手技療法の寺子屋

手技療法の体系化を夢みる、くつぬぎ手技治療院院長のブログ

徒手的テクニックの使い分け11 ~表の活用例2-2~

2010-09-25 20:00:00 | 学生さん・研修中の方のために
≪前回からのつづき≫

今回は、運動療法から入っていくモデルをご紹介します。


『 運動療法への関心が高く、MSIアプローチ(表中のFのカテゴリー) を実践していたYさん、動作分析を行い、不適切な身体の動かし方を修正するエクササイズをアドバイスすることで、運動時痛をなどを訴える方に効果を挙げていました





しかし、なかには自動運動だけでは上手く動かせるようにならない方もいらっしゃいます。


そこで、神経と筋の協調性を高め、よりスムーズに運動できるよう働きかけるため、PNF(表中Eのカテゴリー) を学ぶことにしました。


身体に触れて操作することに慣れるまでは大変でしたが、患者さんに適切な方向と力で動かすよう指示することは、MSIアプローチで行っていた指示の方法が役に立ちました。


こうして、自動運動だけではなかなか変化しないときは、PNFによってより理想的な運動パターンとなるよう支援し、再び自動運動を行っていただくことでよりスムーズに治療が進むようになりました。


ところが今度は、大きく体幹を動かすようなエクササイズでは、改善しにくい患者さんが現れてきました


そこで分節的なアプローチができる、筋肉エネルギーテクニック(表中Bのカテゴリー) を学びました。


このテクニックを身につけるうえでも、MSIでの指示方法や、PNFの抵抗運動をコントロールしながら動かす技術が役に立ちました


Yさんはその後、マッケンジー法(表中Cのカテゴリー) を学び、関節の機能障害をもっている患者さんにもアドバイスできるようになりました。


もともと動作分析が得意だったYさんは、触診技術も身につけることで、よりきめ細かいアプローチが可能になり、自分の治療の幅を広げていきました。』







ご紹介した2つのモデルケースで注目していただきたいのは、新しいテクニックを学んだとき、それまで学んだテクニックが自動的に生きてくるのではないということです。


自動的に生きるなら、セミナーオタクと呼ばれる方たちほど出来るはずですが、そうとは限りません。


Xさん、Yさんのように、過去に学んだことを新しいテクニックに生かそうと、意識して組み込んでいく必要があります。


それによって習得がより早まると共に、テクニック間の関連性を感覚的に理解でき、さらには使い分けが可能になってきます。








余談ですが、Xさん、Yさんの例を 「刺激の方向と加え方によるテクニックの分類」 の表に照らし合わせると、表中の自分が学んだテクニックから、縦か横のカテゴリーに含まれるテクニックを次に学んでいます。

縦か横でつながっているテクニックは、似ているところも少なくないので吸収しやすいと思います。

斜めに移動しても構わないのですが、身につけなければならないことが多い分、ちょっと大変かもしれません。








話はコロコロ変わりますが、個人的には様々なカテゴリーのテクニックを学んだほうがよいという考えています。


でも、いろいろな考え方があるので、ひとつのカテゴリーをより深く学ぶというスタンスもあってよいでしょう。


表中Dに属するマッサージを学び、同じカテゴリーのストレッチを学び、さらにASTRを学ぶというパターンだって構いません。


「マッサージをとことん極めたい!!」 というスタイルだってありです。


ただし、表をよく見て自分ができる範囲を認識しておくことが大切です。


誰にでも限界はあることなので、これはどなたでも当てはまります。

私の場合は、表中Fのカテゴリーがまだ弱いという認識を持っています


表を活用することで、自分がどの範囲までカバーできるかを確認することもできます







さまざまなテクニックを学んだほうがよいと書いたものの、無理をして「すべてのグループを押さえなきゃいけない」 などと思い込む必要はありません。


それができるに越したことはありませんし、世間的にはあらゆることに対処できるよう幅広く学ばなければならない、というのが建前でしょう。


しかし、人それぞれ能力や嗜好が異なっています


歌って踊って演奏もできるマルチな才能を持った方もいれば、マイク一本、歌だけで勝負という方もいらっしゃいます


調理師なら、調理を行う上で求められる最低限の技能を身につけたら、あとはソバ専門でも、定食屋でもよいはずです。


そう考えたら、自分が高いモチベーションを維持して行えるスタイルを、その限界も理解しながら築いていけばよいということになります







「ソバを極める!!」 「いろいろな方においしく食べてもらえる定食屋を作りたい!!


どちらのスタイルも社会では必要とされています。


手技療法も同じだと思います。


どうあるべきか?決めるのはまわりの誰かではなく、みなさん自身です


自分自身が心地よく感じるスタイルを見つけ出してください。







ただせっかくの機会なので、次回はさまざまな種類のテクニックを学んだほうがいいと私が考えている理由、それから、仮にいくら練習しても身にならない苦手なテクニックがあっても心配しなくていいというお話したいと思います

徒手的テクニックの使い分け10 ~表の活用例2-1~

2010-09-18 20:00:00 | 学生さん・研修中の方のために
手技療法には多くのテクニックがあるので、興味を持ってこの世界に入ってきたものの、「いったい、何から学べばよいかわからない」 という方も中にはいらっしゃいます。


そのような時は、どうすればよいのでしょうか?







結論からお話すれば、どれから学んでもかまいません


このシリーズを通してお伝えしたかったメッセージのひとつは、あらゆるテクニックはバラバラではなく互いに関連性があるということです
 

さまざまな名称に惑わされてしまうかもしれませんが、生理学的な作用機序や哲学のようなものを除いて、テクニックを使うという視点からは、刺激を加える「部位」 「範囲」 「深さ」 「方向」 「加え方」 「リズム」 「強さ」などのちがいにすぎません。


ですから、フィーリングや好みで選んでかまいません。







あるテクニックの魅力を熱く語るセラピストもいらっしゃいますが、よくよく見ていると理屈うんぬんよりも、むしろその方の好みやタイプに合っているからじゃないのかなと感じることが少なくありません。

みなさんも思い返してみてください


おだやかなテクニックを用いている方や、バリバリとしっかり動かすテクニックを使う方、エクササイズを極端に重視している方など、それぞれ持っている似かよった雰囲気があると思いませんか。


それらしい理由はあるけれど、実はただ相性が良かったからということ、これって結構あると思います







それぞれのテクニックに優劣はなく、特徴の違いがあるだけです


ですから、何となく自分の好みに合うというテクニックからスタートして問題ありません。


「好みかどうかはわからないけど、たまたま縁があったから」 それでも結構です。


手技療法の入り口はとても広く、どこから入ってもかまいません


ひとつのテクニックを学び、そこで乗り越えられない壁を感じたら、躊躇せず他のテクニックを学べばよいのです。


他を学んで、また元のテクニックに戻ったとき、以前よりも上手くできるようになっているはずです。







では、表「刺激の方向と加え方によるテクニックの分類」 を用いつつ、より具体的なモデルを2例ほどご紹介しましょう。


『 ストレッチ(表中Dのカテゴリー) を学んでいたXさん、もっともかたさの強い方向にストレッチすることを心がけるようになってから、治療の効果も高くなっていました


でも最近、関節付近のかたさがどうも上手く除かれていないことに気がつきました。


ストレッチをかけたときに関節に痛みを訴えている場合も、なかなか改善させることができません


そこで、Maitlandの関節モビライゼーション(表中Aのカテゴリー) を学んでみることにしました。





異なるテクニックだといっても、筋を長軸方向に伸ばしていた技法を、関節面に沿って動かすというように力の方向を変えるだけなので、より細かい操作は必要になりますが、ストレッチの技法を生かすことができました。


Maitland法を身につけたおかげで、関節付近のかたさも除けるようになりました。


ところが今度は腰痛の患者さんなどで、椎間関節の動きを回復させても、座位や立位で動かしていただくと違和感が残るという方がでてきました


よくよく調べてみると、確かに座位で動かしている途中、腰の一部分に緊張が強くなっていました。


どうやら、運動時の筋のコントロールが上手くいっていないようです。


そこで、Xさんは筋肉エネルギーテクニック(表中Bのカテゴリー) を学ぶことにしました。


このテクニックは関節モビライゼーションをかける姿勢までもっていってから、患者さんに力を入れていただいて抵抗運動をするので、Maitland法を学んでいたことが役に立ちました 』







いかがでしょう。この例のように、はじめからすべてを行える人などいません


まずは好みのテクニックを学び、それを使っていくうちに壁にぶつかり、次の問題が浮かび上がってきます。


そうしたら、他の方法を学ぶというようにすればよいでしょう。


熱心な方ほど、できないことばかりに目を奪われて、焦ってしまいやすいです


私たちは一歩ずつしか進むことができませんし、また一歩ずつ進まなければ、確実に身につかず、小手先だけの技術になる恐れもあります。


地道に行きましょう


ちなみに、評価し使用するテクニックを判断する重要なポイントは触診になっているというところを押さえておいてください







次回は、運動療法から入っていくモデルをご紹介します

徒手的テクニックの使い分け9 ~表の活用例1~

2010-09-11 20:00:00 | 学生さん・研修中の方のために
今回は、このシリーズで作成した 「刺激の方向と加え方によるテクニックの分類」 の活用例として、私の治療の組み立て方を、表と照らし合わせながら紹介したいと思います



あくまでもひとつのモデルに過ぎませんが、この表が実際の臨床で 「このように使えるんだ」 ということをご覧いただき参考になさってください。







『 ある日、イスに座っていて後ろの物を取ろうと身体をひねったときギックリ腰になり、強い痛みを訴えている患者さん が来院されました。


問診や視診、整形外科的テストの結果、炎症の反応や馬尾神経症状など禁忌の所見は認められず、筋スパズムによる症状の可能性がどうやら強いようです。


触診によって、まわりと比べてかたさが強くなっているところと範囲、深さを調べ、それを解剖学に照らし合わせてみると、L3を中心とした腰椎と、そこから外側の腰方形筋にスパズムによる筋緊張を感じます。


かたさの強い方向はL3の伸展方向と、腰方形筋を外方から内方に向かって圧迫を加える方向でした。


比べてみると関節より筋筋膜の制限である、腰方形筋の緊張のほうが強いようです。


まずは 「表中D」 のカテゴリーに含まれるマッサージを行ったところ、スパズムを軽減させることはできましたが、まだ筋が興奮しており、身体を動かそうとすると痛みを起こします。


そこで、「表中E」 の筋肉エネルギーテクニックによって、相反抑制や等尺性収縮後リラクゼーションを利用し筋のトーンを下げた後、再び評価しました。


筋のスパズムはほぼ改善したものの、L3の伸展制限はまだしっかり残っています。


これに対して、「表中A」 の関節モビライゼーションを行い、伸展制限を解除しました。


続いて座位で検査したところ、いくらか筋肉の張り感は残っているように感じるものの、強い運動時痛はなくなっています。


念のため、自動運動でL3の屈曲・伸展を確認しましたが問題ありませんでした。


ここで異常があれば、「表中B」 に含まれるマリガンのSNAGSを用いて関節のすべりを回復させる考えでしたが、その必要性はなかったようなので、これで初回は終了しました。 』







いかがでしょう? おおまかにでもイメージをつかんでいただけたでしょうか?


上の例はわかりやすくするため、シンプルにまとめましたが、実際には以下の3つも織り交ぜながら進めて行きます。







① 患部に負担をかけている周囲の状態をチェックする。


腰部に負荷をかけているのは、たとえば胸郭が制限を起こしているために、腰部が回旋運動を代償しているためなのか。


それとも、ハムスト等の短縮により座位で骨盤が後傾し、腰部の後彎が強まっていたのか。


または、体幹筋の機能が低下し、腹圧による腰部のサポートが得られなくなっていたためなのか、などなど。


そのようなところをみつけたら、患部と同じような流れでアプローチします







② 患部に負担をかけているような、身体の使い方をチェックする。


胸郭の制限が除かれた後にも、たとえば胸郭を固定して体幹を回旋させるような習慣が残っていることで、腰痛を再発しやすくなっていないか、など。


この場合、運動のパターンを修正するようなエクササイズをアドバイスします。


習慣を変えることになるので、スムーズにいかないこともありますが、これまでのプロセスから患者さん自身が、症状の成り立ちを感覚的に理解しているために、再発しても 「またやっちゃったか」 という具合で、心まで不安に陥ることがありません。


文字通り、腰を落ち着けて取り組むことができます。







③ 患部やその周囲の疲労を除くようなセルフケアを行う。


「表中C・F」 のカテゴリーに含まれるものですね


②でお話した、身体の使い方もここに入ってくるでしょう。


セルフケアについて、私の治療院を利用される方は、仕事や生活に疲れきっていらっしゃる方も少なくありません。


その状態で、いきなり大きなエネルギーを使うようなエクササイズをアドバイスしても、なかなか実行は難しいです


運動嫌いな私が患者さんの立場でも、同じように続かないと思います。


そこで、はじめの段階でよくすすめているのが、テニスボールやカサなど、身近な道具を用いる方法です


≪弊院サイト内 「身近な道具を使ったコリとり体操」 をご参照ください。 ≫


これらは、寝ながら体重をかけたり、腕の重みを伝えたりするだけで、かんたん、楽ちん、効果的にケアできるので、疲れている方にも実行していただける可能性が高くなります。


そこからスタートし、心と身体の回復の度合いと、とにかくセルフケアが習慣になりつつあるかをみながら、必要に応じてよりアクティブなエクササイズをアドバイスするようにしています。







こうして見てみますと、基本的に私の組み立て方は、表の右から左に向かって進めているという流れになっているということが感じていただけるかと思います。







いかがでしょう? 実際の臨床で多くのテクニックの中から、どれを選択して進めるかを判断していく流れが、表を利用することで少しでも判りやすくなったでしょうか?


冒頭にも述べましたが、これはあくまで私の場合ということなので、この方法だけが正しいなんてことはありません。


少ないスタッフで、多くの患者さんを診る必要がある現場では、表中C・Fの自動運動からスタートして、回復が思わしくない方に対して、より分節的なアプローチができるA・B・D・Eのテクニックを用いていくというのも現実的だと思います







回復までの道のりは、登山ルートと同じで決してひとつではありません


体性機能障害はデリケートなところもある反面、許容量が大きい一面もあり、さまざまなルートを作ることができます。



この表を上手く活用することで、ルートを確認する地図のような役割を果たしてくれるかもしれません。


また、治療の流れのイメージや、何をすべきかというヒントも得られるのではないかと思います。


( そうなってくれたら嬉しいです )







次回は他の活用例として、シリーズの第1話でも触れた、多くの徒手的テクニックを前にして 「どれから手をつけて良いかわからない」 「こんなにあるのを全部覚えないといけないの?」 という疑問を感じている方へのアドバイスをお話したいと思います

徒手的テクニックの使い分け 8 ~筋筋膜への自動運動~

2010-09-04 20:00:00 | 学生さん・研修中の方のために
さいごに 「筋筋膜」 の方向へ刺激を加える 「自動運動」 でのアプローチです


これは「系統別・治療手技の展開」で紹介されているものでは、


メディカルトレーニングセラピー

MSIアプローチ-運動系機能障害症候群の評価・治療-

フェルデンクライス・メソッド


が当てはまります



これ以外にも、ピラティスに太極拳にラジオ体操、バランスボールやストレッチポールを用いたエクササイズ、はたまたアレクサンダーテクニックなどもここに含まれるでしょう。


トレーニングや、コンディショニングと呼ばれるグループですね







このカテゴリーはとても大きく、この分野だけで表をつくって分類することもできると思います。


今回は、徒手的テクニックの使い分けという観点から表を作成しましたので、いっしょにまとめてしまいました。


(もうひとつの理由は、私が運動嫌いなために運動療法の勉強を怠りがちで、うんちくを語れるほど詳しくないということもあります


このカテゴリーに含まれる方法によって、柔軟性の向上や筋力増強をはじめ、動的安定性や、正しい動かし方の順序(リクルートメントパターン)の習得など、動きの質的な側面をより高めることができます







これで、ようやく表が完成しました


せっかくですから名前をつけましょう。


「刺激の方向と加え方による徒手的テクニックの分類」なんてどうでしょう。


なんだかふつうですね…


他に良いネーミングがあったら教えてください








この表によって、他動運動による動きの 「量」 的拡大から、自動運動による動きの 「質」 的向上へという流れを示すことができます



言い換えると、「動かない」 ところは他動運動で動かし、「動かせない」 ところを自動介助運動によって動かせるようにし、自動運動によって 「より動かせる」 状態をつくるというわけです



自動運動へ向かうほど、「関節面」 と 「筋筋膜」 との境界があいまいになるかもしれません。







いかがでしょう?テクニック同士の関係や、連続性を感じ取っていただくことができたでしょうか







ところで、このシリーズの5話でも少し触れましたが、自動運動に熱心な先生の中には、マッサージなどの他動運動が積極的に行われることは、かえって患者さんの依存性を高めるので好ましくないという考えの方もいらっしゃるようです


いくつかのリハビリのテキストの中にも、そのような書き方をしてあるのを読んだ記憶がありますし、とっても頑固な自称 「自動運動派」 の先生とお会いしたこともあります


その考え方に、うなずけるところも確かにあります。


私も最終的にはセルフケアなどによって、自立を促すということには賛成です


でも、何はともあれ自動運動をという意見とは、違った考えを私は持っています。







私は、体性機能障害のベースには 「疲労」 があるという捉え方をしています


疲労には 「身体的疲労」 と 「精神的疲労」 があります。


たとえば腰痛などで相談にみえた患者さんには、多かれ少なかれこの2つの疲労が混在しています。


いわゆるギックリ腰など急性期の症状なら、身体的疲労の影響が大きいでしょうが、慢性的であればあるほど精神的疲労の割合も増えてきます。


精神的ストレスという心理的要因や、職場・家族関係などの社会的要因が背景として存在することによって、それらが筋骨格系に影響を及ぼし、症状を持続させているということもあります。







そんな肉体的にも精神的にも疲労困憊した方に、いきなり 「(依存しないで) 自分で治してください」 では、あまりにもかわいそうだと思います


場合によっては打ちひしがれて、より症状を悪化させることもあるかもしれません


まずは受け止めてあげなければならないケースもある、と思っています。


とくに、人とのつながりが希薄になって、孤独感にさいなまれやすくなった今の世の中で、人間として最も基本的なコミュニケーションの手段である 「ふれる」 「体温を相手に伝える」 という行為の意味は、決して小さなものではないと考えています。


(これについては、手技療法習得へのステップ3‐トリートメント6をご覧ください)







もちろん、患者さんもセラピストも互いに馴れ合いになっているような状況は、反省して考えなすべきだと思います

でもそれは、マッサージなどの他動運動が悪いのではなく、そのような使い方をしている私たちセラピスト側の責任です


( とくに患者側の依存だけではなく、患者が依存せざるを得ないような状況をつくることで、セラピスト自身も患者に依存している 「共依存」 の関係には注意を払わなければなりません )


それを棚に上げて、他動運動を問題視するのは、ボールが打てないのをバットのせいにしたり、包丁で指を切ったら包丁のせいにするということと同じです。


テクニックはあくまで道具にすぎません。


考えて工夫し、道具を生かして使う必要があります







たとえば、患者さんのなかには、動かすことそのものに恐怖を覚えている方もいらっしゃいます


また、上の表のように、自動運動では 「動かない」 「動かせない」 状態になっていることは、肩こりや腰痛など一般的な相談でも珍しくありません。


そんなときにはセラピストが他動的に 「動く」 ようにしつつ、患者さん自身に 「ここまで動かしてもいいんだ」 と認識していただくことで、安心して自動運動を行えるようになるというケースもあります。


他動運動によって助走をつけ、自動運動によって飛び立っていただくわけです。

このように、自動運動や他動運動にとらわれず、患者さんの回復に合わせて次のステップにつなげていくようにすることが望まれると思います



そのためには、テクニック間の特徴と連続性を感覚的に理解しておく必要があり、それが、このような表の作成を試みた理由のひとつにもなっています。






ところで、この表をどのように用いていけばよいのでしょう?


次回は、この表の活用例として、私の行っている治療の組み立てについてお話しをしたいと思います