近研ブログ

國學院大學近代日本文学研究会のブログです。
会の様子や文学的な話題をお届けします。

平成30年7月2日堀辰雄「燃ゆる頬」研究発表

2018-07-16 23:42:49 | Weblog
 こんにちは。毎日猛暑が続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか。遅くなってしまいましたが、7月2日に行われた堀辰雄「燃ゆる頬」の研究発表のご報告です。
 発表者は三年小島さん、二年星さんです。司会は二年小奈が務めさせていただきました。
 「燃ゆる頬」は昭和7年1月に「文藝春秋』に掲載され、翌昭和8年12月に四季社『麥藁帽子』に収録されました。



 今回の発表は主に、「私」「三枝」「魚住」という同性愛的関係を結んだ三者の関係や、「私」の受けた「最後の一撃」「大きな打撃」とは何なのかという所に着目したものでした。
 三者の関係については、作者の堀辰雄が初出時に削除したプレオリジナルの文章についても交えて言及されました。発表者は、「<私>は寄宿舎の特殊環境によって一時的に同性愛を許容できただけの存在であり、<三枝>や<魚住>のような恒常的に同性愛の関係を他者と持つことができる者達と<私>の間には深い溝がある」と述べました。また、「私」は「三枝」の「貧血性の美しさ=死に近い儚さ」を愛でていたという、暴力的な「私」の視線についても指摘がなされました。

 次に「大きな打撃」については「最後の一撃によって<私>が、過去の自分を客観視できるようになった時、三枝の面影を感じる少年の性的な行為を目撃することで、自分が今は亡き<三枝〉を女の代用として接していたことに気づき大きな打撃を受けるのである」と述べられました。その中で、「最後の一撃」とは、段階を追い数回に分けられて「私」に与えられたものである、との指摘もなされました。


 議論の中では、「私」にとっての「三枝」とは何かという所に焦点を置いて話し合いました。「三枝」=「女性の代用品」という発表者の指摘や、「代用」という言葉は強すぎるという指摘、「私」の「三枝」への恋愛感情の有無に関する意見などが出されました。
 また岡崎先生は、削除されたプレオリジナルの文章における「魚住」の女の部分について、現行の作品検討にプレオリジナルの文章を研究することの重要性を説かれつつ、それらを削除されたものとして切り離して考えることへの有用性についてご教授くださりました。


 次回は川端康成「片腕」研究発表です。例会も残り一回なので夏の暑さに負けず頑張っていきましょう。私も発表者の一員なので良い発表にできるよう頑張りたいと思います。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿