税理士 倉垣豊明 ブログ

東京武蔵野市(三鷹)の税理士 相続税、贈与税等資産税対策、法人・個人向け税務・会計・会社法のブログ

物権(所有権)

2008-04-30 08:29:01 | 税金一般
おはようございます。税理士の倉垣です。

前回は、民法で経済生活の取引の安全を支えている「即時取得」という制度について投稿しました。
今回は、物権(おもに所有権)について基本的な考え方を、条文を確認しながら整理してみました。

1.債権と物権
物権は物に対する排他的な支配権であり、これに対して、債権は人に対する請求権である。と説明されます。
物権は「物」に対する「排他的」な権利であるため、一つの物に対して同種の物件は一つしか成立しない。

2.物件の種類
イ、所有権 これは物に対する完全な支配権です。
ロ、用益物権 物をその用法に従って使用する権利で地上権、永小作権、地役権などがあります。
ハ、担保物件 物の経済的担保価値に注目した権利で、抵当権、質権などです。

3.所有権の移転
所有権は意思表示のみにより移転にします。(民法176条)
不動産の売買契約を結ぶと、契約時にその所有権は売主から買主に移転します。
登記をしなくても所有権は移転します。

4.物権変動の対抗要件
所有権の移転は上記3のように意思表示のみにより移転しますが、当事者以外の第三者に対抗するためには、対抗要件を備えなければなりません。
もし、売主が2重売買をした場合の買主間の優劣は対抗要件を備えたほうが勝ちです。たとえ、第三者が悪意(2重売買を知っていたとしても)対抗要件を備えた第三者の方が強いのです。つまり早い者勝ちです。
ただ、裁判所は第三者でも背信的悪意者に対しては、登記がなくても対抗できるとしています。

イ、動産
動産の譲渡の対抗要件は引渡しです。(民法178条)
引渡とは、法律的手には占有の移転といいます。

ロ、不動産
不動産の物権変動の対抗要件は登記です。(民法177条)

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即時取得(民法192条)

2008-04-28 08:23:38 | 税金一般
おはようございます。税理士の倉垣です。

今日は民法の即時取得について考えてみました。

このようなケースを考えてみましょう。
丙が乙から時計を購入した。その時計は乙が甲から預っていたものだが、その購入当時、乙はその事情を知らなかった。

丙がその時計の所有権を取得できる根拠が、即時取得(民法192条)です。
「取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。」

丙がその時計の所有者が甲で乙はそれを預っているだけだということを知らなかった場合やその知らなかったことにつき過失がなければ、丙がその時計の所有権を取得する。
その時計に関して所有権がない乙から丙は所有権を取得するという、無から有が生じる結果となります。

これに対抗するには甲としては、丙の取引時の悪意又は過失を主張することになります。
もしこの証明ができなければ、甲の負けです。
なぜなら挙証責任は甲にあるからです。

しかし、丙が購入した時計を、乙に預けたままにしておくと(法律的には占有改定といいます)丙は即時取得でこの時計の所有権の取得ができないというのが裁判所の見解のようです。

最後に、その時計がもし盗品又は遺失物である場合には、被害者又は遺失者である甲はその盗難又は遺失の時から2年間、占有者たる丙に対してその物の回復を請求できることとされています。

この即時取得の制度があるので、取引の安全が図られているのですね。

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後期高齢者医療制度(保険料)

2008-04-25 08:24:35 | 税金一般
おはようございます。税理士の倉垣です。

今日は今問題になっている後期高齢者医療制度について、特に保険料の計算について調べてみました。

後期高齢者医療制度の対象となる人は、年齢75歳以上の人と年齢65歳から74歳までの人で広域連合で一定の障害があると認定された人です。

1.保険料の計算
保険料(50万円を限度)=均等割額+所得割額
均等割額:37,800円
所得割額:(退職所得を除く所得の合計額-基礎控除額(33万円))×6.56%

2.保険料の軽減

イ、均等割額の軽減
基準額(世帯の合計所得額) 軽減後の均等割額
33万円以下 11,340円
(33万円+24万5千円×被保険者数)以下 18,900円
(33万円+35万円×被保険者数)以下 30,240円

ロ、所得割額の軽減(東京都広域連合の軽減)
所得額(総所得-33万円) 減額割合
15万円まで 全額
20万円まで 75%
40万円まで 50%
55万円まで 25%

3.計算例
年金収入が年200万円のみの2人世帯の場合。
[均等割額]
(年金収入)200万円-(年金控除額)120万円-(高齢者控除額)15万円=65万円
65万円<33万円+35万円×2人=103万円
∴30,240円
[所得割額]
200万円-120万円-33万円=47万円
47万円×6.56%×(100%-258%)=23,120円
[保険料]
30,240円+23,120円=53,360円

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差押3(差押の要件)

2008-04-24 08:27:54 | 税金一般
おはようございます。税理士の倉垣です。

今日は「差押の要件」について簡単にまとめてみました。

1.督促を要する国税の場合
イ、滞納者が督促を受け、その督促に係る国税をその督促状を発した日から起算して10日を経過した日までに完納しないときは、滞納者の国税につきその財産が差押えられます。
ロ、国税の納期限後上記イの10日を経過した日までに、督促を受けた滞納者につき繰上請求ができる事実が生じたときは、直ちに財産の差押ができることとされています。

2.督促を要しない国税の場合
納税者が繰上請求をすることができる場合等督促を要しないこととされている国税をその納期限(繰上請求がされている国税については、その請求に係る期限)までに完納しないときは、滞納者の国税につきその財産が差押えられます。

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差押2(給与他)

2008-04-23 08:23:28 | 税金一般
おはようございます。税理士の倉垣です。

今日は差押えの続きで、給与の差押禁止などをみていきます。

1.給与の差押禁止

(1)給与等
給与等については、次に掲げる金額に達するまでの部分の金額は、差押が禁止されています。
イ、給与等から差し引かれる所得税、住民税、社会保険料の金額
ロ、10万円(滞納者と生計を1にする配偶者その他の親族があるときは、これらの者一人につき4万5千円を加算した金額)
ハ、給与等の金額から上記イからロまでに掲げる金額の合計額を控除した金額の100分の20に相当する金額(その金額が上記ロに掲げる金額の2倍に相当する金額をこえるときは、その金額)

(2)賞与
賞与については、その支払いを受けるべき時における給与等とみなして、上記(1)と同じように計算します。

(3)退職手当等
退職手当等については、次に掲げる金額の合計額に達するまでの部分の金額は、差押が禁止されています。
イ、退職手当等から差し引かれる所得税、住民税、社会保険料の金額
ロ、30万円(滞納者と生計を1にする配偶者その他の親族があるときは、これらの者一人につき13万5千円を加算した金額)
ハ、退職手当等の支給の基礎となった期間が5年を超える場合には、そのこえる年数1年につき上記ロに掲げる金額の100分の20に相当する金額

(4)以上の差押禁止の規定は、滞納者の承諾のあるときは適用されません。

2.社会保険制度に基づく給付の差押禁止
社会保険制度に基づき支給される退職年金などは上記1の給与等と、一時金などは上記1の退職手当等とそれぞれみなして、差押禁止の金額を計算します。

3.条件付差押禁止財産
次に掲げる財産は、滞納者がその国税の全額を徴収することができる財産で、換価が困難でなく、かつ、第三者の権利の目的となっていないものを提供したときは、その選択により、差押をしないものとされています。
(1)漁業に必要な機械、器具、家畜類、飼料、種子その他の農作物、肥料、農地及び採草牧草地
(2)漁業に必要な魚網その他の漁具、えさ、稚魚その他の水産物及び漁船
(3)職業又は事業の継続に必要な機械、器具その他の備品及び原材料その他たな卸をすべき資産

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差押1

2008-04-22 08:27:43 | 税金一般

おはようございます。税理士の倉垣です。

今日は差押えの第1回目です。

差押は滞納処分の最初の段階の手続きです。滞納者による財産の処分が禁止され、これを換価できる状態におく強制的な処分です。

 1.   超過差押えや無益な差押えの禁止(国税徴収法48
国税を徴収するために必要な財産以外の財産は、差し押さえることができません。また、差し押さえることができる財産の価額がその差押に係る滞納処分費及び徴収すべき国税に先だつ他の国税、地方税その他の債権の金額の合計額をこえる見込みがないときは、その財産は、差し押さえることができません。

2.   差押禁止財産

(1)  一般の差押禁止財産

次に掲げる財産は、差し押さえることができません。

イ、滞納者及びその者と生計を一にする配偶者(届出をしていないが、事実上婚姻関係にある者を含む)その他の親族(以下「生計を一にする親族」という)の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用品、畳及び建具

ロ、滞納者及びその者と生計を一にする親族の生活に必要な三月間の食料及び燃料

ハ、主として自己の労力により農業を営む者の農業に欠くことができない器具、肥料、労務の用に供する家畜及びその飼料並びに次の収穫まで農業を続行するために欠くことができない種子その他これに類する農産物

ニ、主として自己の労力により漁業を営む者の水産物の採捕又は養殖に欠くことができない魚網その他の漁具、えさ及び稚魚その他これに類する水産物

ホ、技術者、職人、労務者その他の主として自己の知的又は肉体的な労働により職業又は営業に従事する者(前記ハニに規定する者を除く)のその業務に欠くことができない器具その他の物(商品を除く)

ヘ、実印その他の印で職業又は生活に欠くことができないもの

ト、仏像、位牌その他礼拝又は祭祀に直接供するため欠くことができない物

チ、滞納者に必要な系譜、日記及びこれに類する書類

リ、滞納者又はその親族が受けた勲章その他名誉の章票

ヌ、滞納者又はその者と生計を一にする親族の学習に必要な書籍及び器具

ル、発明又は著作に係るもので、まだ公表していないもの

ヲ、滞納者又はその者と生計を一にする親族に必要な義手、義足その他の身体の補足に供するもの

ワ、建物その他の工作物について、災害の防止又は保全のため法令の規定により設備しなければならない消防用の機械又は器具、避難器具その他の備品

どうですか。以下に国税の徴収のためとはいえ、これらのようなものまで差押はできないというものが法定されています。
次回は、差押禁止財産の2回目で給与などの差押禁止を予定しています。

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国税の徴収5(財産の調査2)

2008-04-21 08:31:55 | 税金一般
おはようございます。税理士の倉垣です。

今日は前回に引き続き、財産の調査の残りの部分です。
前回は、財産の調査で「質問及び検査」「捜索の権限及び方法」「捜索の時間制限」について投稿しました。

1.捜索の立会人
徴収職員は、捜索をするときは、その捜索を受ける滞納者若しくは第三者又はその同居の親族若しくは使用人その他の従業者で相当のわきまえのあるものを立ち会わせなければなりません。この場合において、これらの者が不在であるとき、又は立会に応じないときは、成年に達した者2人以上又は市町村長の補助機関である職員若しくは警察官を立ち会わせなければなりません。

2.出入禁止
徴収職員は、捜索、差押又は差押財産の搬出をする場合において、これらの処分の執行のため支障があると認められるときは、これらの処分をする間は、次に掲げる者を除き、その場所に出入りすることを禁止することができます。
イ、滞納者
ロ、差押に係る財産を保管する第三者及び捜索を受けた第三者
ハ、上記イロに掲げる者の同居の親族
ニ、滞納者の国税に関する申告、申請その他の事項につき滞納者を代理する権限を有する者

3.捜索調書の作成
イ、徴収職員は、捜索したときは、捜索調書を作成しなければならない。
ロ、徴収職員は、捜索調書を作成した場合には、その謄本を捜索を受けた滞納者又は第三者及びこれらの者以外の立会人があるときはその立会人に交付しなければならない。

4.官公署等への協力要請
徴収職員は、滞納処分に関する調査について必要があるときは、官公署又は政府関係機関に、その調査に関し参考となるべき帳簿書類その他の物件の閲覧又は提供その他の協力を求めることができます。

5.身分証明書の提示等
イ、徴収職員は、質問、検査又は捜索をするときは、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があったときは、これを提示しなければなりません。
ロ、財産の調査の規定による質問、検査又は捜索の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならないとされています。

6.罰則
徴収職員の質問に対して答弁をしなかったり偽りの陳述をした場合などには10万円以下の罰金が処せられます。

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国税の徴収4(財産の調査1)

2008-04-18 08:30:03 | 税金一般
おはようございます。税理士の倉垣です。

今日は国税の徴収4(財産の調査)について調べてみました。

1.質問及び検査
徴収職員は、滞納処分のため滞納者の財産を調査する必要があるときは、その必要があると認められる範囲内において、次に掲げる者に質問し、又はその者の財産に関する帳簿書類を検査することができます。
イ、滞納者
ロ、滞納者の財産を占有する第三者及びこれを占有していると認めるに足りる相当の理由のある第三者
ハ、滞納者に対し債権若しくは債務があり、又は滞納者から財産を取得したと認めるに足りる相当の理由がある者
ニ、滞納者が株主又は出資者である法人

2.捜索の権限及び方法
イ、徴収職員は、滞納処分のため必要があるときは、滞納者の物又は住居その他の場所につき捜索をすることができます。
ロ、徴収職員は、滞納処分のため必要がある場合には、次の一に該当するときに限り、第三者の物又は住居その他の場所につき捜索することができます。
(イ)滞納者のの財産を所持する第三者がその引渡しをしないとき
(ロ)滞納者の親族その他の特殊関係者が滞納者の財産を所持すると認めるに足りる相当の理由がある場合において、その引渡しをしないとき
ハ、徴収職員は、上記ロの捜索に際し必要があるときは、滞納者若しくは第三者に戸若しくは金庫その他の容器の類を開かせ、又は自らこれらを開くため必要な処分をすることができます。

3.捜索の時間制限
イ、捜索は、日没後から日出前まではすることができません。ただし、日没前に着手した捜索は、日没後まで継続することができます。
ロ、旅館、飲食店その他夜間でも公衆が出入りすることができる場所については、滞納処分の執行のためやむを得ない必要があると認めるに足りる相当の理由があるときは、日没後でも、公開した時間は、捜索することができます。

財産の調査については、内容が多いので次回に残りを投稿します。
次回の内容は、「捜索の立会人」「出入禁止」「捜索調書の作成」「官公署等のへの協力要請」「身分証明書の提示等」「調査を妨害した場合などの罰則」などです。

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国税の徴収3(督促)

2008-04-17 08:22:24 | 税金一般
おはようございます。税理士の倉垣です。

今日からいよいよ国税の徴収手続きに入っていきます。

1.督促
納税者がその国税を納期限までに完納しない場合には、税務署長は、この国税が次の2の国税である場合を除き、その納税者に対し、督促状によりその納付を督促することとなります。
その督促状は、国税に関する法律に別段の定めがあるものを除き、その国税の納期限から50日以内に発することとされています。
また、その督促をする場合において、その督促に係る国税についての延滞税又は利子税があるときは、その延滞税又は利子税につき、あわせて督促がされます。

2.督促を要しない場合
次に掲げる国税は、緊急の必要があるため、通常の手続きによらず、督促状を発することなく差押ができることとされています。
イ、繰上請求若しくは繰上保全差押金額の決定をし又は保全差押金額の決定をした国税
ロ、国税に関する法律の規定により一定の事実が生じた場合に直ちに徴収するものとされている国税

3.督促の効果
督促には、時効中断と差押えの前提要件としての効果が付与されています。

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