大阪都構想をめぐる住民投票で印象的なのは、各メディアの出口調査で反対多数だったのは70歳以上だけなのに、全体として反対が賛成を上回ったことだ。
これは36万人の期日前投票で、反対の組織票が多かったためといわれる。
いずれにせよ現役世代は賛成多数だったので、高齢者が大阪都構想を拒否したことになる。
今回の住民投票は実質的には橋下氏の信任投票であり、彼は「小さな政府」への改革を進めようとしていた。
24区を5区に合併する都構想の目的は、行政のスリム化と住民サービスの効率化である。
特に大きな問題は、高齢者サービスだ。
大阪の「南北問題」として昔からよく知られている。
梅田を中心とするキタはビジネス街で、大阪駅の北側の再開発で堂々たる近代都市になったが、ミナミには昔ながらの町並みが残り、貧困層が多い。
住民投票で大阪都構想に反対したのは、ミナミの高齢者だった。
大阪市を廃止して住民サービスを効率化し、中枢機能を大阪府に一元化して地域開発投資を行なう「大阪都」案は、1948年に大阪府が提案したもので、橋下氏が思いついたわけではない。
高齢化は貧困化とパラレルで、西成区では23.6%が生活保護受給世帯である。
介護や医療などの公的サービスも高齢化したミナミに集中しており、その費用をキタの企業が負担する構造になっている。
この不公平を解決するため、行政を効率化するのが橋下市長のねらいだった。
しかしキタの企業に勤務している高所得者の多くは、市内には住んでいない。
いま市内に住んでいる人の多数派は、住民サービスの受益者なのだ。
彼らが住民投票したら、サービスを削減する橋下市長に反対するのは当然である。
今回の住民投票では、行政コストを負担するキタのビジネスマンが改革に賛成し、その受益者であるミナミの高齢者が反対する構図が、鮮明に示された。
これは日本の縮図であり、今後は団塊の世代の引退でもっと急速に高齢化と貧困化が進む。
これで大阪から若者は脱出し、東京への本社移転は加速するだろう。
大阪「ミナミ」の高齢者は死ぬまで既得権を守り、財政赤字を増やし続ける「安楽死」を選んだ。
それは彼らにとっては合理的な選択だが、残された都市は空洞化し、スラム化する。
日本の高齢者が自分のことしか考えないのであれば、日本の未来は暗い。
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