報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「BOWの慰安旅行」 

2019-02-11 20:19:59 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月19日20:00.天候:晴 千葉県銚子市 ニューグランドホテル犬吠2Fゲームコーナー]

 夕食後に愛原達と別れたリサと斉藤絵恋は、2Fのゲームコーナーに向かった。
 2Fへはロビーの吹き抜け階段からでも上がれる。

 斉藤:「オジさん、随分酔っ払ってたね」
 リサ:「うん。大丈夫。愛原さんは、酔いが醒めるの早いから」
 斉藤:「そうなの。うちのお父さんなんか、取引先との接待とかゴルフの帰りなんかいつも酔っ払って帰って来て、そのまま寝ちゃうんだから」
 リサ:「!?」

 その時、リサにまた一瞬だけフラッシュバックが起きた。

 斉藤:「どうしたの?」
 リサ:「な、何でも無い。それより、何して遊ぶ?」
 斉藤:「そうねぇ……。あのエアホッケーとかはどう?」
 リサ:「OK.望むところ」
 斉藤:「温泉と言えば卓球だなんてお父さんが言ってたけど、実際無いもんね」

 エアホッケーがあるだけでもマシである。

 斉藤:「リサさんはエアホッケーやったことある?」
 リサ:「無い。どうやるの?」
 斉藤:「卓球は知ってるでしょ?体育でやったから」
 リサ:「それは知ってる」
 斉藤:「このテーブルを挟んで、お互いにこのマレットを持って、このパックを打ち合いっこするの。で、相手側の穴にパックを入れたら得点ってわけ」
 リサ:「なるほど」
 斉藤:「ちょっとやってみましょう。まずは、さっき頂いた1000円札を両替……」

 で、100円玉を入れると盤上からエアが吹き出てパックが滑りやすくなる。

 斉藤:「じゃあ、私から打たせてもらうね」
 リサ:「ん!」

 斉藤、軽くコンッとパックを打つ。
 カンコンとパックがテーブルの縁に当たり、ジグザグに動きながらリサの所へやってきた。

 斉藤:「で、パックが来たら私に打ち返して!」
 リサ:「ラジャ!」

 カンッ!(リサ、マレットでパックを打ち返す)
 コーン!

 斉藤:「きゃ!」
 リサ:「あ゛……!」

 リサの打ち返したパックが宙を飛び、斉藤の広いおでこに当たった。

 斉藤:「あ、あたしに打ち返してくれてありがとう……!」
 リサ:「ど、どういたしまして……。ていうかサイトー、大丈夫?」
 斉藤:「り、リサさん、初めての割にはいいスマッシュだわ……。体育の時の卓球みたい……」
 リサ:「もう1度!もう1度やろう!今度は私から打つ。かるーく……」

 コン。

 斉藤:「そうそう、強く打ち過ぎる必要は無いのよ。そーれっ!」

 尚、強く打ち過ぎて相手方の顔面にパックを直撃させたのは作者も経験済みである。

 リサ:「ん!」

 今度はリサ、ちゃんと上手に打ち返した。

 斉藤:「そうそう!その調子よ!……よーし!スマッシュ!!」

 スポッ!

 斉藤:「あ゛ーっ!?」

 今度は斉藤の手からマレットがすっぽ抜け、リサの顔面に直撃した。

 斉藤:「きゃあああ!リサさん!?ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」
 リサ:「??? 今、何が起きた???」

 当のリサはきょとんとしている。
 マレットが顔面直撃しても何とも無い。
 そりゃそうだ。
 リサ・トレヴァーは、マグナムの弾を食らっても殆どダメージなど食らわないほどなのだから。

 斉藤:「わざとじゃないの!手の汗でマレットがすっぽ抜けてぇぇぇ!」
 リサ:「マレットを相手に当てるのも戦法?」
 斉藤:「全然違うわ!私のミスなの!ごめんなさぃぃぃぃ!嫌いにならないでぇぇぇっ!」
 リサ:「大丈夫。気を取り直してもう一回やろう」

 これが終わると、次はUFOキャッチャー。

 斉藤:「これがなかなか上手く行かないのよねー!」
 リサ:「私もこういうクレーンで、運搬されてたなぁ……」
 斉藤:「はい?」
 リサ:「いや、何でも無い……」

 それが終わると次はスロットマシン。

 
(取りあえず、ジャグラーで大勝ちし、終始御満悦の作者近影)

 雲羽:「うひょひょひょひょ!報恩坊での功徳が止まらなーい!」
 斉藤:「何か、変なオジさんがいるから別のにしましょ」
 リサ:「こういう所で大勝ちしても、お菓子しか当たらないよ」
 斉藤:「だよねぇ。さっきから体を動かしてたせいか、少し暑くなってきたわ」
 リサ:「ちょっと外に出てみる?」
 斉藤:「外は寒くない?」
 リサ:「ちょっと出てみるだけ。寒くなったら中に入る」
 斉藤:「それもそうだね」

 リサと斉藤は、新館エントランスから外に出てみた。
 岸壁が目と鼻の先ということもあってか、潮騒がよく聞こえた。

 斉藤:「あっちの方って何になってるのかな?」
 リサ:「駐車場」
 斉藤:「その更に向こうの方に、古い建物が建ってるじゃない?何かブキミ……」
 リサ:「うん」

 ちょうど月が旧館の屋上辺りにあった。

 斉藤:「せっかくきれいなお月様なのに、あの建物のせいでホラーになっちゃってるわ。お父さんに頼んで取り壊してもらおうかしら」
 リサ:「うん。……んんっ!?」

 リサは斉藤の言葉に頷くだけであったが、その旧館屋上にある物を見つけて絶句した。
 旧館屋上といっても、常人には双眼鏡が無いと現認できないくらいの距離がある。
 リサはBOWの力で、視力も双眼鏡並みに強くすることができるのだ。
 その視力でリサが見たのは……。

 リサ:「た、タイラント君!?」
 斉藤:「え、なに?何かいるの?」

 リサの目には黒い中折れ帽を被り、黒いロングコートを羽織った男が旧館屋上の給水タンクの上に座っているのが見えた。
 リサには見覚えがある。
 それはタイラント。
 霧生市で現れた者は左手が異様にクリーチャー化していたが、リサの知り合いのタイラントはそれだけではない。
 とても長身であることを除けば、人間とパッと見変わらない姿をした量産型タイラントもいる。
 そのタイラントは、リサの視線に気づくとニヤッと愛想笑いを浮かべたかのように見えた。

 リサ:「タイラント君……」
 斉藤:「リサさん!リサさん!」

 斉藤はリサに呼び掛けながら体を揺さぶった。

 リサ:「……あ、サイトー。なに?」
 斉藤:「どうしたのよ?ボーッとしちゃって……」
 リサ:「いや、何でもない……」

 再びリサが視線を戻すと、もうタイラントの姿は無くなっていた。

 斉藤:「ねぇ、今度は寒くなって来たわ。早く中に戻りましょう」
 リサ:「うん」

 リサは再び館内に戻りながら首を傾げた。

 リサ:(何であそこにタイラント君がいたんだろう……?)
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「探偵の慰安旅行」 5

2019-02-11 09:56:18 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月19日18:00.天候:晴 千葉県銚子市 ニューグランドホテル犬吠1F・和食レストラン]

 団体客は宴会場でも貸し切るのだろうが、私ら少人数グループ客はホテル内に併設されたレストランの中で食べることになる。
 座敷に上がって食べるのだから、まあ形式的には団体客の宴会と変わらないか。
 メニューも明らかに宴会コースのそれだし。
 やっぱり小鍋の下に固形燃料が仕掛けてあって、夕食開始直前または直後にスタッフが着火してくれる……という所も他と同じか。
 店内には大きな水槽があって、そこで明らかに『活け造り』になるのを待たされてる鯛とか伊勢海老とかが泳いでいるのだが。

 愛原:「皆、グラス行き渡ったか?」
 高橋:「うっス!」
 高野:「ビールOK!……あなた達はジュースね」
 斉藤:「はーい」
 リサ:「はーい」

 因みに座敷は隣とは襖で仕切られているので、ちょっとした個室感覚だ。
 もちろん、宴会場とは違って騒ぎ過ぎには注意。

 高橋:「先生!乾杯の音頭を!」
 愛原:「そ、そう?じゃあ……コホン」

 私は立ち上がった。

 愛原:「えー、本日は慰安旅行に参加して頂き、真にありがとうございます。我が事務所もこうして今や、一泊二日の温泉旅行とはいえ、慰安旅行を行えるまでになりました。団体旅行と違って細やかな規模の宴会ですが、楽しんでください。あ、因みに飲み放題ですので、遠慮無く飲んでください」
 高野:「先生が飲みたいだけじゃないですかぁ?」
 愛原:「おっと!こりゃバレたかw」

 私はポンと自分と頭を叩いた。

 愛原:「それでは皆様、グラスを拝借。いいですかー?それでは乾杯しましょう。乾杯!」
 一同:「カンパーイ!」

 私は再び座椅子の上に座った。

 高橋:「先生、素晴らしい音頭でした」
 愛原:「大したこと無いよ」

 作者の会社では、必ず『喧嘩即退場である』という文言が入るらしい。

 斉藤:「あら?私の鍋、火が消えてるわ」
 高野:「本当ね。先生、そっちの灰皿にマッチとか入ってません?」
 愛原:「今時マッチって……。高橋、お前の初期アイテムはライターだろ?」
 高橋:「確かに」

 高橋が浴衣の懐に手を入れてる時、対角線上に座っているリサの動向が目に入った。
 皆、高橋がライターを取り出す所を見ている。
 リサは斉藤さんの小鍋の固形燃料を右手で触っていたが……。

 リサ:「あ、火点いた」
 斉藤:「ええっ!?」
 高橋:「あ?何だ、要らないのか?」
 斉藤:「ごめんなさい。火が点いたみたいです」
 高橋:「じゃあいいや」

 高橋は首を傾げつつ、オイルライターを懐にしまった。
 いや、今の絶対リサが点けただろ。
 リサのヤツ、発火の能力もあるんだな。
 BOWの中でそういうヤツいたかな?
 体がチェーンソーになってるヤツとかはいたらしいけど。

[同日20:00.天候:晴 同ホテル1F→719号室]

 愛原:「あー、飲んだ食った、飲んだ飲んだ。ごっそーさん」
 高橋:「先生、肩貸しますよ。介抱しますよ。介助しますよ。介護しますよ」
 愛原:「チョーシに乗んな。銚子なだけにw」
 高野:「へっくし!」

 私達は宴会を終えて、レストランを出た。

 高野:「明日の朝食も、ここですか?」
 愛原:「そう。こういう所の朝は『バイキング』というのがベタな法則だが、ここに限っては『定食』だよ」
 高野:「その方がいいですね」
 愛原:「ほーれ、高橋!さっさと前進前進!ヒック!」
 高橋:「先生、酔い過ぎですよ〜」
 愛原:「高野君も肩貸せ!」
 高野:「あら?セクハラですか?ちょっとボスに電話を……」
 愛原:「ひええ!クビにされます!」
 リサ:「愛原さん。向こうのゲームコーナーで、サイトーと遊んで来ていい?」
 愛原:「ああ、いいぞ。……あー、お金な。はい、1000円あれば足りるな」
 リサ:「ありがとう」
 愛原:「斉藤さんにも、はい」
 斉藤:「あ、ありがとうございます」

 ここでリサと斉藤さんが分かれる。

 愛原:「よーし、まずはエレベーターだ。しっかり先導しろよ!」
 高橋:「はいっ!」
 高野:「全く、大げさな……」

 私がヨタヨタモタモタ歩いているものだから、拍子に部屋のカードキーを落としてしまった。

 高野:「先生、カードキー落としましたよ」
 愛原:「いっけね!」

 そこはリニューアルオープンしたホテルだ。
 部屋の施解錠は普通の鍵ではなく、カードキーをドアノブの上にある読取機に当てて解錠するタイプだ。
 しかも豪華なことに、プラスチック製ではあるのだが、装飾が金ピカだ。
 まるでゴールドカードだな。
 もう少し努力すれば、代わり映えのあるホテルにもっとリニューアルできそうなものだが……。
 エレベーターホールに行く前に、ロビーやフロントの横を通ることになる。

 フロント係:「え?カードキーがですか?」
 宿泊客A:「カードを当てよってもな、うんともすんとも言わへん。何ぞ故障したんとちゃう?」
 フロント係:「すぐお調べします」

 ん?
 あのカードキーはグリーンだな。
 何で色が私達のと違うんだ?
 因みにカードキーは2枚渡されている。
 今1枚は私が持っているし(さっき落としたので、今は拾った高野君か)、もう1枚は斉藤さんが持っているはずだ。
 フロアによって違うのか、或いは部屋の造りによって違うのか……。

 高橋:「先生、エレベーターもうすぐ来ますからね」
 愛原:「ああ」

 エレベーターに乗り込んで、最上階の7階へ向かう。
 途中、2階に止まって、明らかに大浴場から来たと思われる他の宿泊客がぞろぞろ乗り込んで来た。

 宿泊客B:「おい、ちゃんと部屋のカード持ってるか?」
 宿泊客C:「あ、大丈夫ですよ」

 ん!?
 この宿泊客達が持っているカードもグリーンだな。
 何で私達のはゴールドなんだ?
 
 高橋:「先生、もうすぐ着きますよ」
 愛原:「ああ」

 エレベーターから1番離れた角部屋だからな。
 静かなのはいいけど、アクセスは良くない。
 高野君が何の疑いも無く、手持ちのゴールドカードキーをピッと当てた。

 高野:「さあ先生、どうぞ」

 当たり前の話だが、簡単にドアが開く。

 高野:「すぐお休みになりますか?」
 愛原:「いや、そこまで飲み過ぎてないよ。少しおとなしくしていれば、酔いも醒めるさ」

 和室の方は既に布団が2組敷かれていた。
 私は窓際の椅子に座った。

 高橋:「位置が良くない」

 そして高橋、布団をズズズとくっつけた。

 愛原:「くっつけんな!」
 高橋:「えーっ!」
 高野:「やると思った……。先生、お茶入れますね」
 愛原:「ああ、悪いな。お茶を入れてから、ちょっと2人に話したいことがあるんだ。高橋には風呂上がりの時にチラッと話してはいたんだが……」
 高橋:「ああ!仕事の話ですね!」
 高野:「仕事の話?」
 愛原:「お茶が入ってから話そう。どうせあのチビッ子達は、遊びに夢中でしばらくは帰って来ないだろうから」

 この部屋は先ほど角部屋だと述べたが、実は旧館に1番近い部屋でもある。
 部屋の窓の外にはベランダがあるのだが、そこに出て旧館の方を見ると、その建物がしっかり見えるのである。
 旧館の方が、もう少し朝日が見えやすいかもしれない。
 ただその分、震災の津波の影響は大きかったことが伺える。

 私は明日の計画について、高橋君と高野君に話した。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする