手技療法の寺子屋

手技療法の体系化を夢みる、くつぬぎ手技治療院院長のブログ

フックで指を握らない!!

2009-06-27 20:00:00 | ASTRについて
(手技療法習得のステップ~トリートメント~へ入る前に脱線します。毎度のことですがご勘弁のほどを)







上部僧帽筋や肩甲挙筋は、肩こりなどの愁訴と関係も深く、機能障害も頻繁にみられる部位です。


座位でASTRをかけるのが行いやすい方法ですが、ここでのフックは示~小指の4指を用いるのが便利です。


このように≪DVD版「ASTR」より≫









このかたちでフックを行うとき、注意していただきたいことがあります。


それは「フックで指を握らない」つまり、指に力を入れて曲げないということです


これは、腕力に余裕のある男性に比較的みられます







いちど指をカギ型に曲げてフックしたら、指の角度はできるだけそのまま固定します




くれぐれも、このように握り込んではいけません




理由は二つあります

このブログを以前からお読みいただいている方は、もうお分かりですね







そうです!! 







ひとつは「術者の指を傷める」からです


フックしたまま、さらに指に力を入れて握り込むのは、前腕をはじめ手内筋に大きな負担をかけてしまいます


そしてもうひとつは「モニターの感度が落ちる」ということ


ASTRをかけているとき、フックしている組織にどれくらいの力がかかり、組織がどのように変化しているのか、指先をモニターにして感じ取る必要があります


ところが握ることで手に力が入ると、モニターの感度が鈍ってしまいます


その結果、患者の状態を正確に感じ取ることができず、ダメージを与えてしまう危険性も生じてしまいます


ですから指はそのまま固定し、できるだけ身体の力を使ってフックの形をキープしなければなりません。


例えば、座位での上部僧帽筋なら肘を外方に突き出すようにしてフックをキープさせます。


部位や体格差によって、工夫をしてもなかなか指でフックできないときは、手根や肘などそれ以外の部位も試してみて楽に行える方法を探しましょう。







こうして術者自身が楽にテクニックを行えるからこそ、患者もリラックスして受けることができ、それによって治療の成果も上げやすくなります


ムリなく自然なかたちで行えるのがベストですね


とはいえ「自然に」というのは茶道でもいわれることですし、ゴルフのアドバイスで「自然なスイングで」というのを聞いたことがあるのですが、これが一番難しいことでもあります。


何を隠そう、私自身もあれこれ工夫を重ねるなかで不自然な力の使い方をして、指がダルくなるなんてことはしょっちゅうでした







「でした」なんて過去形ではなく、実は現在進行形でもあります







セミナー会場で、物知り顔をして身体の使い方をアドバイスしているのも、実はその前に自分で変な使い方をしたために痛い思いをするなど、さんざん失敗した経験があるからなんです。


そして、ダルくなった手をいかにケアするかまた工夫する。


そうしているうちに、効率の良い方法をいろいろ覚えていくわけですね


その経験を生かして、みなさんには私が例えば3日工夫して出来るようになったことを、せめて2日、できれば1日で覚えていただけるようにできたらなと思っています


フックについてはバックナンバー「フックの技法」「フックもいろいろ」もご参考になさってください。




手技療法習得へのステップ2‐ メンテナンス その3

2009-06-20 20:00:00 | 学生さん・研修中の方のために
≪前回からのつづき≫


関節を動かすテクニックは大きく2つに分けられます


ひとつは主に筋肉の伸張を目的としたストレッチであり、もうひとつは関節拘縮の改善や正常な関節包内運動の再開をめざす関節モビライゼーションです


ここではストレッチを取り上げたいと思います







「ストレッチなんてありきたりな」などと思われる方もいらっしゃるかもしれません。


でもそれがきちんとできるかどうかが、関節モビライゼーションをはじめ、PNF、筋肉エネルギーテクニック、ASTRなどを使いこなせるかどうかに直接結びつくんですよ~ 


筋をストレッチするのではなく弛緩させる状態にもっていく、ポジショナルリリーステクニックなどの機能的(間接的)テクニックといわれるものも、きちんとストレッチできる技術があるからこそ、弛緩させることもできるわけですから、やはりストレッチは重要なテクニックです。


ストレッチの基本や注意点、例えば「伸張反射を起こさないようにゆっくりと動かす」などは、ここでは触れませんので各書籍をご覧下さい







ここで紹介したいのは、ある筋肉のストレッチを加えたまま、円を描くように可動域いっぱいのラインをたどって動かすということです


例えばテンションサインのひとつであり、仰臥位で下肢を挙上するSLRテストでは、筋肉では主にハムストリングスが伸張されます。


下肢を挙上して限界まできたら、そのまま、内転⇔外転してみてください。







いかがでしょう?角度によって抵抗の強さが変わるのが感じられるのではないでしょうか


とくに抵抗の強い位置をキープしたまま、片手でハムストリングスの状態を触診してみましょう。


今度は反対に最も抵抗の少ない位置を探し、同様に触診して比較します。


角度によってストレッチされる筋線維が異なるというのは基本的なことですが、それが感覚的に理解できると思います







ストレッチが高い効果を発揮するのは、最も抵抗の強い、すなわち硬くて伸びにくい線維に伸張刺激が加わったときです。


ただ漫然と伸ばしているだけでは効果がないとはいいませんが、それではあまりにもMOTTAINAI


ですから臨床では、ストレッチを加えた状態から角度を微調整して、最も抵抗が強くて伸びにくい角度を「探す」必要があるわけです


先ほど挙げた、関節モビライゼーションや筋肉エネルギーテクニック、ASTRもその角度を探せるかが、治療の成否を決める重要な要素になってきます。


前回紹介した、コリの分布とストレッチに対する抵抗の強い部位が関係しているかも調べるとよいでしょう。







触診によって体性機能障害の分布を把握し、その部位に対してアプローチするよう基本的な型をアレンジでき、最も伸びにくい筋線維をきちんとストレッチできるようになったら、メンテナンスに必要な技能はおおよそクリアしたといえるでしょう

手技療法習得へのステップ2‐ メンテナンス その2

2009-06-13 20:00:00 | 学生さん・研修中の方のために
≪前回からのつづき≫


触診によってみつけた異常が、手技療法の適応になる組織の緊張亢進や硬結だったとします。


ここではそれらをまとめて、より一般的な名称として使われている「コリ」と表現します。







コリの部位が、リラクゼーションのステップで覚えた「型」から外れたところに存在するということも当然ありえます。


そのようなときは、どうすればよいでしょう


型から外れた部位にアプローチする時は、基本的な身体の使い方は同じでも、形を変えて行う必要があります。


はじめは型から外れた形で行うと、手足がバラバラに動いているような気がするかもしれません。




ここが工夫のしどころです!!





次の記事も参考になさってください。  「立ち位置は肩と脇で決める」


さまざまなテクニックのテキストが出版され、それぞれわかりやすいように図や写真入りで解説されていますが、最終的には自分の身体、または患者さんとの体格差に合った形にアレンジできないと使いものになりません


そのアレンジの練習をここで行うわけです







ところで、「コリ」があるのは一ヶ所だけなんてことは、まずありません


身体の中のある範囲にわたって分布しているはずです。


それらを地図を覚えるように、頭の中で映像として記憶するようにしましょう


はじめは部分的でもかまいません。


慣れてくるに従って、より広い範囲を記憶できるようになってきます。







ここでは「コリ」を取り上げていますが、体性機能障害は緊張亢進や硬結などのコリだけではなく、筋力低下や萎縮もあります。


もしかしたらコリのある部位の反対側、つまり拮抗筋には筋力低下があるかもしれません。


かえってややこしいようでしたら、コリの分布だけでもイメージできるようになっておくとよいでしょう。


脊柱を診る方は、その関節機能障害とコリの分布がどのように関係しているかを比べて考えてみるのも面白いと思います。







触診による体性機能障害の分布をイメージでき、それに対して型をアレンジできるようになれば、つづいて「関節を動かす」ということを行ってみましょう



≪次回に続く≫

手技療法習得へのステップ2‐メンテナンス

2009-06-06 20:00:00 | 学生さん・研修中の方のために
リラクゼーションでは、「型」を覚えて、「身体の使い方」を身につけるところからスタートしました


そして、患者さんと「呼吸を合わせ」て一体感を持つようにする


これは、触れられるということに患者さんが違和感を持たないようにすると共に、リラックスして副交感神経優位の状態をつくりだせるようにするトレーニングだともいえます。


次のステップであるメンテナンスは、患者さんにとっては症状の予防・再発防止など、良いコンディションを維持することが目的となります。


そのためには、個体差も含めて組織の緊張の変化を、触診によって読みとれるようにならないといけません



つまり「身体を診る」ということがこのステップでは求められるようになります。







身体を診るための練習として用いたいのが「軽擦法(けいさつほう)」です。


軽擦というと、皮下のリンパの流れなどを良くすることを目的にして、サーッサーッとなでさするような方法ですが、ここではそれを触診のつもりで、ゆっくりゆっくり行います。


手掌全体で触れてゆっくり動かしながら、体表をたどってその輪郭を感じ取り、さらにスキャンするようなイメージで深部の緊張状態を調べます







はじめは体表の輪郭を、たどるところからスタートするとよいでしょう。


練習として、イスに座った状態で自分の大腿部をゆっくり軽擦してみましょう。


両手同時に行えば、左右差を比較できるのでよりわかりやすいかもしれません。


いかがでしょう、左右ともまったく同じ輪郭でしょうか?


太さそのものに差があることもよくあります。


あるいは右は膨らんでいるのに、左はそうでもない、むしろへこんでいるように感じるところがあるかもしれません。


または右は硬くなっているのに、左はそうでもないということもあるでしょう。


これらが大切な情報になります







膨らんでいるのは、筋が発達しているためかもしれませんし、緊張がより強まっているのかもしれませんし、あるいは浮腫を起こしているのかもしれません。


凹んでいるところは、筋が発達していないのかもしれませんし、神経的な抑制が長期間かかり続けることで、萎縮してしまったのかもしれません。


さらにていねいに触診することで、それらを明らかにしていきます。







異常を感じた部位が、解剖学的には何に当たるかも調べましょう


どちらかというと、あらかじめ触診する筋を決めて体系的に触診の練習を行うという方法が主流です。


ファーストステップとしてはそれも重要なのですが、こちらのほうが臨床に直結してより実践的です。


このような要領で、身体全体を軽擦して触診していきます




≪次回につづく≫