手技療法の寺子屋

手技療法の体系化を夢みる、くつぬぎ手技治療院院長のブログ

ひとりでできる!!間接法の練習≪拮抗筋のストレッチ≫ その8

2012-03-31 20:00:00 | 学生さん・研修中の方のために
今回は、関節運動を伴ったストレッチによる間接法の練習です。


ストレッチの間接法?何だかピンと来にくいかもしれません。


ストレッチの間接法ということは、伸ばすことの反対で筋を弛緩させるということになります。


だからといって 「筋の弛緩法」にすると、言いたいことはわかっても、具体的に何をするのかますますわかりにくくなります。


ですから、方便として 「拮抗筋のストレッチ」 と表現することにしましょう。


まわりくどいようですが、このように表現することで 「対象となる筋を縮ませて弛緩させるのだな」 というように、何をするのかわかりやすくなると思います。





関節運動を伴うということは動きが大きくなりますが、基本は筋膜リリースの時と同じです。


ただ、浅筋膜層の筋膜リリースでは、体表面を滑らせるとい平面上の動きであったのに対し、今回は立体的な動きになります。


また筋膜リリースでは、リリースしたい部位にコンタクトするので、組織の状態をモニターしやすかったのですが、ストレッチとなるとリリースしたい部位に直接触れません。


そのあたりが、ちょっと難しくなるかもしれません。





ではさっそく練習しましょう。対象は前腕屈筋です。


まず 「前へならえ」 のかたちをとり、指は伸ばしたまま、手首だけ反ります。



その時に前腕屈筋の緊張の度合い、あるいは動きのスムーズさを感じとり、左右で比較してください。


ここでは仮に、右手首のほうが反らしたときの緊張感が強い、または、動かしにくかったとしましょう。





イスに座りテーブルの上に右腕をつき、肘は曲げておきます。



反対側の左手で右手の甲を押さえ、手首を屈曲させます。



前腕屈筋を弛緩させ、拮抗筋である前腕伸筋をストレッチしている状態をつくるわけです。


そのとき、前腕の屈筋に意識を向け、じょじょに筋が弛緩していく様子を感じとるようにしましょう。


屈曲させる角度は、右手首に苦痛を感じない程度です。


屈筋側に異常があるなら、屈曲させることはむしろ楽だと感じるかもしれません。





続いて前腕を回内・回外し、手関節を側屈(尺屈・橈屈)させます。


右手の屈曲位を保ったまま、左手で操作して、前腕の回内・回外をします。


      ≪ 前腕回内/尺屈 ≫



      ≪ 前腕回外/橈屈 ≫



この時も前腕の屈筋に意識して、回内位・回外位の間でもっとも弛緩している角度を探し、そこで止めます。


身体を動かしながら弛緩するポジションを感じとる。


はじめはこのような操作を、難しく感じる方もいらっしゃると思います。


よくわからなければ 「だいたいこんな位置かな?」 でかまいません。





最後に、手関節を回内・回外して回旋します。


          ≪ 回内 ≫


          ≪ 回外 ≫



これまでと同じように、もっとも弛緩している角度を探すわけですが、これは微妙な感じかもしれません。


わからなかったら、パスしましょう。





さて、これで屈曲・側屈・回旋方向の立体的なかたちで、筋肉が弛緩するポジションをみつけることができました。


このままの状態で90秒ほど待ってみましょう。


時間の単位は筋膜リリースでも目安とした、カウンターストレインの方法を参考にしています。





その間、右前腕屈筋の状態をよく感じとっておいてください。


温かくなってくる、ゆるんでくる、そんなリリースの感覚を感じとることができるでしょうか。


わからなくても、とにかく集中してください。


この努力を繰り返すによって、少しずつ感覚が養われていきます。





90秒経ったら、ゆっくりと元に戻します。


このとき右手の力ではなく、左手の力で右手を動かして戻します。


ほんとにゆっくりゆっくり戻しましょう。


それがポイントです。





はじめの位置まで戻ったら再評価です。


再び「前へならえ」のかたちをとり、指は伸ばしたまま、手首だけ反りましょう。



右前腕屈筋の緊張や、動かしにくさが少しでも改善されたでしょうか。


とくに症状を持っていなければ変化はわずかしか感じないかもしれません。


それでも、感じとることができればまずは成功です。


(次回に続く)

ひとりでできる!!間接法の練習≪筋筋膜リリース≫ その7

2012-03-24 20:00:00 | 学生さん・研修中の方のために
ステップ3 多方向へ同時にリリースをかける

前回までは手背部浅筋膜の筋筋膜リリースによる間接法を、中枢⇔末梢、橈側⇔尺側、時計まわり⇔反時計まわりの6方向に分けて練習しました。


今回は、より実践的な練習として、それらを一緒に行います。


多方向に同時に筋膜リリースを行うわけです。





左手背の上に右指をのせ、中枢⇔末梢、橈側⇔尺側、時計まわり⇔反時計まわりのどれからでもかまいません。


順に動かしてもっとも動きやすく、ゆるむ方向を特定します。







たとえば、はじめに中枢⇔末梢方向を比較して、動かしやすいのが中枢方向ならそちらに動かします。


そのまま橈側⇔尺側方向を比較して、動かしやすいのが尺側方向ならそちらに動かします。


さいごに、そのまま時計まわり⇔反時計まわりを比較して、動かしやすいのが時計まわり方向ならそちらに動かします。


もともとわずかしか動かしませんが、それでも各方向によって動かす量の大きい小さいは出てくると思います。





こうして中枢+尺側+時計まわりという、筋膜が滑走するすべての方向に間接法による操作が加わりました。


局所的ですが、より患者さんの状態に合った、精度の高い刺激を加えることができたわけです。





そのまましばらく待っていると、モニターしている組織がさらに柔らかくなるなど、リリースの反応が起こってくると思います。


リリースが確認できたら、いちど元に戻してそれぞれ抵抗の強かった方向に動かして、動きを確認してみてください。





3つの方向に動きを改善させることができたでしょうか。


もしかしたら、先ほどとは異なる方向に抵抗の強さを感じるようになったかもしれません。


一度リリースの反応があったからといって、その組織がすべてリリースできているとは限らないのです。





もう一度、これまでと同じ手順で間接法を行ってみてください。


先ほどとは、より動かす方向とその量が変わっていると思います。


終了したら、再評価してください。


より動きは改善しているでしょうか。


こうして、少しずつきめ細かいアプローチができるようになっていくのです。





ここで間接法を用いる上で、覚えておいていただきたい大切なことをお話しします。


間接法は通常、6方向の組み合わせの中からもっとも動きやすい方向に動かしていきます。


今回なら中枢⇔末梢、橈側⇔尺側、時計まわり⇔反時計まわり方向、ほぼ平面上の二次元の操作でした。


関節なら屈曲⇔伸展、右側屈⇔左側屈、右回旋⇔左回旋の組み合わせとなり、立体的な三次元の操作になります。


複合された方向へ操作するとなると複雑になっていきますから、間接法を練習していても、なかなかできるようにならないという方もいらっしゃいます。





上手くいかない原因はリリースできるポイントを、ただやみくもに探しているため、きちんと探し出せていないかもしれません。


そのようなときには今回ご紹介した手順のように、多方向にリリースを書ける場合でも、操作段階ではそれぞれの方向に分け、最も動きやすい方向をひとつずつ探しながら進めていくようにするとよいでしょう。


その方が確実ですし、やがて上達するにしたがって、もっとも動かしやすい方向を瞬間的に判断していく感覚も養うこともできます。





次回からは、関節運動を伴ったストレッチによる間接法の練習に進みます。

ひとりでできる!!間接法の練習≪筋筋膜リリース≫ その6

2012-03-17 20:00:00 | 学生さん・研修中の方のために
今回も手背部を対象に、浅筋膜層の滑走を改善させるための筋膜リリースを引き続き練習します。


前回は中枢⇔末梢方向でしたが、今回は橈側⇔尺側方向で行いましょう。





前回と同様の手順で、左手背の上に右指をのせます。




そのまま、右指を橈側と尺側方向にほんのわずか2~3mmていど皮膚を動かし、比較してより緊張の強い方向をみつけます。




確認できたら前回同様に、緊張の強い方向とは反対の動かしやすい方向に動かして、間接法による筋膜リリースを行い、再評価してみてください。





ところで、間接法のような細かい操作を練習するときに、注意していただきたいことが3つあります。


「力まない」「息を止めない」「手先の力で操作しない」ということです。


そう、これまで何度も繰り返しお話ししてきたことですね。


基本はあらゆることに共通しています。


とくに微妙な操作が求められる間接法では、なおのこと必要といえるかもしれません。





まず「力まない」。


間接法のようなソフトなテクニックでは、指先に力が入るというようなことはわりと少ないです。


しかし、わずかな組織の変化を「感じよう」とするあまり、肩に力が入ってしまっていることがあります。


これではかえって感覚が鈍くなってしまいます。


力が入ってしまう方は、おなじみの「肩をすくめて~、ストンと力を抜く」という方法を用いて、気持ちも切り替えてもよいでしょう。


肩の力を抜き、リラックスして行いましょう。





つづいて「息を止めない」


これは先ほどの「力まない」ということと、セットになっていることも多いかもしれません。


わずかな変化を感じとろうとして集中したとき、ついでに息も止めてしまうわけです。


こうなると自分が酸欠になって、目はクラクラして頭もボーッとしてしまいます。


ここまではっきりした症状でなくても、息を止めることが習慣になっていると、仕事をしていても疲れやすくなってしまいます。


息を止めていることを自覚したら、根をつめる作業をしているとき口を閉じないように、ほんの少しだけ唇を開けるようにしておくとよいでしょう。


口を閉じておくよりも、わずかでも口を開けた状態のほうが、息を止めにくくなります。


集中するときは、細く長い息をすることがポイントです。





そして「手先の力で操作しない」ということ。


これについては手技療法の寺子屋ブログで、とくに口をすっぱくして、くり返しお話ししてきました。

『ひとりでできる!! 関節あそび検査練習法 その3』などをご参照ください≫


手先ではなく体幹寄りの大きな筋肉を使って操作する、「小さな操作は大きな動作で行う」ということですね。





その理由は、大きなテコの力を利用できるので、手先は感じることに集中でき、感覚を鈍くさせずにすむということ。


多くの身体部位が運動に加わることで、固有受容器による位置覚・運動覚が刺激され、制限の有無を知覚しやすくなる。


身体の力を用いることで、正確にコントロールされ安定した操作を行うことができ、セラピストの疲労も少なくなるということです。


右指も手首の操作で動かすのではなく、最低でも肩から、できるなら体幹を動かして操作するようにしてください。





以上、3つの注意点を確認しながら、もういちど、中枢⇔末梢、橈側⇔尺側方向の練習を行ってください。





ひとりでできる!!間接法の練習≪筋筋膜リリース≫ その5

2012-03-10 20:00:00 | 学生さん・研修中の方のために
手背部浅筋膜層の滑走を改善させるための筋膜リリース、中枢⇔末梢方向、橈側⇔尺側方向と練習してきました。


今回は、時計まわり(clock wise / CW)⇔ 反時計まわり(counter clock wise / CCW)です。


時計まわりは右まわり、反時計まわりは左まわりのことです。





これまでと同様に左手背の上に右指をのせますが、さすがに回転の動きをするのに右手が机の上に載ったままでは操作しにくいので、浮かしてかまいません。


ただ、指の力で押さえるようなことのないように注意してください。


時計まわり、反時計まわりに動かして、より緊張の強い方向をみつけていきます。




ここで次のステップに移ります。





ステップ2 組織がゆるむ程度を感じながら操作する。

これまでは緊張の強い方向とは反対の方向、つまり動かしやすいに向けて、2~3mm程度皮膚を動かして止めるという方法で練習しましたが、もう少し踏み込みましょう。


右手を操作するとき、間接法では動かしやすい方向に動かすわけですから、最初の数ミリはスムーズになめらかに動きます。





ところがそれを超えると、じょじょに抵抗感が強くなってくるはずです。


そうなると行き過ぎです。





ゆっくりと元の方向に戻していきましょう。


すると、また抵抗感が減り、やわらかくなってきます。





こうして、もっとも抵抗感の少ない、やわらかく感じる位置を探します。


その位置が、間接法をかけるポイントになります。



みつかったらその位置で止まって待ち、リリースするのを待ち、再評価してみてください。





前回の2~3mmほど動かしやすいに向けて止めるという方法は、行いやすいですし、あるていど効果も出します。


ただ、その患者さんの組織の状態にピッタリ合っているわけではありません。


今回の方法は、何やら面倒なことをしているようですが、組織の状態に合わせた精度の高い技法です。


何より触診のトレーニングになり、他でも生きてきますので、手技療法をしっかり勉強していきたいという方は、こちらの方法で練習なさるとよいでしょう。





前回までの中枢⇔末梢、橈側⇔尺側方向と合わせて練習してください。



ひとりでできる!!間接法の練習≪筋筋膜リリース≫ その4

2012-03-03 20:00:00 | 学生さん・研修中の方のために
今回のシリーズで練習する間接法は、もしかしたらこれまでご紹介してきた直接法よりも、さらに微妙な操作と、繊細な触診が求められるかもしれません。


というのも、間接法は最も弛緩している状態を感じとることが求められるからです。


最も弛緩している状態をきちんと感じとるということは、慣れないとなかなか難しく、集中力が求められます。


そのためにも直接法をしっかり練習して、緊張した組織がリリースされて弛緩していく様子を感覚的に理解し、経験を積んでおいたほうがよいのではないか思っています。


ですから私は、はじめに直接法を学ばれることをすすめています。


もちろん好みや向き不向きもありますので、いちど練習してみてなかなかピンと来にくいなら、直説法からということでもよいでしょう。




というわけで、気合を入れて取りかかりましょう。


練習するのは手背を用いた浅筋膜のリリースです。





ステップ1 間接法の基本的手順を学ぶ

両手をテーブルの上におき、一方の手の示から薬指までの指先を反対の手の甲にのせます。


ここでは左手の背側に、右手の指をのせることにしましょう。


右手の指は、決して左手の背側を押そうとせず、指の重みでのっている程度にします。







その状態のまま、右指を左背側の上で、中枢側と末梢側に、ほんのわずか2~3㎜ていど、皮膚を動かしてみてください。




両方を比較して、どちらかより緊張の強い方向があるのではないでしょうか。


もし確認できないようなら、右指の位置を変え、違いがある部位を探してみてください。





確認できたら、緊張の強い方向に動かした時の抵抗感をよく覚えておいてください。


ここから間接法の練習本番です。





先ほどの緊張の強い方向とは反対の方向、末梢側に緊張が強かったなら中枢側に向けて、2~3mmていど皮膚を動かして止めてください。


皮膚を動かすだけで押そうとせず、指の重みをかけるていどというのを忘れないでください。


はじめての練習なので、できるだけ感覚が残りやすい状況をつくっておきたいからです。





どれくらい止めておくか、目安があったほうがよいので、ここでは90秒としましょう。


これは、間接法の代表的なテクニックのひとつ、カウンターストレインで用いられる時間の単位です。


その間、手の感覚に集中しておいてください。





しばらくすると、右指で触れている部位が、弛緩してやわからくなってくる、あるいは温かくなる、フワッとふくらむような感触を覚えるかもしれません。


あるいは左手背に温かさや軽くジーンとした感覚が起こり、場合によっては指先までそれが広がって感じるというような変化が起こるかもしれません。


これが組織の弛緩したサイン、リリースと呼ばれる現象です。



リリースが感じられたら、その時点で緊張を感じた方向に動かして、抵抗感が先ほどと比較して減少しているか再評価してください。


とくに何も感じなくても90秒経ったら、ひとまず元に戻し、再評価してみてください。





やわらかくなった、あるいは動きがよくなったという印象を持つことができたでしょうか。

それなら成功です。


これで、浅筋膜の滑走性がわずかながらも改善されているはずです。


両手を握ったり開いたりをくり返したら、左手の甲が少し軽くなった印象を持つのではないでしょうか。





途中でリリースの感触を上手くつかむことができなくても、ガッカリしないでください。


くり返し練習している間に、感覚が鋭くなってきますので、いずれ感じ取れるようになるはずです。


再評価しても、さほど変化しないようなら、もう少し長めに間接法を行うか、直接法に切り替えてみるとよいでしょう。





以上の方法は、間接法のもっともシンプルで基本的なプロセスになると私は思っています。


くり返し練習して感覚をつかんでください。


≪次回に続く≫