適当に折り合いをつけながら・・・

 

自分探しの旅に・・・

そして、未来に・・・

つながれ~!

一通の手紙

2013-08-18 | つながり

7月の初めだったと思う

ピンポ~ン

見知らぬ女性が いっつうの手紙を両手で持って 立っていた

 ○○の娘です ・・・それは か細い声で うまく聞き取れなかった

 ???… 

 ○○の娘です 覚えてらっしゃいますでしょうか?・・・怪訝そうなわたしの顔を見て その女性は いっそう不安そうな声で つぶやいた

 ○○???

突然のことで 瞬時の間 記憶の目覚めに 時間がかかってしまった

 覚えています 大変お世話になりましたから・・・

 母が亡くなったとき お供えくださった手紙を 遺品の整理中に見つけ 失礼ながら読ませていただいたら 涙がとまらなくなり どうしても手紙を書きたくなって・・・ でも 住所が違っていたらと思い 探して 持ってきました。 この手紙に私の気持ちを書いていますから・・・突然おじゃまして すみません・・・

こんな ことばを残して 一礼すると 女性は静かに背を向けた・・・

 あっ あの~ お母さんが亡くなられて 何年に なりますか?

 16年です・・・

やっとのことで 一声かけるのが 精いっぱいだった・・・

 

ほんの 数分の会話

会話と言えるかどうか・・・

夢ではないかと思うほど 一瞬の あやうい 不思議な時間だった・・・

                                 

17年前 たった1年間の上司だった・・・次席という立場だった私が 新しく迎えた上司。なんだか 亡くなった母に似ていると思った。 よく笑い しゃべり そして ちょっぴり 頑固で 昔かたぎで・・・平成の若者文化に 付いていけず・・・だけど 情にもろく 優しい ところが・・・

その年の秋ころからだったろうか 昼休憩に横になることが 間々あった。 朝 数時間の年休は どうやら通院らしかった。 体調が悪いのかと聞くと 笑って話題を変えた・・・ 我々の前では かたくなに 元気を装い 弱音を吐くことは なかった

仕事があるから 気丈に生きている・・・そんなふうに 見えた

”休んでください” とは とても 言えない 雰囲気があった

仕事で心配かけないように・・・ただ それだけしか できなかった

 

園庭の大木 メタセコイヤの葉が 色付き 堂々と 秋風に揺れながら すべてを見守ってくれているようだった

 

年が明け 私に 3月異動の打診があった 

すべてを頼りにしてくれていた上司を残して、異動する事はできないと、躊躇する私に・・・

 わたしは 大丈夫! あんたのためだから・・・  ひとこと 言ってくれた。その上司の笑顔は 優しくて寂しそうだった・・・

こころ 残しながら 転勤した私は、 4月当初 休みの日を利用して 何度か 事務の手伝いに行った記憶がある

 

転勤して 半年がたった頃

突然の訃報が 出張中の私に  飛び込んできた

巨大木 メタセコイヤの葉が 一斉に色付きはじめたであろう頃・・・

 

大腸癌だった・・・

 

東京にいた私は 通夜も 葬儀も 行けなかった

帰広後 一通の手紙を持って 遺影にささげた

 

 そういえば 母の訃報を聞いたのも 同じ東京へ出張中だった

前夜 病院で ”行ってくるからね!” と ことばを交わしたのが 最後だった

 

あの時から もう 16年の歳月が たっていたのだ

保育園のシンボル メタセコイヤの大木は 数年前に 伐り倒されてしまった

 

 ピンポ~ン

7月の初め・・・ 

一通の手紙を持って 玄関に立っていた 見知らぬ女性は

16年前 私が・・・ 

一通の手紙を持ってうかがったとき 挨拶した 

あの時の お譲さん だった・・・ 

 

 

いつの日か きっと

お墓参りに 行こう・・・     と 思う。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする