税理士 倉垣豊明 ブログ

東京武蔵野市(三鷹)の税理士 相続税、贈与税等資産税対策、法人・個人向け税務・会計・会社法のブログ

相続8(寄与分)

2008-07-31 08:23:10 | 相続税・贈与税
おはようございます。税理士の倉垣です。

今日は、相続の8回目で寄与分についてまとめてみました。寄与分は共同相続人中に被相続人の財産の維持又は増加に特別寄与した者があるときには、その者の相続分については、特別その寄与分を加算するというものです。
つまり、法定相続分の修正です。
ここで寄与は特別の寄与でなければいけません。配偶者の通常の寄与は寄与分として認められません。

1.寄与分
共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなして算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。(民法904条の2)

2.相続人以外(例:内縁の妻)の寄与分
内縁の妻は、相続人でないので、いくら被相続人に特別な寄与をしたとしても寄与分は認められない。

3.遺贈との優劣
寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額をこえることができない(民法904条の2第3項)。
つまり遺贈の方が寄与分より優先する。

4..具体的計算例
甲(被相続人)の相続財産は3億円、債務は5千万円。相続人は配偶者乙と子ABの3人で、Aに寄与分3千万円とすると、Aの相続分は
財産3億円-債務5千万円=2億5千万円。
2億5千万円×1/2×1/2+3千万円=9250万円

次回はもう一つの法定相続分の修正である「特別受益者の相続分」を予定しています。

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相続7(遺贈)

2008-07-30 08:17:39 | 相続税・贈与税
おはようございます。税理士の倉垣です。

今日は相続の7回目で、遺贈(特定遺贈と包括遺贈)と死因贈与について民法の規定を確認していきます。

1.遺贈
遺言により被相続人の財産を無償で譲渡することをいい、特定の財産を遺贈する特定遺贈と、相続分の一定割合を遺贈する包括遺贈がある。(民法964条)

2.特定遺贈と包括遺贈の差異
特定遺贈と包括遺贈の差を次に表示します。

特定遺贈 包括遺贈
放棄 遺言者の死亡後、いつでもできる。(民法986条1項) 相続の開始があったことを知った時から3月以内
債務の承継 承継しない。(注) 承継する。
注:負担付遺贈の負担を受遺者が履行しない場合には、相続人から裁判所にその負担付遺贈の取消しの請求をすることができる。(民法1027条)

3.包括遺贈と相続との相違
包括受遺者は相続人と同様の権利義務を有する(民法990条)。しかし相続人と全く同じというわけではない。両者の相違点を表示します。
相続 包括遺贈
遺留分 有り 無し
条件や期限 - 可能
受遺者の相続開始以前の死亡 代襲相続の適用あり 遺贈が失効する

3.死因贈与
贈与者の死亡を停止条件とした贈与契約です。
相続税法では、死因贈与も遺贈に含めて相続税の課税が行われます。

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相続6(限定承認)

2008-07-29 08:23:51 | 相続税・贈与税
おはようございます。税理士の倉垣です。

今日は相続6で限定承認をとりあげました。
前回は、負債を多く抱えている被相続人の相続対策として、相続の放棄をみてきましたが、相続の限定承認でも被相続人の債務を相続人が負担することを免れることができます。

1.民法の条文をみていきましょう。
民法922条(限定承認)
相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることができる。

2.相続人は相続財産の限度で被相続人の負債を弁済する。
もし債務が財産よりも多くても、その弁済できなかった債務や遺贈は相続人の固有財産で負担する必要はありません。
逆に債務を弁済して財産が残った場合には、その残余財産は相続人が取得できます。

2.共同相続人が全員でしなければならない
相続人が数人あるときは、限定承認は、共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができる。(民法923条)
相続放棄が各相続人ごとできるのと異なります。

3.限定承認の期間と方式
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3月以内(熟慮期間)に、限定承認をしなければならない。(民法915条)
相続人は、限定承認をしようとするときは、熟慮期間内に、相続財産の目録を作成して家庭裁判所に提出して、限定承認をする旨を申述しなければならない。(民法924条)

4、法定単純承認(民法921条)
次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなされる。
(1)相続人が相続財産の全部または一部を処分したとき。ただし、保存行為及び短期賃貸借はこの限りでない。
(2)相続人が熟慮期間内に限定承認をしなかったとき。
(3)相続人が、限定承認をした後であっても、相続財産の全部もしくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。

限定承認は、相続財産が債務を弁済して残額があれば相続人がその残額を取得でき、もし債務超過になれば債務は相続財産の限度で弁済し、相続人が引き継ぐことはないという、相続人にとっては大変都合のいい制度です。

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相続5(相続の放棄)

2008-07-28 08:29:52 | 相続税・贈与税
おはようございます。税理士の倉垣です。

今日は相続5で相続の放棄を取り上げてみました。

相続は、被相続人に属した一切の権利義務を相続人が承継します。(民法896条)したがって、財産よりも債務の方が多くてもそのまま引き継ぎますので、債務超過の被相続人の場合は相続人が悲惨な目にあいます。
これを免れるための方法として、相続の放棄があります。
相続の放棄は、相続人が自己のために相続のあったことを知った時から3月以内に、家庭裁判所に申述しなければなりません。(民法915条、938条)そして、相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったことになりますので、債務の引き継ぎもありません。(民法939条)

1.生前の相続の放棄
被相続人の生前の相続の放棄は認められません。あくまで相続開始後に行うこととされています。

2.相続放棄の撤回と取消し
相続放棄の撤回は熟慮期間(相続の開始があったことを知った時から3月以内)であっても認められません。
詐欺や強迫による相続放棄の取り消しはできます。ただし、その取消権は、追認することができる時から6月間行使しないときは、時効によって消滅します。相続放棄の時から10年を経過したときも同じです。

3.代襲相続
相続の放棄をすると、その相続人ははじめから相続人でなかったことになるので、代襲相続はありません。
相続欠格や相続人の廃除と異なるところです。

4.相続の放棄の連鎖
被相続人の子が全員相続放棄をすると、第1順位の相続人がいなくなるので次の第2順位の相続人が相続します。第2順位の相続人である親も相続を放棄すると、第3順位の兄弟姉妹に行きます。

5.法定単純承認(民法921条
相続人が、相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったときは相続人は単純に相続を承認したものとみなされます。
ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この適用はありません。

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相続4(相続人の廃除)

2008-07-25 08:24:34 | 相続税・贈与税
おはようございます。税理士の倉垣です。

相続権のはく奪で、前回は相続欠格でしたが、今回は相続人の廃除です。

1まず民法の条文をみてみます。
民法892条(推定相続人の廃除)
遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。

2.遺留分がある推定相続人に対して行うことができる
相続人の廃除は、相続人のうち遺留分がある者に対してのみ行われます。遺留分があるのは、兄弟姉妹以外の相続人です。具体的には第1順位の子、第2順位の親それと配偶者です。

3.相続人の廃除は遺言でも行える
相続人の廃除は、被相続人の生前に家庭裁判所に対して請求できるだけでなく、遺言でもできます。(民法893条)

4.相続人の廃除の取消しはいつでもできる。
被相続人は、いつでも、推定相続人の廃除の取消しを家庭裁判所に請求できる。遺言でもできます。(民法894条)

5.廃除をされた相続人は遺贈を受けることができる。
相続欠格になった者と違い、排除された者は被相続人から遺贈を受けることはできます。

6.代襲相続
廃除された推定相続人に子があるときは、その子は親に代わって代襲相続できる。

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相続3(相続欠格)

2008-07-24 08:36:50 | 相続税・贈与税
おはようございます。税理士の倉垣です。

相続権のはく奪制度として相続欠格と廃除があります。きょうはまず相続欠格について確認をします。

1.民法の条文を確認します。
民法891条(相続人の欠格事由)
次に掲げる者は、相続人となることができない。
(1) 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
(2) 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
(3) 詐欺又は脅迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
(4) 詐欺又は脅迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
(5) 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

相続人が刑に処せられても、過失致死(故意ではない)や、死亡した者が後順位相続人の場合には相続欠格とはならない。
また、被相続人の殺害の場合で、殺害者が自己の配偶者や直系血族ならば告発しなくてもその相続人は相続欠格となりませんが、殺害者が兄弟ならば告発しなければ相続欠格となります。

2.被相続族人の意思に関係しないこと
相続人が相続欠格の事由に該当すると、自動的に相続人でなくなります。相続人の意思とは無関係です。

3.代襲相続
相続欠格に該当して相続人でなくなった者に子があるときは、その子は代襲相続します。
ただし、被相続人の直系卑属でなければ代襲相続はできません。

4.相続欠格者は遺贈を受けることもできない。(民法965条)

次回は、相続人の廃除を予定しています。

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相続2(相続人の不存在)

2008-07-23 08:25:25 | 相続税・贈与税
おはようございます。税理士の倉垣です。

前回は相続人と相続分についてみていきましたが、今回は相続人がいない場合はどうなるか確認します。

1.相続人がいることが明らかでないときは、相続財産は法人とされ、その財産管理人が選任されます。(民法951条、952条)

2.その後相続人のあることがわかったときはその法人は成立しなかったことになりますが、やはり相続人がいなければ財産管理人により、相続財産から相続債権者や受遺者に対して弁済が行われます。(民法955条、957条)

3.家庭裁判所により特別縁故者へ財産の分与が行われることもあります。(民法958条の3)

4.以上により処分されなかった財産は国庫に帰属します。(民法959条)

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相続1(相続人の範囲と相続分)

2008-07-22 08:28:20 | 相続税・贈与税
おはようございます。税理士の倉垣です。

今日は相続1で相続人と相続分について例題で確認していきます。

以下の例は甲が被相続人で乙が配偶者となっています。
1、第1順位
子と配偶者は2分の1ずつ
(1)
イ、甲と乙との間に子Aがいる場合
乙とAは2分の1ずつの相続分
もし子供がAB2人のときは、ABそれぞれ4分の1ずつで、Aが嫡出子、Bが非嫡出子であるとAは6分の2、Bは6分の1です。
同順位の相続人が数人いるときは、各自の相続分は、相等しいものとされますが、非嫡出子の相続分は嫡出子の相続分の2分の1とされています。
ロ、甲と乙の間に子ABがいて、Aは甲より以前に死亡したがAの子(甲の孫)CDがいる場合。
CDはそれぞれ8分の1ずつ。Bは8分の2、乙は8分の4の相続分。
CDはA(親)の相続分を代襲相続する。

2、第2順位
配偶者は3分の2、親は3分の1
甲と乙の間に子はいない。実の親XYがいる場合。
乙は6分の4、XYはそれぞれ6分の1の相続分。
直系尊属は親等の近いものを先にし、代襲相続の適用はありません。

3、第3順位
配偶者は4分の3、兄弟姉妹は4分の1
イ、甲と配偶者乙との間に子はなし。甲の兄Aがいる場合。
乙は4分の3、Aは4分の1の相続分。
ロ、甲と配偶者乙との間に子はなし。兄ABがいるが、Aとは両親が同じであるが、Bとは片親のみ同じ。
乙は12分の9、Aは12分の2、Bは12分の1の相続分。
片親のみ同じ兄弟は、両親が同じ兄弟の相続分の2分の1です。
なお、兄弟が死亡しているときは、甥姪が代襲相続します。甥姪が死亡したときの再代襲はありません。

4、養子が親の代襲相続もする場合
甲と乙の間に子ABがいて、Aはすでに死亡しているが、Aの子Cが甲の養子となっている場合。
この場合Cの相続分は親Aの代襲相続人としての相続分と、甲の子としての相続分を併せたものとなります。
したがって、乙は6分の3、Bは6分の1、Cは6分の2の相続分です。

5.同時死亡の推定
数人の者が死亡した場合において、そのうちの1人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定される。
したがって、それぞれお互いに相続人とならない。

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国民年金基金

2008-07-18 08:27:11 | 税金一般
おはようございます。税理士の倉垣です。

自営業者などの国民年金加入者に対し、老齢基礎年金に上乗せする年金の制度として国民年金基金制度があります。
私も個人事業者(税理士)ですので、国民年金と国民年金基金に加入しています。
先日、顧問先から国民年金基金に加入するべきかどうか質問を受けましたので、これを機会にこの制度をざっと再確認してみました。

1.掛金と年金額は事前に確定している。
掛金と年金額は、年金の型や口数及び加入時の年齢などにより確定している。

2.加入者が年金の型や額を選べる
まず1口目は、A型又はB型を選択しなければならない。
A型とB型はいずれも終身年金ですが、A型は15年間保証期間があり、その年金受給前又は保証期間内に加入者が死亡すると家族に一時金が支給されます。
次に2口目は、次の5つのうちから選択できます。全然選択しなくてもいいのです。
種類 摘要
A型 終身年金 終身受取、15年保障
B型 終身年金 終身受取、保証期間なし
?型 確定年金 15年保障(65歳から80歳まで)
?型 確定年金 10年保障(65歳から75歳まで)
?型 確定年金 15年保障(60歳から75歳まで)

3.掛金の限度額
掛金の上限は、月額6万8千円です。
確定年金の年金額は終身年金の年金額を超えることができない。

4.掛金の払込期間
60歳まで

5.年金受給開始
65歳から(?型は60歳から)

6.掛金は全額社会保険料控除の対象となる
生命保険料などと異なり、国民年金基金の掛金は全額社会保険料控除の対象となり、税額(所得税と住民税)が減ります。

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遺言4(特別の方式)

2008-07-17 08:23:21 | 相続税・贈与税
おはようございます。税理士の倉垣です。

今日は遺言4(特別の方式)です。普通方式の遺言はすでにご説明しましたが、今回は特別方式の遺言についてまとめてみました。

1.特別方式の遺言
(1)死亡の危急に迫った者の遺言
疾病その他の事由によって死亡の危急に迫った者が遺言をしようとするときは、証人3人以上の立会をもって、その1人に遺言の趣旨を口述して、これをすることができる。この場合においては、その口述を受けた者が、これを筆記して、遺言者及びその他の証人に読み聞かせ、又は閲覧させ、各証人がその筆記の正確なことを承認した後、これに署名し、印を押さなければならない。
(2)伝染病隔離者の遺言
伝染病のため行政処分によって交通を遮断された場所にある者は、警察官1人及び証人1人以上の立会をもって遺言書を作ることができる。
(3)在船者の遺言
在船中にある者は、船長又は事務員1人及び証人2人以上の立会をもって遺言書を作ることができる。
(4)船舶遭難者の遺言
船舶が遭難した場合において、その船舶中に在って死亡の危急に迫った者は、証人2人以上の立会をもって口頭で遺言書を作ることができる。
その遺言は、証人が、その趣旨を筆記して、これに署名し、印を押さなければならない。

2.特別方式の遺言の確認
上記1の(1)と(4)の遺言は家庭裁判所の確認を得なければ、その効力を生じない。
また、家庭裁判所は、その遺言が遺言者の真意に出たものであるとの心証を得なければ、これを確認することができないとされています。

3.特別の方式による遺言の効力
特別方式による遺言は、遺言者が普通の方式による遺言をすることができるようになった時から6か月間生存するときは、その効力を生じない。
普通方式で遺言を作成しろということでしょう。

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