手技療法の寺子屋

手技療法の体系化を夢みる、くつぬぎ手技治療院院長のブログ

医療者としての何気ない会話

2017-01-23 21:23:26 | 治療についてのひとりごと
手技での治療中に患者さんがおっしゃいました。

「ちょっと痛いですぅ(> _ <)」

念のためと思い、真顔で

「ちょっと痛いということは、言い換えたらほとんど痛くないということですね」

と確認したら、ギョッ!(|| ゜Д゜)とした顔をして全力否定され、一瞬時間が止まった後、一緒になって笑いました。

他愛のない話しですが、このような何気ない会話が、患者さんの日常的な感覚を取り戻す上で大切になることもあります。

人によっては初めて経験する症状に出会うと、それまでの日常から切り離されて非日常に放り出されたような感覚に陥り、不安になられる方がおられます。

そのような方に対して、治療行為と並行しながら冗談交じりの会話をする。

それによって症状に悩まされている現在の状態も、日常の延長上にあるものという感覚になり、冷静さを取り戻すきっかけになることがあるように感じています。

治療の導入をスムーズにしたり、モチベーションを維持する助けにもなっているかも。

もちろん相手の性格と状態を見た上での話ですが。

このようなことは、運動のトレーニングでも同じかもしれませんね。

ですから、保育士さんがふつうの子守りではなく、子どもの成長と発達を促しているように。

ヘルパーさんがふつうの家事手伝いではなく、利用者の自立を支援しているように。

医療者にもふつうの会話ではなく、安心を与えながら回復への方向付けを行っていく。

そんな意図を持った会話が、臨床では求められるのだろうと思います。

メソッドと触診

2017-01-03 21:09:45 | 治療についてのひとりごと
手技療法には、ABCメソッドやEFGコンセプト、なんとか式、かんとか流といったものがたくさんあります。


それらメソッドというのは、既製品のズボンのようなもの、とも例えることができると思います。

ズボンは同じデザインでも、いくつかサイズがあって、私たちそれぞれの身体の大きさに対応できるようになっています。


けれども既製のサイズが、そのままで売りものになるとは限りません。

私の場合は残念なことに、必ず裾の「お直し」が必要です。

でないと昔のお奉行のように、裾を引きずって歩かなければいけません


メソッドも同じように、いくつかのタイプやカテゴリーに分類され、それぞれにアプローチの方法が指定されています。

けれども指定された手順どおりにやっていれば、それでOKだとは限りません。

ズボンのお直しのように、その人にあった微調整が必要なこともあるでしょう。


メソッドは、身体を診る上での視点を提供してくれ、ある程度パターン化されることで思考の節約にもなる、とても便利なもの。

けれども、それを現場で使えるようになるためには、お直しの技術、微調整の技術を身につけておかなければいけないと思います。

手技療法の場合、微調整の正確さを左右するのは触診の力です。


そして、お直しの方法を覚えれば、いろいろなメーカーのズボンにも対応することができます。

同じように触診の力を上げておけば、その他のメソッドやコンセプトにも対応することができるはず。


ときどき、メソッドの手順さえ覚えれていればよいと思っている方がいるのですが、とんでもありません。

また、メソッドからメソッドへ放浪しているセラピストもいますが、それは触診の力が不十分なために、せっかくのメソッドを使いこなせていない可能性もあるのではないかと思います。


ですから、どのようなメソッドを使うにせよ、手技療法を用いる上で触診力はとても大切になります