
高橋:「はい」
私達は再びエントランスホールに戻った。
愛原:「しょうがないからホテルの奥を探索しよう」
高橋:「そうですね」
思い当たる節があって、1階の渡り廊下。
そこの入口は観音開きの防火戸が閉ざされていた。
上を見ると、『本館↑』という看板がぶら下がっていた。
この渡り廊下を進んで行くと、今の新館側に通じているのだろう。
だが向こう側からも防火シャッターが下ろされていて、旧館へは行けないようになっている。
愛原:「ん?何か聞こえないか?」
高橋:「え?何がですか?」
愛原:「あの、暗い所から何か聞こえるんだが……」
それは何だと思う?
1:呻き声
2:話し声
3:水の音
4:波の音
5:風の音