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日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

大阪大学大学院生命機能研究科「調査報告書」の外部公開を歓迎

2006-09-26 18:49:37 | 学問・教育・研究
このようなものが出て来るとは正直なところ驚いた。この「調査報告書」のかくも迅速な外部公開は『快挙』とも云える。納税者に対する説明義務を真摯に考えられたからであろう。関係者の苦渋が滲み出ているだけに、背筋を正して拝見した。

「不正行為があった疑いのある2論文に関する調査報告書」として、不正行為の存在を断定するにいたる経緯は極めて説得力がある。関係者の献身的な努力を高く評価したい。

しかし、この報告書では時期尚早とみたのか、不正行為を生み出した『背景』には全く触れていない。第二弾としてぜひ時間をかけて、なぜこのような不正行為が起こりえたのか、その分析を進めていただくことを期待する。

その『背景』に関連して、私が気になることを二点ほど挙げる。

第一は不正行為の規模である。

データの改竄に、私の長年の友Photoshopが使われたと知って「さすが」と思った。杉野教授はPhotoshopの持てる力に、かねてから気付いておられたのであろう。『報告書』に改竄手法が詳しく述べられているが、それが杉野教授の行為を再現したものとすると、杉野教授はなかなかの使い手だと云えそうである。さすがPh.D.(Doctor of Photoshopの方の)のタイトルにふさわしいと云いたいが、私なら資料10に示されているような白点、黒点を残すようヘマはしない。スポイドツールを使い周りの色に溶け込ましてしまう。白点、黒点を残したことが『改竄』の汚点であったと云えよう。

それはともかく、私は杉野教授はかなりこの手法を使いこなしておられる印象を持った。特に別の実験のデータを横に並べて、あたかも一つの実験の結果であるかのように仕上げた作品には、実戦で鍛えられた冴えがある。

そう、データの改竄は今回問題になった二論文に止まらず、過去にもなされたのではないか、と私は疑っているのである。本当にこれまで杉野研究室関係者は誰一人気付かなかったのだろうか。

そして未だに解けない謎がある。9月22日のエントリーからの再録である。

《教授が単独で不正を働いたといっても、道ばたで大金を拾ってネコババしたような、場合によっては隠し通せるような話ではないのである。論文の投稿に至る経緯がいかなるものであれ、無断で名前を盗用された(とされる)いわゆる共著者の目に論文が触れれば、『不正』がすぐにばれるのは最初から分かっているではないか。このような幼稚な行動を大阪大学教授がとるとは・・・、この報道内容自体が私には信じられないのである。》

今でもこの疑問は残ったままである。大阪大学での定年を目前に控えた杉野教授が、突発的に『ご乱心』とは私にはどうしても理解できない。考えたくはないが、これまで周りが支えてきた杉野教授の『独断専行』が、ようやく見放され始めたということなのだろうか。

第二は論文共著者の私には理解できない行動である。

「報告書」の示す第1論文に関する時系列は以下の通りである。

  ①旧原稿は以前に(年月日なし)Molecular Cell誌に投稿、掲載拒否。
  ②平成17年12月17日、杉野教授が他の著者に最終原稿を見せずにGenes to Cells誌に投稿。
  ③平成18年1月16日、大幅な改稿を要求される。
  ④同年3月9日、同誌に改訂稿を再投稿。
  ⑤同年4月3日に掲載拒否。
  ⑥同年4月13日にJBC誌へ投稿
  ⑦同年5月28日に改訂版投稿。
  ⑧同年7月11日に最終的に受理、電子版が発刊。

この「報告書}によると、まず筆頭著者は①の旧原稿はは杉野教授から示されていた。ただし「示されていた」とはどういうことか、この報告では分からない。表紙だけチラッと見せられたのだろうか。

そして筆頭著者は《4月13日の杉野教授によるJBC誌投稿後、5月28日までの間に、論文が投稿中であることを杉野教授より聞いているが、その投稿原稿は見ていない。》とのことである。

少なくとも筆頭著者はそれが何時のことか分からないけれど平成17年12月17日よりも前に、旧原稿がMolecular Cell誌に投稿されたことは承知していた。それがどうなたのか、知らないままに⑥平成18年4月18日以降になってJBC誌へ投稿中と知らされたのである。

筆頭著者が自分の投稿論文についてこれほど無関心でいられるのか、私には全く信じられない。私と云わず、研究者は投稿したときからそわそわどきどき、さあ、先方から何を云ってこられるか、千秋の思いで待つのがふつうではないのか。「どうなりましたか」とか、「まだ、何とも云ってきませんか」とかの会話がどうして成り立たないのだろう。

同じことが筆頭著者のみならず他の共著者にも云える(追記あり)。自分たちの投稿論文がどうなったか、気になるのが研究者ではないのか!何が楽しくて実験なんぞしているのだろう。この『無関心さ』と杉野教授の『独断専行』に相関を感じるのは私だけだろうか。

しかし第1論文の筆頭著者が『異常』に気づき、川崎助手に連絡したとのことに一抹の救いを見た。しかし私が救いと見たことが、同時に川崎助手の自死に関わりがあるとしたら、と粛然の思いがある。

『背景』の解明はこれからである。それがあってこそ研究科長談話にある、科学研究上の不正防止の強化の具体的な方策が生まれることだろう。

【追記 (9月26日)】

「調査報告書」には明記されていないが、私は①旧原稿を投稿した時点では、ほかの共著者は共著者であることを知っていたとの前提で話をすすめている。たとえ杉野教授がこの人たちに旧原稿を示していないとしても、杉野教授から示された筆頭著者が、他の共著者にこの件に関して口を閉ざしていたという可能性を私は全く想定していないからだ。

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