日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

牛海綿状脳症(BSE)の波紋で献血不適格者になってしまった私

2005-03-20 17:33:08 | 社会・政治
明治生まれの母は気丈であった。病床で血液検査の採血をされる時には、か細くなった腕の血管に一発で注射針が入るかどうか厳しく見守り、血液が注射器に吸い込まれだすと「ああ、もったいない、ああ、もったいない」と端に聞こえるように呟くのだった。

その血を引いている私だから、街角で献血車に出会うと、捕まらないように素知らぬ表情を装ったり、少し遠回りをしたりする。しかしなんとなく後ろめいた気がないわけではなかった。ところが、これからは大威張りで歩ける。私は献血不適格者になったのである。

厚生労働省が3月7日に、80年~96年に英仏に1日以上の滞在歴がある人からの献血を受け付けない方針を決めたからである。昨年12月に50歳代の日本男性が「変異型クロイツフェルト・ヤコブ病」(vCJD)で死亡したことを受けての処置である。90年に24日間イギリスに滞在したこの男性が、vCJDの病原性物質を含んでいる恐れのある牛の頭部や脊柱を含んだ挽肉を使った可能性のあるハンバーガーなどを食べていたことが分かったからだという。

血液を介して人がvCJDに感染した事例は世界的にも把握されていないそうであるが(後出)、薬害エイズ事件を拡大させた責任を負う厚生労働省としては、後手に回る危険を避けるための予防処置としてこの方針を打ち出したのであろう。「羮に懲りて膾を吹く」の感なきにしもあらずだが、指定されたその期限内に何回かイギリスを訪れた私は間違いなく献血不適格者になる。

特に1995年の12月、ちょうどクリスマス時期にロンドンに滞在した私は、見通しの甘さの報いを受けた。クリスマス時だから街のレストランなどは閉まっているだろうが、チャイナ・タウンの中華料理店は開いているだろうと予想して出かけたのである。中国人がキリスト生誕を祝って店を閉めるはずがない、と勝手に思いこんでいたのである。ところがほとんどのめぼしい中華料理店が休んでいる。まれに開いている店はかなり長い行列が出来ているので、仕方なしに飛び込んだのがファーストフッドの店。そして注文したのがハンバーガー、それを2、3回は繰り返した。

これまで既に同期間中イギリスに通算6ヶ月以上滞在した人は、献血を受け付けない処置を取っていたようであるが、私は気づかなかった。そのニュースを見たかも知れないが記憶には留まっていない。見ていたとしても、6ヶ月以上滞在の条件に当てはまらないことから、即刻記憶から脱落したのであろう。

厚生労働省のホームページで見ると、3月7日に開催された薬事・食品衛生審議会血液事業部会運営委員会において、当面の暫定措置として出された結論のようである。《本措置は安全技術調査会での検討後施行とするが、それまでの間、速やかに措置を実施できる体制を整備するよう、日本赤十字社に対して運営委員会の結果を速やかに伝達し、指導することとする。また、血液製剤の安定供給に関する調査を同時に行い、その影響を把握する》ということだから、施行までにはすこし時間がかかるようである。

ただこのニュースを報じるマスメディアは少し不親切である。私は仮に発症するとしても諦めのつく年齢であるが、若い方なら該当者は不安を感じるかも知れない。不必要におびえることのないようにコメントを付け加えるべきではなかったのか。そこで厚生労働省のホームページにある牛海綿状脳症(BSE)等に関するQ&A(平成17年2月4日に最終更新)の記事をここに転載しておく。

Q4:血液を介してvCJDに感染することはあるのですか?
A4
1.血液を介して人がvCJDに感染した事例は世界的にも把握されていません。しかし、現在の科学的な知見では、血液を介した感染の可能性について未知の部分が多いことから、予防的な措置として、これまで、日本では、献血時の問診において献血者の海外渡航歴を確認し、1980年から1996年までの間に英国に通算6ヶ月以上滞在した方については、献血をお断りしています。
 (なお、米国、カナダ、ドイツ、フランス、オーストラリア、ニュージーランド等において、同様の措置が取られています)。
2.(略)