五 汎ヨーロッパ‐シベリア域圏
(5)中央ヨーロッパ合同
(ア)成立経緯
いわゆる中欧に属する主権国家のうち、ドイツとポーランドを除く諸国を引き継ぎ、一部領土が中欧にかかるクロアチアを加えた領域圏が合同して成立する合同領域圏。そのうちの最小国家リヒテンシュタインはスイスと合併して単一の連合領域圏となる。
(イ)構成領域圏
合同を構成する領域圏は、次の7圏である。
○ハンガリー
主権国家ハンガリーを継承する統合領域圏。
〇クロアチア
主権国家クロアチアを継承する統合領域圏。飛び地禁止原則により、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ領に属していたバルカン半島部の都市ネウムが編入される。
○スロベニア
主権国家スロベニアを継承する統合領域圏。
○チェコ
主権国家チェコを継承する統合領域圏。
○スロバキア
主権国家スロバキアを継承する統合領域圏。
○オーストリア
主権国家オーストリアを継承する連合領域圏。
○スイシュタイン
主権国家スイスのカントン(州)とリヒテンシュタインが合併されたうえ、イタリアから編入される飛び地のカンピョーネ・ディターリアを準領域圏とする連合領域圏。準領域圏の中には、直接民主制の伝統を継承して、民衆会議に加え、全住民参加型の民衆総会を併置するものもある。リヒテンシュタインはリヒテンシュタイン侯を君主とする侯国であったが、君主制は廃され、侯家は旧宗主のオーストリアへ転居する。
(ウ)社会経済状況
スイスの金融業は貨幣経済廃止に伴い消滅するが、精密機械工業や製薬に基盤のあるスイスを継承するスウィシュタイン、工業化の進んだチェコやハンガリーとする共通経済計画に基づく計画経済が行われる。また中欧地域全体での食糧生産力の高さを生かし、持続可能的農業が発達する。
(エ)政治制度
合同領域圏は、各領域圏民衆会議から選出された同数の協議員から成る政策協議会を常設し、圏内重要課題を討議し、チェコ領域圏の政治代表都市プラハは、汎ヨーロッパ‐シベリア域圏全体の政治代表都市でもある。
(オ)特記
スイスとオーストリアは共に永世中立国を標榜してきたが、世界を一つにまとめる世界共同体の設立に伴い、永世中立の理念は役割を終え、合同参加に道が開かれる。
☆別の可能性
スイスは歴史的な独自性を重視し、合同に包摂されない単立の領域圏となる可能性もある。その場合、リヒテンシュタインが合併される場合とされない場合とが想定される。また、主権国家スイス時代の永世中立政策を維持し、スイシュタインが汎ヨーロッパ‐シベリア域圏に加入せず、世界共同体直轄自治圏を選択する可能性もなくはない。