税理士 倉垣豊明 ブログ

東京武蔵野市(三鷹)の税理士 相続税、贈与税等資産税対策、法人・個人向け税務・会計・会社法のブログ

固定資産の交換

2010-05-31 06:52:11 | 所得税
おはようございます。税理士の倉垣です。

固定資産の交換

固定資産の交換も資産の譲渡であり、原則として譲渡所得として課税の対象になります。しかし、一定の要件に該当する交換は課税の繰り延べの特例を受けることができます。

1、課税の繰り延べの特例を受けられる交換
次の要件を充たさなければなりません。
(1)その交換する固定資産は、交換当事者が互いに1年以上保有していた固定資産で、相手方の固定資産は交換のために取得したものでないこと。
(2)同種の固定資産同士の交換であること
(3)交換により取得した資産を、交換した固定資産と同じ用途に供すること
(4)交換差金の額が交換資産のうちいずれか多い金額の20%以下であること。

2、設例
Aは自己の土地(時価:50,000千円、取得価額:6,000円、取得時期:平成5年)を、Bの所有する土地(時価:45,000千円、取得時期:平成3年)と交換し、交換差金5,000千円を現金で受け取った。なお、Aはこの交換で譲渡費用800千円を支出し、取得した固定資産は以前と同じ用途に使用しているものとする。

50,000千円-45,000千円=5,000千円<=50,000千円×20% ∴交換特例の適用あり

(1)譲渡所得金額
イ、譲渡収入 5,000千円
ロ、取得費と譲渡費用
(6,000千円+800千円)×5,000千円/(5,000千円+45,000千円)=680千円
ハ、5,000千円-680千円=4,320千円

(2)交換取得資産の取得費と取得時期
イ、取得時期 平成5年(交換譲渡資産の取得時期を引継ます。)
ロ、取得費
(6,000千円+800千円)×45,000千円/(5,000千円+45,000千円)=6,120千円

今回の交換は、交換譲渡資産の価額が交換取得資産の価額を上回る場合でしたが、次回は逆に交換譲渡資産の価額が交換取得資産の価額を下回る場合を検討してみます。

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資産の譲渡の課税3(低額譲渡)

2010-05-30 14:21:53 | 所得税
おはようございます。税理士の倉垣です。

資産の譲渡の課税3(低額譲渡)

譲渡所得の起因となる資産を低額譲渡した場合の課税関係を検討します。
低額譲渡の相手方が個人か法人か、またその譲渡対価が時価の2分の1未満であるかどうかにより課税関係が異なります。

1、相手方が法人の場合
時価の2分の1未満の譲渡は、時価による譲渡があったものとみなされて課税されます。
2、相手方が個人の場合
時価の2分の1未満の譲渡があった場合で、譲渡損失が計算されるときは、その損失の金額はなかったものとみなされます。

[設例]
1、宝石 取得日:平成6年 譲渡時の時価:10,000千円 譲渡対価:1,000千円 取得費:8,000千円 譲渡先:法人

(1)低額譲渡の判定 10,000千円×50%=5,000千円>1,000千円 ∴低額譲渡
(2)譲渡所得の計算 10,000千円-8,000千円-500千円=1,500千円(総合長期)

2、建物 取得日:平成6年 譲渡時の時価:8,000千円 譲渡対価:2,000千円 取得費:5,000千円 譲渡先:個人
(1)低額譲渡の判定 8,000千円×50%=4,000千円>2,000千円 ∴低額譲渡
(2)譲渡所得の計算 2,000千円-5,000千円=-3,000千円(分離長期)→この損失はなかったものとみなされる。

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資産を譲渡した場合の課税2(資産の取得費の計算)

2010-05-29 08:21:30 | 所得税
おはようございます。税理士の倉垣です。

資産を譲渡した場合の課税2(資産の取得費の計算)

資産を譲渡した場合の譲渡所得の計算は次のように行われます。
譲渡対価の額-(資産の取得費+譲渡費用)=譲渡所得の金額
資産の取得費は建物など減価する資産については減価の額を計算をする必要あります。

[設例]
平成8年3月に取得した次の別荘を平成22年5月に20,000千円で売却した場合の譲渡所得の金額を計算する。なお譲渡費用は800千円だった。
建物 取得価額10,000千円 法定耐用年数は20年
土地 取得価額8,000千円

1、減価の額(建物)
10,000千円×0.9×0.034(注1)×14年(注2)=5,716千円
注1 20年×1.5=30年→0.034 非業務用の減価する資産の耐用年数は法定耐用年数の1.5倍の年数によります。
その計算された耐用年数に対応する旧定額法の償却率によります。
注2 平成8年3月~平成22年5月→14年3月→14年(6月未満切捨て)

2、取得費
8,000千円+5,716千円=13,716千円

3、譲渡所得の金額
20,000千円-(13,716千円+800千円)=5,484千円(分離長期)

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資産を譲渡した場合の課税

2010-05-28 06:38:50 | 所得税
おはようございます。税理士の倉垣です。

資産を譲渡した場合の課税

株式等以外の資産を譲渡した場合は所得税法上、原則として譲渡所得として課税の対象になります。
そして、譲渡資産の内容や保有期間の長短によって課税方法が異なります。
なお、資産でも棚卸資産や山林の譲渡による所得は譲渡所得とはなりません。

1、課税方法の区分
譲渡資産が土地建物等以外である場合には、総合課税とされ他の所得と合算して課税されるのに対し、土地建物等は分離課税です。
また、保有期間が5年以下の資産は短期、5年超のものは長期譲渡資産とされます。

2、設例による計算
Aについて今年は次のような資産の譲渡があった。
宝石 譲渡損 -600,000円 保有期間3年
絵画 譲渡益 2,000,000円 保有期間10年
生活に通常必要でない資産の損失 -300,000円
別荘(建物)の譲渡 譲渡益 8,000,000円 本年1月1日において保有期間3年
別荘(土地)の譲渡 譲渡損 -1,500,000円 本年1月1日において保有期間20年

(1)総合課税
イ 譲渡益
(イ)総合短期(宝石) -600,000円
(ロ)総合長期(絵画) 2,000,000円

ロ 内部通算
2,000,000円-600,000円=1,400,000円(総合長期)

ハ、生活に通常必要でない資産の損失の控除
1,400,000円-300,000円=1,100,000円(総合長期)
※生活に通常必要でない資産の損失額は、2年間にわたって総合短期と総合長期譲渡益からこの順序で控除します。

ニ、特別控除
1,100,000円-500,000円=600,000円(総合長期)

(2)土地建物等
イ 譲渡益
土地建物等の保有期間はその年の1月1日までの期間により長短の判定をします。
(イ)分離短期(建物) 8,000,000円
(ロ)分離長期(土地) -1,500,000円

ロ 内部通算
8,000,000円-1,500,000円=6,500,000円(分離短期)

したがって、Aの本年中の譲渡所得は、総合長期譲渡所得600,000円と分離短期譲渡所得金額6,500,000円となります。

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簿記入門15(現預金4)

2010-05-27 06:50:32 | 会計
おはようございます。税理士の倉垣です。

簿記入門15(現預金4)

企業では、できるだけ多額の現金は手元に置かず、やむを得ない小口の支出のみ現金で支払いをするシステムを採用しているところがあります。この小口の取引を処理するのに小口現金勘定を使います。

以下設例により処理方法をみていきます。

5月1日 5月分の小口現金50,000円を、小切手を振り出して用度係に渡した。
5月31日 用度係から5月中の支払明細について以下のような報告があり、その支出額合計の小切手を振り出して補給した。
通信費:2,000円、消耗品費:13,000円、交通費:20,000円、雑費:7,000円

5月1日
借方 金額 貸方 金額
小口現金 50,000 当座預金 50,000

5月31日
借方 金額 貸方 金額
通信費 2,000 小口現金 42,000
消耗品費 13,000
交通費 20,000
雑費 7,000
小口現金 42,000 当座預金 42,000

このように、一定期間の初めにいつも同じ金額の小口現金からスタートするようなシステムを定額資金前渡法(インプレスト・システム)といいます。

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簿記入門14(現預金3)

2010-05-26 06:34:44 | 会計
おはようございます。税理士の倉垣です。

簿記入門14(現預金3)

当座預金の増減は当座預金勘定で処理します。もし取引銀行との間で、当座借越契約を締結していれば残高がゼロでもその限度内で小切手を振り出すことができます。簿記ではその金額を当座借越勘定で処理することとなります。もし当座勘定を使用するとこの勘定ですべての取引を処理することができます。

設例で処理をみていきます。

甲社は5月1日当座預金残高が30,000円であった。また、銀行との間で300,000円の当座借越し契約を締結している。
5月2日 東京商会から商品を仕入れ、代金は小切手20,000円を振り出して支払った。
5月5日 大阪商会に商品60,000円(原価:50,000円)を売り渡し、代金は20,000円は現金で受け取り直ちに当座預金に入金し、残りは掛けとした。
5月10日 奈良商店より商品100,000円を仕入代金は同額の小切手を支払って支払った。
5月15日 大阪商会に商品50,000円(原価:40,000円)を売り渡し代金は同社の小切手を受取り当座預金に入金した。

1、当座借越勘定で処理する方法

5月2日
借方 金額 貸方 金額
商品 20,000 当座預金 20,000
5月5日
借方 金額 貸方 金額
当座預金 20,000 商品 50,000
売掛金 40,000 商品売買益 10,000
5月10日
借方 金額 貸方 金額
商品 100,000 当座預金 30,000
当座借越 70,000
当座借越高=30,000円+20,000円-20,000円-100,000=70,000円
5月15日
借方 金額 貸方 金額
当座借越 50,000 商品 40,000
商品売買益 10,000

2、当座勘定で処理する方法
5月2日
借方 金額 貸方 金額
商品 20,000 当座 20,000
5月5日
借方 金額 貸方 金額
当座 20,000 商品 50,000
売掛金 40,000 商品売買益 10,000
5月10日
借方 金額 貸方 金額
商品 100,000 当座 100,000
5月15日
借方 金額 貸方 金額
当座 50,000 商品 40,000
商品売買益 10,000
※当座勘定が借方残高の場合は資産の性質を有し、貸方の場合は負債の性質を有することとなる。

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簿記入門13(現預金2)

2010-05-25 06:46:23 | 会計
おはようございます。税理士の倉垣です。

簿記入門13(現預金2)

現金勘定の残高は現金の残高を表示しますが、ときには様々な原因により実際現金残高と一致しない場合があります。この場合には、とりあえずその差額を現金化不足勘定で処理し、現金勘定残高を実際現金残高に一致させておき、後にその原因が判明したときには現金過不足勘定をその相手勘定に振り替え、もし決算日においても原因が不明であれば、その額を雑損(益)勘定で処理する。

設例で処理をみていきます。
1、現金の実際有高が帳簿残高よりも53,000円不足している。
2、不足額のうち、2,000円は切手代の支払い、40,000円は買掛金の支払いであったことが判明した。
3、決算日においても、現金過不足差額11,000円の原因は不明である。

1、
借方 金額 貸方 金額
現金過不足 53,000 現金 53,000

2、
借方 金額 貸方 金額
通信費 2,000 現金過不足 42,000
買掛金 40,000

3、
借方 金額 貸方 金額
雑損 11,000 現金過不足 11,000

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簿記入門12(現預金1)

2010-05-24 06:48:48 | 会計
おはようございます。税理士の倉垣です。

簿記入門12(現預金1)

簿記上現金には通貨の他、他人が振り出した小切手・郵便為替証書・送金小切手・利払日が到来した公社債の利札など直ちに現金化可能なものを含みます。そして、現金の増加は現金勘定の借方に、その減少はその貸方に記入します。
ただし、自己振出しの小切手の受け入れは、当座預金の増加として処理します。
設例で処理方法をみていきます。

5月2日 大阪商会から商品20,000円を仕入れ、代金の半額は小切手で支払い残りは掛けとした。
5月3日 奈良商店に商品15,000円(原価:13,000円)を売り渡し、代金は5,000円を現金で受け取り、残額は掛けとした。
5月25日 奈良 商店から売掛金として、当社振出小切手10,000円を受取った。
5月31日 給料60,000円と事務所家賃7,000円を現金で支払った。

5月2日
借方 金額 貸方 金額
商品 20,000 当座預金 10,000
買掛金 10,000
5月3日
借方 金額 貸方 金額
現金 5,000 商品 13,000
売掛金 10,000 商品売買益 2,000
5月25日
借方 金額 貸方 金額
当座預金 10,000 売掛金 10,000
※自己振出小切手の受け入れは当座預金の増加として処理します。
5月31日
借方 金額 貸方 金額
給料 60,000 現金 67,000
支払家賃 7,000

現金取引で気をつけるのは、現金の範囲と小切手の処理です。

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非上場株式等の贈与税の納税猶予(計算例)

2010-05-23 07:14:17 | 相続税・贈与税
おはようございます。税理士の倉垣です。

非上場株式等の贈与税の納税猶予(計算例)

非上場会社である甲社の代表取締役であったAが本年5月末に、長男に次の財産を贈与した。
なお、非上場株式等の贈与税の納税猶予の適用要件は満たしているものとすると、贈与税の納税猶予額と納付額はいくらになるか。
1、甲社株式 10,000株 (1株当たりの評価額:600円、甲社発行済株式総数:18,000株)
2、現金10,000千円

[すべての贈与財産に対する贈与税額]
{(600円×10,000株+10,000,000円)-1,100,000円}×50%-2,250,000円=5,200,000円

[納税猶予額]
(600円×10,000株)×30%-650,000円=1,150,000円
※18,000株×2/3=12,000株>=10,000株 ∴10,000株全株適用可能

[納付税額]
5,200,000円-1,1150,000円

次回は相続税の納税猶予の計算例を用意します。相続税のほうは贈与税よりも計算が複雑になります。

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NPO法人(収益事業の開始)

2010-05-22 07:30:08 | 法人税
おはようございます。税理士の倉垣です。

NPO法人(収益事業の開始)

NPO法人(特定非営利活動法人)は法人税法上は公益法人等とみなされ、収益事業を行う場合には法人税の納税義務者となります。
NPO法人が新たに収益事業を開始した場合には次の手続きをする必要があります。

1、収益事業開始届出書の提出
収益事業開始日から2カ月以内に納税地や事業目的など一定の事項を記載した届出書に、収益事業に係る貸借対照表などを添付して納税地の税務署長に提出しなければなりません。

2、青色申告承認申請書の提出
青色申告を選択するためには、収益事業開始した日以後3カ月を経過した日とその事業年度終了日のいずれか早い日までに申請書を提出しなければいけない。

3、棚卸資産の評価方法の届出等
棚卸資産の評価方法や減価償却資産の償却方法などの届出は収益事業開始初年度の確定申告期限までに書類を提出して行います。

※法人税法上の収益事業として、物品販売業や不動産貸付業など34の特掲事業が定められています(法人税法2条13号)。

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