日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

阿部豊監督の「細雪」にご対面

2011-01-17 22:53:41 | 音楽・美術
谷崎潤一郎の「細雪」は私の大好きな小説の一つで、読み返した回数ではダントツの一位である。小谷野敦著「谷崎潤一郎伝」を読んでで次のように述べている。

私が何回も読み返した最右翼の小説が「細雪」である。アメリカに滞在しているときだけでも二三回は読み返している。外国の友人になにか面白い小説をと聞かれると、「Makioka Sisters」を紹介するのが常だった。「細雪」は船場の旧家蒔岡家の四人姉妹の生活を次女幸子の夫、貞之助の目を通して描いたものである。ところが私にはこの小説を最初に映画化した「細雪」の印象がとても強くて、長女鶴子といえば花井蘭子、次女幸子は轟夕起子、三女雪子が山根寿子で四女妙子が高峰秀子というように、四人姉妹が女優の顔になって現れるのである。

また「細雪」に登場するお春どんにお目にかかった話を「細雪」のお春どんとはで紹介した。しかし私は「細雪」には小説より先に映画でお目にかかったのである。それが上の四人の女優が出演する「細雪」で監督が阿部豊、制作が1950年であった。私が高校に入学した年、朝鮮戦争が勃発した年でもある。戦前の富裕階級が営む生活の数々の優雅な場面に、過ぎ去った栄華を惜しむ気持ちと、いずれまたこのような時代が戻ってくるとしたら、その担い手になるのはわれわれであろうというそこはかとない高揚感が湧き起こった。たった一度しか観ていないのに、昭和13年の阪神大水害の緊迫した情景の記憶などが生々しく残っている。

その後小説を読み返したり、市川崑監督の「細雪」(1983年制作)を観るにつけても、この映画がカラーのせいもあってモダンで華麗すぎ、その一方で陰影の描き切れていないことから私の抱くイメージに合わなかったこともあって、阿部「細雪」を無性に観たくなったのである。しかしVHSを探したり、古い映画が1000円とか500円のDVDでで出まわるようになって注意を怠らなかったが、この作品にお目にかかることがなかった。ところが砂古口早苗著「ブギの女王・笠置シズ子」 今年も笑ってラッキー・カムカム!を書いたのがきっかけでAmazonを調べたところ、なんとこの作品が「細雪 デジタル・ニューマスター」として登録されていたのである。2007年に制作されたらしい。参考価格が5040円、それが40%オフの3024円也。古い映画だからと廉価版だけを探していたのが間違いのもとであった。


送られてきたDVDには36ページにわたる解説リーフレットが添えられていた。《高峰は谷崎夫妻の計らいで、芦屋言葉の指導を彼女が演じる四女のモデル、鴨川信子(谷崎夫人、松子の末妹)から直接指導を受け、劇中で舞う地唄舞「雪」は武原はんに手取り足取り教わったという》とか、当時の助監督の《高峰秀子が地唄舞を踊る場面は緊張しました。地唄の指導は、富崎春昇、富山清琴という方で、斯界では大御所ですね。踊りは武原はんさん、打ち合わせは武原はんさんの家でやりました》のような話に接すると、もうそれだけでゾクゾクしてくる。上映時間は141分。長年思い焦がれてきた作品だけに直ぐに観るのがもったいなくて、何時にしようかなと目下思案中である。

ちなみに、個人情報の押し付けながら、私の妻は幸子と書いて雪子と読む。

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