手技療法の寺子屋

手技療法の体系化を夢みる、くつぬぎ手技治療院院長のブログ

触診とテクニックの身体操作は同じ 【触診五話 その五】

2010-05-29 20:20:00 | 学生さん・研修中の方のために
今回のシリーズでは、触診によって組織の質的な変化を感じるための、身体操作法についてお話をしてきました


「身体を引く」 「身体を沈める」 操作は、 「軽擦法」 「圧迫法」 と同じだとお伝えしてきましたが、これは体幹などの大きな部位だけに用いるのではなく、DIP関節など手足の小さな部位でも同じです 。


体幹はイメージしやすいのですが、小さな部位はピンときにくく、どうしても手先の力に頼りがちです。


でも、このような 小さな部位の操作でこそ、質的な変化を感じるためには、身体を大きく動かして練習することが大切です。


「小さな操作は大きな動作で行う」ですね。 







以前、「ひとりでできる!! 関節あそび検査練習法」でDIP関節を取り上げたのは、そのようなことを、知っていただきたいためでもありました。


もう一度、身体を大きく動かして、DIP関節の関節あそび検査を練習してみてください。


手先だけの力を用いた場合と、明らかに印象が違うと思います。







ところで、もしかしたら混乱されるかもしれませんが、大切なことをお話しします







一見、評価である触診と、治療法であるテクニックは別々のようにみえます


評価と治療は、油断するとナアナアになるので、臨床を進める上では分けて考えるべきものですが、身体操作という観点からは分けてはいけません


触診のときは感じることに専念して、テクニックのときは行うことに集中する、ではイケナイわけです。


圧迫法のときにもお話ししましたが、手技療法のテクニックは「働きかける技法」であると同時に「感じ取る技法」でもあります 


これらが両立していないと、思わぬ事故を招く可能性もあります







「両立」 と申しましたが、小姑のようなことを言えば、これもすでに両者を分けて考えていることになります。


身体を動かすことと感じること、知覚と運動は生理学的には分けることができても、実際の行動レベル (つまり身体の操作) では分けることができません。


分けて考えることは、分類や整理をするうえでとても便利な半面、行動レベルでは弊害も生んでしまう可能性があります。







少々乱暴な表現をしますと、身体を操作するという観点からは、触診とテクニックは便宜的に名称を分けているにすぎません。


両者の違いは、身体を動かす範囲、加える力、スピード、この3つのレベルの差です。


触診のとき、すでに患者さんに働きかけているのであり、テクニックを行っているときは、常に患者さんのことを感じながら行わなければなりません







触診の「触れる」という行為を行った瞬間、患者さんの心身に影響を及ぼしています。


(もっと言えば、会った瞬間から影響を及ぼしています


テクニックの時に行う触診は「モニター」と呼ばれています。


モニターによって、機能障害に対して正確にコントロールされた刺激が及んでいるかを感じ取り、患者さんが不用意に力を入れたり、緊張したときにはセラピストは直ちに力を抜くなど適切な対応が可能になります。


【触診五話 その一】でお話しした、「やさしく触れる」ことと「力を抜く」ことは、別々ではなく、同じループに含まれるわけです。


サラッと何気なく書いていたように見えたかもしれませんが、別なものではないということは大切なポイントです。






手技療法の身体操作において、「評価と治療」 「触診とテクニック」 「感じる技法と働きかける技法」は同じものであるということ。


ちょっとややこしかったかもしれませんが、私が伝えたかったこと、おわかりいただけたでしょうか


無意識にできている方も多いと思います。


なんてことないように感じるかもしれませんが、とても大切なことだと私は感じているので、確認の意味も込めてぜひ押さえておいてください。







イカンイカン、何だか酔っ払い親父みたいにくどくなってきたナァ 







【触診五話 おわり】


連続的変化を触診するための身体操作 【触診五話 その四】

2010-05-22 20:00:00 | 学生さん・研修中の方のために
≪前回のつづき≫

組織の連続的な質的変化を追うために、大切なことは 「身体の操作」 です。


「さする」 「なでる」 という操作のとき、はじめから手先や手首を大きく動かして調べるのではありません






触れた状態から、



はじめに手を動かすのではありません



ここでも 「身体を沈める」 操作同様、手から離れたところから動かすようにします。


まず、腰を引き、



次いで肘を引いて触診していきます。




このように 触診のための操作を「身体を引く」という大きな動作で行うことによって、指は感じることに集中しやすくなり、組織の連続的変化の中で起こる、質的な異常を捉えやすくなります


また深部を診るなら、 「身体を沈める」 操作を加えます。


すべてつながってきますよね







ここで紹介した 「さする」 「なでる」 という身体操作は、マッサージでいう 「軽擦法」 そのものです。


前々回の 「圧迫法」 同様に、決して特殊なものではありませんが、上で述べたような操作することが大切になります。


しかし、「圧迫法」 は体重をのせて押さえるだけ、「軽擦法」 は手でさするだけ、と考えている方は意外と多いように思います


大切な基本を、おざなりにしてはいけません







マッサージは 「軽擦に始まり、軽擦に終わる」 と言われます。


軽擦法によって、はじめに患者さんの身体に手を馴染ませて、マッサージを受ける準備をさせたり、マッサージよって興奮した組織を、おわりに落ちつかせたりすることを目的としています。


でも私には、評価と再評価のために 「きちんと触診しなさいよ」 というメッセージであるようにも聞こえます


そして、きちんと触診するためには、それを支える身体操作が重要になるわけですね








≪おまけの話≫
5月19日、自宅から車で10分ほどのところにある、「平岡梅園」に行ってきました

例年より遅れているとはいえ、北海道は5月に梅の見ごろを迎えます
大坂生まれの私としては、2月の印象が強いのですが…

しかも、桜よりも後に咲くので逆転しています。
札幌に住んでもうすぐ6年なので、慣れてはきましたが、やはり妙な感じです



ほのかにただよう梅の香りが、気持ちをホッとさせてくれます。
平日なのに、たくさんの人がいらっしゃっていました。



北海道の梅は、妙に幹が太いような気がします。



斜めに撮ったので変な感じですが、ギッシリ花が咲かせています。


軟部組織の触診は連続的変化を追う 【 触診五話 その三 】

2010-05-15 20:00:00 | 学生さん・研修中の方のために
体性機能障害の評価では、以下の3つを主に診ます。


「左右の対称性」
「可動範囲」
「組織質感の異常」


このなかで、「組織質感の異常」を検出するのが触診の重要な役割になります。


「左右の対称性」や「可動範囲」は視診でも行えますが、組織質感は触診でしか診ることができません







組織質感の異常を触診するとは、組織の質的変化を手で感じ取るということになります。


質的な変化を感じるときに大切なことは何でしょうか?







軟部組織は連続性のある組織です。


ですから、連続性の中で質的変化を捉えることが重要です


具体的には触診のとき、「さする」「なでる」ように連続的に触れていくということです。









ポンポンと跳ねるように触診するのは「連続的」ではなく「断続的」です。




もちろん断続的な触診でも、異常をみつけることは可能かもしれません。


しかしそれでは、機能障害を立体的に感じ取ることが難しくなります。







触診では、機能障害が 「どこが」 「どの範囲で」 「どの深さの」 「どの方向に」 存在し、それが 「解剖学的に何であるのか」 を判断する。

つまり、機能障害を立体的に捉えることが重要です。



組織を 「さする」 なかで、機能障害の存在するのは 「どこか」 がわかったら、そのまま 「どの範囲で」 を特定します。

それから、手指を沈めて 「どの深さの」 「どの方向に」 を検出していくわけです。



ですから、私としては連続的変化を追うように触診されることをお勧めします。






伏臥位で後方から押圧を加える脊柱のスプリング検査でも、手を身体から離さず、脊柱の上をすべらせながら行うと、よりわかりやすいと思います。







組織の連続的な質的変化を追うために、大切なことがあります。


それは、前回の記事でも紹介した 「身体の操作」 です。

次回は、その方法をお話したいと思います










≪おまけの話≫
5月5日、おなじみの西岡水源地で水芭蕉が見ごろを迎えました



水芭蕉の群生地



木道の下を水が流れています。私の好きな散策路です。(たまに水没していますが)




深部の触診は「身体を沈めて」行う 【 触診五話 その二】

2010-05-08 20:00:00 | 学生さん・研修中の方のために
≪ 今回は、前回少しお話した「身体を沈める」という操作方法を、掘り下げていきたいと思います ≫







人間の身体は、皮膚 ⇒ 皮下組織 ⇒ 筋肉 という具合に層構造になっています。


少々乱暴なイメージですが、人間の身体は「たまねぎ」みたいなものだと表現できるかもしれません。


このような視点を持つことで、見えてくるものもあると思います







それはさておき、体性機能障害は浅層から深層までの、いずれの部位でも発生する可能性はあります。


ですから、浅層に問題なければ深層へと触診を進めていかなければなりません。


そのときの身体の使い方として、コツや注意点があります







それは、「手先の力で押しこまない」ということです。


前回も少し触れましたし、ASTRのフックのときなど、同じようなことはこれまで何度もお話ししてきたので、耳にタコでちょっと 「ウンザリ」 かもしれません。


でも大切なことなので、実際の動きを交えてお伝えしたいと思います。






下の写真は、手が宙に浮いている状態ですが、身体に触れている状態だと仮定します。


( 携帯の写メで、セルフタイマーを使って撮ったら、首なしで、こんな端っこに写ってしまいました )






ここから、深部に触診していくときにありがちなのがNGが、手先をはじめに動かし、続いて肘を伸ばしていくというものです




こうすると手先に力が入りやすくなるために、指の感覚が落ちてしまいます


また、触れられた印象も鋭く感じるので、患者さんは緊張しやすくなり、ますます正確な触診ができなくなります


すると、わからないものだから、ますます手に力を入れて探そうとする


患者さんはさらに緊張する。


…悪循環に陥ってしまうわけです







患者さんにリラックスしていただき、正確な触診を行うためにも、指はできるだけ力まない状態をキープさせなければなりません。


そのためには、手から離れたところから動かすようにします







まずは、膝を曲げて腰を落とします。
 



そうすると、手は体の深部に自然と進みます。







さらに 肩を落として肘を伸ばします。




するとさらに手は深部まで進みます。


深部まで進んでも、手先の力は使っていないので、手指には余裕があります。


そのため、より鋭敏に組織の状態を感じ取れると同時に、調べる方向に向けてわずかな微調整も行いやすくなります。


また、身体の力を使っているために、あたりがやわらかく、患者さんも安心して受けることができます


結果的に、より正確に組織の触診ができるわけです







以上の一連の動きが、「身体を沈める」という操作です。


「沈める」という表現が、いまいち分かり難いかもしれませんが、周囲が動くことで、手が勝手に「沈んでいく」という状態で触診するわけです。


先週の記事では、「やさしく」「深く」触診することを「手先に力を入れない」「身体を預ける」と表現しました。


それをより細かく説明すると、以上のような身体操作になります。







今回お話しした方法は、マッサージや指圧で行う「圧迫法」と同じです。


圧迫法というと、こちらから働きかけるようなイメージがありますが、じつは感じ取るための技法でもあるのです。


ただグイグイと、漫然と押しているだけではいけないということですね







ぜひいちど、「手先で押しこむ」ような動かし方と、「身体を沈める」動かし方、どちらの方がわかりやすいか、心地よく受けることができるか、仲間同士で練習してみて下さい。


意外なほど大きな違いがあると思いますよ










≪おまけの話≫

5月3日に美瑛までドライブしました

美瑛といえば「丘」のイメージがありますが、今回の目的地は穴場的スポットの「青い池」です。

はじめて行ったのですが・・・感激しました。

とても幻想的で、映画「アバター」のワンシーンに出てきそうでした

(ちょっと大げさかな?

写メでは表現しきれないのが残念





温泉の成分が池に混じって、太陽の光に反射すると青く見えるそうです

You Tubeでもアップされていました。
美瑛の「青い池」(春編) Blue pond


「かたい」ときほど「やさしく」触診する 【 触診五話 その一】

2010-05-01 20:00:00 | 学生さん・研修中の方のために
触診を行っていると、緊張が強まって 「かたく」 感じる部位をみつけます。


そのようなところがあると 「オヤッ、これは何だろう」 といろいろな方向から押さえて探ろうとします。


このとき、より正確に状態を把握するため必要なことは 「かたい」 と感じるときほど 「やさしく」 触診するということです


「やさしく」とは、指先に強く力が入っていないことです。





慣れていない方ほど異常なところをみつけると、指先に力を入れてグイグイ押さえようとしがちです


しかし、こうするとかえってわかりにくくなります


手に力が入ると、感覚が鈍くなるからです。







より 「深く」 触診する必要があるときは、「押し込む」 のではなく、セラピストの手を患者さんの身体を預け 「沈んでいく」 ように押さえましょう
 

腕立て伏せをしたとき、腕で地面を押してはいません。


あくまで、身体を支えているだけです。


この要領で、深いところに触れていくわけです。


外から見た動きに、あまり大きな違いはないように見えるかもしれませんが、感覚の拾いやすさは全く違います。







似たようなところで、患者さんの身体を操作しているときの注意点もあります。


それは、患者さんが緊張して 「力を入れたとき」 ほど、セラピストは 「力を抜く」 ということです


こちらも慣れないと、ついつい力比べをしてしまいます


これでは治療どころではありません。







例えば五十肩の場合がそうです。


可動域回復のためにモビライゼーションが必要でも、緊張のために力んでいる患者さんもいらっしゃいます。


そんなときに「必要だから」ということで、ムリやり動かそうものなら、スパズムを起こしてより悪化する可能性があります。


患者さんが力を入れたときほど、セラピストは力を抜き、手で身体を 「つかむ」 というより 「支える」 「そえる」 ようにし、口頭で指示しながら操作するようにします


こうすると、緊張で力みがちな患者さんも、自分の怖くないペースでゆっくり動かしてくださいます。


そして制限された可動域まで達したとき、少し力を加えてモビライゼーションを行うようにします。


このようにして行うなら安全に実施できるでしょう










≪おまけの話≫

今週の休診日は、雨風が強かったので長距離ドライブはあきらめ、自宅から車で10分ほどのところに先週Openしたばかりの「三井アウトレットパーク札幌北広島」に行ってみました

服装にうとい私のお目当ては、ブランド物ではなく、北海道の特産品が並ぶ「北海道ロコ FAME VILLAGE」

行ってみると、おいしそうなものがあるわあるわ

スモークサーモンやら、ジャガイモをそのままスライスして揚げたポテトチップスやらと、試食もいろいろ楽しめました ( もちろん、きちんと買いました )

時間が合わなかったので見られなかったのですが、マグロの解体ショーもやっているみたいです。次は必ず見てやるゾ。




シイタケの実演販売?菌床ごと売っているのですが、自宅で栽培するのでしょうか?




ミルクBarの「たまごソフト」。ありそうですが、これまで見たことありませんでした。
黄金色のクリームは、コクがあってとてもおいしかったです。