「正真正銘、本当、本物のドイツ・ソーセージ」①

2018年04月26日 | ドイツ・ヨーロッパの「食」

もし、「正真正銘、本当、本物のドイツ・ソーセージ」というものがあるとしたら?

南ドイツの風光明媚な丘陵地帯、フランケン地方の昔ながらの旅籠屋「白い子羊」の
古い厨房で、ひと月に一度、暁け方から仕込む「Stadtwurst / 町衆のソーセージ」が、
その一つかもしれない。

「白い子羊」は、かってのドイツの水の都、ニュールンベルグから
緑の中を車で約30分程走ったところ、ラオフ/Laufという小さな村
にある旅籠屋だ。

ラオフの村は、フランケン地方の幾つかの村と同じように15世紀頃に
建造された城壁に四方を囲まれている。

かっては独立市として栄えたこの村の中心部、旧市庁舎前の広場には、
百年、二百年を経た旅籠屋「白い子羊」だけでなく、同じような時の
流れを背負った大きな破風屋根の木組みの商家が、今も昔と
変わらぬ姿で幾つも軒を連ねている。

僕がこの村に年に数回、仕事で足を運ぶようになってから、
おおよそ三十年。
中世からの時に刻まれた村の歴史からすれば、それはまばたきを
するような一瞬の時間なのかもしれない。
「白い子羊」のどっしりとした木の食卓と長いベンチのような椅子に
肩を寄せ合って座り、何千、何万リットルのビールやワインを
何代にもわたって飲み続けた村人や、東から西から往来して来た
何千人の旅商人達の中で、僕はその椅子にたまたま腰を落ち着けた
一人の異邦人に過ぎない。

朝7時頃、別棟の宿泊棟からいつものようにやや薄暗い、細い内庭を
抜けて主屋の朝食室に行こうとすると、すぐ横の厨房から焚き火を
炊いたような煙がもくもくと立っていた。

思わず覗き込むと、僕と同じように50を超えた旅籠屋の大将の顔が
煙の向こうに見えた。チロルの山男のような逞しい腕と胸の上には
相変わらずの精悍な顔立ち、いつもの人懐っこい明るい笑顔。

「グーテン・モルゲン! 大将、この煙はどうした、、」と言う間もなく、
「うわっ、一体これはぁ〜⁉︎

流し台の上には巨大なリング状のチューブ、それがまた、ヘビがとぐろを
巻くように一巻き、二巻き、三巻き、四巻きとうねって、
綿々と連なっている。

(これがらがいよいよ本番、次回に続くです。)