病院から大宮駅東口に向かうバスに乗った敷島と初音ミク。
バスは大宮高島屋の前に止まった。
基本的に国際興業バスは、ロータリーの中で客を降ろすことはない。
敷島とミクは、タクシー乗り場の前にある駅入口に向かった。しかし……。
「孝夫さん、このまま進んではいけません」
ミクは敷島の服の袖を引っ張って、バス降車場の先頭に停車しているバスの陰に一緒に隠れた。
「あれを、見てください」
バスの窓ガラス越しに階段の方を見ると、黒っぽいスーツを着た男が２人、階段の中途半端な位置に立って、周囲を窺っている。明らかに、南里が差し向けた追っ手であった。
「うっ、追いつかれたか……」
「そのようです」
「しょうがない。西口に回って、そこから駅に入ってか……」
「西口にも、駅構内にも追跡者がいる可能性が高いです」
「そうか。早いとこ、新幹線で仙台に戻らないといけないのに……。どうしよう……？」
その時、東武バスの宮原駅東口行きが発車していった。
「そうだ、バス……！他の駅に行くバスに乗って……」
「周辺の駅にも、追跡者が配置されている可能性も捨て切れません」
「くっ……！なら、どうしたらいいんだ！？」
「追跡者達と接触せず、仙台に戻る方法を検索します」
ミクは目を閉じると、無言になった。こうしている間にも、見つかる可能性がある。
「……敷島さん、こっちへ」
「え？」
ミクは敷島の手を取ると、さっき来たのとは反対の方向へ歩いた。
「別の駅まで歩いて行くのか？」
「いいえ」
ちょうど信号が変わった旧中山道のスクランブル交差点を、斜め向かいに渡る。
「どこまで行くんだ？」
「ここです」
それは１１番の番号が振られた『大宮駅東口』バス停だった。行き先は寿能先回り、導守循環になっている。
「どうもり循環？ぬ～べ～か？」
「違います。どうじゅ循環です」
路線図を見ると、大宮駅以外の別の駅に行くようには見えない。
「ここからこのバスに乗り、寿能住宅で降ります。そのバス停から東武野田線大宮公園駅まで、徒歩１０分ほどです。これで柏駅まで行きましょう。柏駅から、仙台行きの夜行バスが出ています。私鉄と高速バスの方は手薄かもしれません」
「そうだったのか！」
そうこうしているうちに、そのバスが入線してきた。本数も少ないこの路線にまで追っ手が配置されているはずもなく、敷島達と乗り合わせた乗客達も、全てが地元民にしか見えなかった。
「あのクソジジィ！こんな優秀な“歌うアンドロイド”を壊すなんて、何考えてるんだ！」
「落ち着いてください。仙台に戻って、敷島さんの所属する大日本電機の皆さんと接触すれば上手くいきます」
「そうだったな」
企業としても売り上げが最優先である。敷島のミクに関するプレゼンが上司達にも大絶賛だったのだから、大企業の力を利用して、南里の目論見を潰えることができるはずだった……。
大宮駅東口を散策していて、こんなストーリーが頭の中に浮かんだ。因みにこれはボツネタであり、実際はもっと違うストーリーになっている。西村京太郎ばりの展開になっている……かどうかは【お察しください】。
でも、本当に大宮高島屋降車場に停車しているバスの窓ガラス越しに、相手にバレずに東口の入口を窺うことはできる。んでもって、実はその隠れたバスこそが、待機中の寿能先回り、導守循環だったというオチでした。
ここではミクは柏駅からと言っているが、実際は更に遠く、千葉駅まで向かっている。その理由はなるべく遠くまで逃げたかったというのもあるが、寿能先回り導守循環が走っている時間帯から推移するに、柏駅に順調に到着しても、夜行バスが発車するまで時間がかなりある。また、柏駅を発車する“ポーラスター”号は成田空港が始発だが、成田空港に入るには身分証が必要であり、初音ミクにはそれが無いからというのも理由である。そこで１番最適なのが、千葉駅から乗るということであった。大宮公園には目論見通り、追っ手はおらず、敷島達は柏行きの電車に難なく乗れ、更に柏から船橋行きに乗り換え、更に船橋から総武線各駅停車で千葉まで向かった。因みに快速だと駅間距離が長いため、追っ手に見つかると逃げにくいというのが理由。
単なるライトノベルでも、これくらいは考えているんですよ。
あるアメリカ映画で、科学者と大企業の対立のようなものを見ていて浮かんだんだけどね。大抵は営利最優先の大企業の方が悪に書かれているけど（“バイオハザード”では、どっちも悪い！）、大企業側の人間の視点で書いてみたらどうだろうと思って。
ぶらぶら歩き回っていても、次々とネタは転がっていたりします。
北与野駅高架下ジョナサンで顕正会男子部に見つかった時、ハードボイルドなネタが頭に浮かんだんだけど、顕正会じゃたかが知れてるなぁ……。
バスは大宮高島屋の前に止まった。
基本的に国際興業バスは、ロータリーの中で客を降ろすことはない。
敷島とミクは、タクシー乗り場の前にある駅入口に向かった。しかし……。
「孝夫さん、このまま進んではいけません」
ミクは敷島の服の袖を引っ張って、バス降車場の先頭に停車しているバスの陰に一緒に隠れた。
「あれを、見てください」
バスの窓ガラス越しに階段の方を見ると、黒っぽいスーツを着た男が２人、階段の中途半端な位置に立って、周囲を窺っている。明らかに、南里が差し向けた追っ手であった。
「うっ、追いつかれたか……」
「そのようです」
「しょうがない。西口に回って、そこから駅に入ってか……」
「西口にも、駅構内にも追跡者がいる可能性が高いです」
「そうか。早いとこ、新幹線で仙台に戻らないといけないのに……。どうしよう……？」
その時、東武バスの宮原駅東口行きが発車していった。
「そうだ、バス……！他の駅に行くバスに乗って……」
「周辺の駅にも、追跡者が配置されている可能性も捨て切れません」
「くっ……！なら、どうしたらいいんだ！？」
「追跡者達と接触せず、仙台に戻る方法を検索します」
ミクは目を閉じると、無言になった。こうしている間にも、見つかる可能性がある。
「……敷島さん、こっちへ」
「え？」
ミクは敷島の手を取ると、さっき来たのとは反対の方向へ歩いた。
「別の駅まで歩いて行くのか？」
「いいえ」
ちょうど信号が変わった旧中山道のスクランブル交差点を、斜め向かいに渡る。
「どこまで行くんだ？」
「ここです」
それは１１番の番号が振られた『大宮駅東口』バス停だった。行き先は寿能先回り、導守循環になっている。
「どうもり循環？ぬ～べ～か？」
「違います。どうじゅ循環です」
路線図を見ると、大宮駅以外の別の駅に行くようには見えない。
「ここからこのバスに乗り、寿能住宅で降ります。そのバス停から東武野田線大宮公園駅まで、徒歩１０分ほどです。これで柏駅まで行きましょう。柏駅から、仙台行きの夜行バスが出ています。私鉄と高速バスの方は手薄かもしれません」
「そうだったのか！」
そうこうしているうちに、そのバスが入線してきた。本数も少ないこの路線にまで追っ手が配置されているはずもなく、敷島達と乗り合わせた乗客達も、全てが地元民にしか見えなかった。
「あのクソジジィ！こんな優秀な“歌うアンドロイド”を壊すなんて、何考えてるんだ！」
「落ち着いてください。仙台に戻って、敷島さんの所属する大日本電機の皆さんと接触すれば上手くいきます」
「そうだったな」
企業としても売り上げが最優先である。敷島のミクに関するプレゼンが上司達にも大絶賛だったのだから、大企業の力を利用して、南里の目論見を潰えることができるはずだった……。
大宮駅東口を散策していて、こんなストーリーが頭の中に浮かんだ。因みにこれはボツネタであり、実際はもっと違うストーリーになっている。西村京太郎ばりの展開になっている……かどうかは【お察しください】。
でも、本当に大宮高島屋降車場に停車しているバスの窓ガラス越しに、相手にバレずに東口の入口を窺うことはできる。んでもって、実はその隠れたバスこそが、待機中の寿能先回り、導守循環だったというオチでした。
ここではミクは柏駅からと言っているが、実際は更に遠く、千葉駅まで向かっている。その理由はなるべく遠くまで逃げたかったというのもあるが、寿能先回り導守循環が走っている時間帯から推移するに、柏駅に順調に到着しても、夜行バスが発車するまで時間がかなりある。また、柏駅を発車する“ポーラスター”号は成田空港が始発だが、成田空港に入るには身分証が必要であり、初音ミクにはそれが無いからというのも理由である。そこで１番最適なのが、千葉駅から乗るということであった。大宮公園には目論見通り、追っ手はおらず、敷島達は柏行きの電車に難なく乗れ、更に柏から船橋行きに乗り換え、更に船橋から総武線各駅停車で千葉まで向かった。因みに快速だと駅間距離が長いため、追っ手に見つかると逃げにくいというのが理由。
単なるライトノベルでも、これくらいは考えているんですよ。
あるアメリカ映画で、科学者と大企業の対立のようなものを見ていて浮かんだんだけどね。大抵は営利最優先の大企業の方が悪に書かれているけど（“バイオハザード”では、どっちも悪い！）、大企業側の人間の視点で書いてみたらどうだろうと思って。
ぶらぶら歩き回っていても、次々とネタは転がっていたりします。
北与野駅高架下ジョナサンで顕正会男子部に見つかった時、ハードボイルドなネタが頭に浮かんだんだけど、顕正会じゃたかが知れてるなぁ……。
