手技療法の寺子屋

手技療法の体系化を夢みる、くつぬぎ手技治療院院長のブログ

ASTRと似ているテクニックについて~テクニックについての考え方

2015-01-10 17:01:35 | ASTRについて
セミナーなどで受講生の方から「ASTRと同じような手技が他にもありますが、どのように違うのでしょうか?」というご質問をいただくことがあります。

ASTR(Active Soft Tissue Release)とは、組織を押さえて伸ばした状態で関節を動かしてストレッチをすることで、ピントを絞った限局性の高いストレッチを行うテクニックである、としています。

同じような方法を用いるテクニックに、ARTや機能的マッサージなどがあります。



ASTRは、私が整形外科クリニック在職時に、師匠の松本不二生先生と考案しました。

師匠と一緒につくっていくというのはとても楽しく充実していました。

ですから私個人的には、思い入れはとても深いものがあります。



だからといってASTRならではの特徴を見つけ出して、他との違いを強調しようとは思いません。

テクニックというのはオリジナリティーがないとその存在意義を問われるわけですが、わずかな違いを強調したところで本筋から外れていくだけでしょう。



それは、勉強するセラピストにとっては混乱を招くだけでいい迷惑ですし、患者さんにとってはどうでもいいことです。

ひょんなことから世に出たASTRですが、他にも同じようなことを考えて世に広めている人達がいるということは、その方法が本当に役に立つ可能性が高いということを示しているはず。

むしろそこを喜びたいと思っています。



大切なのは原理となる基本が共通しており、それによって実際に効果を上げているということ。

それさえクリアしていれば、細々したところや名前は枝葉です。



釘を打つ道具の形はメーカーによって微妙に違うけど、釘を打つところは平らになっていて重みがあるという基本は共通しています。

そしてその道具のことを、カナヅチと言おうがトンカチと言おうが、ハンマーと言おうが同じこと。

それと一緒ですね。



名前はインパクトがあるけど似たようなテクニックというのは、これからもどんどん出てくるでしょう。

それぞれ特徴があり、またセラピストによって向き不向きもあるはずです。

ですから、自分が取り入れる治療法を学ぶときも「正しさ」というより、「好み」や「相性」で決めてよいと私は思っています。

テクニックはトンカチと同じ、あくまで道具に過ぎないのですから。



ただ学ぼうとするとき、断定的なもの言いをするセラピストには注意したいところ。

「独創的(独走的?)な治療法と出会ったときには」もご参照ください。≫

そのためにも学ぶ側が、多様なテクニックの共通するところを見抜けるようになる必要があると思います。



私の想いとしては、ASTRというテクニックを伝えながら、あらゆるマニュアルセラピーに共通する技術的な基本を伝える。

それによって新しいテクニックと出会っても、上辺に惑わされない目を養ってほしい。



またASTRは、ストレッチと筋膜リリースなどを組み合わせて出来あがっています。

ASTRを学ぶことで工夫の仕方を知り、さまざまな状況に合わせて自由にアレンジできるようになってほしい。

そう願っています。



『アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない』
ジェームズ・W・ヤング




次回は1月24日(土)に更新です。

ASTR応用の実際 その2 ≪セミナーのご案内≫

2010-03-06 20:00:00 | ASTRについて
前回、宿題?にしました、菱形筋、中・下部僧房筋(左)へ中立位でフックし、起始と停止を近づけるというASTRを実際に行ってみましょう。





①モデルは右側臥位になる。





②セラピストはモデルの背側に位置し、左手でモデルの肩を保持し、肩甲骨を中立位にさせる(プレポジション)。



プレポジションは筋肉の起始と停止を近づけて組織を弛緩させることを目的にしますが、その程度はフックできる程度弛緩させればOKです。


写真のようにモデルの身体が後ろに倒れないよう、セラピストの膝で支えてあげるとよいでしょう。








③セラピストは右手の手根部で肩甲間部の菱形筋、中部僧房筋に押圧を加え内方に滑らせる(フックポジション)。 


皮膚に大きなシワを作るつもりでフックしましょう。





④左手で保持している肩を前方から後方に向けて押し、肩甲骨を内転させつつ、フックした部位をさらに内方に滑らせ伸張することで、筋膜を滑走させる(ストレッチポジション)。




 
ちょうどこのような感じになります








⑤ ②~⑤を数回繰り返す。









いかがでしたか?同じようなかたちだったでしょうか?


これはあくまで一例ですので、他のかたちでももちろんOKですが、私がいろいろ試してみて、この方法がいちばん行いやすかったです







このタイプの筋膜の制限は、意外と見落とされがちで、そのため患者さんの症状がなかなか良くならないこともあります。


強い苦痛を強く訴えているものの、触診で押さえてみても、それほど緊張は強くないというときに、筋膜の滑走が制限されているということもあります。


実際にASTRを行ってみると、手根部で押さえているだけなのに、患者さんは 『つねられている』 ような感覚を覚えてビックリすることがあります。


ですからあらかじめ、「手のひらで押さえているだけですけれど、つねられている感じがするかもしれないですよ」 とお伝えしておくとよいでしょう。







はじめはつねられているような感覚でも、何度か治療を行っていくうちに、何ともなくなってきます。


そうしたら 「以前はすごくつねられた感じがしたけど、今はぜんぜん平気です」 とお話され、自分の身体が軟らかくなり、良くなっているのだと感覚的に理解されるようになります。


その頃になると、背部の不快感も少なくなっているはずです。


ここで必要に応じて、肩甲骨を内転させるエクササイズも行っていくとよいでしょう







そうそう、猫背のために菱形筋や中部僧房筋が伸張されていたということは、大胸筋は短縮していることが多いです。

大胸筋の短縮をとっておくことも大切ですよ~










寺子屋セミナー「手技療法の基礎講座」のお知らせ

2010年1~3月は、ASTRなどの手技療法を用いる上で、私がもっとも大切にしている基本的なことをお伝えしたいと思います。

3/20(土) 18:00~ 2時間セミナー『手技療法に役立つ身体の使い方~治療の効率を高め、術者への負担も少なくするために大切なこと~ 』
3/21(日) 10:00~ 5時間セミナー『腰椎の可動性検査と関節モビライゼーション』

興味をお持ちの方は下記リンクをクリックなさって下さい。


くつぬぎ手技治療院「手技療法の寺子屋」


ASTR応用の実際 その1 ≪セミナーのご案内≫

2010-02-27 20:00:00 | ASTRについて
今回はASTRのバリエーションについてです。



ASTRの基本的な手順として、はじめに筋肉の起始と停止を近づけて弛緩させます(プレポジション)。


次に、弛緩させた組織に、圧迫を加えそのまま横へスライドさせることによって、組織を予め伸張させます(フックポジション)。


最後に、関節運動を伴わせて起始と停止を遠ざけストレッチを加えます(ストレッチポジション)。



この手順がベースになるわけですが、他にも別法としてバリエーションはいくつかあります







というよりも、この手順というのは基本を覚えるための 「型」 であり、実際には機能障害の状態によって、テクニックの形はいろいろ変化させる必要があります。


変化させるための発想法、工夫の仕方を知るために、バリエーションを覚える意味があるわけです。


そして、変化させてテクニックを使うということは、対象となる機能障害の部位や範囲、深さ、方向を把握しておく、つまり評価が何より重要ということになります。



単に形を覚えるだけでは、あまり意味がありません







バリエーションのあらましについては、去年の4月にご紹介しました。
「ASTRの工夫と応用」


もうすぐ1年か…時間のたつのはホンマに早いなぁ


…という感傷はさておき、今回はそれに基づいた実際の方法をお話したいと思います。







部位は「菱形筋、中・下部僧房筋」です


胸椎の後彎が強い、いわゆる猫背の姿勢で肩背部のコリや不快感を訴える相談はよくみられます


猫背になると肩甲骨は外転し、菱形筋や中・下部僧房筋は伸張され、そのままの姿勢が続くことで筋力低下を起こします。


これに対し、肩甲骨を内転させるエクササイズにより、正常な筋トーンを保たせるよう試みられますが、なかなか症状が改善しないことも少なくありません。







このような身体の状態をよくみてみると、菱形筋や中・下部僧房筋の上を覆っている皮膚の動きに異常をみつけることがあります


その皮膚を指で押さえて棘突起に向けて動かすと、動きの幅が少ない、または抵抗が強くスムーズに動きません。

皮膚のあそびが内転方向に制限されている、浅筋膜の滑りが制限されているということになります



この制限があることで十分な筋活動が妨げられ、内転エクササイズも効果を挙げにくいのではないかと思います。







そこで、この動きを回復させましょう


テキストで紹介されている方法でも、もちろん構いません。


でも今回は「ASTRの工夫と応用」でご紹介した、中立位でフックし起始と停止を近づけるという方法で行ってみましょう。


その手順は…










次回、紹介します

来週まで、みなさんだったらどのように行うか?イメージして考えておいてください







寺子屋セミナー「手技療法の基礎講座」のお知らせ

2010年1~3月は、ASTRなどの手技療法を用いる上で、私がもっとも大切にしている基本的なことをお伝えしたいと思います。

3/20(土) 18:00~ 2時間セミナー『手技療法に役立つ身体の使い方~治療の効率を高め、術者への負担も少なくするために大切なこと~ 』
3/21(日) 10:00~ 5時間セミナー『腰椎の可動性検査と関節モビライゼーション』

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フックとは「…」である。 

2010-01-23 20:00:00 | ASTRについて
これまでセミナーなどでASTRをお伝えしてきて、もっとも大変だったのが「フックする」という感覚をつかんでいただくことでした


あれこれ悩んで考えて、最近ようやく誰でもわかる、誰でもやったことのある例えにたどり着きました







何だと思いますか?















… … 







… … …







それは「アッカンベー」です。







だれでも小さいころ、1度や2度はやったことがあると思います。


そう、フックとは 「アッカンベー」 と同じなんです。







あまりにバカバカしくて、拍子抜けしませんでしたか?


このように開いた口がふさがらないとか


でも、テクニカルなことを早く習得するためには、自分にとって身近で、こなれていて、感覚的にわかるものでないとなかなか身につきません。







では童心にかえってやってみましょう


この場合、舌は出さなくても結構です。


「下まぶた」 だけ指でひきます。







はい、アッカンベー














久しぶりにやってみて、いかがでしょうか?

さすがに写真をアップするのは恥ずかしいので、止めておきますね







アッカンベーは、まず人差し指で下まぶたに触れて圧迫し、そのまますべらないように足方に引きます


下まぶたを強く押して、骨に押しつけたりはしません


足方に引くときも、皮膚をすべってズルズルと口まで滑らせることようなことはなく、下まぶたを引いてそれ以上動かなくなったところで止めます。


まさにフックそのものです







練習をしていると、フックとはどういうものかわからなくなる時があると思います


そんな時は、押さえて引っぱる 「アッカンベー」 を思い出してください。


「きちんとアッカンベーができているかな」 これを確認に使えば、きっと上手くいくと思います。







もちろん実際の臨床では、緊張が強い部位には圧迫の度合いを強めますし、フックポジションからストレッチポジションに入っているとき、多少皮膚がすべることもあります


組織の状態によって変化させますので、 「アッカンベー」 はあくまで基本だと思っていて下さい。


野球の試合では、キャッチボールをしているときのようにボールを投げることはないけど、基本になるキャッチボールは大切というのと同じです







それにしても 「アッカンベー」 の例えは、我ながら 「これはいいナァ」 と思ったのですが、改まったテキストなどでは、なかなか使えない表現ですよね




ストレッチでフックがゆるむ理由

2010-01-16 20:00:00 | ASTRについて
ASTRは、あらかじめゆるませておいた組織に、フックという圧迫と横方向への伸張を加えた状態で、関節運動を伴うストレッチを行うことで、より限局性の高い伸張刺激を組織に加えることができるという治療手技です。


このASTRを使っていて、ストレッチポジションになるとどうしてもフックが緩んでしまい、「なかなか効果が出せません」という方がいらっしゃいます。


その原因のひとつには「重心の移動」があります







下腿三頭筋(起始側)へのASTRを例にお話ししましょう


下腿三頭筋にフックをかけたとき、重心が前にあることで、ストレッチをしてもしっかり組織を固定できます。




ところが、ストレッチに入ると同時に重心が後ろに移動してしまうと、フックがゆるんでしまいます。




重心はフックをかけた側に、できるだけ残しておきましょう。







このようなエラーは、ASTRを使い始めてまだ慣れていない方にときどきみられます


仕方のないことでもあるのですが、慣れていないうちはフックはフック、ストレッチはストレッチと、それぞれに動きに気持ちが集中して別々になりがちです。


そのために、フックしたときは重心がフックの側になるけど、ストレッチするとストレッチした側に移動してしまうわけです







気づいてしまえば何ということはないのですが、わからないうちは重心が移動してもフックがゆるまないように、指先に力を入れてしまいがちです。


これは指先のモニターの感度を落とし、指を傷め(耳にタコですね)、そして何より疲れやすくなります


仕事として毎日長時間行うわけですから、できるだけ余計なエネルギーを消費しない、燃費の良い、エコな治療(?)をする必要があります


そのためにはストレッチに入ったときも、むりなく支えておけるように、重心はできるだけフックをかけた側に残しておきましょう。


(フックの方法については「フックの技法」を参照してください







もうひとつ、重心がストレッチした側に大きく動くと困るのは、ストレッチしている手にも力が入りがちになるということです。


そうなると、上の下腿三頭筋の例では、膝をむりやり伸ばすことになります。


すると患者さんによっては、むりやり伸ばされるのに対して無意識に力が入ってしまい、上手くストレッチできなくなることがあります。


場合によっては、ダメージを与えてしまうこともあるでしょう







このようなことを防ぐためには、ストレッチは患者さんが受け入れられるスピードと範囲で行わなければなりません。 


ですから ストレッチを行う手は、フワッ~とくるむようにつかみ、ストレッチする方向へ誘導する程度にし、患者さんの腕や脚など身体の重みを利用してストレッチするようにします


それでも患者さんがどの方向に動かしてよいかわからないときは、口頭で伝えるとよいでしょう。 


くれぐれも、ギューッとにぎり込んで、ガバッとむりやり伸ばさないようになさって下さいね

制限のある方向にASTRをかける

2009-10-31 20:00:00 | ASTRについて
ASTRは筋肉の長軸に沿って行うのが、テキスト的なお約束です


このような方向で (だ円形のものが筋肉です)



実際、長軸方向に行うのがほとんどです。







だからといって、この方向ばかりというわけではありません


例えば、外傷後や不動などによって起こる線維化は長軸方向とは限りません。


網目状にランダムな方向に起こります。


これによってスムーズな筋の動きが妨げられ、やがて機能障害を招いてしまいます


これに対しては、線維化によって最も動きが制限されている方向にASTRを行う必要があります。


このような感じで









前回紹介したような評価によって制限がある場所を検出したら、その部位に触れて上下・左右・斜めに組織を動かしてみましょう。


その中で、最も動きにくい方向はどこでしょう?


その方向に合わせてASTRをかけてみましょう。








部位によってはもしかしたら、回旋しながらストレッチをかけた方が上手くいくかもしれません


フックしている組織をよくモニターして、もっとも張力がかかる方向を捜しながらストレッチしましょう。


このように大切なことは、テクニックを制限に当てはめるのではなく、制限の状態に合わせてテクニックをつくっていくということです







はじめは難しいかもしれませんが、ASTRに慣れてきたら、ぜひチャレンジしてみて下さい。


効果も違ってくるはずです

母指での「押す」フックについて

2009-08-29 20:00:00 | ASTRについて
ASTRの、手指を用いたフックには「押す」フックと「引く」フックがあります。


今回は母指での押すフックについて、すこしお話ししたいと思います







セミナー会場などで、私はよく「押すフックの場合は、指節骨⇒中手骨⇒橈骨のラインが、できるだけまっすぐになるようにフックしてください」とお話しします。


理由は、そのラインに沿っていれば骨格で支えることができるのですが、外れれば外れるほど指先の筋に大きな負担がかかるからです。


では私自身が本当にまっすぐ、一本の棒のようにフックしているのかというとそうではありません







見る角度によっても異なります


このように見ればまっすぐですが…





回転させると、まっすぐではありません。





指圧では母指の圧迫をするとき「MP関節を外に出す」という教えられ方をしますが、それに近い形ですね


現実問題として、ポジションや角度によってはまっすぐのラインを保つのが難しい、あるいはかえって不自然なこともあるので、実際はこれくらい外れていてもOKです







では、なぜ「まっすぐ、まっすぐ」とウルサく申し上げるのかというと、慣れないうちはまっすぐのラインから大きく外れがちだからです。


夢中になって練習しているうちに、これくらい外れている方もめずらしくありません。





こうなると、母指の屈筋や内転筋には遠心性収縮の力がかかり続けることになります。


遠心性収縮は筋を傷めやすいものです







このような習慣が身についてしまったら後々たいへんです。


だからはじめのうちに、できるだけまっすぐのラインを保ってフックできるようになるよう、ウルサくウルサく言うわけです。


まっすぐのラインを保とうとする習慣が身についたら、たまにイレギュラーとして大きくラインから外れるフックをしても、すぐに修正でき、指を傷めるまでにはいたらないでしょう







指のラインが橈骨に沿うようまっすぐにする、という説明の真意は、「指先の力を最小限にしてフックする」ということです


私はこれを心に留めて練習し、工夫をするようにしています

迷ったときは「パッチテスト」

2009-08-22 20:00:00 | ASTRについて
ASTRに限らず、禁忌の判断はとても大切です。


ASTRの場合は体表から組織を引っかけるようにして伸ばすので、とくに出血傾向の方には注意が必要です


局所的な炎症や皮膚疾患の場合は判断しやすいのですが、ヘパリンやワーファリンなどの抗凝固剤の投与や、長期間のステロイド服用、あるいはもともとの体質によって、出血傾向がみられるときは、どの程度の刺激を入れてよいものなのか迷うことがあると思います


経験を重ねると加減を上手くコントロールできるようになるので、出血傾向のある方にASTRを使っても問題は起きにくいのですが、慣れないうちは心配になると思います。


それに内出血してアザだらけになり、患者さんが不安になったり、思わぬトラブルになっても困りますよね。







そんなときにオススメしたいのが、「パッチテスト」です


そう、薬剤などにアレルギー反応を起こすかどうかを調べる検査法ですね。


ASTRの場合は、塗ったり貼ったりするわけでないので「パッチ」とはいえないかもしれませんが、あの要領でテストをするわけです。


方法は、まず患者さんに「内出血するようだったら困るので、まずテストをしますねということをお伝えして同意していただいた上で、対象となる部位の一か所にASTRをかけます。


そして次回来院されたときに結果を確認し、問題なかったようでしたら自信をもってASTRを使っていくことができます。


また仮に内出血したとしても、あらかじめ患者さんにテストである旨を伝えてあるので不安になることもないでしょう。


アレルギーのパッチテストの反応として腫れたとしても、それを心配する人はいないというのと同じですね。







もちろん、はじめに問診で内出血しやすいかとか、ぶつけるとすぐアザになるかなどを確認しておくことも忘れてはいけません。


それから「もし内出血をおこすようだったら、すぐに教えて下さいね と、きちんと患者さんにお話ししておくことはとても大切です。


患者さんが医療不信を起こすきっかけは、ほんのわずかなことからはじまります


この一言があるかないかで、まったく違ってくるはずです。

フックで指を握らない!!

2009-06-27 20:00:00 | ASTRについて
(手技療法習得のステップ~トリートメント~へ入る前に脱線します。毎度のことですがご勘弁のほどを)







上部僧帽筋や肩甲挙筋は、肩こりなどの愁訴と関係も深く、機能障害も頻繁にみられる部位です。


座位でASTRをかけるのが行いやすい方法ですが、ここでのフックは示~小指の4指を用いるのが便利です。


このように≪DVD版「ASTR」より≫









このかたちでフックを行うとき、注意していただきたいことがあります。


それは「フックで指を握らない」つまり、指に力を入れて曲げないということです


これは、腕力に余裕のある男性に比較的みられます







いちど指をカギ型に曲げてフックしたら、指の角度はできるだけそのまま固定します




くれぐれも、このように握り込んではいけません




理由は二つあります

このブログを以前からお読みいただいている方は、もうお分かりですね







そうです!! 







ひとつは「術者の指を傷める」からです


フックしたまま、さらに指に力を入れて握り込むのは、前腕をはじめ手内筋に大きな負担をかけてしまいます


そしてもうひとつは「モニターの感度が落ちる」ということ


ASTRをかけているとき、フックしている組織にどれくらいの力がかかり、組織がどのように変化しているのか、指先をモニターにして感じ取る必要があります


ところが握ることで手に力が入ると、モニターの感度が鈍ってしまいます


その結果、患者の状態を正確に感じ取ることができず、ダメージを与えてしまう危険性も生じてしまいます


ですから指はそのまま固定し、できるだけ身体の力を使ってフックの形をキープしなければなりません。


例えば、座位での上部僧帽筋なら肘を外方に突き出すようにしてフックをキープさせます。


部位や体格差によって、工夫をしてもなかなか指でフックできないときは、手根や肘などそれ以外の部位も試してみて楽に行える方法を探しましょう。







こうして術者自身が楽にテクニックを行えるからこそ、患者もリラックスして受けることができ、それによって治療の成果も上げやすくなります


ムリなく自然なかたちで行えるのがベストですね


とはいえ「自然に」というのは茶道でもいわれることですし、ゴルフのアドバイスで「自然なスイングで」というのを聞いたことがあるのですが、これが一番難しいことでもあります。


何を隠そう、私自身もあれこれ工夫を重ねるなかで不自然な力の使い方をして、指がダルくなるなんてことはしょっちゅうでした







「でした」なんて過去形ではなく、実は現在進行形でもあります







セミナー会場で、物知り顔をして身体の使い方をアドバイスしているのも、実はその前に自分で変な使い方をしたために痛い思いをするなど、さんざん失敗した経験があるからなんです。


そして、ダルくなった手をいかにケアするかまた工夫する。


そうしているうちに、効率の良い方法をいろいろ覚えていくわけですね


その経験を生かして、みなさんには私が例えば3日工夫して出来るようになったことを、せめて2日、できれば1日で覚えていただけるようにできたらなと思っています


フックについてはバックナンバー「フックの技法」「フックもいろいろ」もご参考になさってください。




ASTRの応用あれこれ

2009-04-25 20:00:00 | ASTRについて
前回はすでにあるテクニックを参考にしつつ、自由に発想して工夫を重ねて欲しいということをお伝えしました。


今回はその流れで、私がよく用いているASTRの応用や変法ともいえるような方法をいくつか簡単に紹介します。


そうそう、このように書くとASTRがベースにあって他があるという印象を与えるかもしれません


でも決してそうではなく、みんな同じ道具でプラスのドライバーとマイナスのドライバーの違いのようなものですよ






まずは、ストレッチした状態で圧迫をかけるという方法
 

私は指圧学校出身ということもあって、指圧や圧迫法をよく用います。


そのまま圧迫するだけでは機能障害を上手く捉えられないとき、あらかじめ組織をストレッチしておくと捉えやすいです。


最も緊張する角度に合わせてストレッチするのがコツです







次に、圧迫を加えたまま関節運動をくり返すという方法


伸張方向ではなく、圧迫方向に緊張が強い場合に用いています。


表層の緊張が強くて、上手くフックできないときにも使います。


関節運動(プレポジション⇔ストレッチポジション)をくり返す方向は、機能障害のある組織がよくストレッチされる方向です。







そして、圧迫を加えたまま筋収縮を行わせるという方法


前の技法と同様に圧迫方向に緊張が強い場合に用いますが、特に筋が慢性コンパートメントを起こして、筋腹がパンパンに膨れているときに行うと効果的です。


圧力を加えたまま患者さんに筋の収縮を行わせるなんて乱暴なようですが、決してムリはさせないようにすれば、自動運動であるために傷めてしまうほどの刺激は加わらず、安全に行えます。







以上の方法を用いた後、ASTRによって伸張刺激を加えるという段階的なアプローチももちろんOKです


参考になさって下さい