[1月20日20:56.天候:晴 東京都墨田区江東橋 JR錦糸町駅]
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
私達を乗せた総武本線上り最終の特急が、まもなく下車駅に到着しようとしていた。
自動放送が流れ始めると、私は隣に寝ている高橋を起こした。
高橋:「先生!?」
愛原:「おはよう。もうすぐ降りるぞ」
高橋:「うあっ!俺が先生を起こすはずだったのに……!」
愛原:「たまたま早めに目が覚めたんだ」
高野:「さすがは名探偵ですね」
前の席に座る高野君が後ろを振り向いて微笑を浮かべた。
リサ:「サイトー、サイトー、起きて」
リサはリサで斉藤絵恋さんを揺さぶり起こす。
斉藤:「し、幸せぇぇぇぇっ!」
起きた斉藤さん、何を寝ぼけたのかリサに抱きついた。
リサ:「サイトー、苦しい」
斉藤:「……ハッ!?り、リサさん、ごめんなさい!」
〔「まもなく錦糸町、錦糸町です。3番線に到着致します。お出口は、右側です。錦糸町から総武快速線、横須賀線方面と総武緩行線、秋葉原、新宿方面、地下鉄半蔵門線はお乗り換えです。今度の各駅停車、武蔵小金井行きは1番線から21時1分。横須賀線直通の逗子行きは、降りましたホーム1番線から21時1分の発車です。……」〕
愛原:「忘れ物無いようにな」
私の場合はお土産の他に、仕事で得た証拠品も忘れてはならない。
〔きんしちょう、錦糸町。ご乗車、ありがとうございます。次は終点、東京に止まります〕
電車が錦糸町駅に到着して、私達はホームに降り立った。
確かに横須賀線に乗り換えるのなら、この駅での乗り換えが便利であろう。
私達はもう駅の外に出ることになる。
リサ:「サイトー、変な夢見てた?」
斉藤:「そ、それは……リサさんと楽しく遊ぶ夢……」
高橋:「おーい、危ねぇ方向に行くんじゃねぇぞ」
愛原:「だからオマエが言うな」
錦糸町駅の南口に行く。
テルミナという駅ビルやヨドバシカメラがあり、とても賑わっている。
え?JRA?ウインズ錦糸町?知らんなぁ……。
メイド:「御嬢様、お迎えに上がりました」
斉藤:「あ、ありがとう」
斉藤さんは埼玉の実家を出て、私達と同じ墨田区内のマンションで暮らしている。
もちろん独り暮らしではなく、実家から派遣されているメイドさんと一緒だ。
メイド:「夜も遅いので、タクシーで帰りましょう」
斉藤:「そ、そうね」
愛原:「俺達もタクシーで帰るか」
タクシー乗り場に行く。
先に斉藤さんとメイドさんが乗り込んだ。
斉藤:「じゃあね、リサさん。また明日、学校でね」
リサ:「うん、サイトー。ありがとう。気をつけて」
斉藤さんは乗り込んでからリアシートの窓を開け、リサと握手を交わした。
そしてタクシーが走り出し、私達はその後ろのタクシーに乗った。
助手席に座った高野君が、
高野:「菊川までお願いします」
と、行き先を告げた。
その詳しい行き先が事務所であった。
愛原:「事務所へ行くのか?」
高野:「そこで解散した方がいいと思いますし、それに先生達はお仕事があったじゃありませんか」
愛原:「それもそうか」
報告書の作成は明日で良いだろうが、まずあのUSBメモリーの中身が気になるな。
[同日21:15.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]
タクシーが事務所の前に到着する。
錦糸町駅からは大した距離は無く、また日曜日の夜ということもあってそんなに渋滞もしていなかった。
その為、料金は1000円でお釣りが来る程度。
高野:「一体、何を見つけたんです?」
愛原:「物的証拠としては、このUSBメモリーだ」
事務所に入ると、早速私はこれを解析することにした。
解析というか、中身を見るだけだがな。
高野:「先生、ウィルスに注意してくださいね」
愛原:「ウィルス?あそこにゾンビはいなかったが……」
高橋:「タイラントくらいしかいなかったぜ?」
高野:「違います。そのメモリー自体がコンピューターウィルスに塗れている恐れがあるということです」
愛原:「ああ、そうか」
しかし、実際見てみないことには前に進まないからなぁ……。
メモリーの中には動画が保存されていた。
それを早速再生してみる。
すると……!
愛原:「あっ!」
画面に1人の少女が映し出された。
霧生市のリサと同じように、あのセーラー服を着て、両目の部分しか開いていない白い仮面を着けている。
そして徐に仮面を取ると、愛らしい顔をした少女が現れた。
年齢的にはリサと大して変わらない。
リサ:「このコ、『5番』だ!」
愛原:「5番?」
リサは確か『2番』と呼ばれていた。
そして『4番』はクリーチャーと化してBSAAに掃討されたから、もうこの世にはいない。
カメラに向かってニコッと笑ったりポーズを取ったりしている所はとても可愛らしく、どこにでもいる普通の小中学生といった感じだった。
それがしばらくして、部屋の中に白衣姿の研究員の男達3人が入って来た。
『5番』のリサ・トレヴァーは別室に移される。
そして、誰かがカメラを持ってその少女達を追った。
どうやら、これから実験を始めるらしい。
少女は着ていたセーラー服を脱がされ、下着まで剝かれて全裸にさせられた。
愛原:「わわわっ!リサ、見るな!!」
私は慌ててリサの両目を塞いだ。
高野:「くっ……!」
高野君は急いでスピーカーの音量をミュートにした。
始まったのは少女に対する輪姦。
画面に出たタイトルによると、『性的興奮によって発生する形態変化を確認する実験』と出た。
確かにリサは精神が不安定になると、体が変化することがある。
なので、普段はむしろ少し変化させていた方が却って安定性が良いということに最近気づいた。
ずっと人間形態のままだとそれが却って緊張状態を持続させることになり、ちょっとでも緊張の糸が切れると暴走してしまう恐れがあるというものだ。
もちろん、できれば人間形態でいられる時間が長ければ長いほど良い。
リサを学校に通わせるに辺り、善場さんが渋る事無く、むしろ賛成して支援までしてくれたのはその実験または訓練という意味合いがあったのを最近知った。
家にいる時は少し変化させて、見た目はまるで『鬼娘』のようにしておいた方が彼女のストレスも緩和できるらしい。
高野:「ひどい……ひどい実験……!」
終わった時、『5番』の少女は体中精液塗れにさせられ、変化と言えば背中から太くて長い触手(旧アンブレラ関係者からは『ネメシスの触手』と呼ばれている)が4本生えた程度であった。
研究員:「性的興奮では大きな変化は見られませんでした。次なる実験に期待したいと思います」
という締めの言葉で動画は終わっていた。
……はずだった。
だが次の映像で、状況は一変する。
あの研究所がどうして打ち棄てられたのか、それが分かる内容だった。
『次なる実験』はもっと過酷なものだったのか、ついに耐え切れなくなった『5番』が暴走。
もちろんそれを抑え込む為の対策は取られていたようだが、『5番』の暴走はそれを凌ぐものであった。
何故なら、その暴走にあのタイラントも加担していたからである。
リサ・トレヴァーとタイラントの暴走に、関係者は殺されたり、ただ逃げ惑うしか無かったようだ。
死体が見つからなかったのは、タイラントが海に投げ込んだり、研究所ではなく、あのホテル旧館に隠したりしていたかららしい。
あとは研究所内にある廃棄物処理施設、これも利用したようだ。
だが、この映像だけでは、『5番』がその後どうなったのか分からなかった。
タイラントは生きていたわけだが……。
愛原:「……ま、とにかくこれは重大な証拠品だ。斉藤社長に提出するぞ」
高橋:「むしろ善場の姉ちゃんに渡した方が良さそうですけどね」
愛原:「まあ、今回の仕事の依頼人は斉藤社長だから。……リサ!もういいぞ!」
私は応接室に隔離させたリサを呼び戻した。
リサ:「『5番』どうだった?」
愛原:「あ……うん。帰ったら話すよ」
もしやリサも、あのような過酷な実験を受けたのだろうか。
リサが話したがらないところを見ると、そうなのかもしれないな。
しかし、よくこのコは暴走しなかったものだ。
他のリサ・トレヴァーと比べて、1番根性のあるコなのかもしれない。
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
私達を乗せた総武本線上り最終の特急が、まもなく下車駅に到着しようとしていた。
自動放送が流れ始めると、私は隣に寝ている高橋を起こした。
高橋:「先生!?」
愛原:「おはよう。もうすぐ降りるぞ」
高橋:「うあっ!俺が先生を起こすはずだったのに……!」
愛原:「たまたま早めに目が覚めたんだ」
高野:「さすがは名探偵ですね」
前の席に座る高野君が後ろを振り向いて微笑を浮かべた。
リサ:「サイトー、サイトー、起きて」
リサはリサで斉藤絵恋さんを揺さぶり起こす。
斉藤:「し、幸せぇぇぇぇっ!」
起きた斉藤さん、何を寝ぼけたのかリサに抱きついた。
リサ:「サイトー、苦しい」
斉藤:「……ハッ!?り、リサさん、ごめんなさい!」
〔「まもなく錦糸町、錦糸町です。3番線に到着致します。お出口は、右側です。錦糸町から総武快速線、横須賀線方面と総武緩行線、秋葉原、新宿方面、地下鉄半蔵門線はお乗り換えです。今度の各駅停車、武蔵小金井行きは1番線から21時1分。横須賀線直通の逗子行きは、降りましたホーム1番線から21時1分の発車です。……」〕
愛原:「忘れ物無いようにな」
私の場合はお土産の他に、仕事で得た証拠品も忘れてはならない。
〔きんしちょう、錦糸町。ご乗車、ありがとうございます。次は終点、東京に止まります〕
電車が錦糸町駅に到着して、私達はホームに降り立った。
確かに横須賀線に乗り換えるのなら、この駅での乗り換えが便利であろう。
私達はもう駅の外に出ることになる。
リサ:「サイトー、変な夢見てた?」
斉藤:「そ、それは……リサさんと楽しく遊ぶ夢……」
高橋:「おーい、危ねぇ方向に行くんじゃねぇぞ」
愛原:「だからオマエが言うな」
錦糸町駅の南口に行く。
テルミナという駅ビルやヨドバシカメラがあり、とても賑わっている。
え?JRA?ウインズ錦糸町?知らんなぁ……。
メイド:「御嬢様、お迎えに上がりました」
斉藤:「あ、ありがとう」
斉藤さんは埼玉の実家を出て、私達と同じ墨田区内のマンションで暮らしている。
もちろん独り暮らしではなく、実家から派遣されているメイドさんと一緒だ。
メイド:「夜も遅いので、タクシーで帰りましょう」
斉藤:「そ、そうね」
愛原:「俺達もタクシーで帰るか」
タクシー乗り場に行く。
先に斉藤さんとメイドさんが乗り込んだ。
斉藤:「じゃあね、リサさん。また明日、学校でね」
リサ:「うん、サイトー。ありがとう。気をつけて」
斉藤さんは乗り込んでからリアシートの窓を開け、リサと握手を交わした。
そしてタクシーが走り出し、私達はその後ろのタクシーに乗った。
助手席に座った高野君が、
高野:「菊川までお願いします」
と、行き先を告げた。
その詳しい行き先が事務所であった。
愛原:「事務所へ行くのか?」
高野:「そこで解散した方がいいと思いますし、それに先生達はお仕事があったじゃありませんか」
愛原:「それもそうか」
報告書の作成は明日で良いだろうが、まずあのUSBメモリーの中身が気になるな。
[同日21:15.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]
タクシーが事務所の前に到着する。
錦糸町駅からは大した距離は無く、また日曜日の夜ということもあってそんなに渋滞もしていなかった。
その為、料金は1000円でお釣りが来る程度。
高野:「一体、何を見つけたんです?」
愛原:「物的証拠としては、このUSBメモリーだ」
事務所に入ると、早速私はこれを解析することにした。
解析というか、中身を見るだけだがな。
高野:「先生、ウィルスに注意してくださいね」
愛原:「ウィルス?あそこにゾンビはいなかったが……」
高橋:「タイラントくらいしかいなかったぜ?」
高野:「違います。そのメモリー自体がコンピューターウィルスに塗れている恐れがあるということです」
愛原:「ああ、そうか」
しかし、実際見てみないことには前に進まないからなぁ……。
メモリーの中には動画が保存されていた。
それを早速再生してみる。
すると……!
愛原:「あっ!」
画面に1人の少女が映し出された。
霧生市のリサと同じように、あのセーラー服を着て、両目の部分しか開いていない白い仮面を着けている。
そして徐に仮面を取ると、愛らしい顔をした少女が現れた。
年齢的にはリサと大して変わらない。
リサ:「このコ、『5番』だ!」
愛原:「5番?」
リサは確か『2番』と呼ばれていた。
そして『4番』はクリーチャーと化してBSAAに掃討されたから、もうこの世にはいない。
カメラに向かってニコッと笑ったりポーズを取ったりしている所はとても可愛らしく、どこにでもいる普通の小中学生といった感じだった。
それがしばらくして、部屋の中に白衣姿の研究員の男達3人が入って来た。
『5番』のリサ・トレヴァーは別室に移される。
そして、誰かがカメラを持ってその少女達を追った。
どうやら、これから実験を始めるらしい。
少女は着ていたセーラー服を脱がされ、下着まで剝かれて全裸にさせられた。
愛原:「わわわっ!リサ、見るな!!」
私は慌ててリサの両目を塞いだ。
高野:「くっ……!」
高野君は急いでスピーカーの音量をミュートにした。
始まったのは少女に対する輪姦。
画面に出たタイトルによると、『性的興奮によって発生する形態変化を確認する実験』と出た。
確かにリサは精神が不安定になると、体が変化することがある。
なので、普段はむしろ少し変化させていた方が却って安定性が良いということに最近気づいた。
ずっと人間形態のままだとそれが却って緊張状態を持続させることになり、ちょっとでも緊張の糸が切れると暴走してしまう恐れがあるというものだ。
もちろん、できれば人間形態でいられる時間が長ければ長いほど良い。
リサを学校に通わせるに辺り、善場さんが渋る事無く、むしろ賛成して支援までしてくれたのはその実験または訓練という意味合いがあったのを最近知った。
家にいる時は少し変化させて、見た目はまるで『鬼娘』のようにしておいた方が彼女のストレスも緩和できるらしい。
高野:「ひどい……ひどい実験……!」
終わった時、『5番』の少女は体中精液塗れにさせられ、変化と言えば背中から太くて長い触手(旧アンブレラ関係者からは『ネメシスの触手』と呼ばれている)が4本生えた程度であった。
研究員:「性的興奮では大きな変化は見られませんでした。次なる実験に期待したいと思います」
という締めの言葉で動画は終わっていた。
……はずだった。
だが次の映像で、状況は一変する。
あの研究所がどうして打ち棄てられたのか、それが分かる内容だった。
『次なる実験』はもっと過酷なものだったのか、ついに耐え切れなくなった『5番』が暴走。
もちろんそれを抑え込む為の対策は取られていたようだが、『5番』の暴走はそれを凌ぐものであった。
何故なら、その暴走にあのタイラントも加担していたからである。
リサ・トレヴァーとタイラントの暴走に、関係者は殺されたり、ただ逃げ惑うしか無かったようだ。
死体が見つからなかったのは、タイラントが海に投げ込んだり、研究所ではなく、あのホテル旧館に隠したりしていたかららしい。
あとは研究所内にある廃棄物処理施設、これも利用したようだ。
だが、この映像だけでは、『5番』がその後どうなったのか分からなかった。
タイラントは生きていたわけだが……。
愛原:「……ま、とにかくこれは重大な証拠品だ。斉藤社長に提出するぞ」
高橋:「むしろ善場の姉ちゃんに渡した方が良さそうですけどね」
愛原:「まあ、今回の仕事の依頼人は斉藤社長だから。……リサ!もういいぞ!」
私は応接室に隔離させたリサを呼び戻した。
リサ:「『5番』どうだった?」
愛原:「あ……うん。帰ったら話すよ」
もしやリサも、あのような過酷な実験を受けたのだろうか。
リサが話したがらないところを見ると、そうなのかもしれないな。
しかし、よくこのコは暴走しなかったものだ。
他のリサ・トレヴァーと比べて、1番根性のあるコなのかもしれない。