前回からのつづき。
モビライゼーションのNAGSを、私が自分で行いやすいようにアレンジすると、体幹寄りの筋肉がより多く参加できるので、安定した力を発揮できるという長所がある半面、モデルの頭部の安定性が弱くなるという欠点を生んでしまいました。
その欠点とは、押圧を加えたときに頸椎の前彎が増加しやすくなる、つまり、頸椎が伸展してしまうために、目標となる治療面の方向に沿った刺激を加えるのが難しくなるということでした。
それを克服するための工夫は何か!!
聞いてしまえば何ということはありません。
それは、はじめにモデルの額をセラピストの肩口や胸元に当てるとき、予めモデルの頸椎を屈曲させた状態で当てるということです。
ただし、このとき注意が必要です。
それは、顎(オトガイ)が突き出た状態で頭を前に倒してくると、頸椎は伸展してまま前傾しているだけになっています。
これでは意味がありません。
ですから、患者さんには「あごを引いた状態で、私の肩におでこをつけてください」と口頭で指示しながら、誘導するようにします。
こうすると頸椎は屈曲し、前彎を減少させた状態で安定して固定することができます
これならアレンジのポジションで治療面に力を加えても、頸椎が伸展しにくくなるために上手くいきますよ。
外から見る限りでは、その違いは少なく見えるかもしれません。
こちらが、頸椎が伸展している望ましくない状態で、
こちらが、頸椎が屈曲して前彎が減少している、テクニック実施に適した状態です。
角度を変えて、こちらが頸椎伸展位、
こちらが頸椎屈曲位です。
2つならべて比較するとわかるのですが、一方だけ見せられると、とくにはじめのうちはわかりにくいかもしれません。
このように、セットアップの段階で固定力を強めるような操作を加え、刺激を加える屈曲の角度も決めておくようにするわけです。
聞いてしまえば何ということはないのですが、そのような小さな工夫の積み重ねが、大きな違いを生んでいくのです。
いかがでしたでしょうか。
「なるほど」と思えるものだったでしょうか。
それとも「もっと良い方法があるよ」と感じられたでしょうか。
ご注意いただきたいのが、私はお伝えしたいのは、テキストの方法よりもアレンジのほうが優れているなどということではありません。
治療の目標を達するために、型が意味しているところを汲み取ることが大切であって、型にはまってはいけない、ということです。
この場合の治療の目標は、テキストで述べられているように「治療面の方向に確実に滑らせること」です。
型や手順は目標に向けての、矢印のようなものです。
矢印は目標への方向やルートを示してくれているので便利ですが、矢印は目標そのものではありません。
目標にたどりつくために、多少わき道に反れたり、矢印の示すルートから外れて回り道をしなければならないときもあります。
私の行ったアレンジも、目標にたどりつくために少し違うルート、手段を使ったというだけです。
さまざまな体格のセラピストが、さまざまな体格の患者さんを手技療法によって治療するためには、このような工夫が求められるわけです。
ちょっと脱線しますね。
今回はテキストで紹介されているとおりのかたちで行いましたが、この内容だけがすべてではなく、きっともっとたくさんのポイントがあるはずです。
伝える側にとっては、テクニックのコツやパターンはたくさんあっても、それを説明する量を増やせば煩雑になって、はじめて学ぶ方にとって敷居が高くなってしまいます。
かといって平易にしすぎれば、テクニックの習得には不十分になります。
「ボールを投げて」と指示すれば、誰でも投げることができますが、より遠く、より早く、より正確に投げるとなったら、さまざまな技術を身につけ、果てのない工夫を重ねなければなりません。
それと同じことですね。
伝える側は、技術を文章で表現するとき、「詳しく」と「かんたんに」の間で揺れ動き、足したり削ったりして一文を作るだけでも悩むことがあります。
私もASTRの解説を行うときには、必要にして十分ということの難しさを思い知りました。
伝えるということは、本当に難しいことだと思います。
話を戻して、このシリーズではテクニックのアレンジについてお話ししてきたのですが、一方で「つくった先生のかたちをきちんと守らないといけないのでは」という意見もあると思います。
次回はそのような、テクニックについての考え方のお話です。
モビライゼーションのNAGSを、私が自分で行いやすいようにアレンジすると、体幹寄りの筋肉がより多く参加できるので、安定した力を発揮できるという長所がある半面、モデルの頭部の安定性が弱くなるという欠点を生んでしまいました。
その欠点とは、押圧を加えたときに頸椎の前彎が増加しやすくなる、つまり、頸椎が伸展してしまうために、目標となる治療面の方向に沿った刺激を加えるのが難しくなるということでした。
それを克服するための工夫は何か!!
聞いてしまえば何ということはありません。
それは、はじめにモデルの額をセラピストの肩口や胸元に当てるとき、予めモデルの頸椎を屈曲させた状態で当てるということです。
ただし、このとき注意が必要です。
それは、顎(オトガイ)が突き出た状態で頭を前に倒してくると、頸椎は伸展してまま前傾しているだけになっています。
これでは意味がありません。
ですから、患者さんには「あごを引いた状態で、私の肩におでこをつけてください」と口頭で指示しながら、誘導するようにします。
こうすると頸椎は屈曲し、前彎を減少させた状態で安定して固定することができます
これならアレンジのポジションで治療面に力を加えても、頸椎が伸展しにくくなるために上手くいきますよ。
外から見る限りでは、その違いは少なく見えるかもしれません。
こちらが、頸椎が伸展している望ましくない状態で、
こちらが、頸椎が屈曲して前彎が減少している、テクニック実施に適した状態です。
角度を変えて、こちらが頸椎伸展位、
こちらが頸椎屈曲位です。
2つならべて比較するとわかるのですが、一方だけ見せられると、とくにはじめのうちはわかりにくいかもしれません。
このように、セットアップの段階で固定力を強めるような操作を加え、刺激を加える屈曲の角度も決めておくようにするわけです。
聞いてしまえば何ということはないのですが、そのような小さな工夫の積み重ねが、大きな違いを生んでいくのです。
いかがでしたでしょうか。
「なるほど」と思えるものだったでしょうか。
それとも「もっと良い方法があるよ」と感じられたでしょうか。
ご注意いただきたいのが、私はお伝えしたいのは、テキストの方法よりもアレンジのほうが優れているなどということではありません。
治療の目標を達するために、型が意味しているところを汲み取ることが大切であって、型にはまってはいけない、ということです。
この場合の治療の目標は、テキストで述べられているように「治療面の方向に確実に滑らせること」です。
型や手順は目標に向けての、矢印のようなものです。
矢印は目標への方向やルートを示してくれているので便利ですが、矢印は目標そのものではありません。
目標にたどりつくために、多少わき道に反れたり、矢印の示すルートから外れて回り道をしなければならないときもあります。
私の行ったアレンジも、目標にたどりつくために少し違うルート、手段を使ったというだけです。
さまざまな体格のセラピストが、さまざまな体格の患者さんを手技療法によって治療するためには、このような工夫が求められるわけです。
ちょっと脱線しますね。
今回はテキストで紹介されているとおりのかたちで行いましたが、この内容だけがすべてではなく、きっともっとたくさんのポイントがあるはずです。
伝える側にとっては、テクニックのコツやパターンはたくさんあっても、それを説明する量を増やせば煩雑になって、はじめて学ぶ方にとって敷居が高くなってしまいます。
かといって平易にしすぎれば、テクニックの習得には不十分になります。
「ボールを投げて」と指示すれば、誰でも投げることができますが、より遠く、より早く、より正確に投げるとなったら、さまざまな技術を身につけ、果てのない工夫を重ねなければなりません。
それと同じことですね。
伝える側は、技術を文章で表現するとき、「詳しく」と「かんたんに」の間で揺れ動き、足したり削ったりして一文を作るだけでも悩むことがあります。
私もASTRの解説を行うときには、必要にして十分ということの難しさを思い知りました。
伝えるということは、本当に難しいことだと思います。
話を戻して、このシリーズではテクニックのアレンジについてお話ししてきたのですが、一方で「つくった先生のかたちをきちんと守らないといけないのでは」という意見もあると思います。
次回はそのような、テクニックについての考え方のお話です。