税理士 倉垣豊明 ブログ

東京武蔵野市(三鷹)の税理士 相続税、贈与税等資産税対策、法人・個人向け税務・会計・会社法のブログ

全株式についての特別な定め

2007-10-17 08:12:14 | 新会社法
おはようございます。税理士の倉垣です。

今日は、株式会社の発行する全部の株式につき特別な定めをする場合についてまとめてみました。

株式会社が、内容の異なる数種類の株式を発行するのではなくて、その発行する全部の株式の内容として次に掲げる事項を定めることができます。

1、譲渡制限株式
 譲渡によるその株式の取得についてその株式会社の承認を要すること。

2、取得請求権付株式
 その株式について、株主がその株式会社に対してその取得を請求することができること。

3、取得条項付株式
 その株式について、その株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができること。

株式会社が、その発行するすべての株式につき特別な内容として定めることができるのは、上記3つに限定されています。これら3つの内容は種類株式の内容としても定められています。

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譲渡制限株式

2007-10-16 08:13:45 | 新会社法
おはようございます。税理士の倉垣です。

今日は、新会社法で譲渡制限株式の取り扱いがどのように変わったかを、旧商法と比較しながら簡単にまとめてみました。

承認請求の相手 譲渡制限の株式
旧商法 取締役会 すべての株式
新会社法 原則:株主総会(取締役会設置会社は取締役会)
例外:定款で別段の定めができる
株式の一部についてのみの譲渡制限も可能

上の表のように、株式の譲渡の承認申請の相手は、旧商法では、取締役会のみであったのが、新会社法では、原則は株主総会(取締役会)ですが、定款で別段の定めをすることができます。別段の定めとは、例えば次のようなものです。
イ、株主間の譲渡には承認を要しない
ロ、特定の属性を有する者に対する譲渡については、その承認権限を代表取締役等に委任するか、あるいは承認を不要とする
ハ、取締役会を設置している会社において、承認機関を株主総会とすること

また、旧商法においては、株式の譲渡制限はすべての株式に付けるか、付けないかの2者択一しかありませんでしたが、新会社法では、ある種類の株式のみ譲渡制限を付けることもできるようになりました。

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9の種類株式

2007-10-15 08:15:03 | 新会社法
おはようございます。税理士の倉垣です。

新会社法では、発行できる株式の種類が増えました。
全部で9種類です。ここでそのすべての種類の株式の内容を簡単にまとめてみようと思います。

異なる内容 種類株式
剰余金の配当 優先配当株、劣後株など
残余財産の分配 残余財産分配優先株、劣後株など
株主総会において議決権を行使することができる事項 議決権制限株式
譲渡によるその種類の株式の取得についてその株式会社の承認を要すること 譲渡制限株式
その種類の株式について、株主がその株式会社に対してその取得を請求することができること。 取得請求権付株式
その株式の取得について、その株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができること。 取得条項付株式
その種類の株式について、その株式会社が株主総会の決議によってその全部を取得することができること。 全部取得条項付種類株式
株主総会(取締役会設置会社にあっては株主総会又は取締役会)において決議すべき事項のうち、その決議のほか、その種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とするもの)  拒否権付種類株式
その種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役又は監査役を選任すること。 取締役・監査役の選任権付種類株式
(会社法108条)

個々の種類株式の詳しい内容は後日、順次投稿を予定しています。

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詐害信託の規制

2007-10-12 08:18:56 | 法人税

おはようございます。税理士の倉垣です。

今日は、詐害信託の規制についてまとめてみました。

委託者がその財産を信託財産にすると、その信託財産は受託者に帰属し、委託者の債権者はもはやその信託財産の差し押さえなどはできなくなるはずです。

民法では、債務者がその債権者を害することを知って、自己の財産を処分した場合には、その債権者は債権保全のためその行為の取り消しを裁判所に請求することができます(債権者取消権)。

新信託法では、次のように規定しています。

11条(詐害行為の取消し等)

1
委託者がその債権者を害することを知って信託をした場合には、受託者が債権者を害すべき事実を知っていたか否かにかかわらず、債権者は、受託者を被告として、民法の債権者取消権の規定による取消しを裁判所に請求することができる。ただし、受益者が現に存する場合において、その受益者の全部または一部が、受益者としての指定を受けたことを知った時又は受益権を譲り受けた時において債権者を害すべき事実を知らなかったときは、この取り消しの請求はできません。

第4項
委託者がその債権者を害することを知って信託をした場合において、受益者が委託者から信託財産に属する財産の給付を受けたときは、債権者は、受益者を被告として、民法の債権者取消権の規定による取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その受益者が、受益者としての指定を受けたことを知った時又は受益権を譲り受けた時において債権者を害すべき事実を知らなかったときは、この取り消しの請求はできません。

第5項
委託者がその債権者を害することを知って信託をした場合には。債権者は、受益者を被告として、その受益権を委託者に譲り渡すことを訴えをもって請求することができる。この場合において前項ただし書きの規定が準用される。

1項は、委託者が悪意(債権者を害することを認識していた)であれば、受託者の善意悪意にかかわらず、受託者に対して詐害信託の取消しを請求できる。ただし、受益者の利益も保護する必要から、受益者の一人でも受益者となった時において善意であれば、詐害信託の取消し権は行使できない。
第4項は、委託者が悪意であれば、信託財産の交付を受けた受益者(受益者となった時において悪意の者に限る)に対し、その受益者に対し取消し請求ができる。
第5項は、委託者が悪意で、受益者も悪意のときは、その受益者に受益権を委託者に戻すことを請求できる。

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セキュリティ・トラスト(担保権信託)

2007-10-11 08:23:27 | 法人税
おlはようございます。税理士の倉垣です。

今日は、新信託法のセキュリティ・トラスト(担保権信託)について書いてみました。

セキュリティ・トラスト(担保権信託)とは、例えば、委託者が自分の土地に抵当権を設定し、その抵当権者を受託者とするような信託です。
これは、通常の信託のように、委託者から受託者に財産の移転がありません。委託者の財産権(抵当権)が受託者に帰属するという形で信託が設定されます。

この場合、民法の「抵当権は債権者が自己の債権のため、優先弁済を受けるための権利であり、債権者以外の者が所有できない。」という考えにより、一般的にセキュリティ・トラストは認められていなかったようです。

しかし、新信託法3条各号に信託の設定方法につき「財産の譲渡、担保権の設定その他の財産を処分する旨」というように、セキュリティ・トラストを認めています。

これにより、シンジケート・ローンにおいて、債務者が自己の不動産に抵当権を設定し、その抵当権者を受託者とし、そして、債権者を受益者とする信託を設定することにより、その受託者が多くの債権者のために抵当権を管理することができます。

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信託宣言による信託

2007-10-10 08:18:45 | 法人税
おはようございます。税理士の倉垣です。

今日は、信託の設定のうち、信託宣言によるものについてまとめてみました。

信託法3条3号は、次のように規定しています。
特定の者が一定の目的に従い自己の有する一定の財産の管理又は処分及びその他のその目的の達成のためにに必要な行為を自らすべき旨の意思表示を公正証書その他の書面又は電磁的記録でその目的、その財産の特定に必要な事項その他の法務省令で定める事項を記載し又は記録したものによってする方法

もう少しわかりやすく説明しますと、自分の財産のうちいくつかを切り分けて、「以後一定の目的のためにこれらを別財産にする」と公正証書などで意思表示をすると、その財産は、他の固有財産とは区別され、その決められた目的のため運用・管理されることとなります。

[一定の方式]
この方式だと、委託者から受託者への信託財産の移転がないので、信託行為の時期などが他の方式に比べ不明確になります。
そこで、次のように効力発生について次のように一定の方式が要求されています。

イ、公正証書又は公証人の認証を受けた書面若しくは電磁的記録によってされる場合 その公正証書等の作成によって効力が発生します。

ロ、公正証書等以外の書面又は電磁的記録によってなされる場合 受益者となるべき者として指定された第三者(その第三者が2人以上ある場合にあっては、その1人)に対する確定日付のある証書によってその信託がされた旨及びその内容の通知によって効力が発生します。

[周知期間]
この信託宣言による信託の方式は、信託法の施行の日から起算して1年を経過する日までの間、適用しないこととされています。

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信託財産の独立性(倒産隔離機能)

2007-10-09 08:21:38 | 法人税
おはようございます。税理士の倉垣です。

今日は新信託法の「信託財産の独立性」について簡単にまとめてみました。

信託を設定すると、その信託財産と受託者又は委託者の債権者との関係は次のようになります。

1.受託者の債権者との関係
受託者の債権者は、原則として、その信託財産に対して強制執行などは行うことはできず、また受託者が破産しても信託財産は破産財団に組み込まれません。
ただし、信託財産責任負担債務に係る債権に基づく場合は信託財産に対して、強制執行などを行うことができることとなっています。
信託財産責任負担債務とは、受託者が信託財産をもって履行する責任を負う債務で、例えば受託者が信託目的のため株式を購入した場合のその代金支払債務などです。

2.委託者の債権者との関係
委託者の債権者も、原則として、信託財産に対して強制執行などはできず、また委託者が破産しても信託財産は破産財団に組み込まれません。
これは、信託財産は受託者に帰属していて、もはや委託者の財産ではないからです。

以上のように、信託財産は受託者に帰属しますが、その受託者の固有財産から独立して、その信託目的のため運用・管理されます。そして、受益者が存在する場合には、その利益を受託者に帰属させます。信託財産は原則として、委託者や受託者の債権者から独立しています。

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日本初の三角合併(米シティと日興コーデアルグループ)

2007-10-05 08:15:12 | 新会社法
おはようございます。税理士の倉垣です。

10月2日に「日本初の三角合併(米シティと日興コーデアルグループ)」のニュースが流れましたね。

新会社法施行後、初めての三角合併方式による組織再編です。正確には合併というより株式交換です。

シテイグループの日本法人であるシティグループ・ジャパン・ホールディングス株式会社(CJH)と日興コーディアルとは、平成19年3月に業務提携をし、その後TOBなどによりCJHが持株比率約68%を保有していましたが、平成19年10月末までに両社の間でCJHの完全親会社であるシティグループ・インクの株式を対価とする株式交換契約を交わし、今年の12月の臨時株主総会の承認を得て、来年1月に効力を発生させるとのことです。

これにより、日興コーデアルグループはシティグループ・インクの完全子会社であるCJHの完全子会社となり、日興コーデアルグループの約32%を保有していた株主はシティグループ・インクの株式を交換に取得することとなります。

これで、三角合併方式による企業再編が多くなるのでしょうか。成り行きを見守りたいですね。

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企業再編における合併比率と効力発生日について

2007-10-04 08:18:46 | 新会社法

おはようございます。税理士の倉垣です。

企業再編の合併や会社分割などは、一定の手続きを順序どおり進めていかなくてはなりません。そして特定の手続きとそれに続く他の手続きとの間に一定の期間を空けることが要求されているものもあります。したがって、合併などの計画からその効力発生までかなりの月数がかかります。

既存の2社が合併をする場合を例にとると、一般的には次のようになります。

まず、両社が合併契約書を作成する。その中には当然、合併条件が記載されます。この合併条件は、被合併会社の株式1株に対して、合併会社の株式を何株交付するかという形で表現されます。この合併比率は、合併契約書作成前のある時期における、両社の株価すなわち財務内容や収益力などを考慮して決められます。この合併契約後、一定の書類を本社の備置き、債権者への通知・公告など必要な手続きを要求されます。最後に、両社の株主総会の承認を経て、その効力発生日に合併の効力が発生します。

もし、合併契約の日から効力発生日までの期間が長すぎると、契約書の合併比率と効力発生日の両者の株価に差が生じます。もちろん、合併契約の日と合併承認株主総会(効力発生日)との間の期間がほんの数日ということは、法律上不可能ですが、それでもできるだけその期間を短くする努力は必要なのではないでしょうか。

ただ、天災など特別な事由のため合併条件の変更ができる旨の内容を記載することは一般には行われているようです。

合併契約締結後、承認株主総会までに生じる様々事由のうち、どこまでを関係当事会社の合併比率の合理的な変動枠内とみるのか、またその変動事由が一般的に認められる事由であってもその変動額が異常な額に達した場合の考え方をどうするのか、難しい問題があるように思います。

最終的には、合併契約書を両社で交わし、両社の承認株主総会で承認されればそれだけで効力は発生します。

もし、合併契約書と効力発生日との間に長い期間が空き、そのため合併比率と効力発生日の株価に差が生じ、これに異議のある株主は、承認株主総会で反対の意思表示を行い自己の株式の買取請求をすることができ、また、合併後、合併無効の訴えを起こすことも認められています。
債権者については、異議を申し立てて、その異議のある債権者が特別に債権の回収や担保の提供を受けることも認めれています。

会社法上、承認株主総会と合併比率の計算日との間隔に関する直接的な規定は見当たりません。
結論は難しいのですが、私は、合併比率は承認株主総会に基礎資料の鮮度という点からも、法律上最低限守るべき間隔を空けなければいけませんが、近ければ近い方がよい。もし、やむを得ず長期になる場合でも、その中に新たな決算期を挟まないようにしたいですね。合併承認株主総会で合併比率の基礎を説明するときに、この株主総会で承認されようとしている決算数字ではなく一期前の決算に基づいているというのあまりかっこよくはないと思うのですが。


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