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手技療法の寺子屋

手技療法の体系化を夢みる、くつぬぎ手技治療院院長のブログ

癒しと治療についての雑感~私が体験した「うつ」の感覚 その3 《ありがとう350回!!》

2015-03-21 17:00:00 | 治療についてのひとりごと
今回は、うつ病を通じて体験した、癒しや治療についての個人的な雑感。

手技療法とはちょっと離れた内容が中心ですが、何かのご参考になれば幸いです



うつ病から回復するきっかけをつくるには、親鳥のように外からの刺激を保護してくれる存在が必要だというのは前回お話ししました。

私にとっての親鳥は、林を散歩すること、周囲のとくに家族の理解と支え、そして抗うつ剤でした。



本業の手技療法もよいはずなのですが、受ける機会がありませんでした。

いえ、結果的に自分でそのような機会をつくらなかったといえます

北海道に来て1年目ということもあり、相談できる同業の仲間がまだいなかったということもあるかもしれません。

「まだ自分でやれる」という空回りする気持ちだけは強かったのかもしれません。



結果的には、自分で自分の身体に触れる気力も湧かなかったので、これは体験しておくべきでした。

惜しいことをしたと今でも思っています。

ただ、この病気になった経験から、それまでの私は「何でも自分でやる」という気持ちが強かったのですが、「頼るときは頼る」「任せるときは任せる」ということを学んだように思います。



林を散歩することは山で育ったことも関係するのか、その中にいると木々から慰められているような気がしてとても安らぎました。


実際に散歩をすることはうつの改善に役立つともされています。

実感として確かにその通りでしょう。



散歩に限らず、子どもの頃から慣れ親しんだものと触れ合うのは大きな助けになるように思います。

スポーツだってそうでしょう。

ただ活動的なことができるのは、ある程度良くなってからのお話かもしれません。



続いて周囲の理解と支え、これはとても大切です。

はじめの回で触れましたが、本格的なうつ病のときは、少し回復すれば再び心に力が入ってしまい、その力が自分を責める、焦るという方向に向かいがちのような気がします。

そのため、よかれと思って励ましたことが、かえって負担になってしまうということもあるかもしれません。

つかず離れず、関わることを通して「あなたはここにいていいんだよ」というメッセージを伝えるということが、とても大切だと思います。



とはいえ、周囲の人だって調子のよい時もあればわるい時もある。

身近な人ほどついつい「何とかして欲しい」という思いが抑えきれなくなったり、気持ちが高ぶったりすると言いすぎてしまうこともある。

同じ人間なのだから仕方ありません。

これがなかなか難しいところですね。



また、人によっては状態が回復してきているのに「自分は病人なんだ」という甘えによって、動かなくなっていることもあるように思います。

何を隠そうそれは私のこと。

悲劇のヒロインを自作自演しているのです。



それを見抜いた妻に、こっぴどく叱られました。

当時は「病人に向かってなんてひどいことを!!

と思ったのですが、いまではそれが正しかったと思っています。



これを見抜くのは難しいところがあると思います。

あくまで参考としてですが、自分の好きなことをする時は、元気な頃と変わらないくらいテンポよく動いている。

けれども苦手なこと、やりたくないことをしなければならないとなると、とたんに具合が悪くなる、というサインもそのひとつかもしれません。

個人差も大きいことですから、そのような経験を持つ人がいるというお話として聞いておいて下さいね。



幸いなことに私の場合、妻がそのあたりを心得ていてくれていて、ほどよく放っておいてくれたり、喝を入れてくれたりしたので助かりました。

これには今でも感謝しています



さて、次に進んで抗うつ剤。

この抗うつ剤は近ごろ何かと批判されることが多く、まるで治癒の役に立たないという表現を使われる方もいらっしゃいます。

薬について私は責任のあることをお話しできませんが、自分の経験から抗うつ剤も大切な手段のひとつだと思います。



抗うつ剤を使うことで、外からの刺激に対して過剰に反応することが少なくなる。

それが卵を温める親鳥のような役割を果たすと思うからです。

確かにザワついた気持ちが静まりました。



ただ薬が強すぎる、あるいは多すぎると、生活をする上で必要な活動力も抑え込んでしまうことになります。

そうなると、一見うつ病が悪化したように見えてしまうかもしれません。



これを真に受けてしまうとさらに投薬量が増え、状態が悪化していくという悪循環を生むことになります。

卵を温めるはずが、卵を押しつぶしてしまうことになり本末転倒になってしまうわけですね。



そんなこんなで悪役にされることのある抗うつ剤ですが、そもそも生活を送る中で発生したうつ病に対して、生活をさほど変えることなく薬に多くを頼っているとすれば、それは無理があるというもの。

その挙句に悪者扱いをされたとしたら、抗うつ剤が気の毒です。



同じようなことは、ステロイドに対する評価の経緯と似ているところがあるように思います。

魔法の薬、奇跡の薬としてもてはやされてさんざん多用された挙句、副作用が大きな問題となったら今度は手の平を返して全否定される。

世間的には、現在でも否定的な印象を持たれたままになっています。



これは何も薬だけにとどまりません。

このお話は次回4月4日(土)の更新にも続きます。



《おかげさまで350回》
2008年1月からスタートした「手技療法の寺子屋ブログ」もおかげさまで350回を迎えることができました。
3日坊主の私が、まさかこんなに長く続けてこられるなんて思っていませんでした。
ありがとうございます。
みなさんからのメッセージもとても大きな励みになっていました。

このブログのおかげで、私も多くの仲間と出会うことができ、輪が広がっていきました。
あらためて振り返ると、ブログでお伝えできることはおおよそ書いてきたように思います。
もう少し書き進めたら、過去の記事の改訂などができたらなぁと思っています。
これからもマイペースで続けていきたいと思っていますのでどうぞよろしくお願い致します。


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札幌にてセミナーを開催します。
北海道方面で手技療法に興味をお持ちの方、どうぞご参加下さい。

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☆ブログの目次(PDF)を作りました 2014.01.03☆)
手技療法の寺子屋ブログを始めてから今月でまる6年になり、おかげさまで記事も300を越えました。
これだけの量になると、全体をみたり記事を探すのも手間がかかるかもしれません。
そこで、少しでもタイトルを調べやすくできるように、このお休みを使って目次を作ってみました。
手技療法を学ばれている方、興味を持たれている方にご活用いただき、お役に立てれば幸いです。

手技療法の寺子屋ブログ「目次」



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(どなたかよくわからないときがありますので、メッセージを添えてください)



治癒する力に対するセラピストの姿勢~私が体験した「うつ」の感覚 その2

2015-03-07 17:00:00 | 治療についてのひとりごと
今回は、うつ病の体験を通して私が学んだ、患者自身の治癒する力に対するセラピストの姿勢についてのお話し。

あくまで個人的な体験なのですが、私自身の治療観の軸のひとつになっています。



うつ病にかかっている間というのは、毎日が悶々としていました。

出口の見えないトンネルを歩いているような感覚でしょうか。

そんなある日、治癒の感覚は突然やってきました。



当時、今でも自分の庭のようにしている西岡水源地という、のどかな公園をよく散歩していました。

山育ちということもあって、木に囲まれるとホッとするのかもしれません。

ここを歩いていると、何となく慰めれれているような気がしていました。









いつものようにトボトボ散歩をしていた時のこと、突然「自分は良くなる」という感覚が湧き出てきました。

「湧き出て来る」という表現が最も適切だと思います。



心の奥底から、こんこんと泉が湧き出るように、小さいけど確信のようなものが持てました。

急に目の焦点が合ったような感じ、冷たくなった手に血液が流れ始めたような感じでしょうか。

自分で自分を癒していくような感覚です。



みんなが同じように感じるわけではないでしょう。

でも私にとってこれは、強烈な体験でした。

その日を境に、自分でも確かな手応えを感じながら少しずつ回復に向かっていきました。



この体験から、本当の癒しというのは自分自身の中から湧き出て来たものなのだと実感できました。

一般的に癒しといわれるもの、そして治療といわれる外からの働きかけは、自分で自分を回復させる内からの癒し、いわゆる自然治癒力というものを働かせるための手段であるということを身を持って体験できた気がします。

(癒しと治療は通常は分けられて考えられますが、外から働きかけるものとしてここではひとつにしています。)

それまで、頭ではわかっていたのですが実感は伴わなかったのです。



例えるなら、内からの癒しである自然治癒力は卵、外から与えられる癒しや治療は親鳥のようなものでしょうか。



本能的行為とはいえ、親鳥はヒナがかえることを信じているかのように根気よく温め続けます。

結果的に卵がかえらなかったとしても
、できることを、できるところまでやっている。

これは患者自身のもつ治癒力に対する、セラピストの姿勢に通じるのではないかと思います。



ついつい私たちは、さも自分が治しているかのような感覚を持ってしまいやすいのかもしれません。

即自的な効果であるほど、そう思いがちでしょう。



でも私たちが技術的にできるのは、親鳥のような役割だろうと思います。

他の表現なら、ケガをした後の傷口を、洗ってあげているようなものともいえるでしょう。

洗わなければケガの回復が遅れるかもしれませんし、なかなか良くならないかもしれないけれど、洗うことそのものが治しているわけではないということ。

治しているのは患者さん自身の回復力によってであること。

そこはきちんと、わきまえておかなければいけないところだと思います。



私の治療院にも痛みやしびれの症状に、ホトホト困って相談に見えた方がおっしゃることがあります。

「先生のことを信じています」

きっとはじめから本心より私のことを信じているのではなく、藁をもつかむ気持ちの表れとしてそのようにお話しされるのでしょう。



その時私は、自分の手に負える範囲内だと判断したらこうお話しすることがあります。

「では私は、あなたの回復力を信じてお手伝いしますね」

これは本心です。



きっと「私に任せてください」という言葉を期待していた患者さんは戸惑われるかもしれません。

自分の回復力に自信を無くしていることが多いですから。



でも先ほど触れたように、私たちは患者さんの持っている回復力を信じて可能性を求め、できることをするしかないと思っています。

そして最終的には患者さん自身が、自分で自分の回復力を信じるようになる状態まで持っていけることを目標にする。



はじめのうちは、患者さんがセラピストを頼って寄りかかるのは仕方ありません。

でも卵からかえり、自分の治癒力が働く段階になれば、自分の脚で回復へと進んでいくことができます。

そしていずれは患者さんが、自分自身のことを頼りにするようになるのが望ましいでしょう。



ですから時期が来たと思ったら、自立の季節を迎えたキタキツネのように、突き放すようなことをするときもあります。

それまで私を頼っていらっしゃった方は、はじめは再び不安な顔をされますが、自信を持たれるようになると表情が変わってきます。



私を頼るのではなく、活用されるようになるのです。

患者さん自身が主体となって、自分にとって必要なサポートを判断し、社会的資源のひとつとして治療院を活用されるようになる。

だからは私は「信頼」にはじまり「信用」に終わると考えています。

上手くいくケースばかりではないのですが、これを理想にしています。



「卒拓同時」という言葉があります。

これはヒナ鳥が卵から殻を割ってかえろうとするとき、ちょうど良いタイミングで親鳥が手助けするという話から生まれた言葉だそうです。

このようなことができるのが優秀なセラピストなのでしょうね。



なかなか大変なことですが、一歩ずつ試行錯誤しながら進んで行きたいですね。

そのためには、まずセラピスト自身が主体性を持って、自分のことを頼りにできるようにならなければいけないのかもしれません。



追記)私は激痛治療家と呼ばれていますが、これでもいちおう卵を温めているつもりなのです



次回は癒しと治療についての雑感、3月21日(土)夜、更新予定です。





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受講費用 10,000円

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☆ブログの目次(PDF)を作りました 2014.01.03☆)
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