先週の日曜日。秋晴れの一日、東西南北青い空。輝く太陽。
猫も杓子も繰り出す。浮かれ出す。
僕も妻と娘と連れ立って、ドイツの伝統的赤ワインの産地、
アール(Ahr)地方へ。
クルマで出かけるときは僕はいつも助手席。うちの「ママライン」の
ナビゲーター役。子供達も免許も持っていない父親は、coolの正反対。
口を揃えて「学校でも恥ずかしい」らしい。僕はいつでもどこでも
ワインやお酒が自由に飲める方がずっと良いと長年思ってきた。
しかし今こそ、老後に向かって免許を取ろう。三年後が目標。
子供達に先を越されてなるものぞ!
閑話休題。クルマもそろそろアールの村に着いた。デュッセルドルフ
からクルマで約一時間半。なだらかな丘陵地帯のアール地方は
ヨーロッパのワインの産地としては最も北限。ベートーヴェンの
生誕地ボンからもさほど遠くない。文献を調べた訳ではないが
「運命」の大音楽家もアール名産の赤ワイン、ちょっと薄口の
ピノ・ノアールを嬉しいにつけ悲しいにつけ、口にしたに違いない。
ピノ・ノアール、ドイツ語でシュペート・ブルグンダー。本家の
ブルゴーニュとはまたひとつ違う趣き。ドイツの赤。フランスの赤。
日本の誰かの詩にあったような気がするが、「みんな違ってみんな良い」。
(とはいえ、本醸造よりは純米酒、ブランドワインよりはオーガニック。)
(アール地方ではピノ・ノアール、フリュー・ブルグンダー
ドルンフェルダー、ポルトギーゼなどの赤葡萄種がある。)
10月中旬、ドイツでもフランスでも葡萄農家・ワインの造り手は今大忙し。
毎日、天気予報、お日様と睨めっこ。アールの葡萄畑でも北方の産地だけに
少しでも糖度を上げたい。「ヨーロッパの北限でも美味しいワインを作るぞ。」
僕も思わず肩入れしたくなる。
葡萄畑の散歩に出かける前に、まずは腹ごしらえ。沢山の観光客に
混じって早めのお昼。村の料理屋さんに飛び込み、まずは白ワインと
赤ワインを試してみる。まあまあ。アール名産の赤ワインで煮込んだ
牛肉料理も妻と娘と三人で分けて食べてみた。残念、がっかり、
大はずれ。(ドイツでも味の素のようなマギーや、各種の人工調味料は
スーパーや普通のレストラン、時々高級店にも満ちあふれている。)
どこの国でも観光客相手の料理屋はこんなものだろう。この地方は
ワインだけでなく美味しいものがあるだけに、しっかり場所を選ぶ
べきだった。
オーガニックはフランスよりもドイツ、ドイツ語圏のスイス、オーストリア
の方が日常生活の中でずっと普及しているだろう。それに応じて、ドイツには
オーガニックワインの造り手、蔵元が実に数多くある。日本では僕も大好きな
フランスの「自然派ワイン」がまず話題に上るが、ヨーロッパのオーガニック
ワインの中でもかなり特色の強い、個性的なものだと思う。僕はドイツ語圏の
オーガニックワインも実にすっきりしていて気持よく、愛好しているが、
日本ではあまり知られていない。そもそも、ドイツワインは日本では日陰の存在。
その上、甘口のワインと思われている。残念だなー。
そんなことを思いながら、アールのビオワインの造り手、リヒターさんの所に
向かう。途中でストリート・ミュージシャンが素敵な歌を歌っていた。最近、
日本ではこんな時すぐに「癒される」音楽など、不気味な表現を使うようだ。
あるいは「至福の瞬間、至福の味」。ライターやジャーナリストが好んで
使うのか、本や雑誌でよく見かける。僕の故郷、日本は、ヒーラーと七福神
大安売りの国になってしまったのか。アールのワインがどんなに美味しくても、
僕は「至福の瞬間、アールなう」などとは夢でもつぶやきたくない。
イカンイカン。妻にも娘にも興味も無ければ分かりもしないことを、また一人で
考えていた。チチンプイプイ。
続きは来週へ。さて、アールのビオワインは美味しかっただろうか。乞うご期待。
家族揃って「団欒の瞬間」なう!?