日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

佐渡裕プロデュース喜歌劇「メリー・ウイドウ」雑感

2008-06-26 12:00:28 | 音楽・美術
昨日(6月25日)は西宮芸文センター大ホールで本番の舞台を楽しんできた。レハーサルと違い華やかな雰囲気がある。劇場の入り口に花がたくさん飾られているのもその一つ。でもよく見るとざこば師匠への花が圧倒的に多い。贈った方が面白がっていると思えばそれまでだが、ちょっと場違いな感じ。浪速のノリもいいけれど、これではまるでざこば一座の公演のように見えた。細かいことだが飾り付けにバランス感覚が欲しいと思った。

と、のっけから注文が飛び出したが、やはり舞台は楽しかった。しかし本音を言うとレハーサルを観なかった方がもっと楽しめたような気がする。今回の演出にはいろんな趣向がこらされていて、それが公演の大きな目玉になっていると思う。それを既に知っている分、楽しみが減ることになる。さもありなんと思い、レハーサルの内容を妻に一切話さなかったのが正解で、無闇に手を叩いている彼女を見てその確信を深めた。まだ公演途中でもあるのでこれからの方の興を削がないためにも、私の印象に残っている二三のことだけを以下に記す。

舞台背景がなかなかスマートだった。とくに第二幕の切り絵のようなバックがとても新鮮でモダーン、それでいてベル・エポックの雰囲気が良く出ていた。それに東欧風の味わいのある衣裳がしっかりと作られているものだから、あっ、金がかかっていると思うとそれだけで贅沢な気分になってしまった。やっぱり、贅沢は素敵だ!装置はイギリスのサイモン・ホルズワース、衣裳はイタリアのスティーヴ・アルメリーと解説にあったので、なるほどと頷いてしまった。これに加えて、演出の広渡勲、振付の川西清彦の諸氏をスタッフに起用したところが佐渡裕プロデュースの「プロデュース」たる所以だろうか。

言葉はすべて日本語だったが、カミーユ役のテナー、経種廉彦さんには感心してしまった。テナーの突き抜けるような透明な高音の美しさはいうまでもないが、日本語の歌唱の素晴らしさは抜群だった。言葉が実に明晰で自然、なんの違和感もないので字幕などは要らない。なせばなる、のいいお手本だと思った。ハンナ役は私の好きな塩田美奈子さんであるが、欲を言えば80%の力で歌っています、と思わせるような歌唱が欲しかった。でも存在感は確かで次の再会が楽しみである。

フレンチ・カンカンはやはりみものである。これは何べん観ても楽しい。大股開きをするような中心的ダンサーが8人横並びしていると思ったら、場面が変わると横並びがあるときは7人、さらには6人になったりするので、いったいどうなっているんだろうと気になった。フレンチ・カンカンといえば、カミーユに言い寄られるパリ駐在ポンテヴェドロ国大使夫人、ヴァランシエンヌ役のソプラノ天羽明恵さんが大使夫人として余興に踊り子として出てカンカンを踊ったのがよほどお気に召したのか、それとも衣裳がそうさせるのか、カンカン踊りの場面の後ではなにかあると衣裳の裾を持ち上げて脚を覗かせようとするのが面白かった。森麻季さんならどうしただろう。

公演が始まったのが午後2時で終わったのが5時、いわば現役世代のみなさんが仕事をしている時間である。学生時代に講義をエスケープして映画館に潜り込んだような後ろめたさをふと感じたが、公演を終わって帰途につく老若男女の観客一人一人の表情が実に明るく美しいのを見て、後ろめたさも吹っ飛んでしまった。



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