足がしびれて感覚がにぶく、力が入りにくいという訴えの方がいらっしゃいました。
症状は一週間ほど続いているようです。
調べてみると、L3領域の感覚が明らかに鈍く、大腿四頭筋の力も弱く萎縮も始まり、腱反射もみられませんでした。
歩行は大腿四頭筋があまり働かなくても済むように、膝を棒のように伸ばして歩いています。
私はすぐに整形外科を受診することを勧めました。
一ヶ月ほど過ぎた頃にその方から連絡があり、病院を受診したら腰椎椎間板ヘルニアということですぐ手術が決まったそうです。
手術を受けた直後から症状が改善し、筋力もリハビリを続けながら回復に向かっているとお話しがありました。
まずは良かったです。
手技療法を行う私たちの仲間のなかには、「腰椎椎間板ヘルニアは手術の必要がない」と断言している人もいます。
その際には、術後の経過が思わしくなかった方たちの例を挙げることが多いようです。
でもこれは極論というものですね。
腰椎椎間板ヘルニアの場合、全体の中で割合は少ないとしても、手術で良くなる、あるいは手術でしか良くならない方たちもいらっしゃいます。
まして今回のように、萎縮も起き始めている場合は、早くしないと手術後も麻痺が残ってしまうこともあります。
だから見極めが大切。
もっとも今回のケースは急性で典型的な例なので、見極めもさほど難しくありません。
これに対して、慢性疾患の場合は判断が難しいこともあり、反応を見ながら手さぐりで進めていくことも多いです。
予想が外れてしまうこともあります。
上手くいけると考えていた胸郭出口症候群の患者さんは、腕のしびれの経過が思わしくなく、結局は手術を受けてその後改善されました。
神経は骨による圧迫で、凹みができていたそうです。
圧迫されれば必ずしびれが出るとは限らないのですが、この方の場合は手術によって改善したのは確かでした。
反対に、病院からも手術を勧められ、私もその方が良いのではないかと思っていた腰部脊柱管狭窄症の患者さん。
数十メートルほど歩くと足がしびれ出し、そのとき下肢には明らかな知覚鈍麻もありました。
どうしても、手術以外の方法で何とかしたいというご希望で、緊急性は高くない状態でしたから治療をお受けしたところ、二週間ほどで改善し始め、三ヶ月後には歩きまわっても平気になられました。
行ったことは主に殿筋のリリースです。
嬉しい結果ですが、私も考え込んでしまいました。
慢性的な機能異常と器質的な異常の割合はどの程度なのか?
どこまで自分たちの手に負えるのか?
今でもよく迷っています。
まだまだ修行が必要ですね。
ただ、このような経験を繰り返す中で、ひとつわかったことがあります。
それは予測が難しい、不安定で不確実な状況に居続けることのできる強さ、言い換えれば図太さが、臨床家に必要な能力のひとつだということ。
不安定で不確実な場所こそ、自分たちの居場所。
それに気づいたとき、私は臨床家としての不安がより少なくなったような気がします。
私たちも人間ですから、対象をハッキリわかり、スッキリしたいと思うものではないでしょうか。
だから、安易に決めつけてしまうことがあるかもしれません。
あるいは、ハッキリ決まらないことに焦りを感じて悶々とするかもしれません。
このような経験は、この業界に長くいればみんなあることではないかと思います。
ハッキリわからない状況でもリスクは避けるようにしつつ、今できることを模索して見つめ続け、考え続けること。
それが臨床家にとって必要な力ではないでしょうか。
そのためには自分の拠りどころは自分自身でなければなりません。
特定のメソッドや、どこかの偉い先生であってはいけないのです。
メソッドやコンセプトは拠りどころではなく、自分が主体的に活用するものです。
偉い先生の話も、自分の目と手で確かめるまでは、そのような話もあるというところに留めておきましょう。
自分を拠りどころとするためには、批判的に考えて判断できる頭があり、自分の感覚を信頼でき、思い通りに操作できる技術を持つ要があります。
これらを体得するには容易なことではありません。
私も一歩ずつ歩みを進めながら、みなさんと一緒に精進していきたいと思います。
『己こそ 己の寄るべ
己を置きて 誰に寄るべぞ。
よく整えし己こそ
まこと得難き寄るべなり』
By お釈迦さん(法句経より)
今年もお疲れさまでした。
そして、このブログをご覧いただいてありがとうございました。
来年もみなさんにとって、すばらしい一年となりますように。
どうぞよいお年をお迎えください。
≪お知らせ≫
手技療法の寺子屋ブログはこれまで週一回の更新でしたが、来年から二週に一回の更新とさせていただきます。
次回は1月11日(土)の夜に更新します。
このブログを始めて、年が明ければまる6年になります。
ずいぶんいろいろお話ししてきましたが、最近では過去の記事を参照することも増えてきたなど、ひと回りしてきた感があります(単にネタ切れなのかもしれませんが)
そこでちょっとペースダウンさせていただくことにしました。
そのぶんインプットも増やしたいと思っています。
これからもどうぞよろしくお願い致します。
☆ブログの目次(PDF)を作りました 2014.01.03☆)
手技療法の寺子屋ブログを始めてから今月でまる6年になり、おかげさまで記事も300を越えました。
これだけの量になると、全体をみたり記事を探すのも手間がかかるかもしれません。
そこで、少しでもタイトルを調べやすくできるように、このお休みを使って目次を作ってみました。
手技療法を学ばれている方、興味を持たれている方にご活用いただき、お役に立てれば幸いです。
手技療法の寺子屋ブログ「目次」
今のところまじめに更新中!
手技療法の寺子屋ブログ読者の方の友達リクエスト、歓迎します!!
(どなたかよくわからないときがありますので、メッセージを添えてください)
症状は一週間ほど続いているようです。
調べてみると、L3領域の感覚が明らかに鈍く、大腿四頭筋の力も弱く萎縮も始まり、腱反射もみられませんでした。
歩行は大腿四頭筋があまり働かなくても済むように、膝を棒のように伸ばして歩いています。
私はすぐに整形外科を受診することを勧めました。
一ヶ月ほど過ぎた頃にその方から連絡があり、病院を受診したら腰椎椎間板ヘルニアということですぐ手術が決まったそうです。
手術を受けた直後から症状が改善し、筋力もリハビリを続けながら回復に向かっているとお話しがありました。
まずは良かったです。
手技療法を行う私たちの仲間のなかには、「腰椎椎間板ヘルニアは手術の必要がない」と断言している人もいます。
その際には、術後の経過が思わしくなかった方たちの例を挙げることが多いようです。
でもこれは極論というものですね。
腰椎椎間板ヘルニアの場合、全体の中で割合は少ないとしても、手術で良くなる、あるいは手術でしか良くならない方たちもいらっしゃいます。
まして今回のように、萎縮も起き始めている場合は、早くしないと手術後も麻痺が残ってしまうこともあります。
だから見極めが大切。
もっとも今回のケースは急性で典型的な例なので、見極めもさほど難しくありません。
これに対して、慢性疾患の場合は判断が難しいこともあり、反応を見ながら手さぐりで進めていくことも多いです。
予想が外れてしまうこともあります。
上手くいけると考えていた胸郭出口症候群の患者さんは、腕のしびれの経過が思わしくなく、結局は手術を受けてその後改善されました。
神経は骨による圧迫で、凹みができていたそうです。
圧迫されれば必ずしびれが出るとは限らないのですが、この方の場合は手術によって改善したのは確かでした。
反対に、病院からも手術を勧められ、私もその方が良いのではないかと思っていた腰部脊柱管狭窄症の患者さん。
数十メートルほど歩くと足がしびれ出し、そのとき下肢には明らかな知覚鈍麻もありました。
どうしても、手術以外の方法で何とかしたいというご希望で、緊急性は高くない状態でしたから治療をお受けしたところ、二週間ほどで改善し始め、三ヶ月後には歩きまわっても平気になられました。
行ったことは主に殿筋のリリースです。
嬉しい結果ですが、私も考え込んでしまいました。
慢性的な機能異常と器質的な異常の割合はどの程度なのか?
どこまで自分たちの手に負えるのか?
今でもよく迷っています。
まだまだ修行が必要ですね。
ただ、このような経験を繰り返す中で、ひとつわかったことがあります。
それは予測が難しい、不安定で不確実な状況に居続けることのできる強さ、言い換えれば図太さが、臨床家に必要な能力のひとつだということ。
不安定で不確実な場所こそ、自分たちの居場所。
それに気づいたとき、私は臨床家としての不安がより少なくなったような気がします。
私たちも人間ですから、対象をハッキリわかり、スッキリしたいと思うものではないでしょうか。
だから、安易に決めつけてしまうことがあるかもしれません。
あるいは、ハッキリ決まらないことに焦りを感じて悶々とするかもしれません。
このような経験は、この業界に長くいればみんなあることではないかと思います。
ハッキリわからない状況でもリスクは避けるようにしつつ、今できることを模索して見つめ続け、考え続けること。
それが臨床家にとって必要な力ではないでしょうか。
そのためには自分の拠りどころは自分自身でなければなりません。
特定のメソッドや、どこかの偉い先生であってはいけないのです。
メソッドやコンセプトは拠りどころではなく、自分が主体的に活用するものです。
偉い先生の話も、自分の目と手で確かめるまでは、そのような話もあるというところに留めておきましょう。
自分を拠りどころとするためには、批判的に考えて判断できる頭があり、自分の感覚を信頼でき、思い通りに操作できる技術を持つ要があります。
これらを体得するには容易なことではありません。
私も一歩ずつ歩みを進めながら、みなさんと一緒に精進していきたいと思います。
『己こそ 己の寄るべ
己を置きて 誰に寄るべぞ。
よく整えし己こそ
まこと得難き寄るべなり』
By お釈迦さん(法句経より)
今年もお疲れさまでした。
そして、このブログをご覧いただいてありがとうございました。
来年もみなさんにとって、すばらしい一年となりますように。
どうぞよいお年をお迎えください。
≪お知らせ≫
手技療法の寺子屋ブログはこれまで週一回の更新でしたが、来年から二週に一回の更新とさせていただきます。
次回は1月11日(土)の夜に更新します。
このブログを始めて、年が明ければまる6年になります。
ずいぶんいろいろお話ししてきましたが、最近では過去の記事を参照することも増えてきたなど、ひと回りしてきた感があります(単にネタ切れなのかもしれませんが)
そこでちょっとペースダウンさせていただくことにしました。
そのぶんインプットも増やしたいと思っています。
これからもどうぞよろしくお願い致します。
☆ブログの目次(PDF)を作りました 2014.01.03☆)
手技療法の寺子屋ブログを始めてから今月でまる6年になり、おかげさまで記事も300を越えました。
これだけの量になると、全体をみたり記事を探すのも手間がかかるかもしれません。
そこで、少しでもタイトルを調べやすくできるように、このお休みを使って目次を作ってみました。
手技療法を学ばれている方、興味を持たれている方にご活用いただき、お役に立てれば幸いです。
手技療法の寺子屋ブログ「目次」
今のところまじめに更新中!
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