手技療法の寺子屋

手技療法の体系化を夢みる、くつぬぎ手技治療院院長のブログ

「つまんで動かす」という手技の工夫 その2

2014-01-25 17:49:06 | 学生さん・研修中の方のために
≪前回からの続き≫

つまんで動かすという小さな操作を、大きな動作で行う工夫、いかがでしたか?

今回は私の場合をご紹介しますが、これが正しいというのではありません。

あくまで方法のひとつであって、他にもいろいろなやり方があるはずですから、まずは参考までに試してみて、納得できるなら取り入れるようにしてください。



では、つまむという操作から始めましょう。

ふつうは母指と四指で同時に挟むようにするわけですが、それを分けて行います。

まずは四指から。



四指で皮膚に触れて固定し、そのまま手前に引いて来て皮膚のたるみをつくります。


このとき指を曲げる力や手首の力ではなく、身体を引くように操作しましょう。

「小さな操作は大きな動作で」ですね。

すると、シワができるなどして皮膚のあそびが大きくなっています。



続いて母指で皮膚に触れ、そのまま前方に押し出しながら母指を四指の下に潜り込ませ、巻き上げるようにつまんでいきます。


ピンチするよりロールするというイメージでしょうか。

ふつうにつまんだ時とは、見た目の角度は明らかに違いますよね。




ロールする際は指先の力ではなく、脇を閉め、手首を背屈させながら身体を前進させて巻き上げるようにします。


ここでも「小さな操作は大きな動作で」ですね。

この時点でかなり皮膚のあそびは除かれているはずですが、まだ動きに余裕があるなら皮膚を四指でたぐりあげ、グラグラしないように固定します。



つまんで動かす操作は、皮下組織の滑走を回復させる目的で行われます。

そのため、つまむことで皮膚のあそびを除き、動かしたときには滑走制限が起きている部位に直接刺激が加わるようにします。

皮膚のあそびが残ったままでは、そのぶん無駄な動きが大きくなるので、それをいかにきちんと除いておくかが、最小限の動きで効果を上げるための大切なポイントになります。



皮膚をたぐりあげるのは、本来なら腕を動かしつつ手首のスナップを利かせるのが理想ですが、これくらいの操作なら指先で行っても問題ないでしょう。

絶対に指先の力を使ってはいけません!!、なんて私も言うつもりはありません。

必要な時は私も使っています。

ただ、自分の身体を傷めるような使い方を習慣にしないようにして欲しいというわけですね。



さて、これで「つまむ」という操作が完成しました。

ふつうにつまむよりも、よりしっかりとグリップが効いている印象があるのではないでしょうか?



つまむに続いて、動かす操作です。



≪次回に続く≫

次回は2月8日(土)更新です。

今回でブログを始めて、まる6年になります。
みなさんの声を励みにして支えられ、続けてくることができました。
ありがとうございました(^^)



「つまんで動かす」という手技の工夫 その1

2014-01-11 20:00:00 | 学生さん・研修中の方のために
マッサージには「もむ」「おす」「たたく」「さする」「ゆらす」など、さまざまな手技があります。

そのなかで「つまむ」という操作があるのですが、それを評価や治療の手法として重用しているアプローチもあります。



古くは結合組織マッサージのピンチロールテスト、最近ではトリガーポイントアプローチのピンサーパルペーションがそうですし、整膚というテクニックは「つまんで引っ張る」操作が中心となっています。

理学療法でも近年、皮下組織の滑走制限がひとつのトピックスになっていて、つまんで動かすことで組織を滑走させる操作が用いられます。



皮下組織(浅筋膜層)の滑走制限とは、炎症後の線維化などによって組織間が癒着して生じる体性機能障害のひとつ。

安静時の違和感、不快感や運動時の痛みを訴えたり、リンパの流れが妨げられることによって局所的な浮腫を起こすこともあります。



ところで、そのつまんで動かすという操作を見ていると、なかにはかなり手先に無理をかけているセラピストもいます。

短時間しか用いないならともかく、現場で他の手技も交えながら毎日長時間、それが長い間くり返しているとしたら、手を傷める可能性が高くなってくるはず。

そこで今回は、つまんで動かすという操作について、私なりの工夫の方法をご紹介したいと思います。



まずは指に負担をかけやすい操作から。

それは文字通り、指先で挟んで固定するというもの。

ふつうに「つまむ」ということですね。




「えっ」と思われたかもしれませんが、これが絶対に悪いというわけではありません。

検査で用いたり、整膚のようにおだやかにつまみ、軽く引っ張ってはもどす、ということを繰り返すなら問題は少ないでしょう。

しかし、つまんで固定してしっかり動かす操作を反復するなら、ちょっと考えたほうが良いかもしれません。



つまみ上げた状態で滑走をさせ、それを反復する時には、組織が緩まないように固定し続けます。

長時間それを続けると、指先を動かす前腕や手内筋にかかる負荷が大きくなって、指が痛むようになるのです。

ましてや動かす操作を、手首の屈曲・伸展の力で行うなら、負担が大きくなるのはなおさらのこと。



前腕の筋の発達が弱い方なら、てき面に痛みを出すはず。

筋肉が発達している方なら、すぐに負担に感じることは少ないかもしれません。

しかし無理が利くだけに疲労が蓄積され、ストレッチしたり温めても全然回復しない、とにかく重だるいような痛みが出てツラいという状態になる可能性もあります。

ですから、つまんで動かすという操作を多く用いる場合、工夫が必要ではないかと思います。



ではどのように工夫すればよいのでしょうか?

まずは、みなさんで考えてみてください。



ポイントは「小さな操作は大きな動作で行う」ということ。

『ひとりでできる!!関節モビライゼーション(直接法)練習法シリーズ』も参照してください。

これまで何度もお伝えしてきた手技療法の基本ですね。

つまんで動かすという小さな操作を、身体を使った大きな動作で行うように工夫してみてください。



今回のシリーズの目的は『テクニックを自分のものにするための工夫』シリーズでお伝えしたことと同じです。

そのシリーズでは、テクニックに対する私の考え方をお話ししています。

3年経って読み返すと表現が「んっ」と思うところもありますが、基本的なところは変わっていないので合わせて参照して下さい。




≪次回に続く≫

次回は1月25日(土)更新です。






☆ブログの目次(PDF)を作りました 2014.01.03☆)
手技療法の寺子屋ブログを始めてから今月でまる6年になり、おかげさまで記事も300を越えました。
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