夜、家に戻って ー「当たり前であって当たり前でない」

2012年01月18日 | 随想

帰宅するともう夜中の2時。
昔なら丑三つ時、子供の頃はその言葉だけでも
ぶるっと恐れをなしていたことをふと思い出す。
真夜中のこの時間には雨漏りした天井のシミが暗闇の中で
妖怪や幽霊の姿に見えて、布団の中に潜り込んでいたことを
50を過ぎた今でも時々思い出す。そんな翌朝にはおねしょをして
べそをかいていたのだろうか。





今日は浩太と健と連れ立って、何年振りかで「男達だけで出かけよう
/Männerabend 」の晩だった。二人とも数え年ならもう18と20。
三人で「PK2-男達の旅」と称して自転車で屋久島一周に行ったり、
連なってスキーをしたり、夜出掛けたりしたことを僕が思うよりも
深く記憶に留め、大切にしていたのかもしれない。正月に息子達の方から、
「今日は男達だけだ!」を復活させようと声がかかってきた。
確かにこんなことを三人で出来るのもあと数年だけかもしれない。





三人で食事をして映画をみた帰り、二人の息子が代わる代わる
運転する隣に座りながら、一人でしんみりと「有難いことだ。
よくよく大切にしよう。」と想う。二人の小さい頃を思い出し、
その頃の姿を振り返っているうちに、「浩太と健とのこともママライン、
うちのかみさんがいつも、いつも、僕ら三人の安心、家族の安らかさを
日々に支えてきたからこそ・・・。当たり前であって当たり前でない。」
という妙に神妙な考えに思い至る。

家に着き、もう横になっていた妻に声をかけると、いつもの笑顔に
半分寝顔が混じりながら「そう、みんな楽しかった。良かったね。」
と言ってまたすぐに寝入ってしまった。
僕らは日本とドイツ、男と女、短気とノンビリ、二つの対極の間でむしろよく
喧嘩が絶えない夫婦かもしれない。けれども、こんな時にはいつも、
うちの妻は大きな自然体の心根の本当に優しい人だと思う。
妻は当たり前であって当たり前でない。子供達にとって本当に世界一の
有難い母親である。僕がドイツでこうしてなんとか暮らしていけるのも、
実は恩にするところ多々有りである。

僕は毎日、本当はいつも一本負けである。喧嘩で勝っても内心、べそをかいている。