手技療法の寺子屋

手技療法の体系化を夢みる、くつぬぎ手技治療院院長のブログ

ひとりできる!クラニアル・リズミック・インパルス(CRI)触診練習法 その1

2015-10-31 16:15:33 | 学生さん・研修中の方のために
頭蓋仙骨療法という手技療法のテクニックがあります。

もともとオステオパシーの頭蓋療法を起源として発展してきましたが、現在ではリハビリテーションやボディーワークの分野でも取り入れられるようになり、呼び名もそれぞれで少しずつ異なるようです。



このテクニックは頭蓋骨が動く、それも一定のリズムを持って呼吸のように膨張と収縮を繰り返して動いている、という標準的な医学の知識からすると???なことが前提となって組み立てられています。

動きといっても5~12μm。

ひと昔前まで、仙腸関節は動かない不動関節であると解剖学の教科書にも書かれていたことを思えば、何をもって動くとするかという基準や程度の問題なのかもしれないですね。



その動きがどのようなものによってもたらされるのかについては、脳脊髄液の産生と排出のバランス、硬膜そのもの動き、あるいは脳脊髄そのものの動きなど諸説があります。

またその回数は、1分間に6~10回というものもあれば、8~12、あるいは10~15回というものもありばらつきが見られます。

これほどばらつきがあるなら、もしかしたら頭蓋の動きの中にいくつかの異なるリズムがあって、セラピストによってどのリズムを感じているかによる違いが生じているという可能性もあるかもしれません。

胸に手を当てた時、心臓の動きと呼吸の動きのどちらに意識をするかによって、感じるリズムが異なるということに似ているのかも。



頭蓋の動きはクラニアル・リズミック・インパルス(cranial rhythmic impulse:CRI)と表現されているので、これからはCRIと書くことにします。

CRIのリズムや動きが、何らかの理由で機能異常を起こすことによって、頭痛、頚肩部痛など疼痛症状のほか、内臓や自律神経系の機能障害に加え、不安や抑うつが起こるとされ、頭蓋仙骨療法はそのタイプの機能異常にに対して有効な技法です。

具体的には異常な動きの頭蓋骨にコンタクトし、任意の方向に伸張するなど持続的な刺激を加えたり、CRIと同調しながらその動きを誇張するような操作を加えることで、CRIが正常なリズムと動きに近づくように誘導します。



触れるといっても5gの力で触れて操作します。

はじめて聞いたら「5gってオイオイ、一円玉5枚の重さで操作するの?」という感じですよね。



5~12μmの動きに対して5gの力で触れて操作することから、頭蓋療法はとても繊細なテクニックとされています。



そのようなわけですからCRIを触診して感じ取れるようになるには、ふつうはとても根気と忍耐のいる練習が必要で、ここでつまずいている方も少なくないかもしれません。

今回のシリーズはCRIを触診する練習法を、感じ取れるようになるためのポイントも含め、ご紹介したいと思います。



練習にはいろいろな方法が考えられますが、通常の触診よりも集中力を必要とするので、静かな環境で練習することが望ましいでしょう。

ひとりで行うなら、夜布団に入ったときもよいです。

私は今でも布団に入ったときに練習していて、そのまま眠ってしまうこともよくあります。

この技法はリラクゼーションとしても優れているので、ちょうどよいかもしれません。



まず仰臥位で手掌を側頭部に、指は頭頂部をくるむように当てます。


このとき、肘の力はできるだけ抜いておくようにします。

腕の重みで屈曲しているようなイメージでしょうか。



肘に力が入ったまま触診していると、筋が疲労したとき(この場合は特に上腕三頭筋)動きを感じるどころではなくなってしまいます。

はじめから頭に触れず、腕に力みが入っていないことを確認したうえで触れるようにするとよいかもしれません。



では、一円玉5枚の重さ(百円玉1枚もほぼ同じ)で触れてみて、肺呼吸の動きとは異なるリズムを感じられるかどうか、チャレンジしてみてください。

≪次回(11月14日更新)に続く≫



ギックリ腰と脱水~私の反省談

2015-10-17 17:00:00 | 治療についてのひとりごと
過去のfacebookの記事より。


この夏のできごと。

ギックリ腰を起こした50代の女性が、顔をしかめ脚を引きずりながら治療院にみえました。

仕事中にイスから立とうとした時、ギクッときたそうです。

幸い筋肉の痙攣だったので、激しい痛みの割にはすぐに良くなり、喜んで帰られました。



ところがその帰り道に痛みが再発、やむなく戻っていらっしゃいました。

私も手応えを感じていたので、首をかしげながらの二回目の治療。

すぐに痙攣は治まったのですが、自分で確認する限り、再発させるような異常を見つけることができませんでした。



しかしその二日後、今度は寝ている時に再発してしまいました。

それからは、ふとした動きで強い痛みが走り、しばらくしたら少し和らぐということが数日続いたそうです。



患者さんはすっかり参っておられたのでとても気の毒だったのですが、お話しを伺っていて私は不思議に思いました。

筋肉のコリなどが悪さをしてギックリ腰を起こしたなら、治療した後にこのような形で再発することは、経験上ですがふつうありません。

しかも寝ているときに。



何か聞き洩らしや見落としがなかったか、私も考えこんでしまったのですが、ふと、はじめにギックリ腰になられた数日前から、急に気温が上がったことを思い出し質問しました。

「水分はどのくらいとっていますか?」

不思議な顔をした患者さんの答えは、

「いやぁ、けっこう飲んでいるほうだと思いますけど」

その日から、麦茶などで1.5リットルをとりあえずの目標にし、水分を意識してとっていただくようにしたところ、ギックリ腰は起きなくなりました。



「自分でも驚きました。思った以上に水分をとっていなかったことがわかりました」

患者さんの感想です。

エアコンの効いた部屋で仕事をしているので、脱水なんて考えていなかったそうです。

ただ、北海道はエアコンのない家庭も多く、暑くて寝苦しい夜は思いのほか寝汗をかいているかもしれません。

今回も就寝中に再発した、というお話しがヒントになりました。



結果的には回復して良かったのですが、反省すべき症例です。

それは、脱水によって筋肉が痙攣を起こすということを、可能性のひとつとして今回は念頭に置いていなかったということ。

私の頭の中でギックリ腰という名前や、患者さんの生活状況から勝手な思い込みを持ったのかもしれません。

危険なサインだけを除外したら、自分の守備範囲に視点が限定されてしまっていたのは確かでしょう。

脱水による典型的な初期症状は出ていなかったので、はじめに見抜くことは難しかったかもしれませんが、筋の痙攣によってギックリ腰が起こったと判断した以上、誘発因子としての可能性を考慮すべきでした。

そうであれば、はじめに戻っていらしときに気づくことができ、二日後の再発はなかったはずです。



きっと過去にも、今回ほど強い症状でなくても、同じような見落としはあったでしょう。

それからというもの、誰かれ構わず水分摂取について尋ねています。

こうなると、それはそれで偏るのですけどねf(^^;

人を診るというのは本当に難しいことだと改めて反省しました。


次回は10月31日(土)更新です。







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ポジショニングの順序その2~足の位置は最後に決める

2015-10-03 17:00:00 | 学生さん・研修中の方のために
ポジショニングの基本は、おじぎをしたら手が着く位置にとる。

前回のように患者さんや練習パートナーをその位置に動かしたら、次いで自分が動きます。



適切なポジションを決める際、ポイントとして注意していただきたいのは「足の位置は最後に決める」ということ。

ありがちなエラーは、はじめに足を置いた位置を変えることなく、そのまま触診したりテクニックを使おうとすることです。



なぜか足を固定したまま、動かそうとしない方がいらっしゃいます。

患者さんの身体を操作することに気を取られ、自分の足元まで意識が行かないのかもしれません。

そのポジションが楽ならそれでよいのですが、そうではなかった場合、上半身を傾けるなどして身体に無理をかけた操作になります。



例えば伏臥位で腰部を圧迫した後、


殿部に移る際に、位置を変えずにそのまま身体を傾けて刺激しようとするなど。


結果、腰に負担がかかって腰痛を起こしたり、身体の力が使えないために指に力が入り腱鞘炎を起こしてしまう。



足が固まってしまうのは、どのようなスポーツを行う上でもよくないはずです。

だから足の位置は、ひとまず仮のものとして自由に動かせるようにしておき、決定は最後にするようにするとよいでしょう。

決めた後でも、微調整が必要なら動かすようにします。

足を居つかせないこと、これはとても大切なポイントです。



自分が動く順序としては、おじぎをしたら手が着く位置に立ち、大まかな体勢をとる。

刺激を加える方向へ、母指・四指・手根・肘などどの部分を用いてコンタクトするのか決める。

途中でコンタクトが上手くいかないようなら躊躇せず変えましょう。



次いで、目標となる方向へ楽にコンタクトできる手のかたちを決める。

手のかたちを楽に保つことが出来る、肘の位置と角度を決める。

肘を楽に保つことが出来る、肩の位置と角度を決める。

≪過去の記事もご参照ください「立ち位置は脇と肩で決める」



肩を楽に保つことが出来る、体幹の位置と向き、角度を決める。

体幹を楽に保つことが出来る、膝の位置と向きと角度を決める(慣れてきたら股関節を意識するとよいでしょう)。

膝の位置を楽に保つことが出来る、足の位置と向きが「決まる」。

立ち位置を、「決める」ものではなく自ずから「決まる」ものにするわけです。



慣れれば順番が適当でも上手くできるようになるでしょう。

けれども、はじめのうちは「手から決めて足を最後にする」という流れを私はおすすめしています。



「手先に力を入れない」という指導はよくされると思います。

裏を返せば、手先は力を入れやすいということ。

これを利用して、力を入れやすいところから順に決めていく。

わかりやすいところから、やりやすいところから順に進めていくという方法です。



ただし、常々お話していることですが、これはあくまでひとつの提案です。

この手順だけが正しいという訳ではありません。

他にもいろいろな進め方はあるでしょう。



どの方法を取るにせよ、何らかのかたちでパターン化しておくと、わかりやいかもしれませんね。

いろいろ試してみて、自分にとってしっくりくる、整理しやすい手順で進めていって下さい。



ポジショニングは、おじぎをしたら手が着く位置に。

先に相手を動かしてから自分が動く。

自分が動くときは手先からはじめ、足の位置は最後に決める。

この「流れ」、まずは試してみてください。



練習を重ねていくと、やがてポジショニングそのものが「決める」ものではなく、勝手に「決まる」ものという感覚を持てるようになると思います





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下記日程にてセミナー講師を務めさせていただきます。
ご依頼いただきました主催者のみなさま、ありがとうございます。
興味をお持ちの方どうぞご参加下さい。


☆ 鹿児島セミナー
セミナー1「手技操作の基本のき「楽操」」
日程 2015年10月31日(土)17:00 ~ 21:00
主催:鹿児島学びの朋さん

セミナー2「頚肩部に対するマニュアルセラピー」
日程 2015年11月1日(日)9:30 ~ 17:30
主催:鹿児島学びの朋さん


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「膝関節・足部への徒手的アプローチ」
日程 2015年11月03日(火)
主催:relifeグループさん


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セミナー1「身につけておきたい手技療法の基本1~どのようにして楽に操作するのか~」
日時 2015年11月07日(土) 18:30~21:00  

セミナー2「骨盤(股関節)への徒手的アプローチ」
日時 2015年11月08日(日) 13:30~18:30

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