手技療法の寺子屋

手技療法の体系化を夢みる、くつぬぎ手技治療院院長のブログ

怖がる患者さんとの思い出(関係づくりについて)その5

2012-06-02 20:00:00 | 学生さん・研修中の方のために
≪前回からの続き≫

おばちゃんがベッドに腰をかけて、しばらくの間はそのままの距離でコミュニケーションを交わしました。




それがスムーズになってきたころ、おばちゃんに私はたずねました。


「痛い治療が怖いようでしたら、そのようなことはしませんから、ちょっととなりに座ってもいいですか





座っている患者さんのとなりに座るということは、2つ大きな意味があります。


ひとつは、親密距離に入るということ。


この距離に近づくことで、より踏み込んだコミュニケーションがとりやすくなります。



何より、手技療法を使うにはこの距離に入らなければ治療ができません。





ふたつめは、患者さんと目線を合わせるということです。


親密距離に近づいて患者さんが座り、セラピストが立っているというのは、セラピストが上から見下ろすことになり、場合によって威圧を与えてしまうことになります。


ふたたび身構えさせてしまうかもしれません。


それを避けるために、セラピストも座って目線を合わせるようにします。


小さい子どもと関わる保育士さんや、小学校・幼稚園の先生が、大切なことをしっかりと子どもに伝えたい、あるいは子どもの気持ちを受け止めようとするとき、腰をかがめて目線を合わせるのと同じです。


(そのために腰痛を起こす、保育士さんや先生もいらっしゃいますが…。みんな身体を張って仕事をしているのですね。





病院など医療施設となると、患者さんはどうしても弱者の立場に立たされがちです。


(そうでない強者の方もなかにはおられますが…


治療をする側と受ける側という立場の違いこそあるものの、治療をする側はそれによって生活の糧を得て、受ける側はより健康になるという、互いに持ちつ持たれつの対等な立場なわけなので、これは望ましいことではありません。


とくにリハビリは最終的に、患者さん自身がセルフケア・セルフコントロールを行って自立していくことが求められます。


弱者のままでいるということは、依存を強める可能性があるので、なお望ましいことではありません。






ちなみに今回の患者さんは座っていますが、腰痛や膝の痛みなどのときにあらかじめベッドに横になっている場合があります。


そのようなとき顔に近づいて話をするときは、しゃがんでできるだけ目線を近づけるようにしています。





余談ですが、今回のような肩の痛みを訴えるデリケートな患者さんに近づく場合、私が心がけていることがあります。


それは、健側から近づくということです。


おばちゃんの場合、右肩を傷めているので、左側に座るようにするわけです。



まだこの段階で患側である右側に近づいて座るのは、患者さんを緊張させる可能性があります。


これは経験上感じていることですが、けっこうポイントになるのではないかと私は思っています。





さて、となりに座ってもよいかという私の問いかけに対して、おばちゃんはコクリとうなづいてくれました。


これでまた一歩前進です。


≪次回に続く≫


最新の画像もっと見る

コメントを投稿