今回のシリーズのテーマは、「手技療法のテクニックを、どのように使い分けるのか」 ということです
前回、治療刺激を加える 「方向」 と、刺激の 「加え方」 の2つの要素を選びました。
そして、それぞれ 「筋筋膜」 と 「関節面」、「他動運動」 「自動介助運動」 「自動運動」 を下位項目として2×3の表を作成しました。
今回からは、「系統別・治療手技の展開」で紹介されているテクニックを表の中に分類していきます
まず、刺激を加える方向が 「関節面」 に沿っていて、「他動運動」 で行うテクニックは、「系統別・治療手技の展開」 の中では、Kaltenborn , Maitland , Parisの関節モビライゼーションと、関節ファシリテーションが該当するでしょう
各テクニックの詳細につきましては、「系統別・治療手技の展開」 などを参照してくださいね。
同書で紹介されている以外のこの種の技法としては、オステオパシーのアーティキュレーションや、カイロプラクティックのアジャストメント。
またはクラインフォーゲルバッハの機能的運動療法や、日本で有名な関節運動学的アプローチ(AKA)、構造医学などが挙げられるでしょう。
これらのテクニックに共通することは、関節を構成する一方の骨を固定し、もう一方の骨を関節面に沿って動かすことで、関節可動域の回復を促すというものです
「テコの力」 を用いて関節を動かすわけですが、関節を構成する骨に直接コンタクトして動かすのは、小さなテコを使ったモビライゼーションになります。
下の写真のように
これに対して、肋骨を動かすために上肢を操作したり、腰椎を可動させるために骨盤を回旋させたりという離れた部位にある骨を操作するものは、大きなテコを使ったモビライゼーションです
小さなテコのほうが関節面に沿った動きを誘導させやすく、大きなテコのほうは大きな力を安定して出しやすいという特徴があります
ところで、他動的な関節モビライゼーションを行う際に、関節面を接近させる圧縮法を用いるのか、離解させる牽引法を用いるのかという方法の違いがあります
伝統的な方法は牽引させることが多いのですが、関節ファシリテーションや構造医学など、比較的最近になって発表されているテクニックは圧縮を勧めているものが多くなっています。
牽引派?の主張は、関節面を離開させると、関節周囲の軟部組織にも伸張刺激を及ぼすことができ、また関節のロッキングも行いやすくなるというところが主なものです。
これに対して圧縮派の主張は、関節面を接近させると、接触する関節面の摩擦が少なくなり、よりなめらかな関節運動を行うことができるというもので、水力学的モデルや潤滑モデルとも呼ばれています。
牽引派が関節を機械的に捉えている色合いが強いのと比べて、圧縮派のほうがより機能的に捉えているといえるかもしれません。
はてさて、双方の主張に挟まれて、現場にいる私たちはどうすればよいのでしょうか?
考え方については、それぞれうなずけます。
ですから、理論だけを追いかけて判断しようとすれば、迷いに迷ってしまいます
とにかく現場のプレイヤーである私たちにとっては、目の前にいるその患者さんに対して、どのように働き掛けるべきかという問題が最大の関心ごとですよね
ここで大切なことは、臨床の場で牽引が上手くいっていることもあるし、圧縮で上手くいっていることもあるという現実をみつめることだと思います。
両方ともあり得るということは、どちらが正しいというよりも、それぞれ効果を挙げる状況が違っているのではないかということになりますね
そうなると、それぞれの使い分け方を考えなければなりません。
統一された考え方はまだないように思いますが、私自身は、まず離開させてモビライゼーションをかけ、関節包などの軟部組織を伸張させてから、圧縮を加えて動かすようにしています。
まず 「量」 を確保し、「質」 を高めるという考え方です。
もちろん例外もありますし、牽引も圧縮もせず、そのまま動かしていることも少なくありません。
私は自分の考え方を、できるだけシンプルなものにしようとしていますので、基本的には 「量を確保し、質を高める」 という進め方を、すべてにおいて適用しています
今回の場合、大切なのは何はともあれ可動域が回復すればまずはよいということです。
(ずいぶんザックリ書きましたが、片マヒの方にみられる適応的な拘縮などは例外です)
そのため、可動域という量を確保し、動きの滑らかさという質に働きかけるようにしています。
新しい考え方がそれまでの考え方と異なっているとき、どちらが正しいかを考えるのもひとつのあり方でしょう
しかし、白黒つけがたいときは両方の考え方を飲み込んで、それぞれが適用できる状況の違いを考える、という方法もありだと思います。
適用できる違いがわからないうちは、まずは禁忌を除外した上で、組織の反応をみながら 「あれがダメならこれを使う」 というように対応して、試行錯誤しながら適用の条件を探していくようにしています。
このように、常に臨床という地に足をつけて思考し、理論だけが空転するようなことがないようにしたいと私は思っています
手技療法の寺子屋「ASTRセミナー」「手技療法の基礎講座セミナー」のお知らせ
●8/15(日) 10:00~ 5時間セミナー 『骨盤Ⅱ 仙骨の評価と徒手的アプローチ』
●9/26(日) 18:30~ 2時間セミナー 『手技療法に役立つ身体の使い方Ⅱ』
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くつぬぎ手技治療院「手技療法の寺子屋」
前回、治療刺激を加える 「方向」 と、刺激の 「加え方」 の2つの要素を選びました。
そして、それぞれ 「筋筋膜」 と 「関節面」、「他動運動」 「自動介助運動」 「自動運動」 を下位項目として2×3の表を作成しました。
今回からは、「系統別・治療手技の展開」で紹介されているテクニックを表の中に分類していきます
まず、刺激を加える方向が 「関節面」 に沿っていて、「他動運動」 で行うテクニックは、「系統別・治療手技の展開」 の中では、Kaltenborn , Maitland , Parisの関節モビライゼーションと、関節ファシリテーションが該当するでしょう
各テクニックの詳細につきましては、「系統別・治療手技の展開」 などを参照してくださいね。
同書で紹介されている以外のこの種の技法としては、オステオパシーのアーティキュレーションや、カイロプラクティックのアジャストメント。
またはクラインフォーゲルバッハの機能的運動療法や、日本で有名な関節運動学的アプローチ(AKA)、構造医学などが挙げられるでしょう。
これらのテクニックに共通することは、関節を構成する一方の骨を固定し、もう一方の骨を関節面に沿って動かすことで、関節可動域の回復を促すというものです
「テコの力」 を用いて関節を動かすわけですが、関節を構成する骨に直接コンタクトして動かすのは、小さなテコを使ったモビライゼーションになります。
下の写真のように
これに対して、肋骨を動かすために上肢を操作したり、腰椎を可動させるために骨盤を回旋させたりという離れた部位にある骨を操作するものは、大きなテコを使ったモビライゼーションです
小さなテコのほうが関節面に沿った動きを誘導させやすく、大きなテコのほうは大きな力を安定して出しやすいという特徴があります
ところで、他動的な関節モビライゼーションを行う際に、関節面を接近させる圧縮法を用いるのか、離解させる牽引法を用いるのかという方法の違いがあります
伝統的な方法は牽引させることが多いのですが、関節ファシリテーションや構造医学など、比較的最近になって発表されているテクニックは圧縮を勧めているものが多くなっています。
牽引派?の主張は、関節面を離開させると、関節周囲の軟部組織にも伸張刺激を及ぼすことができ、また関節のロッキングも行いやすくなるというところが主なものです。
これに対して圧縮派の主張は、関節面を接近させると、接触する関節面の摩擦が少なくなり、よりなめらかな関節運動を行うことができるというもので、水力学的モデルや潤滑モデルとも呼ばれています。
牽引派が関節を機械的に捉えている色合いが強いのと比べて、圧縮派のほうがより機能的に捉えているといえるかもしれません。
はてさて、双方の主張に挟まれて、現場にいる私たちはどうすればよいのでしょうか?
考え方については、それぞれうなずけます。
ですから、理論だけを追いかけて判断しようとすれば、迷いに迷ってしまいます
とにかく現場のプレイヤーである私たちにとっては、目の前にいるその患者さんに対して、どのように働き掛けるべきかという問題が最大の関心ごとですよね
ここで大切なことは、臨床の場で牽引が上手くいっていることもあるし、圧縮で上手くいっていることもあるという現実をみつめることだと思います。
両方ともあり得るということは、どちらが正しいというよりも、それぞれ効果を挙げる状況が違っているのではないかということになりますね
そうなると、それぞれの使い分け方を考えなければなりません。
統一された考え方はまだないように思いますが、私自身は、まず離開させてモビライゼーションをかけ、関節包などの軟部組織を伸張させてから、圧縮を加えて動かすようにしています。
まず 「量」 を確保し、「質」 を高めるという考え方です。
もちろん例外もありますし、牽引も圧縮もせず、そのまま動かしていることも少なくありません。
私は自分の考え方を、できるだけシンプルなものにしようとしていますので、基本的には 「量を確保し、質を高める」 という進め方を、すべてにおいて適用しています
今回の場合、大切なのは何はともあれ可動域が回復すればまずはよいということです。
(ずいぶんザックリ書きましたが、片マヒの方にみられる適応的な拘縮などは例外です)
そのため、可動域という量を確保し、動きの滑らかさという質に働きかけるようにしています。
新しい考え方がそれまでの考え方と異なっているとき、どちらが正しいかを考えるのもひとつのあり方でしょう
しかし、白黒つけがたいときは両方の考え方を飲み込んで、それぞれが適用できる状況の違いを考える、という方法もありだと思います。
適用できる違いがわからないうちは、まずは禁忌を除外した上で、組織の反応をみながら 「あれがダメならこれを使う」 というように対応して、試行錯誤しながら適用の条件を探していくようにしています。
このように、常に臨床という地に足をつけて思考し、理論だけが空転するようなことがないようにしたいと私は思っています
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