手技療法の寺子屋

手技療法の体系化を夢みる、くつぬぎ手技治療院院長のブログ

ASTR応用の実際 その1 ≪セミナーのご案内≫

2010-02-27 20:00:00 | ASTRについて
今回はASTRのバリエーションについてです。



ASTRの基本的な手順として、はじめに筋肉の起始と停止を近づけて弛緩させます(プレポジション)。


次に、弛緩させた組織に、圧迫を加えそのまま横へスライドさせることによって、組織を予め伸張させます(フックポジション)。


最後に、関節運動を伴わせて起始と停止を遠ざけストレッチを加えます(ストレッチポジション)。



この手順がベースになるわけですが、他にも別法としてバリエーションはいくつかあります







というよりも、この手順というのは基本を覚えるための 「型」 であり、実際には機能障害の状態によって、テクニックの形はいろいろ変化させる必要があります。


変化させるための発想法、工夫の仕方を知るために、バリエーションを覚える意味があるわけです。


そして、変化させてテクニックを使うということは、対象となる機能障害の部位や範囲、深さ、方向を把握しておく、つまり評価が何より重要ということになります。



単に形を覚えるだけでは、あまり意味がありません







バリエーションのあらましについては、去年の4月にご紹介しました。
「ASTRの工夫と応用」


もうすぐ1年か…時間のたつのはホンマに早いなぁ


…という感傷はさておき、今回はそれに基づいた実際の方法をお話したいと思います。







部位は「菱形筋、中・下部僧房筋」です


胸椎の後彎が強い、いわゆる猫背の姿勢で肩背部のコリや不快感を訴える相談はよくみられます


猫背になると肩甲骨は外転し、菱形筋や中・下部僧房筋は伸張され、そのままの姿勢が続くことで筋力低下を起こします。


これに対し、肩甲骨を内転させるエクササイズにより、正常な筋トーンを保たせるよう試みられますが、なかなか症状が改善しないことも少なくありません。







このような身体の状態をよくみてみると、菱形筋や中・下部僧房筋の上を覆っている皮膚の動きに異常をみつけることがあります


その皮膚を指で押さえて棘突起に向けて動かすと、動きの幅が少ない、または抵抗が強くスムーズに動きません。

皮膚のあそびが内転方向に制限されている、浅筋膜の滑りが制限されているということになります



この制限があることで十分な筋活動が妨げられ、内転エクササイズも効果を挙げにくいのではないかと思います。







そこで、この動きを回復させましょう


テキストで紹介されている方法でも、もちろん構いません。


でも今回は「ASTRの工夫と応用」でご紹介した、中立位でフックし起始と停止を近づけるという方法で行ってみましょう。


その手順は…










次回、紹介します

来週まで、みなさんだったらどのように行うか?イメージして考えておいてください







寺子屋セミナー「手技療法の基礎講座」のお知らせ

2010年1~3月は、ASTRなどの手技療法を用いる上で、私がもっとも大切にしている基本的なことをお伝えしたいと思います。

3/20(土) 18:00~ 2時間セミナー『手技療法に役立つ身体の使い方~治療の効率を高め、術者への負担も少なくするために大切なこと~ 』
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くつぬぎ手技治療院「手技療法の寺子屋」


等尺性収縮後リラクゼーションを触診で感じよう! その3

2010-02-20 20:00:00 | 学生さん・研修中の方のために
〈前回からの続き>


今回感じ取っていただきたいのは、筋を収縮させる時の動かし方による緊張パターンの違いです


もういちど手順を確認しますと、


① 頭部を前に屈曲し、後頚部の筋を軽くストレッチする。


② 片手(写真では左手)で、後頭部の当方を保持し固定する。


③ もう一方の手(写真では右手)で後頭環椎間に触れてモニターとする。


④ 頭部を中立位に戻す、または、頭部と頚部の境目を反らせる方向に軽く力を入れ、左手はそれに抵抗し固定を維持する。


⑤ 5~10秒程度持続させ、力を抜く。


⑥ 等尺性収縮後リラクゼーションによるリリースを触知し、伸張性が得られた範囲、再び頭部を屈曲させて固定する。


⑦ ①~⑥を数回繰り返す。










注目していただきたいのは、④の 「頭部を中立位に戻す」 と 「頭部と頚部の境目を反らせる」 は、同じことを言っているのではないということです


実際に 「頭部を中立位に戻す」 ようにした場合と、「頭部と頚部の境目を反らせる」 ように力を入れたときを比べてみてください。








いかがでしょう?







力の入り方、緊張の仕方が明らかに違うと感じるのではないでしょうか


おそらく 「頭部を中立位に戻す」 よりも 「頭部と頚部の境目を反らせる」 ようにした場合の方が、同じ力の入れ加減でも、より強い収縮を感じたと思います。


後者のほうが、モニターしている後頭環椎部付近の筋をより多く働かせたからですね。


このように、動かし方によって働く筋が異なるということをここで確認しておいてください。


当たり前のことのようですが、それを感覚的につかんでおくことが大切です







これは、緊張や短縮をリリースさせるときもそうですが、筋を促通・強化するときにも重要になります。


弱化した筋を強化するエクササイズを行うとき、注意しないと患者さんは無意識のうちに弱化した部分を働かせないで、周囲の強い筋を使用する代償運動を行ってしまいがちです


これではせっかくトレーニングをしても、その効果があまり期待できず、もったいない限りです


強化エクササイズを行う時には、代償運動を防ぎ、弱化した部分をしっかり働かせることが肝心です







代償運動は視覚的にも確認できますが、やはり、触診によって筋が働いているかどうかを直接確認できるのがベストでしょう


可能なら、患者さんにもその部分に触れてもらって、弱化した筋が働いているか確認できるようにすれば、なおよいと思います。


その部分を意識し、きちんと収縮しているかどうか確認しながら動かすことで、より効果も期待できますし、患者さん自身が目標をハッキリ持つことができるという意味もあります


また、トレーニングを行いながらフィードバックができるので、かたちが崩れてしまうリスクも避けることができるでしょう。


さらに強化されてくると、動かしやすくなったという感覚的なものはもちろんですか、以前は頼りなかった筋が、今は硬くしっかりと収縮しているというのを触れてわかるというのは、モチベーションをアップさせる材料のひとつにもなります







今回のシリーズでは、等尺性収縮後リラクゼーションを触診で感じることをテーマにお送りしてきました


筋がリリースして伸びてきている感覚や、きちんと収縮している感覚を触診によってつかめることは、リハビリテーションを行う上でもとても大切になってくると思います。


触診ができなくても、ある程度仕事はできるかもしれません。


しかし、触診ができることで、仕事の質が向上するのはもちろんのこと、仕事自体がより楽しくなってきます。


「わかると楽しい」 「できると楽しい


これは、仕事や勉強やスポーツすべてに共通することですね。


その意味でもこのシリーズでご紹介した方法は、とてもよいのではないかと思いますので、ぜひ練習して役立てて下さい。






 身近な道具を使って、かんたん!スッキリ!!「コリとり体操」が、
 「わかさ」さんでも紹介されました
 





当院ホームページで公開しているエクササイズ「道具を使ったコリとり体操」が、おかげさまで健康雑誌「わかさ」4月号「腰痛特集」で紹介されました。

多くの方のご支持をいただけて本当にありがたいかぎりです。

体性機能障害は、ほとんどが毎日の生活習慣の中からうまれるので、日ごろのセルフケアがとても大切になります。しかし現実として、体操をなかなか習慣にできない方、仕事から帰ってくると体操をする気力も残っていない方、子育てに追われて気持ちに余裕を持てない方などもいらっしゃいます。私はそのような方のために、より簡単なセルフケアとして、道具を使う方法もアレコレ考えて紹介しています。

患者さんへのアドバイスとして、みなさんご自身のセルフケアとしてお役立ていただければと嬉しいです。フリーでダウンロードできるので、どうぞご活用ください。




くつぬぎ手技治療院 「身近な道具を使って、かんたん! スッキリ!! コリとり体操」


等尺性収縮後リラクゼーションを触診で感じよう! その2 

2010-02-13 20:00:00 | 学生さん・研修中の方のために
〈前回の続き〉


まずは前回紹介した手順の確認から。

① 頭部を前に屈曲し、後頚部の筋を軽くストレッチする。

② 片手(写真では左手)で、後頭部の頭側を保持し固定する。

③ もう一方の手(写真では右手)で後頭環椎間に触れてモニターとする。

④ 頭部を中立位に戻す、または、頭部と頚部の境目を反らせる方向に軽く力を入れ、左手はそれに抵抗し固定を維持する。

⑤ 5~10秒程度持続させ、力を抜く。

⑥ 等尺性収縮後リラクゼーションによるリリースを触知し、伸張性が得られた範囲、再び頭部を屈曲させて固定する。

⑦ ①~⑥を数回繰り返す。





この手順の中でもっとも難しく、そして大切なのが⑥の 「リリースを触知する」 というところです。


この感覚は自分の力でつかんでいくしかないのですが、私が感じている印象をお伝えして少しでもサポートになるようにしたいと思います







はじめに④の、頭部に力を入れて反らせたとき手に感じる緊張、これはわかりやすいと思います


そして⑤で力を抜いた瞬間、当然ながらそれまでよりも軟らかくなります。


問題は、脱力して軟らかくなった後の変化です。







脱力して数秒たつと、ジワジワッと、またはフワッとした感覚が伝わり、指の下で組織が横に広がったように感じます。


場合によっては、すみずみまで血液が流れ出したかのような、温かくなった感じがするときもあります



力を抜いてから、しばらくの間はそのまま待ってみましょう。


待っているとき、頭部を保持している手も力を抜いておき、引っ張らないようにします。


私の場合、リリースしている瞬間というのは 「あぁ、生きているんやなぁ」 と何とも言えない嬉しい気分になってしまいます。


( ちょっと変わっているかな? )






1回の収縮ではリリースがわからないときもあります。


とくに慢性的な緊張の場合は、回数が必要です。


2回・3回・4回と、くり返してみてください。


「何となくそんな気がするかなぁ」 という感じからで大丈夫です。


その感覚を大事に育てていってください







なかなかリリースが感じられないとき、はじめのストレッチが強すぎることが原因である場合もあります


はじめからストレッチをしっかり行いすぎると、強い張力がかかっているために、リラクゼーションが起こったときのフワッとした感覚をつかむことが難しくなります。


ですから、はじめのストレッチはごくごく軽く行うようにしてください 


実際の治療でも、ハムストリングスなど四肢の大きな筋には、ある程度の力をかけて伸ばしていくこともあります。


しかし、脊椎への分節的アプローチを行う時には、大きな力はさほど必要なく、むしろ身体の操作によってその分節を可動させる刺激を集め、それを感じ取ることが大切になります。


ですから、ここでも感じることを優先して、はじめのストレッチはごくごく軽くから行うようになさって下さい







なかなか変化を感じないときは、頭を反らせる力を少し強めてもよいでしょう。 







それでも 「やっぱりわかりません」 という方もいらっしゃると思います。


でも、あきらめずに根気よく練習を続けてみてください


集中できるよう、静かなところで練習するのもよいでしょう。


嫌になったらしばらくの期間休んで、またチャレンジしても構いません。


以前はわからなかったのに、久しぶりにやってみたら 「わかった」 ということもあります。







この感覚を身につけることは、単に筋肉エネルギーテクニックが使えるようになるというだけではなく、組織の変化を感じ取れるということになるので、あらゆるテクニックで生きてきます






ぜひ身につけていただきたい感覚です


次回はこの練習をとおして感じていただきたいことを、もうひとつご紹介します。










寺子屋セミナー「手技療法の基礎講座」のお知らせ

2010年1~3月は、ASTRなどの手技療法を用いる上で、私がもっとも大切にしている基本的なことをお伝えしたいと思います。

2/20(土) 18:00~ 2時間セミナー 『脊柱(胸椎・腰椎)の全体的な評価と治療ポイントの検出』
2/21(日) 10:00~ 5時間セミナー 『胸椎の可動性検査と関節モビライゼーション』

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くつぬぎ手技治療院「手技療法の寺子屋」


等尺性収縮後リラクゼーションを触診で感じよう! その1 

2010-02-06 20:00:00 | 学生さん・研修中の方のために
今回は 「ひとりでできる触診練習法」 として、筋肉エネルギーテクニックやPNFでよく用いられる、等尺性収縮後リラクゼーション (Post Isometric Release:PIR) を利用したテクニックの練習を3回シリーズでご紹介したいと思います







「等尺性収縮」 とは筋肉の長さが変化しないまま筋力を発揮している状態です。


例えば、壁を押しているときがこれにあたります


壁を押しているとき、力は入っていますが身体は動いていません。


(プルプルふるえているかもしれませんが…)


つまり、筋肉の長さは変化していないことになります。


これに対して、筋肉の長さが変化しながら筋力を発揮している状態が 「等張性収縮」 です。


ものを持上げるときなどは、この等張性収縮が起こっています。







筋肉のもつ性質として、等尺性収縮が起こった後、筋にリラクゼーションが起こって弛緩するというものがあります。


この性質を利用して、緊張・短縮を起こした筋をリリースさせ、本来の静止長および伸張性を回復させる。


そして、骨関節を正常なアライメントに近づけるというのが、等尺性収縮後リラクゼーションを利用した筋肉エネルギーテクニックの目的になります。


特に筋の緊張が、促通によって持続されているときには有効です。


(ちなみに手技療法の多くで、体性機能障害のうち、緊張や短縮などを起こした組織の柔軟性を回復させることを、リリース〈 解放 〉と呼んでいます







オッホン、エ~ッ、そもそも等尺性収縮後リラクゼーションは、α運動ニューロンを抑制させることによって…


なんてことは、書籍やネットでも検索できるのでそちらにお任せしたいと思います


(正直にいえば、このあたりのことが苦手です。
αやらβやらが出てくると、本を読んでいる時は何とかわかる気がするのですが、閉じた後すぐに消えてしまいます
仕方がないので、この手のことはイメージとして記憶するようにしています。)







なにはともあれ、ここでの目標は等尺性収縮後リラクゼーションによるリリースを感じるということです


リリースして筋が弛緩して伸びていく感覚をつかむことは、筋肉エネルギーテクニックなどを用いる上でとても大切です


ハムストリングスなどの大きな筋なら、リリースして伸長性が回復すると「床に手がつきやすくなった」 など、視覚的にも変化がわかりやすいです。


しかし脊柱の筋、とくに2椎・3椎間にまたがるような小さな筋肉は、可動域の視覚的な変化は、あまりよくはっきりしないことも少なくありません


(むしろ、動かした時の痛みが変わったというほうが多いかもしれません。)


ですから、モニターしている手によって、弛緩して伸張していく様子を感じ取る必要があるわけです。







それでは参りましょう


今回は、後頭環椎間を対象に練習します。


①まずは、後頚部の筋がごく軽くストレッチされる程度、頭部を前に倒します。








②次に片手 (写真では左手) で、後頭部よりもやや頭方(ラムダ縫合付近)を保持・固定します


あくまで固定するだけです。


それ以上力を入れて、前に屈曲させようとする必要はありません。







③つづいて、もう一方の手(写真では右手)で後頭環椎間に触れてモニターとします


私は示指や中指で触れています。


これで準備 (セットアップ) が完了となります。




④頭部を軽く元の中立位に戻す方向、または、頭部と頚部の境目を反らせるように力を入れます。  

ごく軽く、1~2割程度の力で結構です。



そのとき頭部を固定している手は、頭部が動かないように抵抗して固定しておきます。


モニターしている右手は、筋の収縮を感じているでしょうか?




⑤この状態のまま5~10秒程度持続させ、力を抜きます。
 

力を抜いて数秒経つと、筋が弛緩して少し伸びるようになります。


モニターしている右手の感覚に集中しましょう


筋にリラクゼーションが起こり、弛緩して伸びている (動いている) 様子が感じられるでしょうか?




⑥伸びるようになった分だけ、頭部を前に屈曲させ、左手で固定します。 


(このような作業が 「スラックアウト( あそびを取る )」 といわれるものです。)




⑦ここまでの手順を数回繰り返していきます。 


以上が基本的な手順です。






始めのうちは、リラクゼーションを感じるというのは難しいかもしれません。


より感覚をつかみやすくするために、次回は私が感じている印象をお伝えしたいと思います


〈次回に続く〉




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私が大切にしていることを、出来る限りお伝えさせていただきました。
どうぞよろしくお願い致します。
医療情報研究所





☆ブログの目次(PDF)を作りました 2014.01.03☆)
手技療法の寺子屋ブログを始めてから今月でまる6年になり、おかげさまで記事も300を越えました。
これだけの量になると、全体をみたり記事を探すのも手間がかかるかもしれません。
そこで、少しでもタイトルを調べやすくできるように、このお休みを使って目次を作ってみました。
手技療法を学ばれている方、興味を持たれている方にご活用いただき、お役に立てれば幸いです。

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