Kuni Takahashi Photo Blog

フォトグラファー高橋邦典
English: http://www.kunitakahashi.com/blog

ジムの眠れぬ夜

2008-04-12 02:21:41 | シカゴ
ひと月ほど前に申請した撮影許可がようやく下りたので、昨年の貧困プロジェクトで取材したジムを訪れてきた。彼は昨年空きビルに侵入し器物を盗み、7月から刑務所に入っている。
http://blog.goo.ne.jp/kuniphoto/d/20071128

彼と会うのは11月以来だから、ほぼ5ヶ月ぶりだ。

久しぶりに会ったジムは、相変わらずどことなく落ち着きのない様子だったが、それでも顔色もよく元気そうだった。

シェリダンにあるこの刑務所は、中レベルのセキュリティー刑務所で、どちらかというと更正施設といった趣が強い。

釈放までの間に受刑者が手に職をつけられるように、電気や配管、旋盤などの建築関係やコンピューターのクラス、また、高校を卒業していない者のためには、同等の資格であるGEDの取得をめざすクラスも設置されている。

僕が訪れたとき、ジムもちょうど6ヶ月の大工仕事のコースを終了するところだった。金銭管理などのクラスも受講したということで、以前よりも幾分自信が出てきたようにも感じられたのだが、いざ腰を落ち着けて話してみるとどうも最近眠れない日々が続いているらしい。釈放後の身の振り方が心配だ、というのだ。

彼の予定釈放日は6月4日、残り二ヶ月もない。

「もうロックフォードには戻りたくない。あそこに戻ったら、また同じ仲間とコカイン漬けになって、以前と同じことになっちまう。。。」

シカゴから北西に車で1時間半ほどのロックフォードは、彼がホームレスとして何年も過ごした場所だ。服役中のリハビリで、ジムはコカイン中毒から立ち直った。刑務所ではタバコも禁止されているので、もう9ヶ月間、彼はコカインはおろか、酒もタバコも口にしていない。

ジムには3人の娘がいるが、もう7,8年も前、ホームレスとして堕ちぶれた生活をするようになってから家族関係を絶ってしまった彼は、長いこと娘たちと会うこともなかった。

ところが今年にはいって、20歳になる末娘のロビンから突然手紙が届いた。昨年12月にトリビューンに掲載された貧困プロジェクトの記事を、たまたま娘の一人がみつけたのだという。

家庭内暴力など、いろいろな問題を抱えるロビンは、ジムが刑務所をでたら彼女のもとに来て欲しいといっている。しかし、ジムの気持ちは複雑だ。彼女の暮らすロシェッテという街は、ジムの古巣でもあり、コカインがらみの悪い付き合いのある人間がまだ多く残っている。ロックフォードと同様、ロシェッテに戻ってしまえば、また以前のような荒れた生活に逆戻りしてしまうことを、彼は恐れているのだ。

「できればシカゴのような、新しい土地で出直したいんだ」

しかし、コネのない土地にいって果たして仕事に就くことができるだろうか。。。不安はつきない。毎晩そんなことを考えていると眠れなくなるという。

ジムの新たなチャレンジが始まるまで、あと55日。