税理士 倉垣豊明 ブログ

東京武蔵野市(三鷹)の税理士 相続税、贈与税等資産税対策、法人・個人向け税務・会計・会社法のブログ

占有者と果実

2010-08-31 06:32:03 | 税金一般
おはようございます。税理士の倉垣です。

占有者と果実

今日は、不動産の占有者が、その不動産の真実の所有者から返還請求を受けた場合に、既に受取った地代などの果実の返還義務について検討してみました。

1、占有
占有とは、物の事実上の所持のこと。
「占有権は、自己のためにする意思をもって物を所持することによって取得する。」(民法180条)

2、果実(民法88条)
(1)自然果実 物の用法に従い収取する産出物
(2)法定果実 物の使用の対価として受けるべき金銭その他の物

3、善意占有者と果実
善意の占有者は、占有物から生ずる果実を取得する。(民法188条1項)

甲がその土地を乙へ賃貸し地代を収受していたが、実はその土地の真実の所有者は丙であった。丙は甲へその土地の返還請求をすることができるが、甲がその土地は自己のものであると信じていたならば既に甲が収受した地代の返還を求めることはできない。

4、悪意占有者と果実
悪意の占有者は、果実を返還し、かつ、既に消費し、過失によって損壊し、又は収取を怠った果実の代価を償還する義務を負う。(民法190条1項)

倉垣税理士事務所の公式WEB http://kuragaki.jp

動産の対抗要件と即時取得

2010-08-30 06:34:59 | 税金一般
おはようございます。税理士の倉垣です。

動産の対抗要件と即時取得

不動産物権の対抗要件は登記ですが、動産物権の対抗要件は引渡しです。

1、引渡し
引き渡しは、占有の移転ともいいます。
占有の移転は民法上次の4つが規定されています。
(1)現実の引渡し
(2)簡易の引渡し
(3)占有改定
(4)指図による占有移転

宝石商のAは宝石をBに売却し、購入者のBはしばらくその宝石をAに預けておくことにした。

この場合、その宝石は依然として宝石商Aの手元にあるが、以後Bのために所持することによりBはその宝石の占有を「占有改定」により取得したことになる。したがって、Bは他の第三者に対してその宝石の所有権を対抗することができる。

2、即時取得
取引により動産の占有を始めた者が、その取引時に、善意無過失であるときにはその動産の権利を取得できる。

例えば、宝石をAがBから売買契約で取得したが、実はBはその宝石の真実の所有者ではなかった場合で、Aがその取引時に、善意無過失であればその宝石の所有権を取得できる。
しかし、Aがその宝石をBに預けたままであった場合、つまり占有改定であるときは、Aはその宝石を即時取得することができないとされています。

占有改定は、動産物権の対抗要件とされますが、即時取得は認められません。

倉垣税理士事務所の公式WEB http://kuragki.jp

立木の明認方法2

2010-08-29 08:40:15 | 税金一般
おはようございます。税理士の倉垣です。

立木の明認方法2

前回は、取引の始めに土地上に立木があった場合ですが、今回は最初は更地でその後に立木ができた場合を取扱います。

甲はその更地を乙に売却した。乙はその土地に立木を植栽した。甲はその土地の所有者名義が甲のままであったので、この土地と立木を丙に売却し土地の所有権移転登記も完了した。

乙は土地も立木もその所有権を丙に対抗することができない。丙が土地と立木の所有権を取得する。
これは、甲から乙と丙への2重譲渡の場合で、その優劣は対抗要件である登記の前後で決するからです。

もし、乙が丙への所有権移転登記より前に、明認方法を施せば立木に関しては乙はその所有権を丙に対抗することができます。
不動産に付属させた物は原則として、付合により土地所有者のものとなりますが、乙が権限(所有権)に基づき付属させた立木は土地とは別な運命をたどることとなりますが、最終的には対抗要件を備えた時期により優劣が決せられます。

倉垣税理士事務所の公式WEB http://kuragaki.jp

立木の明認方法

2010-08-27 06:19:58 | 税金一般
おはようございます。税理士の倉垣です。

立木の明認方法

立木(りゅうぼく)の対抗要件として、明認方法というものがあります。これは、木の表面を削って所有者の氏名等を書き付けたり、枝からプレートをぶら下げたりして、立木の所有権を公示するものです。これは、木だけの取引を公示する方法として行われてきた慣例を裁判所が認めたものです。

1、甲はその土地上の立木をAに売却し、Aはその立木に明認方法を施した。その後、甲はその土地と立木を乙に売却し、乙は土地の所有権移転登記をした。。Aは立木の所有権を乙に対抗することができるか。

Aは立木について、乙に所有権を対抗できる。立木の対抗要件である明認方法を施しているから。
もし、乙が立木を取得したときに、Aの施した明認方法が台風などで壊れていたら、もはやAは立木の所有権を乙に対抗できない。

2、甲からその土地と立木をAが購入し、立木に明認方法を施した後、甲がその同じ土地と立木を乙へ売却し乙はその土地の所有権移転登記をした。

この場合は、乙が土地のみでなく立木までもその所有権を取得することとなります。Aはせっかく立木について明認方法を施したのですが、その効果はありません。明認方法は、土地の登記では公示できない権利変動についてのみ認められます。この例では、Aは土地の登記ができ、それをすることによって、土地と立木の所有権の公示ができたはずです。

倉垣税理士事務所の公式WEB http://kuragaki.jp

背信的悪意者からの転得者

2010-08-26 06:34:05 | 税金一般

おはようございます。税理士の倉垣です。

背信的悪意者からの転得者

前回、不動産取引の権利変動は、原則として登記がなければ第三者に対抗できないが、例外的に、背信的悪意者に対してはその権利変動は登記がなくても対抗できることをご説明しました。

今回は、その背信的悪意者からその不動産を取得した転得者について考えます。

甲から乙へ不動産が譲渡された後、その甲から乙への登記をする前に甲から丙(背信的悪意者)がその不動産を取得し登記を済ませ、これを転得者丁に売却し移転登記を完了した場合。

判例では、上記設例の場合、乙は転得者丁にその不動産の所有権を対抗できない、すなわち丁がその不動産の所有権を取得する。

乙は背信的悪意者である丙には登記がなくてもその権利取得を対抗できるが、転得者に対しては登記がなくては対抗できないとされています。

倉垣税理士事務所の公式WEB http://kuragaki.jp

登記なくして権利を主張できる第三者

2010-08-25 06:33:38 | 税金一般
おはようございます。税理士の倉垣です。

登記なくして権利を主張できる第三者

民法は、不動産の権利変動は登記をしなければこれを第三者に対抗することができないと定めています。(民法177条)
この第三者は悪意であっても保護されます。

しかし、登記がなくても対抗できる第三者があります。
次の4つです。

1、不動産登記法5条1項2項の場合
(1)詐欺又は強迫により登記の申請を妨げた者
(2)他人のために登記を申請する義務を負う者

2、背信的悪意者

3、無権利者

4、不法行為者
建物を損壊した者や、土地の不法占拠者。

倉垣税理士事務所の公式WEB http://kuragaki.jp

相続と登記

2010-08-24 06:32:37 | 相続税・贈与税
おはようございます。税理士の倉垣です。

相続と登記

1、同一の不動産を被相続人から譲受けた者と相続人から譲受けた者との優劣
被相続人甲から生前にその土地を売買で購入した乙が登記を完了する前に甲が死亡し相続が開始した。相続人は丙1人で、丙はその土地を丁へ売却し移転登記を済ませた。

丁はその土地の所有権を乙に対して対抗することができる。

丙は甲の相続人で、甲の権利義務を包括承継する。つまり、甲イコール丙であるので、同一人からその土地を乙と丁は2重に譲渡と受けたことと同じ状態になり、この場合の優劣は対抗要件つまり先に登記を完了したほうが勝ちとなる。
乙は登記がなく、丁が登記を済ませているので、丁の勝ちとなる。

2、共同相続
(1)被相続人甲の相続人が乙と丙の2人で、甲の土地を遺産分割で乙単独所有することとなったが、丙がその土地を丙がすべて相続で取得したとして登記をし、その後丁に売却登記した場合。

乙はその土地の2分の1の所有権、丁はその土地の残り2分の1を丙より取得することとなります。

遺産分割の結果、被相続人のその土地の2分の1は相続開始の時に遡って、乙のものとなりますが、丙の持分2分の1に関しては、丙から乙と丁に2重に譲渡されたとして、その優劣は先に登記をした方が勝ちとなります。乙が相続登記をする前に、丁が登記を受けているので、その2分の1は丁のものとなります。

(2)相続放棄者
相続放棄者から不動産の譲渡をうけ、登記を完了した者は、その権利を取得することはできません。
相続放棄は、絶対的な効果を生じ、相続放棄者は相続開始の時に遡り、相続人でなかったこととなります。したがって、誰も無権利者から権利を取得することはできません。

倉垣税理士事務所の公式WEB http://kuragkai.jp

取得時効と登記

2010-08-23 06:32:09 | 税金一般
おはようございます。税理士の倉垣です。

取得時効と登記

1、時効完成前の第三者
甲は自己の土地を乙に売却して所有権移転の登記を完了した。その後、甲が乙へ土地を売却する前からその土地を占有していた丙がその土地を時効取得した場合。

丙がその土地の所有権を取得し、乙はその土地の所有権を失う。

乙は甲からその土地の所有権を取得した者で、丙からその時効を主張される直接の当事者であるとされます。乙は登記がないと対抗することができない第三者ではないので、丙はその取得時効を登記なくして乙に主張できることとなります。

2、時効完成後の第三者
甲の土地を占有していた丙がその土地を時効取得した後、甲はその土地を乙に売却して所有権移転の登記を完了した。

乙はその土地の所有権を丙に対抗することができる。

対抗要件の問題で、先に登記をした乙の勝ちである。この場合は、甲から乙への売買と、甲から丙への時効取得との優劣問題で、先に登記をしたものが勝つこととなります。

倉垣税理士事務所の公式WEB http://kuragaki.jp

解除と登記

2010-08-22 12:28:13 | 税金一般
おはようございます。税理士の倉垣です。

解除と登記

1、解除前の第三者
甲が自己の土地を乙に売却し、乙が丙へ転売して登記を完了したのち、甲が乙との売買契約を解除した場合。

甲は、不動産を丙から取り戻せない。

当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害するjことはできない。(民法545条1項)
判例は、第三者の保護要件として登記を必要としている。
したがって、甲は乙との売買契約を解除しても、登記のある丙からその土地の返還を求めることはできない。

2、解除後の第三者
甲が自己の土地を乙に売却したのち、甲が乙との売買契約を解除したが、その後乙が丙へ転売した場合。

この場合は、対抗要件の問題で、甲又は丙の先に登記をした者が勝つこととなります。

倉垣税理士事務所の公式WEB http://kuragaki.jp

会社の機関設計の基準と根拠条文

2010-08-21 13:31:28 | 新会社法
おはようございます。税理士の倉垣です。

会社の機関設計の基準と根拠条文

今日は前回の会社の最低機関形態を会社法の条文と結び付けて整理してみました。

[株主総会以外の機関の設置(会社法326条)]
(1)株式会社には、1人又は2人以上の取締役を置かなければならない。
(2)株式会社は、定款の定めによって、取締役会、会計参与、監査役、監査役会、会計監査人又は委員会を置くことができる。

1、公開会社
イ、大会社は監査役会及び会計監査人を置かなければならない(会社法328条1項)
ロ、次の会社は取締役会を置かなければならない(会社法327条1項一号二号)
(イ)公開会社
(ロ)監査役会設置会社
ハ、取締役会は取締役3人以上で構成する。(会社法321条4項)
ニ、監査役会は監査役3人以上で構成し、うち過半数は社外監査役でなければならない。(会社法335条3項)
以上の条文により、公開会社である大会社は、最低でも取締役会(取締役3人)、監査役会(監査役3人、内社外監査役過半数)、会計監査人1人を置かなければならない。

公開会社である中小会社は、「取締役会設置会社は、監査役を置かなければならない。(会社法327条2項)」と定められているため、最低取締役会(取締役3人)、監査役1人置けばよい。

2、閉鎖会社
イ、公開会社でない大会社は、会計監査人を置かなければならない。(会社法328条2項)
ロ、会計監査人設置会社は監査役を置かなければならない。(会社法327条3項)
以上の条文により、閉鎖会社である大会社は、最低でも取締役1人、監査役1人、会計監査人1人を置かなければならない。

閉鎖会社である中小会社は、最低取締役1人置けばよい。

倉垣税理士事務所の公式WEB http://kuragaki.jp