手技療法の寺子屋

手技療法の体系化を夢みる、くつぬぎ手技治療院院長のブログ

ひとりでできる!!頚椎の触診と可動性検査 その5

2010-11-27 20:00:00 | 学生さん・研修中の方のために
今回はシリーズ最終回です。


仰臥位で関節突起を触診して椎骨のすべり運動を感じ取られるようになったら、座位で練習してみましょう。


座位は仰臥位よりも筋のトーンが上がっているので、関節突起が触診し難くなりますが、これまでやってきたことをクリアしていれば、きっとできるはずです。





座位で触診するときは、姿勢を正して、頚椎を中立位からほんのわずかに伸展させると、後頚部の筋が弛緩するのでより触れやすくなります。

姿勢をただした状態から、少しだけアゴを前に出すという感覚でも良いと思います。



中部頚椎の関節突起に、左右の指で触れてみてください。



私は中指を使いますが、好みですので人差し指でも薬指でも構いません。





脱線しますが、この状態から背中を丸めてみてください。

とたんに頚部の筋が緊張するのが触れて感じると思います。


猫背がいかに頚部に負担をかけるかということですね。


患者さんにとって、関節突起は難しくても、筋肉が硬くなるとか軟らかくなるという変化はわかりやすいので、姿勢のアドバイスをするときに利用しています。


ただ単に、口頭で「姿勢を正すように注意してくださいね」とアドバイスするよりも、姿勢の変化で筋肉の緊張が変化するのだということを実感できたほうが、患者さんも身体で納得できるので意識しやすくなるようです。





余談はさておき、関節突起にコンタクトした状態から、まず左右に側屈してみてください。


このときも、アゴを少しだけ前に出し、頸椎を軽く進展させた状態にしておくとわかりやすいです。


右に側屈したときは、右の関節突起が後ろ下方にすべり、左の関節突起は前上方にすべっているのを感じるでしょうか。



左に側屈したときは、その反対が起こります。





続いて伸展です。



両方の関節突起が、後下方にすべり降りるのを感じるでしょうか。





では、屈曲しましょう。

このとき、頭部を前に倒していくと頚部の筋が緊張して、関節突起がわかりにくくなります。



コツは伸展した状態から、



中立位まで戻ったら、顎を引くことで頚椎の前彎を除くことで屈曲するようにさせます。

おでこが鼻先よりも前に出ないように意識すると、ちょうどよいでしょう。



この動きは頚椎椎体の前側にある、頚長筋などの働きによって屈曲することになるので、後頚部の筋の働きは最低限に抑えられます。





さいごに回旋です。これがちょっと難しいかもしれません。


右回旋したとき、左関節突起が前方にすべるのは比較的わかりやすいのですが、右側は板状筋などが緊張するため触れにくくなります。


このとき、わからないからといって指先に力を入れて押し込むようにしないでくださいね!!


前回お話したように、力が必要なら肘を前に出すことで上肢帯の筋を使い、指はモニターする感度を保つようにします。





この練習法で椎骨のすべりを感じることができたら、頚椎を立体的にイメージして、イメージと手の感触が連動するようにトレーニングしてみてください。

目の前に、脊椎模型や解剖図を置いて練習するのもよいでしょう。


慣れてくると検査しているとき、すべり運動を起こさない椎骨では、手で抵抗感を感じると同時に、頭の中でイメージした椎骨も引っかかって動かない感覚を覚えるようになります。


これができると、ちょうどソロバンで暗算のできる人は、頭の中でそろばんを動かしているという話と同じように、頭の中で制限をイメージできるので、治療の精度もより高まってきます。





座位で関節の動きを感じ取ることができたら、評価はもちろん、マリガンテクニックのSNAGSなど座位でのモビライゼーションも身につけやすくなるはずです。


そして、とくに活動している筋を介して関節突起の動きを感じ取るという練習は、座位での胸椎や腰椎の検査に生きてきますよ。

ひとりでできる!! 頚椎の触診と可動性検査 その4

2010-11-20 20:00:00 | 学生さん・研修中の方のために
いよいよ、関節すべり運動の触診まで来ました。


これは可動性検査と直接結び付きます。


さっそくはじめてみましょう





仰臥位になって両膝を立て、裂隙の分かる部分に示指や中指で触れます。



顔は天井を向けたまま、膝を倒していきます。



すると、脊柱の下位から順に回旋する力が伝わっていき、頚椎まで来た時、裂隙の間で椎骨のすべり運動を感じます。





ちょうど上の写真なら、右の関節突起に触れて膝を左に倒しているので、下の写真のように下位の椎骨が前方にすべるように感じます。



反対に膝を右へ倒したら、後方へすべり出てくるように感じるはずです。



いかがでしょう。感じ取れましたか?


慣れてきたら、両手で同じレベルの裂隙にコンタクトし、回旋を加えたときの左右の関節の動きを追跡してみてください。

けっこう面白い感覚ですよ。





ここで注意点があります。


裂隙にコンタクトするとき、



指を曲げる力を使わないようにして下さい。



分からないと、ついつい指先に力が入りがちになります。

すべりの感覚は微妙ですが、分からないからといって指の力を使ってしまうと、感覚がますます鈍くなります。





肘を前下方に突き出すようにして、裂隙にコンタクトしましょう。



肘を前下方に突き出すとことによって、胸郭から体幹の力を使うことができ、裂隙に安定してコンタクトすることができ、指先の感覚も落ちません。

この操作は、関節柱や裂隙の触診でも同じことがいえます。






これまで繰り返しお話してきた、「小さな操作は大きな動作で行い、手先に力を入れないようにする」とは、あらゆる検査と治療でいえることなのですね。





どうして、頭部を回さないで膝を倒すのかですって?


頭部を回すと頚部の筋肉が緊張して、裂隙が分かり難くなりますが、膝を倒すことで、頚部の筋はリラックスしたまま、関節の動きを感じ取ることができるからです。





今回ご紹介した方法で、関節がすべっているという感覚がわかるようになれば、すべっていないという制限も感じ取ることができるので、分節的な評価の技術はグッと上がってきます。


この方法は、職場の昼休みにベッドで横になったときや、夜に布団へ入ったときすぐに練習できます。


さっそく今晩から試してみましょう。


次回はシリーズ最終回。座位ですべり運動を感じ取る練習です。

ひとりでできる!! 頚椎の触診と可動性検査 その3

2010-11-13 20:00:00 | 学生さん・研修中の方のために
今回は列隙の触診です。

関節突起間の隙間、つまり椎骨間の境い目になり、ここを上手く触診できるかどうかで、頚椎の評価と治療に差が出てきます





前回は、関節突起の連なりである関節柱を触診しました。


裂隙は縦に伸びている関節柱に対して、横方向に線が入っているように感じます。







仰臥位で関節突起に触れ、頭側⇔尾側と指をこするように動かしてみてください


横方向に走っている線を感じませんか?


どの高さでも結構です。移動しながら分かりやすい所を探してください





頚椎の前彎が強ければ、関節突起が奥に入ってしまうので分かり難くなります。



顎を引いて前彎を減らしてから、触診してみてください。







関節突起もかたちは様々です。わかり難いところもあるはずですから、すべて感じ取れなくても大丈夫。

どこか一ヶ所でも分かれば、しめたものです





ちなみに、関節突起は筋肉に付着部を提供していますが、筋腱移行部や腱骨移行部は過敏になって圧痛を起こしやすいところです。


左右とも、上から下まで押さえると痛みを感じるというときは、もともと敏感になっていることが多いです。


上下や左右と比べて一部分に強い圧痛が確認できるのは、その付近が機能障害を起こしている可能性が高いです。


この場合、可動性減少と亢進の両方の可能性があります。





さて、「裂隙はだいたい分かったよ」という方は、以下のことにも挑戦してみてください。


中部頚椎あたりに触れている指を外側に移動し、関節突起を感じなくなったら、そのまま尾側に移動します。


はじめに硬い部分に触れたところ、そこはC7横突起です。


C7横突起は、他の頚椎横突起と比べて発達しています。


このC7横突起の過形成や、C7からの肋骨により、神経血管束を絞扼して上肢に知覚異常や痛みなどの症状を起こすとされるのが「頚肋」ですね。





C7横突起を確認したら、指を内方に移動させC7の関節突起に触れます。


そのまま指を頭側に移動させC6との裂隙~C6関節突起へ、最終的にはC2関節突起まで数を数えながら進んでいきます。


これができれば、頚椎の触診はそうとうできると言ってよいと思います。





「そんなのムリだよ」という方、一ヶ所でも分かれば、その感覚を大切にしてゆっくり進んでいけば大丈夫ですよ。


個人差によって、分かりやすい人と分かり難い人の違いが、どうしても出てきてしまいます。


今回は自分で練習する方法ですが、パートナーと組んで練習する時も同様の方法で行えます。


自分の頚椎で分からなかったとしても、いろいろな方と練習しているうちに、きっと分かりやすいタイプの方と巡り合うはずです。





評価やテクニックの書籍を読んでいると、いきなり「C5の関節突起にコンタクトして…」からはじまるものが結構あります。


「C5の関節突起に触れろといっても、それがどこかワカランのやって」という悩みは意外とあるのではないでしょうか。


ですから、評価やテクニックの前に、このような触れるトレーニングを十分に積んでおく必要があるのです。





次回は、いよいよ関節すべり運動の触診です。

そのためには、この列隙の触診がカギになりますので、よく練習しておいてください。

ひとりでできる!! 頚椎の触診と可動性検査 その2

2010-11-06 20:00:00 | 学生さん・研修中の方のために
前回、仰臥位から頸椎を触診して、関節柱に触れるという宿題を出しましたが、わかったでしょうか?





ではまず、中部頚椎あたりの棘突起に触れてみてください。



そのまま外側に指を移動させ、頚部の輪郭をたどりながら、頚椎に向かって押圧を加えていきます。





はじめは、内方へ向けて押圧を加えながら前方に移動します、ここは棘突起の外側面です。



抵抗を感じて、それ以上前方に移動できないところまできたら、ここは頚椎の椎弓です。





押圧を加える方向を前方に変え、指を外側へ少しづつ移動していきます。


前方に向けて押圧を加えていると、いくらか指が沈んだ後、抵抗を感じてそれ以上進めない感じがします。



椎弓をたどっている感覚です。





そのまま続けていると、あるところにきたら、前方に押したときの抵抗がなくなり、さらに前方に沈んでいくようになります。


この部分になると、頚椎の関節突起の外側を押さえていることになります。







再び、内方に移動させながら、前方への押圧を加えていると、また先ほどの抵抗感がある部位に触れます。

その部分が関節突起になります







いったん関節突起を通り過ぎてから戻ってきました


「はじめっから、外側からスタートすればよかったんじゃないの」なんて、思われた方もいるかもしれませんが、頚椎の形状を立体的に捉えられるように棘突起からはじめました。





関節突起は骨が隆起している上に、筋も付着しているので、なお盛り上がって触れる感じがするのではないでしょうか。


関節突起に触れながら、頭側⇔尾側に移動してみてください。

柱状に感じませんか?



これが関節柱と呼ばれるものです。


柱のように感じなかったら、圧迫をくわえたまま、細かく横方向に動かしながら上下の移動を繰り返し、その感触を確かめてください。






次回は、関節突起間の裂隙の触診です。

ちょっと難しくなってきますよ。