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手技療法の寺子屋

手技療法の体系化を夢みる、くつぬぎ手技治療院院長のブログ

触れた手の離し方 その3

2014-03-22 19:33:22 | 学生さん・研修中の方のために
今回は手を離す時の情報を、触診として活用する例についてのお話です。



ここでお伝えしたいのは、触れて力を加えて押していき、力を緩めて手が離れる、このすべてのプロセスを大切にしてみては?ということ。

はじめのうちは触れることで手一杯かもしれませんが、慣れてくれば処理できる情報も増えてきます。

そうなってきたら手を離すときに感じることも、さまざまな情報の中のひとつとして役に立つでしょう。



例えば、組織が虚脱した状態は、麻痺なら一定の広い範囲にわたって起こるのでわかりやすいのですが、ごく軽度の部分的な筋肉の損傷でもみられます。

損傷が軽度の場合、ダメージを受けた組織の浮腫はさほどでもなくても手をかざすと熱感があり、収縮できなくなって力が抜けている状態になっています。

触診すると虚脱しているためか、周囲の組織よりわずかに凹んでいるような感触を覚えます。

そして、手を離したときは弾力性がなく、抵抗感がすぐに抜けてしまいます。



反対に、損傷を受けた周囲の組織は筋緊張が強まっていることがあります。

そうなると、手を離したときの抵抗感も強い。



緊張は傷めた組織を保護するためなのかもしれませんが、筋緊張によってかえって痛みが強くなることもあります。

このような時、損傷した部分への直接的刺激はもちろん禁忌ですので、そこは外して緊張している部分にアプローチし、組織をリリースさせておくこともあります。

それによって症状を緩和させるわけです。



保護したい損傷部位と、リリースさせておきたい緊張した部位を細かく識別するため、さまざまな角度からより多くの情報を得たい。

そのために、手を離す時の情報も無駄にしないというわけです。



余談ですが、組織が局所的に虚脱していると言われると、慣れない方は難しく聞こえるかもしれません。

けれども緊張した組織があると、虚脱した損傷部位とのコントラストがよりはっきりします。

そのため、かえって損傷部位を感じとりやすくなります。

その部位だけを触診してわからなくても、周囲と比較することでよりピンときやすくなるわけですね。



では周囲の緊張が強くないときはどうするのか?

あくまで参考までにですが、通常は「異常を探す(おかしいところを探す)」という意識で触れると思います。

そこを反対に、「正常でないところを探す(ふつうでないところを探す)」という意識を持つと、わかりやすくなることがあります。

自分になじみやすいほうを用いるとよいでしょう。



次回は、関節可動性検査での場合をお話しします。



次回は4月5日(土)夕方に更新予定です。



触れた手の離し方 その2

2014-03-08 20:00:00 | 学生さん・研修中の方のために
前回、触れた手の離すときは腰(体幹)を引き、次いで手を引くことにより、加えた圧がじょじょに自然と抜けていくので、患者さんも安心して受けていられる。




反対に、手から離すようにするとパッと力が抜けやすいため、違和感や不快感を与えやすいとお話ししました。





じつはこの離し方というのは、触診においても大切になってきます。

離す際には、押さえていた時の組織の抵抗感はだんだん少なくなっていき、身体から手が離れるとともに、それはなくなります。

触診では、この組織の抵抗感の減り方を意識して感じるようにします。

そのためには、パッと力を抜くような離し方では感じ取りにくいので、身体の力を使うことにより少しずつ圧が抜けるようにするわけです。



手を離したときの感触を言葉で表現するのはなかなか難しく、人によって異なるかもしれませんが、私の場合をご参考までに紹介します。



・正常な組織は手が離れるに伴って、じょじょに抵抗感は少なくなっていきます。

なめらかに抵抗が減っていく感じです。



・緊張の強さが比較的新しいものでは、手を離しはじめてもしばらくは抵抗感が強く、あるところに来ると急に少なくなります。

ちょうど、空気の入りすぎた風船に触っているような感覚です。



・慢性的な緊張や短縮などでは、手が離れるに従って抵抗感は少なくなるのですが、復元のスピードが遅い感じです。

粘土でできた低反発マクラから手を離すような感覚とでもいうのでしょうか(なんじゃそりゃ)。

緊張が新しいものか慢性的なものかの判断は、この戻り方がポイントになるように思います。



・虚脱したり筋力低下が大きいところは、手を離し始めたとたん、抵抗感が急に抜けてしまう感触になります。

本来ならついて来るはずのものが、ついて来ないような感じかな?



う~ん、言葉が不十分だけど仕方ない。

とにかくこれらの情報を手に入れるだけでも、より詳細に検討する手がかりが得られます。



もちろん同様の情報は、押さえた時にも得ることができます。

むしろ、日ごろは押さえた時だけ意識しているという方が多いでしょう。

押さえる時と離した時を比べたら、押さえた時のほうがより多くの情報を入手できるかもしれません。



ではなぜ離す時も、わざわざ意識してその感触を確認するのか?

それは、とかく人間には見落としや見逃しはつきものだからです。

こうして、より多くの機会で情報を得ようとすることにより、見落としをできるだけ少なくしようというわけです。


次回は、その実際例について少しお話しましょう。